ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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活動報告にアメジオの手持ちも追加しました。


襲撃者

 

「パゴッ!パーゴ!」

 

 テラパゴスは突如、現れたアメジオに対し何かを叫び続けている。原因不明のその行動に思わず注目していたが、アメジオに向けて歩き始めたテラパゴスを最も近くにいたリコが慌てて止めに掛かる。

 

「テラパゴス!駄目!」

「テラパゴス……それがそのポケモンの名前か。そいつを渡してもらうぞ」

「俺がそれを許すと思うか?」

 

 アメジオはテラパゴスを睨みつけそう宣言するが、ジンはアメジオとリコたちの間に入り、いつでも盾となれる様に立ちふさがる。

 

「アメジオ、お前の実力は認めているつもりだ。だが、まだ俺には勝てないと思うぞ」

「……そうかもな」

 

 当然、アメジオもその事は理解している。アメジオは強くなり、ジンと初めて出会った時よりも差は縮まっているが、ガラル鉱山で見たジンたちの力にはまだ及ばない。ガラル鉱山での一件からそれも明らかだ。

 

「……だが、俺も引く訳にはいかない!」

 

 アメジオはペンダント回収に失敗し、任務を外されておきながら独断専行でこのガラルまで来ている。偶然、テラパゴスの情報をいち早く入手し報告したことでなんとか処分を免れたが、何かしらの手柄を立てねば今後にも大きく影響するのは間違いないのだろう。

 

(……今回は本気で任務を遂行するつもりみたいだな)

 

 アメジオの目には確かな決意が感じられる。正面から挑むという律義な所は変わっていないが、どうやら今回はバトルに勝つ事よりも任務遂行を第一に考えている様だ。

 

(挑発しても無駄か……)

 

 アメジオがジンとフリードに対して複数体のポケモンを同時に出し勝負を仕掛けてくれば、勝機があるかどうかはともかく時間を稼ぐことは然程、難しくない。そうすればその隙をジルとコニアが抜け、リコとロイに襲い掛かる事は可能だ。

 

 リコとロイはジンのトレーニングの影響もあり強くなっているがそれは相手も同じことだ。特にはホゲータはサイドンとゴルダックのどちらとも相性が悪い。相性を覆す為の技や技術はいくつか授けてあるが、実戦でそれが使えるのかどうかはやってみなくては分からない。

 

(さて、どうするかな……っ!)

 

「なっ!?」

 

 ジンが次の一手をどうするか思案を巡らせていると、突如、この部屋に向かって高速で接近してくる気配にジンとアメジオは気が付く。両者は同時に気配のした扉に向かって視線を向けるとそこから1体のポケモンが部屋へと飛び込んでくる。

 

「ウインディ!?」

「ゴルダック!『みずのはどう』!」

 

 部屋に飛び込んできたのはダイアナのウインディだ。コニアは直ぐにゴルダックに指示を出し、攻撃を仕掛けるがウィンディはジャンプし軽く回避してしまう。それに続いてソウブレイズも『サイコカッター』を放つがウインディは『かえんほうしゃ』を放ち相殺する。

 

「無事かい?」

「おばあちゃん!」

 

 ウインディに遅れてダイアナとイキリンコが部屋へと入ってくる。ダイアナは全員の無事を確かめると一瞬、安堵した後にアメジオたちに視線を向けた。

 

「ウインディ!『かえんほうしゃ』!」

 

 ウインディはソウブレイズに向け、『かえんほうしゃ』を放つ。ソウブレイズは両腕の剣をクロスさせ防御の体勢に入る。効果はいまひとつだが、時間稼ぎには十分だ。

 

「イキリンコ!頼んだよ」

 

 ダイアナの肩に乗っていたイキリンコは飛び立つと壁に掛けられていた絵画に乗り移る。すると絵画は下にスライドしそれと同時に床が開き地下へと続く隠し通路が現れる。

 

「隠し通路か!」

「こういう城には昔から城の主が秘密裏に逃げ出せる通路があるんだよ。さぁ、あそこから逃げるんだ!」

「お、おばあちゃんは?」

「忘れ物があるのさ。また後でね」

「ダイアナさん……皆!急ぐぞ!」

 

 リコは一瞬、ダイアナを残していく事に躊躇する様子を見せるがフリードに急かされ、3人はウインディの援護を受けつつ隠し通路へと入り込むとイキリンコはもう一度装置を作動させ隠し通路に続く扉を閉じた。

 

「ひとんちで随分と派手にやってくれたもんだね」

「何者かは知らんが、我々エクスプローラーズの邪魔をするな!」

「エクスプローラーズ……それは思ってもいなかった展開だね。ウインディ!」

 

 リコたちが無事に隠し通路に入ったのを確認しアメジオたちの正体を知ったダイアナは窓に向かって走り出す。直ぐに追いついてきたウインディに飛び乗るとそのまま窓を突き破り、あっという間にこの包囲網から突破してしまう。

 

「む、無茶苦茶だ……」

 

 ダイアナの行動を見たジルはそう呟く。色々な任務を経験し、それなりに修羅場を潜り抜けてきた彼から見てもダイアナの行動はあまりにも予想外だったようだ。

 

「奴はいい。テラパゴスを追うぞ」

 

 今回の目的はあくまでもテラパゴスのみだ。逃げるというならばダイアナの事は無視して構わない。ダイアナの行動に茫然としていたジルとコニアは意識を切り替える。

 

「お前たちは地下を追え」

「はっ!アメジオ様は?」

「奴らの事だ。飛行船を呼び、それに乗って逃げようとするのは目に見えている。だとすれば……」

 

 アメジオはベランダに出ると城の周囲を見渡した。飛行船に乗り移るのに適した場所、それはここには1つしかない。

 

「……あの塔だな」

 

 

 

***

 

 

 

 ダイアナの援護もあり、地下通路へと逃げ込んだジンたちはまだ通路の入り口付近にいた。リコはテラパゴスをリュックに入れ背負い、ここから先、またアメジオたちに見つかればバトルは避けられないと考え感情に敏感なミブリムをボールへと戻す。

 

「ひとまず、ここから逃げるぞ」

「賛成だ。まずは船を呼んで……っ!?リコ!」

「うわっ!」

 

 ジンはスマホロトムを取り出し、船に残った仲間たちに連絡を入れ迎えを呼ぼうとする。しかし、その瞬間、強い敵意を感じたジンはリコの手を掴み無理やり引き寄せる。それとほぼ同じタイミングで通路の入り口付近が壊され、地上からサイドンが顔を見せる。

 

「あいつら城を壊す気か!?」

「お構いなしって事か。逃げるぞ!」

 

 幸い、サイドンは壊した穴が小さい事もあり、その巨体を通す事が出来ず道は塞がったままだ。ジンたちは妨害を受ける事無くそのまま通路を進む。暫く進むと再び階段へと続き、そこを登ると無事、地上へと出る事に成功する。

 

「ここは……」

「塔の内部みたいだな……」

 

 ジンたちが出たのは城にあった塔の内部だ。屋上までは螺旋階段となっており、一緒に来たイキリンコは偵察も兼ね屋上に向けて飛び立っていく。ジンたちもそれに続き螺旋階段を上り、塔の中腹まで到達した。

 

「3人共、ここで待っててくれ。俺は屋上でマードックたちと連絡を取って迎えを呼ぶ。ジン、悪いんだが殿を頼むぞ」

 

 全員で屋上で船が来るのを待つことも出来るが、屋上まで逃げてしまえば退路が立たれアメジオたちが空と下から同時に攻め込んでくれば挟み撃ちに合う可能性がある。万が一にもそうなる事を避ける為、フリードは応援を呼びにジンは背後を守るために一旦、別行動を取る事にした。

 

「……了解。任せてくれ」

 

 フリードはその場をジンに任せると1人、螺旋階段を駆け登り塔の屋上まで到達するとスマホロトムを取り出した。

 

「マードック、聞こえるか?悪いんだが、大至急迎えに来てくれ!場所は……っ!?」

「アーマーガア!『ぼうふう』!」

 

 フリードがブレイブアサギ号にいるマードックに連絡をしようとしたその瞬間、空からアーマーガアに乗ったアメジオが現れる。アーマーガアの『ぼうふう』によりフリードは吹き飛ばされるが自身の優れた身体能力で軽やかに受け身を取り体勢を立て直した。

 

「このまま逃がすと思ったか?」

「……ったく、せっかちな奴だな。ちょっとぐらい待てないのかよ」

「待てんな。ジンの……いや、テラパゴスの元まで行かせてもらう」

 

 アメジオは思わずジンの名前を口に出してしまった様だが、直ぐに今回の目的を思い出したようだ。

 

「……随分とジンにご執心みたいだな。だが、ジンたちの所に行くには、まずは俺を倒してからじゃないと無理だぜ」

 

 フリードは階段の入り口の前に立ち、アメジオに立ちはだかる。フリードを倒さなければ彼が道を譲る事はない。

 

「……いいだろう。ならば、まずはお前を倒すだけだ」

 

 アメジオにとってもこの展開は悪くない。ジルとコニアが地下通路からここに駆け付けるまでにはまだ多少の時間がかかる。

 

 彼らが来るまでアメジオはジンたちが逃げないように足止めをしなくてはいけない立場だ。だが、ジンとフリードを両方同時に相手にするのは余りにも分が悪い。ここでフリードを倒す事が出来ればアメジオはジンの相手に集中する事ができ任務の成功率も大きく上昇する。

 

「ふっ……でも、ここはちょっと場所が悪いな」

 

 このままここでバトルすれば塔の内部にいるジンたちにも被害が出るかもしれない。そう考えたフリードはその場から勢いよく走り出し、屋上から飛び降りた。

 

「なにっ!?」

 

 その姿に思わず、アメジオも驚愕するがフリードはモンスターボールからリザードンを出し、その背中に跨ると塔の下の渡り廊下の屋根へと降り立つ。

 

「さぁ、ここまで来いよ!今回は俺が相手だ!」

 

 挑発を受けたアメジオはアーマーガアに指示を出し、フリードに続く形で屋根へと着地させる。そのままアーマーガアの背から降りボールの中に戻すとフリードとリザードンを鋭い目つきに睨みつける。

 

「アメジオ、お前とのバトルはセキエイ学園以来だったな」

「フリード……悪いがお前になど興味はない。さっさと終わらせて次に進むだけだ」

「おいおい!もう俺に勝った気でいるのかよ。流石に皮算用が過ぎるんじゃねぇか?」

「ならば現実にするだけだ。行け!」

 

 アメジオはモンスターボールを取り出し宙へと投げた。

 

「バァァァァァァン!」

 

 そこから現れたのは、鎧をまとった怪獣を彷彿とさせる風貌が特徴のよろいポケモンのバンギラスだ。バンギラスが現れたのと同時に砂嵐が巻き起こり、屋根全体を包み込んでいく。

 

「バンギラス……厄介だな」

 

 相性だけで言えば圧倒的にリザードンが不利、しかも特性『すなおこし』により視界は狭まり、継続的にダメージまで追う事となる。

 

「……一筋縄じゃ行かないってか」

 

 先程、ソウブレイズやアーマーガアを見た時から感じ取っていたがアメジオのポケモンたちは以前とは比べ物にならない程に強くなっている。目の前のバンギラスも同様だ。油断すれば負ける。フリードは素直にその事実を認め、気合を入れなおした。

 

「行くぞ!リザードン!『かえんほうしゃ』!」

「『ストーンエッジ』!」

 

 リザードンは口から『かえんほうしゃ』を発射し攻撃を仕掛ける。それに対し、バンギラスは屋根を叩きつけるとそこから多数の尖った岩を出現させ、迫りくる炎を防ぐ。『すなあらし』の影響もあり、弱まった『かえんほうしゃ』は岩を突破する事無くかき消されてしまった。

 

「バンギラス!岩を尻尾で打ち付けろ!」

 

 バンギラスはその場で勢いよく尻尾を振ると目の前にあった岩を破壊する。その破片の大量の尖った小さな岩はそのままリザードンに向かっていく。

 

「『ドラゴンクロー』で撃ち落とせ!」

 

 リザードンは両腕の爪を巨大化させ迫りくる岩の破片を切り裂こうとする。しかし、全てを撃ち落とすことは難しく足や翼にいくつかの破片が命中した。

 

「っ!?リザードン!避けろ!」

「遅い!」

 

 『すなあらし』の影響でただでさえ視界が悪い中、岩の破片を切り裂いた際に砂煙が舞い起こり気づかなかった様だが、岩の破片を放つと同時にバンギラスもリザードンに向かって走り出していた。急接近したバンギラスはリザードンの両腕を掴み動きを封じる。

 

「『かみくだく』!」

 

 バンギラスは動きを封じたリザードンの首に鋭く尖った牙を突き立てるとリザードンの悲痛な叫び声が響き渡る。

 

「リザードン!?」

 

 両腕を封じられ首に噛みつかれた以上、『ドラゴンクロー』の様に両腕を使う技や『かえんほうしゃ』の様に口から出す類の技は使えない。

 

 だが、リザードンにはまだ攻撃の道が残されている。

 

「リザードン!『エアスラッシュ』!」

 

 リザードンは翼を白く光らせ羽ばたかせると、三日月型の風の刃を乱射する。至近距離にいたバンギラスは当然、避ける事が出来ずに直撃し、そのダメージからリザードンの首から牙を放してしまった。

 

「『かえんほうしゃ』!」

 

 首が解放されたことで狙いを定める事が出来る。リザードンは真っすぐバンギラスを捉えると『かえんほうしゃ』を放つ。効果は今一つとは言えこの至近距離での攻撃は効いたようでバンギラスはリザードンから両腕を外し体の前で交差させ炎を耐える。

 

 バンギラスから完全に解放されたリザードンは『かえんほうしゃ』を放ちながら後ろにゆっくりと後退し距離を取った。

 

「やるじゃねぇか。初めて会った時とはまるで別人だな」

 

 フリードにとってそれは紛れもなく本心の言葉だ。初めてバトルしたころのアメジオであればフリードの勝利は揺るがなかった筈だが、今では相性の差があるとはいえここまでの勝負をされてしまっている。もう、アメジオの強さを認めないわけにはいかなかった。

 

(だが、このままだとまずいな……)

 

 なんとか脱出には成功したが、リザードンはそれなりのダメージを受けてしまった。また、『すなあらし』の影響もあり、この先もダメージを受ける事は確定している。このまま持久戦となれば勝利はバンギラスに流れてしまう。そうなる前に速やかに勝負にカタをつける必要があった。

 

「リザードン!可能性を超えろ!」

 

 フリードはここで切り札を出す決意を決め、テラスタルオーブを取り出す。テラスタルオーブにエネルギーが集中するとリザードンの頭上目掛けて投げつける。テラスタルオーブはリザードンの真上まで来るとエネルギーを解放し無数の結晶がリザードンを包み込む。

 

「リザァァァァァァ!」

 

 結晶が砕けるとその中から体を結晶化し、頭上には不気味な笑みを浮かべる悪魔の顔を模した様な王冠が飾られたリザードンが姿を現す。

 

「あくタイプのテラスタルか……」

「行くぞ!リザードン!『テラバースト』!」

 

 リザードンの頭上のテラスタルジュエルが砕け、口から赤黒い竜巻状のエネルギーを発射する。その技は今までに見せたどの技よりも強大で効果は今一つであってもかなりのダメージになる事が見込める程だ。

 

「……『ストーンエッジ』!」

 

 バンギラスは屋根を叩きつけ、初手と同じく『ストーンエッジ』により複数の岩を屋根から発生させると『テラバースト』から自身の防御へと活用した。

 

 だが……

 

「無駄だ!その程度じゃ、この技は防げない!」

 

 リザードンの渾身の『テラバースト』は『ストーンエッジ』で生み出された岩を次々に破壊しバンギラスへと迫りくる。しかし、アメジオの顔には焦りが見られない。口では強がっているが、アメジオのこの態度にフリードは不安を感じ始める。

 

「こちらも完全に防げるなどとは思っていない……威力を弱める事さえできれば十分だ」

 

 『ストーンエッジ』、『すなあらし』、それらは着実に『テラバースト』の威力を下げる役割を果たした。それでもまだ強大な威力を有してはいたが、対処不可能な大技から対処可能な技にまで威力が落ちている。

 

「バンギラス!恐れず進め!『ギガインパクト』!」

「なにっ!?」

 

 バンギラスは紫色のオーラを纏い、持てる力の全てを結集すると『テラバースト』に向かって突撃する。己の意地と勝利をかけて放ったリザードンの『テラバースト』とバンギラスの『ギガインパクト』は屋根の中央で激しくぶつかり合う。

 

 ぶつかり合った時間は実際には数秒の事ではあったが、対峙しているリザードンとバンギラスにはそれよりも長く数十秒ぶつかり合っているようにも感じられた。

 

 激しい勝負の末、打ち勝ったのは……

 

「バァァァァァァァァァァァン!」

 

 力強い雄叫びと共にバンギラスは『テラバースト』を打ち破り、リザードンに向け突撃する。リザードンはそれを回避する事が出来ず、バンギラスの突撃を受けそのまま塔の外壁に吹き飛ばされる。

 

「リザードン!?」

 

 塔の外壁まで飛ばされたリザードンだが、片膝を突きながらなんとか立ち上がろうとする様子を見せる。戦闘不能になっていない事に安堵したが、これ以上の戦闘継続は難しく、ここからの逆転はそれ以上に厳しいと言わざる得ない。

 

(まさか、アメジオがここまで強く……)

 

 フリードはアメジオが強くなったことにも驚いたが、それよりも驚いたのが勝利の為になりふり構わないその姿勢だ。初めて会った時のアメジオはプライドが高く付け入る隙も多かったが、今のアメジオにはあの時の様な姿は見られない。

 

「さて、どうするかな……」

 

 『ギガインパクト』使用後、バンギラスは少しの間、動く事は出来ない。それまでの間に作戦を立てねば敗北は確定してしまう。フリードは懸命に頭の中で逆転の一手を探し続けた。

 

 

 

***

 

 

 

「2人共!無事か?」

 

 バンギラスの『ギガインパクト』の影響で塔の内部にいたジンたちは強い衝撃に襲われていた。ジンはリコを支え近くにあった煉瓦に捕まり事なきを得たが、このまま戦闘が続けば塔の崩壊も近い。

 

「う、うん。でも、リザードンが……」

「ホゲ……」

 

 塔の中からリザードンとバンギラスのバトルを見ていたロイとホゲータは今にも消えそうな声を出す。ホゲータにとっては憧れの存在が今にも敗北しそうなのだ。そうなっても仕方がないだろう。

 

(……まずいな)

 

 ジンはこれまでの人生の多くをポケモンとポケモンバトルに費やしてきた。その上、同じ船に乗る仲間としてリザードンの強さや使える技は把握している。だからこそ、ここまでの戦況を見れば嫌でも分かってしまう。

 

(残念だが、このバトル……フリードの負けだ)

 

 少なくともここから逆転する手はジンには思いつかない。恐らくはテラスタルと『テラバースト』がフリードにとっての切り札であった筈だ。それが破られた以上、フリードたちには次の攻撃がないと考えるのが自然だ。

 

「見つけたぞ!」

 

 バトルに夢中になっていると塔の下からジルとサイドンが螺旋階段を登って来ている事に全員が気づく。

 

「こんな時に……」

「急いで上に!」

「いや、駄目だ。外に出るぞ」

「む、無茶だよ!」

「この塔、既に崩壊寸前だ。上まで逃げてバトルにでもなったら全員、生き埋めになるぞ」

 

 ジンは窓の外に向けモンスターボールを投げる。中から現れたボーマンダは塔に近づくとこちらに背を向け乗りやすい体勢になってくれる。

 

「2人とも乗れ!」

「う、うん!」

「分かった!」

 

 ジンに続き、リコとロイもボーマンダに跨る。3人を乗せたボーマンダはそのまま飛び立ちジルたちが追いつく前に塔を離れ始める。

 

「ジン、どうするの?」

「迎えが来るのを待つつもりだったが、予定変更だ。フリードとダイアナさんを拾って、一旦、この場所から離れるぞ」

 

 流石に5人もボーマンダに乗る事は難しい。しかし、今ならばリザードンは辛うじて空を飛ぶ事が可能だ。傷を負っている所を悪くは感じるがリザードンにフリードを乗せて飛んでもらい、その間にジンがアメジオたちの相手をすれば恐らくは逃げ切れる。

 

(その為にも、まずはフリードだ!)

 

 ジンとしては一騎打ちのバトルに介入するようなことはしたくはない。しかし、ここでリザードンを失うのは戦力的にも逃走時の足という意味でも避ける必要がある。そう考え、ボーマンダにフリードたちのいる屋根まで向かうように指示を出そうとする。

 

「……なんだ?」

「ね、ねぇ、なんか寒くない?」

「どうなってるの?」

 

 ボーマンダに指示を出そうとした瞬間、辺り一帯の気温が一気に低下していくのをジンだけでなくリコとロイも感じていた。しかも、それだけではない。

 

「これは……雪?」

 

 ガラル地方は全体的に寒冷地ではあるが、いくら何でもこんな突然、雪が降り始めるのはあまりにもおかしい。自然現象ではないのは明らかだ。

 

(……という事はポケモンの仕業か!)

 

「みーーーーーつけた!」

 

 声のした方に視線を向けるとそこにはオニゴーリの上に仁王立ちしたピンクのツインテール少女、エクスプローラーズの幹部サンゴが頬を少し赤らめながらジンの事をうっとりと見つめていた。

 

「……どちら様かな?」

「ふふふっ……初めまして。サンゴでーす!サンゴ、ずっとジン君に会いたかったんだぁ……だからさぁ、サンゴとあ・そ・ぼ♪」

 





今回はアメジオとフリードのバトルでした。結果は完全には出ませんでしたが、アメジオの勝利です。

アニメだとフリードに負けてから、なりふり構わず強くなろうとする描写がありましたが、こっちでは早い段階でジンに負けてますからね。その辺の差が出たんだと思います。

☆9
伊藤綾佑さん、ゾンビ急行さん

☆10
you...さん

高評価ありがとうございます。

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