またしてもお待たせしてすいませんでした。
アニメ新シーズン始まりましたね。リコは相変わらず可愛いけど、OPのアン、ネモ、ボタンそしてサンゴも可愛い。ドットは妹枠みたいな感じで固定ですが、私の中で浮気性が目覚め始めてます。
「よし、これで最後だ……ウインディ!行くよ!」
ライジングボルテッカーズの面々がそれぞれ敵とバトルする中、ジンたちと分かれ1人別行動を取っていたダイアナは自室に保管していたルシアスの手記や古文書など重要な荷物を回収すると部屋を後にしウインディに跨る。
「早く合流してなくては……」
こうしている間にもジンたちが戦い続けている。激しいバトルが続いているのは城内にいても伝わってくる。直ぐにでも合流しようと行動を起こすダイアナだが、それは予想外の形で阻止される。
「探しましたよ。ダイアナ……」
ダイアナたちの前の影から突如、1体のポケモンが姿を現しダイアナたちの進路を塞ぎにかかる。そのポケモンの正体はヨノワールだ。そして、その背後から1人の老紳士、ヨノワールのトレーナーでありエクスプローラーズの幹部、ハンベルが現れる。
「残念だが、お目当てのペンダントはなくなった。諦めな」
「えぇ、長き眠りから目覚めたと聞きました……あのポケモンは我々が迎えます」
「さっきの奴らから聞いたよ。あんた達、エクスプローラーズなんだって?」
「おや?話していませんでしたか?」
敢えて惚ける様なその物言いにウインディとダイアナは静かに激情を滲ませ、ハンベルを睨みつける。しかし、ハンベルは動じる様子を一切、見せない。
「気に入らないね。どうして私たちを狙う?エクスプローラーズはルシアスの仲間だったんじゃないのかい?」
「ほぉ……そこまでご理解していただけているのなら話は早い」
ジンが知ればとても興味を惹かれそうな会話をする2人だが、両者共に話し合いが通用しないと理解した様で一触即発、お互いのポケモンも今すぐにでも技が繰り出される雰囲気が両者を包み込む。
「っ!ウインディ!」
しかし、その瞬間、突如として城が小刻みに揺れ始めダイアナの背後の城壁が一部破壊され通路全体を砂埃が包み込む。これをチャンスと見たダイアナはウインディに指示を出し、その場から離脱する事に成功する。
「やれやれ……仕方のない人達ですね。少しはこちらの事も考えて行動して欲しいものだ」
追撃を仕掛けるべく行動を起こそうとするハンベル、しかし、その時、彼の持つスマホロトムに着信が入った。かけてきた相手を確認するとハンベルは動きを止め、その場に留まる……いや、留まらざるを得ない様だ。
「……ギベオン様?」
***
「ねぇ……あ・そ・ぼ♪」
突如、オニゴーリに乗り現れた少女、サンゴは頬を赤く染めながらジンを真っすぐに見つめ……というよりもジン以外が全く目に映っていない様子で話しかけてくる。
(な、なんなのあの子……)
リコはサンゴという少女がジンに対し、ただならぬ感情を抱いている事は彼女の態度や仕草から直ぐに気づいた。無論、ジンがこの程度の事で揺らぐなどとは思っていなかったが、その心中は穏やかではない。
(このタイミング……この娘もエクスプローラーズのメンバーだよな。しかも結構、強い)
しかし、ジンはリコやサンゴのそんな様子に気づく様子もなく淡々とオニゴーリを観察する。ジルとコニアのポケモンたちよりも数段強いのは間違いない。その事から、恐らくは幹部クラスであろうと推測する。
(オニゴーリとボーマンダの相性は最悪……突破は出来るかもしれないが、ちょっと賭けになるな……)
もしもボーマンダに乗っているのがジンだけであれば迷うことなく実力行使で突破する道を選ぶだろう。しかし、今はリコとロイを後ろに乗せている。現状において、自慢の機動力が落ちるのは言うまでもなく、今後の展開を予測した上で飛行能力の要でもあるボーマンダへの負担も考慮すると、無茶をさせるのは得策ではなかった。
「ジン君?」
「あ~……また今度じゃあ駄目かな?」
「だめ♪」
「……だよな」
ジンはサンゴの背後、渡り廊下の屋根にいるフリードたちに視線を向ける。
もたもたしている間にフリードとアメジオのバトルは既に再開されている。バンギラスが『ギガインパクト』の反動から立ち直る前にリザードンは何とか動き出せたようで、傷ついた体に鞭を打ち飛び立つと空中から『かえんほうしゃ』や『エアスラッシュ』を放ちながら遠距離攻撃を行っていた。どうやら、逆転の糸口を探す為にヒットアンドアウェイに作戦を切り替えたらしい。
(あの分なら暫くは持つか……)
逆転の手があるようにも見えないが、あの戦法であれば少なくとも時間を稼ぐことは出来る。ジンがすべきことはその時間を如何に有効に使うのかを考える事だ。
(少し危険だが、突破を試みるか?……いや、駄目だ。そうなったら、アメジオと部下の2人だけでなくサンゴにも追撃を仕掛けられる。そうなったら流石に逃げ切れないし、空中じゃリコたちを守り切れない)
サンゴの登場により状況は変化しつつある。更にこの場では確認できないが、サンゴ以外の仲間が増援として現れるのは時間の問題であり、敵側の視点で考えるとジンであればそんな隙を見逃す筈もない。仮に増援が以前に交戦したスピネル程度の実力であれば、目の前のサンゴと纏めて返り討ちにすることは造作もないが、それはあくまでも“ジン単独”の場合である。ジンの冷徹な思考がリコとロイの存在がウィークポイントであると告げるが、それをジンの心は黙殺した。
「……仕方ない。ボーマンダ、降りてくれ」
熟慮の末にジンはボーマンダに下降するように指示を出す。ボーマンダはそれに従い、地面に降りる。
「ジン……」
「どうすればいいの?」
ジンと共にボーマンダの背から降りたリコとロイはそう問いかける。ジンはボーマンダをボールに戻すとオニゴーリと共に降りてきたサンゴを警戒しながら答えた。
「俺は……彼女の相手をする」
「あはっ♪そうじゃないと!」
ジンが自分とバトルをしてくれる。それを聞いただけサンゴのテンションは最高潮にまで上昇している様だ。
「…………」
リコはジンの判断に不満気な様子を見せるが、こういった場面でのジンの判断が誤りであった事は彼女の知る限りない為、敢えて口にはしない様だ。
「悪いんだが、2人はあっちを頼むよ」
ジンが指を指した方向、塔の登り口からジルとコニアが傍らには彼らの相棒のサイドンとゴルダックを連れ姿を現す。ニャオハとホゲータは咄嗟にリコたちの彼らの間に入り込み、戦闘に入る準備をする。
「……サンゴ様」
「あ?あんた達、アメジオぼっちゃんの付き人じゃん」
「は、はい。あの……我々は?」
「サンゴは今からジン君とデートなんだから、トサキントの糞同士そっちの邪魔なジャリガキたちの相手でもしててよ」
「トサキントの糞!?ジャリガキ!?」
「デート!?デートって言った!?」
「間違ってもサンゴたちのデートの邪魔でもしたら、鬼ギレだかんね~」
「りょ、了解しました!サイドン!『ロックブラスト』!」
「ゴルダック!『みずのはどう』!」
「っ!ニャオハ!『マジカルリーフ』!」
「ホゲータ!『じだんだ』!」
ロイとリコはそれぞれサンゴの言葉に気になるポイントがあったようだが、サイドンとゴルダックの攻撃が迫り、思考を無理やりバトルへと切り替え迎撃に移り始めた。ニャオハはゴルダックにホゲータはサイドンに対し、それぞれ効果抜群の技を放った結果、見事に迎撃に成功する。
(……実力にそれ程の差はないみたいだな。これなら、少しの間は大丈夫だ)
「ねぇ?もういい?」
オニゴーリの上から降りたサンゴは今か今かと待ち詫びながらジンの事を見つめる。
「その前に質問してもいいかな?」
「うん!いいよ!ジン君からの質問だったら何でも答えちゃう!」
「……さっき、ずっと俺に会いたかったと言ったな。どこで俺の事を?」
「スピネルの報告書!そこでジン君の事を知って、その時からサンゴ、ジン君にずっと夢中なんだ!」
(スピネルめ……面倒なことをしてくれたな……)
サンゴはポケットに手を入れるとそこから一枚のカードを取り出しジンに見せる。
「これがその証拠!サンゴ、ジン君のファンクラブ一桁ナンバーの会員なんだよ!」
「ファンクラブ…………あぁ、あれか?」
ジンは記憶を遡り、ようやくファンクラブの存在を思い出した。
サイユウ大会優勝後、ポケモンリーグの職員から設立を提案された公式のファンクラブだ。最初は面倒だと思っていたが、詳しく聞くと設立から運営まで殆どをリーグ職員が請け負ってくれている為、ジンは特に苦労したこともなく、しかも、ファンクラブが存続する限り、毎月ポケモンリーグからファンクラブの大きさに合わせて給金まで貰えるという美味しいシステムだった。
ジンのした事と言えば、「お互い合意の上でファンクラブの会員同士でバトルし勝利すればより上位のナンバーを手に入れることができる」というシステムを提案した事だけだ。
(いつか面白い相手とバトルできるかも程度の気持ちで作ったシステムだから成功と言えば成功だけど、まさかこんな事になるとは……)
「質問はもう終わり?」
「あぁ、もういい……時間も惜しい事だし、そろそろ始めるか!」
ジンはポケットからモンスターボールを取り出すと宙に投げる。
「ゴドォォ!」
そこから現れたのはボスゴドラだ。ジンの持つポケモンの中でオニゴーリに対して最も相性のいいポケモンの1体と呼べるだろう。
「ボスゴドラ!『ストーンエッジ』!」
ボスゴドラは体の周りに尖った石を多数出現させるとそれをオニゴーリに向け放つ。『ストーンエッジ』は真っすぐオニゴーリに向けて突き進むが、オニゴーリはその場から動く気配を示さない。
「オニゴーリ!あれやるよ!『アイススピナー』!」
オニゴーリは真下に薄い氷を纏うとその場でクルクルと回転し始める。するとその回転により『ストーンエッジ』は受け流され、地面に落とされてしまう。
「なにっ!?」
『ストーンエッジ』を軽く受け流されたことに対する驚愕はあった。だが、それ以上にジンを驚愕させたのはその方法についてだ。
「どう?ハッサムの『つるぎのまい』やボーマンダの『りゅうのまい』の受け流しをサンゴなりに真似してみたんだ。サンゴもなかなかやるっしょ?」
「……はは。まいったね」
ファンと自称するのは伊達ではないらしく、ジンの戦法やバトルをとことん研究し、それだけなくそれらを自分のものにするためのトレーニングもしている事が今の動きからも読み取る事が出来る。
「今度はこっちの番!オニゴーリ!『ふぶき』!
オニゴーリは口に氷のエネルギーを集中させると、そのまま激しい雪風をボスゴドラに向けて吹き付ける。ボスゴドラは両腕を胸の前でクロスさせガードの体勢を取ると『ふぶき』を正面から受け止める。暫くして『ふぶき』が止むとボスゴドラが姿を現す。多少のダメージはあったが、戦闘継続には支障は見られない。
「おっと……」
ボスゴドラには問題はないが、地面はその限りではない。今の『ふぶき』の影響でボスゴドラを中心に半径数メートルは完全に凍り付いてしまった様だ。
「どんどん行くよ!『アイススピナー』!」
その凍り付いた地面の上をオニゴーリは回転しながら進みボスゴドラの背後に回るとそのまま突撃してくる。
「次!」
ボスゴドラの背を攻撃したオニゴーリは直ぐにその場から離れると今度は真横に回り込み右腕に狙いを定め突撃を繰り返す。
(……どうするかな?)
地面が凍り付いたままでは、足を滑らせるためボスゴドラの特性を生かした反動技は使いにくい。それならば、『じしん』などの技で氷を破壊すれば済むのだが、如何せんリコたちとの距離が近すぎる。もしも、今の状況でボスゴドラの『じしん』を使えば、リコたちや城全体への影響があまりにも大きい事が懸念される。それ程までにジンのボスゴドラのパワーは凄まじいが、現時点においてはそれが逆に仇になってしまっていた。
(それなら……)
どうやら、サンゴはこの『アイススピナー』でじわじわとダメージを与えるつもりらしい。この手の戦法にはトレーナーによって一定のパターンがある事が多い。それを見極め、攻め込んできたタイミングで捕らえカウンターに強烈な一撃を入れる。その為にも、ジンはサンゴとオニゴーリの一挙手一投足に注目し長期戦も覚悟し始めた。
***
「サイドン!『すなあらし』だ!」
ホゲータと対峙していたサイドンは両腕を大きく広げると、突如、バトルしていたポケモンたちを包み込む程の大きな『すなあらし』を発生させる。
「『かえんほうしゃ』!」
ホゲータは負けじと『かえんほうしゃ』を放つが、『すなあらし』によって視界も悪くあらぬ方向に『かえんほうしゃ』を放ってしまい、サイドンには当たらない。
「ニャオハ!『マジカルリーフ』いっぱい!」
「ゴルダック!『サイコキネシス』!」
ニャオハは大量の葉を作り出しゴルダックに覆う様に放つ。それに対し、ゴルダックは強い念力を送り迫り来る『マジカルリーフ』を操り直撃を回避する。
「この2人……」
「……強くなってる」
ジルとコニア、両者ともに以前、バトルした事のある相手だ。相手が以前までのままであればリコたちが圧倒できたはずなのだが、その頃とはもはや比べ物にならないほどに強くなっている。
「当たり前だ!俺達はアメジオ様との地獄の特訓に耐え抜いたんだぞ!」
「えぇ!以前までと同じだなんて思わないで!」
ジルとコニアは声高らかにそう宣言するが、どこか哀愁を漂わせている。その姿を見たロイは、この2人は自分と同じような境遇なのだと察し、思わず同情的な視線を送ってしまう。
「ロイ!気持ちは少しだけ分かるけど、バトルに集中して!早く終わらせてジンと合流するよ!」
「……う、うん」
リコはリコでジンがサンゴとデート……バトルをしているのが気に入らない様で早く蹴りをつける様にと急かしてくる。なんだか途轍もなく複雑な立場に立ってしまったとロイが思い始めると、突然、城の中から大きな物音と共に地鳴りが響き渡る。
「な、なにっ!?」
「あ、あれ見て!」
城へと続く入り口から2体のポケモンが姿を現す。そのポケモンはこの城に住み着いた野生のギモーとサッチムシだ。2体ともかなり体力を消耗している様で体の一部についていた白い塊は彼らが倒れるのと同時に体全体を覆うように広がっていく。
「あれは……『しおづけ』?」
「という事はオニキス様か!」
リコたちの知らないオニキスという人物、ジルが様付けをしている事から幹部クラスであるという事はリコとロイも直ぐに察する事が出来た。この状況で敵が増えるのはかなりまずい。そう判断し、次の攻撃に移ろうとした瞬間、城の塔が大きく揺れ始める。
「っ!?フリード!」
先程から続くリザードンとバンギラスのバトルでダメージを受け過ぎた事や城内で大暴れする者の影響で塔に限界が来たようだ。塔は渡り廊下の屋根にいたフリードとアメジオの元に降り注ぎ始める。
「リザードン!」
「アーマーガア!」
アメジオはバンギラスをボールに戻すと直ぐ様に別のボールからアーマーガアを出し飛び移る。フリードも傷ついたリザードンに何とか乗る事に成功し、無事にその場から離脱することに成功した。
「よ、よかった~」
「う、うん……でも何が起こってるの?」
フリードたちが無事だったことに喜ぶリコとロイだったが、突然、リコたちの背後の城壁が破壊され砂煙と共に大柄の男性、オニキスと彼の相棒のキョジオーンが姿を現した。
「そこを動くな。子供たち」
「……ロイ」
「うん。分かってる。こいつすっごい強い……」
キョジオーンを見た瞬間、リコとロイはこのポケモンの強さは現状、自分たちよりも上だと直感的に理解した。しかし、ジンのポケモンたちや六英雄、そしてアメジオのバンギラスを見た時ほどの脅威性は感じない。リコとロイが連携すれば少なくとも時間稼ぎは出来るという印象だ。
だが、それはあくまでもキョジオーン1体のみを相手にする場合の話だ。そこにジルとコニアまで加わってしまえばいよいよ勝ち目はなくなってしまう。
(……どうすれば)
***
(まずいな……)
サンゴやオニゴーリとのバトルに集中しながらもジンはしっかりとリコたちの戦況は見えていた。ジンの判断はリコたちと同じもので現状のままではまずいと考えを一致させていた。
「あーあ、真面目くん来ちゃった。折角のジン君とのデートだったのに~」
(……その単語、控えて欲しいんだけどな)
デートと言う単語が出るたびにリコがジト目でこちらを見ているのをジンは感じ取っていた。リコたちを守るためにも機嫌を損ねない為にも、もはや手段を選んでいる場合ではない。もう少し耐えればサンゴとオニゴーリの動きの癖を捉えられそうだが、例え多少、強引であろうとも早々に勝負に付けるしかないと考え始めたその瞬間、天空から雷がリコとロイの傍に落ちる。
「キャップ!?」
その雷から現れたのはキャプテンピカチュウことキャップだ。キャップはかぶっていた帽子を投げ捨てると拳に電撃を纏い『かみなりパンチ』で最初にゴルダックを殴り飛ばすと、それを受け止めようとしたサイドンごと城壁に飛ばしてしまう。
「見て!ブレイブアサギ号だ!」
キャップが降ってきた上空を見上げれば、そこにはブレイブアサギ号がこの古城に近づいてきていた。するとキャップに続くように船からメタグロスがリコたちの傍に降り立つ。
『みんな!聞こえてるか?待たせて悪い。早く船に乗ってくれ!』
スマホロトムにインストールされたライジングボルテッカーズ専用アプリを通して、ジン、リコ、ロイ、フリードに一斉に通信が入る。
「ありがとう!メタグロス!」
「ホゲータ!乗って!」
リコとロイはニャオハとホゲータを抱えるとメタグロスの上に乗り込む。現状、戦闘可能なキョジオーンが2人の動きを止めようとするがキャップがその行動を阻み、再び『かみなりパンチ』をお見舞いしようとする。
「『ワイドガード』!」
キョジオーンは迫りくるキャップを前に両手を前に突き出し、目の前にオレンジと薄黄色のハニカム状バリアを張り防御し、キャップはその反動で空中に投げ出される。
「狙い打て!『しおづけ』!」
キョジオーンはキャップに狙いを定めると突き出した手の先に白い光球を形成し、それを大量の塩として噴射する。キャップは『かげぶんしん』で複数体の分身体をだすと『しおづけ』を回避し、リザードンに飛び移る。
「キャップ!『ボルテッカー』!」
フリードの指示を受けリザードンから飛び降りたキャップは城壁を駆け抜け勢いをつけると電撃を体に纏い『ボルテッカー』で突撃する。
「なっ!?」
『ボルテッカー』を正面から受けたキョジオーンは大きく吹き飛ばされボスゴドラとオニゴーリの横を通り抜け反対側の城壁へと激突する。
「はぁ!?なにやってんの!?」
まさかピカチュウに此処までいいようにやられるとは思っていなかったのだろう。サンゴは思わず、オニキスとキョジオーンに視線を向けボスゴドラから一瞬だけとはいえ目を離してしまう。
(今だ!)
リコたちがメタグロスに乗りこの場を離れ、キャップもフリードが回収し空中にいる以上、もはや遠慮する必要はない。この状況でならボスゴドラは全力を出すことが可能だ。
「ボスゴドラ!『じしん』!」
ボスゴドラは片足を上げると力の限り地面を踏みつける。その瞬間、とてつもなく大きな地鳴りが響き地面を覆っていた氷を全て破壊し、その上にいたオニゴーリはバランスを崩して転倒してしまう。
「これで自由に動けるぞ!『すてみタックル』!」
足元の氷がなくなりボスゴドラは滑ることなく十全にその能力を発揮した。全速力で未だに転倒しているオニゴーリに渾身の『すてみタックル』をお見舞いし、オニゴーリはキョジオーンのもとまで吹き飛ばされる。
「オニゴーリ!?」
キョジオーンがクッションになったおかげか、オニゴーリはなんとか戦闘不能になる事は回避できたようだが、もはや戦闘継続はほぼ不可能な程のダメージを負ってしまっている。
「ふざけんなっ!折角、楽しみにしてたジン君との初めてのデートだったのに……!ピカチュウなんかのせいで台無しじゃん!?鬼ムカだっつうの!?」
サンゴはキャップの登場から流れが変わり、楽しみにしていたジンとのバトルがこんなにも早く終わってしまった事に大変ご立腹な様子だ。その場で感情を一切隠す様子もなく地団駄を踏み始める。
「いい加減にして!」
サンゴの言動をメタグロスの上から見ていたリコは遂に我慢できなくなったのか大声を上げサンゴを睨みつける。
「あぁん!?黙ってろよ!ジャリガキ!」
「黙らない!さっきから聞いてればデートデートって……!ジンはあなたとデートなんかしません!だって、ジンは……私の恋人なんだから!」
「…………………………………………………………はぁ?」
ジンは自分の恋人だとリコが宣言すると、サンゴは言葉の意味を理解するために長い沈黙を迎えた後、聞いている者たちが恐ろしくなる程に無機質な声色で呟くと、ゆっくりと不安そうな顔をジンの方に向ける。言葉にこそ出ていないが本当なのかどうか視線で問いかけていた。
「……本当だ」
正直、少し怖かったがリコの見ているこの場で嘘をつくことも出来ず、ジンは正直にそう答える。真実を知らされたサンゴは不安そうな様子から一転、顔を真っ赤にするほどに怒り狂い始める。
「あ、ああ……あ~~~~~~~~っ!!ふざけんなっ!ジン君に会えるのすっごい楽しみにしてたのに……!! 鬼ムカ超えて鬼ギレだっつうの!もういい!全部ぶっ飛ばす!オニゴーリ!やっちゃえ!」
目を潤ませながら叫ぶサンゴの指示に従いオニゴーリは前進し、サンゴとジンの間に入り込む。それと同時にサンゴは後方に向かってジャンプしその場を離れた。
(まさかっ!?)
サンゴのぶっ飛ばすという宣言、そしてサンゴが突然、距離を取り始めた事から彼女がオニゴーリに何を指示するつもりなのかジンは咄嗟に理解した。
「やめろ!サンゴ!」
仲間のオニキスが慌てた様子で止めに入ろうとするが、怒り狂ったサンゴはその言葉自体が耳にまで届いていない様で止まらない。
「オニゴーリ!『じばく』!」
「『てっぺき』!」
オニゴーリは両目を限界まで開き爆発を引き起こそうとする。ボスゴドラは『てっぺき』にて防御力を上げながら守りの構えを取り自身とジンを守るために盾となろうとした。
(悪いな……)
ボスゴドラならば耐えきれるという自信と信頼はある。しかし、それなりのダメージは覚悟しなくてはならない。自分を守る為に盾として利用することにジンは僅かに罪悪感を抱いた。その時、ジンのポケットのモンスターボールから1体のポケモンがボスゴドラの前に飛び出した。
「なっ!?ダークライ!?」
オニゴーリを中心にした爆発が迫りくるが、ボールから飛び出したダークライは両手を前に突き出すと緑色のオーラを出し『まもる』を発動させボスゴドラとジンを包み込む。ダークライによりジンたちは『じばく』のダメージを一切、受けずに生還する事に成功する。
「……助かったよ。ダークライ、ボスゴドラもお疲れ」
爆炎が中庭全体を包む中、ジンはダークライとボスゴドラを労いお礼を告げるとモンスターボールに戻す。そのままジンはサンゴの方に視線を向ける。そこには腰を抜かしたように座り込むサンゴと『じばく』により戦闘不能になったオニゴーリが倒れていた。
「…………」
ジンは無言でサンゴに向かって足を進める。その様子を見たサンゴはジンが自分に対して激しく激怒しているのではないかと感じ取った。
「な、なにっ!?く、来るなよっ!?」
オニゴーリが倒れ、サンゴを守るものは今誰もいない。無言な上に無表情で歩いてくるジンに恐怖を覚えたのかサンゴは逃げ出そうとするが、まるで「動くな」と命じられているかの様に腰が抜けたまま動くことが出来なかった。サンゴの直ぐ傍にまで到着したジンは片膝を突き、サンゴと目線を合わせる。
「『じばく』を指示するトレーナーがいるとはな……あれは自分のポケモンを強制的に戦闘不能にする最低の技だ。そんな技を指示するトレーナーを俺は絶対に許すことができない!」
声を荒げることなく静かな憤怒を滲ませた声色で呟くと、ジンは右拳を上げサンゴの顔面に向ける。咄嗟に殴られると思ったサンゴは恐怖心から目をつぶってしまう。
「………………え?」
「それ」
「ふぎゃっ!?」
いつまで経っても痛みが来ないことに疑問を感じたサンゴは恐る恐る目を開ける。それと同時にジンは額の前で思い切り中指を弾いた。所謂、デコピンだ。思っていたほどのダメージではなかったであろうが、予想外の攻撃を受けたサンゴは悲鳴を上げると額を押さえ涙目でジンを見る。
「なんてな……そんな面倒くさいポケモンだいすきクラブの会員みたいな事は言わないよ。『じばく』だってポケモンの技だ。追い詰められて負けそうな展開なら引き分けを狙いに行くのも立派な戦術だよ。ただ、使うタイミングにはもう少し気を配った方がいい。例えば……」
「……うっさい」
「ん?」
「うっさい!うっさい!うっさい!なんでアドバイスなんかするんだよっ!恋人がいるならそっちの方に行けよ!」
サンゴはジンの話を遮ると子供の様に……実際、子供なのだが癇癪を起こし寝転んでじたばたし始める。詳しい年齢は分からないが自分と歳の近い少女のその行動を見てジンは思わずクスクスと笑い始めてしまう。
「な、何が可笑しいんだよっ!?」
「い、いや……ははっ……悪い……んんっ……もう大丈夫だ」
ジンは必死になりながら笑いを抑えるとサンゴの先ほどの質問に答え始める。
「アドバイスする理由は単純だ。君はもっと強くなれるから」
「……はぁ?」
「俺と同年代でそこまで強いトレーナーは少ない。さっきのバトルも君がもっと冷静に『じばく』を指示していたら、結果はもう少し違ったものだったかもしれない」
(まぁ、意図的ではないにしてもダークライを出してしまった俺が言うのも変だけどな……)
公式でのバトルでないから問題にはならなかったが、これがルールありの公式戦であればダークライが勝手に出た時点でジンの反則負けだ。今回は助かったから不問にするが、ダークライには後でジンが個人的に話をする必要があるだろう。
(ちょっと過保護なんだよな……)
ダークライは、その能力から長い年月を1人で生きてきた孤独なポケモンだ。それが今では、自分以外の誰かと共に過ごす事ができる環境にいる。まだその環境に慣れてこそいないが、ダークライはそんな環境を与えてくれたジンに深い感謝をしており、ジンを守る為に過剰な行動に出てしまう様だ。
「……意味わかんない。敵にアドバイスなんて送ってさ!また襲って来るかもしれないのに!」
「それは望むところだな。楽しみが増える」
サンゴの言うようにジンの行動は正しくはないかもしれない。だが、それ以上にジンにはサンゴ程の才能溢れるトレーナーがいれば、よりよくなる様にアドバイスしてしまうのを抑える事が出来ない性分であった。その根底にあるのは、強敵を超える事でどこまでも自分を高めようとするジンのストイックな気質故であるが、そんな彼の内心をサンゴが知る由もない。
「…………」
何度も見返した映像からジンがバトル好きだという印象はあったが、まさかここまでとは思っていなかったようでサンゴは返す言葉も出ない。
「それから、君にアドバイスを送る理由はもう1つある」
「…………ふぇ?」
どうせまたバトル的な理由かお説教なのだろうと考えたサンゴはそっぽを向き聞き流そうとするが、突如、自分の頭にジンの手が置かれゆっくり撫でられた事で気の抜けた様な声を出すと慌ててジンの方を見つめなおした。
「君みたいな可愛い子にファンになってもらった上に好意まで抱いてもらって嬉しくない男はいないからな。ささやかなお礼だよ」
「~~~~~~!」
まるで悪戯好きの子供の様な笑顔を見せるジン、そんなジンの顔を見たサンゴは怒りかそれとも羞恥からか顔を赤くしながら声にもならない声を上げる。
「おっと……そろそろ時間切れだな」
「あっ……」
辺りを見回すと『じばく』によって発生した粉塵が徐々に収まり始めていた。そろそろ撤収を視野に入れようと考えたジンはサンゴから手を放す。その際、名残惜しむ様な声がサンゴから聞こえたが、その事は気にせずモンスターボールからボーマンダを出すとその背に跨る。
「リコには内緒だけど、ポケモンバトルっていう名前のデートだったら、いつでも大歓迎だ」
「…………」
「それじゃあ、また会おう……サンゴ」
「っ!?」
ジンはそう言い残すとボーマンダと共にブレイブアサギ号に向けて飛び立っていく。サンゴはその様子を顔を赤くしながら呆然と見つめている事しかできなかった。
「到着っと」
ブレイブアサギ号はかなり近くまで飛んできていた為、ボーマンダは僅か数十秒でウィングデッキに到着する。そこには先に脱出していたリコ達がジンの事を待ち受けていた。ちなみに、リコに不穏な様子は見られない。どうやら先程までのサンゴとの会話している場面は爆煙の影響で見られずに済んでいた様だ。
「ダイアナさんは?」
「それがまだいないの!?」
「なにっ!?じゃあ、まだ城に?」
ジンは城全体を見下ろせるようにウイングデッキの端へと向かい、地上を見下ろす。すると鋭い鳴き声と共に城の中庭からダイアナを背に乗せたウインディが空を飛んでいるのではないかと錯覚するほどの大ジャンプをしウイングデッキに乗り込んできた。
「おばあちゃん!」
「すっごい!?」
「流石だな……」
そのあまりにもダイナミックな登場の仕方に全員が驚き、同時に称賛の言葉を贈る。ジンもまた女性でありながら、ここまでのかっこよさを見せつけてくるダイアナに尊敬の念を抱かざる得なかった
(…………孫にしてくれないかな)
***
ジンたちがブレイブアサギ号に乗り移り、撤退を開始する中、『じばく』により半壊した古城にてサンゴとオニキス、そして彼らから少し離れた場所ではアメジオたちも去っていく飛行船を見つめていた。その場にいる全員、『じばく』による被害を多少なりとも受けており、もはや追跡は困難な様子だ。
「逃げられたか……」
「…………」
「しかし、あの少年、ダークライまで持っていたのか。スピネルの情報もアメジオの報告も当てにできんな」
スピネルから与えられた情報にもアメジオからの報告にもダークライに関する記述は一切なかった。スピネルに関しては情報を共有した時にはダークライをゲットしてはいなかった為、仕方がない。
しかし、アメジオは違う。アメジオにとってジンは自分の獲物だ。それ故、他者に万が一でも取られないようにと報告を敢えてしなかった以上、責めを受けても文句は言えないだろう。
「まぁ、いい。ダークライを持っているという情報を得ただけでもバトルをした価値はあった」
「…………」
「だが、やり過ぎた。今後はもっと冷静な判断をして……おい!聞いているのか?サンゴ!」
サンゴは顔をやや赤く呆然としながら去り行く船を一心に見つめている。声が届いていないのかオニキスに対して返事をする素振りすら見せない。
「…………あ?なに?」
「だから!……いや、もういい」
サンゴの様子から今は何を言っても意味がないと思ったのだろう。オニキスは話を終わらせ、スマホロトムを取り出し迎えを呼ぶ手配に入り始める。
「…………ねぇ?」
「なんだ?迎えだったら、今、手配しているから少し待て」
「なんでもありが、エクスプローラーズだよね?だったら、人から恋人を奪うのもあり?」
「……なにを言っている?」
「やっぱなんでもなーい。ていうか許可なんかいいや。もう決めたから」
サンゴはそう言うとその場から立ち上がる。何事に対しても遊び半分で己の事を律せず行動するサンゴからは考えられない程、真面目で何か強い決意をした顔つきだった。その姿に思わず、オニキスは驚愕を隠せない。
「サンゴ……お前……」
「ところで……迎えまだ?」
「…………少し、待っていろ」
真面目な様子も一瞬だけ、あっという間にいつものサンゴの様子に戻ってしまった。オニキスにはサンゴの変化はよく理解できず、先程のサンゴの様子も自分の勘違いだと思い込んでしまい、迎えを呼ぶ手配を再開し始める。
この時のサンゴの強い決意は今後、サンゴだけでなくジン達の物語に大きな変化をもたらすことになる。だが、それはまだ誰も知らない。
今回の話しは正に私の浮気性が現れた結果だと思っています。でも、後悔はしないと決めました!もしかしたら、その内、タグにハーレムが追加されるかもしれないです。
☆9
ヤミラさん
☆10
來楼羽さん
高評価ありがとうございます。
作品の要望などあれば気軽にメッセージを送ってください