この間、電車に乗っていたら目の前にいた人がスマホで私の小説を読んでいるのを発見して、思わず「私が作者です!」って言いだしたくなりました
この旅が始まってからというもの、ポケモンにしろトレーナーにしろ刺激的な出会いが増えた様にジンは感じている。リコという最愛の人との出会い、新たな仲間をゲットし、六英雄と言う特殊なポケモンとバトルする機会にも恵まれた。
「カンビッ!」
そして、今、また新しい強敵が目の前に立ち塞がっている。いねむりポケモンのカビゴン。決して珍しいポケモンという訳ではない。しかし、そのポテンシャルの高さは先のホゲータとのバトルで証明済みだ。油断してかかっていい相手ではない。
「さぁ、楽しませてくれ……」
ジンはそう宣言すると構えていたモンスターボールを宙に投げる。雄叫びと共に1体のポケモンが姿を現した。
「ジュッカァァァァァ!」
ジンが選んだのは相棒のジュカインだ。正直、相性だけで言うならば『アームハンマー』や『あくび』を無効にできるコノヨザルを選出する事も考えたが、ジンはこのバトルである事を試みる為に、敢えてジュカインを選んだ。
(だが、まずはこいつがどんなバトルをするのか見てみたいな……)
カビゴンはホゲータとのバトルで『あくび』で眠らせるという作戦を取っていた。単なる面倒くさがりなのかそれとも見た目に反して頭がいいのか、このバトルを通して見極めたいと考えた為だ。
「カビゴン、先手は譲ってやる」
「カビィ?」
「さっきのバトルで少なからずダメージを負ってるだろう?出来るだけフェアな条件で始めたいんでな。遠慮せずにかかってこい」
カビゴンは怪訝な表情を見せるが、ジンが指示を出さずジュカインも動き出さない事からこの申し出を信じた様で、数秒の間、戦略を練る素振りを見せる。
(さぁ、どう来る?)
やがて作戦が固まった様でカビゴンは鋭い視線をジュカインに向け始める。ジュカインはどんな攻撃が来ようと速やかに対処できる様に警戒するが、カビゴンはその場から動かずに両腕で自身の大きなお腹を叩き始めた。
「……いきなり『はらだいこ』か」
『はらだいこ』は自身の体力を最大値の半分削り、攻撃を6段階上げる効果を持っている。ただでさえ強力だったカビゴンの攻撃は今では先程までとは比べ物にならない程に上がっている筈だ。
(初手を譲ると言った途端、これか……いい性格してるよ……)
だが、そうする気持ちもジンには理解できてしまう。通常のバトルで『はらだいこ』を使用するとなると、無防備な状態になってしまう。その為、使うとなればそれなりの準備が必要だが、今回はジンからそのチャンスを提供してしまったのだ。これでは『はらだいこ』を使われても文句は言えない。
「カンビィィ!」
体力と引き換えに攻撃値を上げたカビゴンは真っすぐにジュカインへ向け右拳を構えながら走り出す。近づくにつれカビゴンの拳には冷気が集まり始めた。
(『れいとうパンチ』か……)
ジュカインにとって効果抜群となる氷タイプの技だ。まともにくらえば大ダメージになる事は間違いないが、あくまでも直撃した場合の話である。
「『みきり』!」
ジュカインはカビゴンの『れいとうパンチ』を紙一重のタイミングで首を横に動かし回避する。カビゴンの攻撃は威力がある分、大振りであり一度回避されると大きな隙を生んでしまう。そこは正に絶好の反撃のチャンスとなった。
「『リーフブレード』で切り裂け!」
ジュカインは両腕の葉を緑色に光らせるとカビゴンの腹に目掛けて連続で切り裂く。ただでさえ減っている体力を削られ、カビゴンは苦しそうな声を上げながらも空振りした腕を引き寄せジュカインを捕らえようとする。
「もう一度『みきり』!」
しかし、それを読んでいたジンは再び、『みきり』を指示する。捕まる寸前で回避に成功したジュカインは大きく後方にジャンプしカビゴンと距離を取った。
「『かげぶんしん』で囲め!」
ジュカインは『かげぶんしん』で5体に数を増やすとカビゴンを囲い込む様に陣形を取り始める。カビゴンは首を右往左往させながら警戒しているが、どれが本体なのかは見分けることが出来ていない様子だ。
「反撃の隙を与えるな!『タネマシンガン』!」
5体のジュカインが同時に口から『タネマシンガン』を発射する。当然、本体以外の分身体からの攻撃にはダメージはないが翻弄する事は可能だ。しかもジュカインは分身体も含め一定期間の間、攻撃をすると位置を入れ替えどれが本体なのか特定させれない様にしている。
「か、カビィィ……」
『タネマシンガン』の威力は然程強くはないが、こうも何度も命中すればダメージは蓄積していく。カビゴンは『まるくなる』で体を丸め防御の体勢を取り、最小限のダメージに抑えてはいるが、このままでは倒されるのは時間の問題だ。
「カンビィ……zzz……zzz……」
「えぇっ!?寝た!?」
「この状況で!?諦めたの!?」
「違う!眠って体力の回復をするつもりなんだよっ!」
『タネマシンガン』が襲い掛かる中、突然、目をつぶりいびきをかきながら寝てしまったカビゴンを見て離れた場所からバトルを見ていたリコとロイは驚愕するが、3人の中で最もポケモンについて知識のあるドットはカビゴンの真意に気が付いた様子だ。
「ジュカイン!接近して連続で『リーフブレード』だ!」
ジンも当然、その事に気づき速やかに攻撃の指示を出す。ジュカインは『タネマシンガン』を止めると、カビゴンに接近しようとする。しかし、それよりも早くカビゴンは目をつぶったまま上半身を起こし始めた。
「zzz……zzz……」
「『ねごと』か……一旦、離れろ!」
『ねごと』は眠っている間に覚えている技からランダムに1つ発動させる。その為、何が来るのか予想する事が難しい技だ。よく知るポケモンであれば、その動きからある程度の予想は建てられるが、流石にこの短期間ではカビゴンの癖を見極めるのは難しい。
「zzz……zzz……」
起き上がったカビゴンは腕を白く光らせ、『アームハンマー』で反撃に移る。咄嗟に距離を取った為、本体のジュカインは回避する事に成功したが、『かげぶんしん』の1体に攻撃が命中してしまい消されてしまう。
(『はらだいこ』で削った体力を『ねむる』で回復して『ねごと』でその隙を対応する。よくあるやり方だが、やられると嫌だな……)
既にカビゴンは体力を回復している。直に眠りの状態からも目覚めるだろう。しかも、『はらだいこ』により攻撃値は最大、これではホゲータとバトルする前よりも強化されてしまった。
(まぁ、いいさ。これでこっちもある程度、全力が出せる……)
カビゴンはそのまま『ねごと』によりランダムで『アームハンマー』や『かみくだく』などを引き当てると分身体を次々に攻撃していく。やがて本体のジュカイン以外の分身体全てを消し終えたカビゴンはその場で一旦、動きを止めると辺りをきょろきょろと見渡し始めた。
「……目が覚めたみたいだな」
目を覚ましたカビゴンはジュカインを発見すると、その場でジャンプし大地を強く踏みつける。その際に発生した振動は大きな『じしん』となり周囲一帯を大きく揺らし始めた。
「飛べ!」
ジュカインは迫りくる『じしん』を前にその場からジャンプする事で回避する。それをチャンスと捉えたカビゴンは拳に冷気を纏い『れいとうパンチ』を準備するとジュカインの落下地点に向け走り出した。
この状況であれば、如何にジュカインでも回避する事は出来ないと考えた様だ。確かに空中にいては自慢のスピードで回避する事は難しい。『タネマシンガン』や『エナジーボール』の様な遠距離技で迎撃しようともパワー全開のカビゴンであれば撃ち落として攻撃を加えることは可能だ。
だが……
「甘いな!『くさむすび』!」
ジュカインの目が緑色に輝くとカビゴンの足元にあった草が突如、結ばれ輪を作り出す。カビゴンの足がその輪に引っ掛かりその場に転倒してしまった。ただでさえ、体重の重いカビゴンは転んだ際にかなりのダメージを受けてしまう。
「さてと……そろそろいいか」
カビゴンが『くさむすび』で転んだ事で時間的猶予が生まれた。その隙にジンはポケットに手を入れ一つのボールを取り出す。
「あれって……」
「テラスタルオーブだ!」
リコ達は特訓中にジンがテラスタルオーブを使う場面は何度か見たことがある。メガシンカと違いどんなポケモンにでもその力を与えてくれるテラスタルに彼らは強い憧れを抱いていた。その為か、ジンが今からなそうとしている事に対して強い興味を抱いた様だ。
「星々の如く輝け!『テラスタル』!」
ジンの構えたテラスタルオーブにエネルギーが収縮されると着地したばかりのジュカインの上に向かって投げつける。無数の結晶が包み込み、中から現れたジュカインは宝石の様に輝く体と頭上の冠には複数の花を生やした姿となって現れる。
「続けて『エナジーチャージ』!」
だが、それだけでは終わらない。テラスタルを終えたジュカインはそのまま『エナジーボール』を口元に生み出すとそのまま口の中に入れ飲み込む。すると宝石の様に輝いていたジュカインの体から眩い緑色のオーラが溢れ出し輝きを更に増していく。
「か、カンビィ?」
起き上がったカビゴンはジュカインの突然の変化に理解が追いついていない様子だ。先程まででも十分な脅威であったというのに今のジュカインは明らかにそれを超えている。驚愕を超え恐怖心が襲い掛かり始めるが、それを気力で抑え込み改めて『れいとうパンチ』を命中させようと走り始める。
「『リーフブレード』!」
『れいとうパンチ』で迫りくるカビゴンに対しジュカインは『リーフブレード』を構えると目にも止まらぬスピードで迎え撃ち斬りつける。
「……?……っ!?カッ……ビィッ……」
カビゴンは斬られた瞬間こそ何をされたのか気づかなかった様だが、数秒時間を置いてようやく斬りつけられた事に気づき悲痛な叫び声を上げると片膝を突いてしまう。
「か、カビィィィッ!」
カビゴンは力を振り絞り、立ち上がるとジュカインを睨みつけようとする。しかし、ジュカインは縦横無尽に高速で動き続けている為、その姿を捉える事さえも出来なかった。このままでは、何もすることが出来ずに敗北してしまう。そんな未来が着実に迫っていると判断したカビゴンは最後の攻撃に打って出る事を決意した。
「カッッッビィッ!」
カビゴンは残り少ない体力を振り絞り両足に力を込めると大きく飛び上がった。それはまるで『とびはねる』を使ったのではないかと錯覚する程の跳躍だ。
「なっ!?」
一般的なカビゴンよりも一回り大きいが故に、大凡でも“1t”に近い体重があるとは思えないその跳躍力にジンは思わず驚愕し、目を細めカビゴンの姿を追う。カビゴンは跳び上がった先で体を丸めると体全体を炎で纏うとジュカインのいる方に向けぶつかりに行こうとする。カビゴンが最後に選んだ技、『ヒートスタンプ』は体重が重ければ重い程、効果が強くなる技だ。ただでさえ通常よりも大きいカビゴンが使えば、ジュカインを一撃で葬るだけの威力になるだろう。
「仕方ない……ジュカイン!迎え撃つぞ!」
ジュカインであれば『ヒートスタンプ』を避ける事は容易い。しかし、カビゴンは高さと勢いを付ける事で多少の反動がある反面、威力を増している。仮に避けたとしても落下した時の余波が辺り一帯を襲う筈だ。そうなればジュカインもそしてバトルを見ているリコ達も無傷では済まないかもしれない。それならば、『テラスタル』+『エナジーチャージ』の状態のジュカインの最大威力を試す為にも敢えて勝負を受ける選択をした。
「ジュカイン!フルパワーで『テラバースト』!」
「ジュッカァァァァァァ!」
頭上のテラスタルジュエルが砕け、緑色の光線がジュカインの口から発射される。その光線は空中からまるで隕石の様に落下してくるカビゴンに命中する。互いにフルパワーで放った『ヒートスタンプ』と『テラバースト』は互角の打ち合いの末に大きな爆発を引き起こすとカビゴンの周辺を爆煙で包み込んでいく。その様子を固唾を飲んで見つめると煙の中から体中を黒焦げにしたカビゴンが落下してくる。
「行け!モンスターボール」
地面に落下したカビゴンは目をぐるぐる回し倒れていた。もはや立ち上がる事も出来ない。そう判断したジンはポケットから新たなモンスターボールを取り出すとカビゴンに向け投げる。赤い光と共にカビゴンを包みモンスターボールへと吸い込むと数回左右に揺れた後、カチリという音がなり動きを止める。
「よしっ……カビゴン、ゲットだ」
ジンは、ゲットしたばかりのカビゴンのボールを回収すると図鑑機能でカビゴンのデータを確認する。
「……思った通り、使えそうだな」
これで新たに耐久力のあるポケモンを手持ちに加えることが出来た。ジンのポケモン達は全体的に素早さが高い反面、防御や耐久面が低いポケモンが多かった為、このカビゴンは今後、貴重な戦力になるだろう。
(それにいいデータも取れた……)
『テラスタル』+『エナジーチャージ』、なかなか使い勝手がいいというのが素直な意見だ。『メガシンカ』+『エナジーチャージ』の爆発的な強化には数段劣るが、その代わりにとても安定して使用することが可能な様だ。
「ジュカ……」
ジュカインは疲れた様子ではあるが、もう一戦程度であればバトルが可能な様子である。威力はともかく使いやすさで言えば、こちらの方が優れていると言えるだろう。
(だが、『テラスタル』の状態では、『エナジーチャージ』をしても『夢想・樹海新生』が使えない。エネルギー不足、もしくは能力不足か?……どっちにしろ『メガシンカ』状態での『エナジーチャージ』は格上の相手にだけ切り札として使うべきかもな……)
通常の敵や同格の相手であれば『メガシンカ』や『テラスタル』+『エナジーチャージ』だけでも事足りる。体への負担が大きい『メガシンカ』+『エナジーチャージ』や『夢想・樹海新生』は本当の強敵と戦う時にのみ使用するべきだとジンは結論付けた。
「ジン!やったね!」
「……あぁ、ありがとう」
ジンが1人、考えを纏めていると背後からバトルを見守っていたリコが近づきジンの腕に抱き着いてくる。もはや仲間の前では照れもせず、抱き着いてくるリコの頭を軽く撫でながらジンも薄っすら笑顔を浮かべる。
「ねぇ!今度、カビゴンにリベンジさせてよ!」
リコに続く形でジンに近づいてきたロイはジンにそんなお願いをする。ジンに頼まれた為、あの場では引いたがロイにとってもあの敗北はかなり悔しかった様だ。ホゲータとカビゴンに実力差があった事は理解していたが、それでも納得するのは難しいのだろう。
「分かった。少し調整はするけど、出来るだけ近いうちにやれるようにするよ」
メインウエポンに特殊技が多いホゲータにとって、この特防の高いカビゴンはいいトレーニング相手になるだろう。
「……ところで、ゲットしたのはいいけどカビゴンの食事はどうするの?」
「食事って?」
「カビゴンは凄い食欲の持ち主で1日に400kgは食べないと気が済まないポケモンなんだ。しかもジンがゲットしたカビゴンは図鑑に記録されている個体よりも遥かに大きいから、確実にそれ以上は食べるだろうし。そんな量の食事、うちじゃ用意できないと思うけど……」
「「400kg!?」」
ドットからカビゴンの生態を聞き、リコとロイは驚愕する。現在、ブレイブアサギ号にある全ての食料を提供したとしてもカビゴンの1食分の食事量には届かない程の量を食べるというのだ。驚くのも無理はない。
「心配するな。それについては当てがある」
「……本当に?」
「あぁ、俺としてもモリーに怒られるのは嫌だしな」
ライジングボルテッカーズで財布を預かるのが彼女だ。ポケモンにも人にも基本的には優しい彼女だが、無駄遣いなどをすると割と本気で怒ってくる。今までに無駄遣いをしたフリード、マードック、ロイが何度も怒られており、その姿を見たジンは彼女にだけは逆らわないと心に決めていた。
「まぁ、その件は後にして木の実を持って帰ろう。時間をかけすぎた」
「あっ!そうだった!クラボの実は……」
ロイは慌ててクラボの実が溜めてあった場所を見ると、そこには複数のポケモンたちが集まっていた。
「バクゥ?」
「「「ホシー?」」」
「こ、こいつらさっきの!?」
「……意外と根性あるな」
そこにいたのは先程、カビゴンが現れるまでロイが相手をしていたヨクバリスとホシガリス達だ。彼らは集めたクラボの実を尻尾に包み込むと一目散にその場を離れ、森の中に逃げ込んでいく。
「ちょ、ちょっと~~!?」
ロイは慌てて手を伸ばすが、完全に手遅れだ。森はヨクバリス達のテリトリー、逃げ込まれてしまえば探すのは恐ろしく困難と言わざるを得ない。
(漁夫の利作戦か……俺が少し鈍ったのか、それともあいつらが上手いのか……どっちにしろやられたな)
カビゴンのバトルに集中していたとは言え、ここまで接近されて気づかない辺り、ジンも旅の感覚が抜けてしまっていたのかもしれない。それともあれだけ倒され脅してもなお、木の実を盗みに来たヨクバリス達を褒めるべきかは悩ましい所ではあるが、一本取られたのは確かだ。
「に、逃げられた……」
「……まぁ、仕方ないな」
「わ、私たちも探すの手伝うよ!」
「……まぁ、ちょっとだけなら」
最初に目を付けたクラボの実は全てカビゴンとヨクバリス達に持っていかれてしまった為、ジンたちは改めてクラボの実を探す為にワイルドエリア内を探索し始めるのだった。
そんな訳で新たにカビゴンをゲットです!
サトシのカビゴンが泳げるの対し、ジンのカビゴンは跳躍力が並外れて高いという設定にしてみました。それにより『ヒートスタンプ』、『ヘビーボンバー』、『のしかかり』などの威力が上昇しています。
活動報告の「主人公設定+所有ポケモン」に『エナジーチャージ』の説明を少しだけ追加しておきました。分かりにくいと思った方はそちらも見てください