ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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今回は15000字超えとちょっと長めです。


テペン

 

 黒いレックウザの目撃情報を頼りに、ガラル鉱山、ワイルドエリアを巡ったジン達であったが、残念ながら全て空振りに終わってしまった。

 

 ドットは引き続きネット関連から黒いレックウザの情報を探している。その間、時間が出来たジンたちはダイアナからの提案を受け、とある街へと訪れていた。

 

「わぁっ!なんか色々、売ってる!」

「露店街か。なかなか賑やかだな」

 

 今回、ジン・リコ・ロイ・フリードの4人が訪れたのは骨董品の店が多く並んでいる露店街だ。なんでもダイアナの古い知り合いが、この街で骨董品店を経営しているらしく、その人であれば古のモンスターボールについて何か情報を掴めるかもしれないと考えた為だ。

 

「リコ、店の場所は聞いてるのか?」

「うん。この辺りの筈なんだけど……」

 

 リコはダイアナから渡されていたメモを見ながら目的の店を探す。因みにダイアナは今回は不参加だ。正直、居てもらった方が話が早く済むのだが、以前、その店で買った古文書の解読に夢中になっているらしい。

 

「あっ!あれだよ!目印のランプラー!」

 

 リコの指さした先には一件の店があり、そこにはランプポケモンのランプラーがぶら下がっていた。目印というだけあり、とても分かりやすい。店の前まで移動するとそこには様々な商品が置かれており、その奥にはハンチング帽をかぶりヨレヨレの服を着た老人が座っている。

 

「あの、すみません……」

「……ん?おっ!お客さん!よく来たね!見てってよ!良い商品をいっぱい揃えてますから!」

「あっ……いえ、私達……」

「いい時に来たね。お客さん。滅多に出ない掘り出し物が入荷した所なんだよ」

 

 ジン達の事を完全にお客だと勘違いした男性は接客モードへと移行してしまう。彼は店の奥の箱を開くと一本の小瓶を差し出してくる。

 

「これがあれば、どんなバトルも勝利間違いなし!そんな逸品だ!」

「本当に!?」

 

 ロイは目を輝かせながら小瓶を見つめるが、ジンとフリードは疑わしそうな表情となる。

 

「そうともさ。これは超強力眠り粉だ!バトルで使うとその場にいる全員が眠っちまうって言う恐ろしいアイテムなのさ」

「……でも、自分も眠っちゃったらバトルにならないんじゃ?」

「だな」

 

(いや、使い方によっては面白いかも……)

 

 確かにリコの言うように自分も眠ってしまえばどう頑張っても相打ちにしか持ち込めない。だが、相手が野生のポケモンでゲットを目的にするのであれば有用性もある。また、混乱状態になり暴走行為をしているポケモンを眠らせる事で止める事なども可能であり、上手く使えればそれなりに役に立つ可能性がある。

 

(まぁ、ちゃんと効果があればだけどな……)

 

 目の前にいる男性、どうにも胡散臭い。次に出した商品は2万年前のスマホロトムの化石などという明らかなインチキ商品で、そこはかとなく詐欺師の様な匂いを感じさせる。

 

「あの!テペンさんですよね?私達、ダイアナおばあちゃんから聞いてここに来ました」

 

 このままでは話が進まないと感じたリコは目の前の男性、テペンの話を遮り、自分がダイアナの孫である事を明かす。

 

「えっ!?だ、ダイアナ!?」

「はい。孫のリコです」

 

 何故かダイアナの名前を聞いた途端、一瞬だけおどおどした様子を見せたテペンだが、直ぐに元の調子に戻っていく。

 

「そうかい。そうかい。ダイアナさんね。よく知ってるよ。昔は一緒に冒険したもんさ!」

「えっ?おばあちゃんとですか?」

「そうとも!今でもよく覚えてるよ。森の中の遺跡の探索中にアリアドスの糸に巻かれて一週間、逆さづりにされた時は、流石にもう駄目かと思ったよ」

「えっ!?一週間も!?」

「頭に血が上りそう……」

「実際、上るぞ。俺も経験あるけど意外ときついんだよ」

「おっ?坊ちゃんも経験あるんですかい?」

「……坊ちゃんはよして欲しいんですが……まぁ、一度だけ。俺の時はケムッソ達の糸でしたけど」

 

 旅に出たばかりの頃、トウカの森でケムッソや進化系のマユルドやカラサリスに囲まれ『いとをはく』で逆さづりにされた経験があった。その時は隠し持っていたナイフで脱出する事が出来たが、ケムッソ達が眠りにつくまでの数時間でもかなりしんどい思いだった事を思い出す。

 

「今となってはいい思い出ですね……」

 

 昔を懐かしむ様に過去の体験談を話しているとジン達の背後にいたフリードが小声でジンに話しかけてくる。

 

「なぁ?さっきから、色々と怪しくないか?」

「……商品は確かに怪しいな。でも、冒険の話に嘘はないと思う」

「間違いないのか?」

「多分な……もう少し、様子を見よう」

 

 テペンが怪しい事などジンも承知の上だ。しかし、商品の説明をする時は胡散臭いと感じたが、冒険の話をしている時のテペンは嘘をついていない様にジンには感じられた。ダイアナの紹介でもあるし、もう少し、様子を見てから判断しても遅くはない。ジンはそう考えた様だ。

 

「……それで?何かお探し物かい?」

「僕たち、こういうボールを探しるんです。何か知りませんか?」

 

 ロイはリュックの中からレックウザの入っていた古のモンスターボールを取り出すとテペンに見せる。

 

「っ!?こ、こいつはっ!?」

「何か知ってるんですか!?」

「えっ……あぁいや~どうだったかな?ちょっとよく見せてくれ。そのリュックごとね」

「え?あ、はい」

 

 ロイからリュックごと、古のモンスターボールを預かったテペンは素早く背を向けるとくまなく調べ始めるが、少しするとリュックをロイに返してくる。

 

「いや~悪いね。やっぱり見た事ない。俺の勘違いだったみたいだ」

「……そうですか」

「そんなにめげるなって。そう簡単に答えに辿り着いたら面白くないだろう?」

「まぁ……それもそっか」

「うん。あの、お邪魔しました」

「あぁ、どうもね。ダイアナさんにもよろしく伝えておいて」

「はい。失礼します」

 

 情報が得られない以上、ここに留まっても仕方がない。そう考えたリコたちは、店を離れて船への帰路に就こうと歩き始める。

 

 ただ、1人を除いて……

 

「……ジン?」

 

 リコ達が歩き始める中、ジンだけはその場に残り、テペンに対して強い視線を向け動かずにいた。

 

「ま、まだ何か用でも?」

「……悪くない。なかなかいい腕だ。ただ、相手が悪かったですね」

「な、何の事かな?」

「白を切りますか?ロイ!リュックを開けて見ろ」

「う、うん」

「あっ!?ちょっ!?」

 

 ジンに言われロイは自分のリュックを開ける。するとその中にはモンスターボールを思わせる模様のついた何かが入っていた。

 

「うわっ!?」

「ケタッ!?」

 

 ロイの声に驚いたのか、それはリュックから飛び出してくる。中から出てきたのはキノコの様な姿に傘の部分がモンスターボール状なのが特徴のポケモン、タマゲタケだ。タマゲタケはリュックから飛び出すと真っすぐにテペンへと向かって走り出す。

 

「な、なに?……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!古のモンスターボールがない!?なんで!?」

 

 タマゲタケが出てきたリュックの中を改めて見たロイがそう叫び出す。彼にとっての宝物である古のモンスターボールがなくなっていたのだ。

 

「あなたですよね。テペンさん?」

「うぐっ!?」

「あの時、こっそり入れ替えたんでしょう?」

「な、なんで分かった?」

「説明は難しいですね。ただ、犯罪の予兆がするとね。直感で分かるんですよ」

 

 ただ、今回に関して言えばテペンが余りにも胡散臭いオーラを放っていた為、その一挙手一投足に警戒をしていたのも大きいかもしれない。もしもテペンがもう少し、態度を改めていればダイアナの紹介という事で気が緩み、見逃していた可能性は否定できないだろう。

 

「テペンさん。あなたはダイアナさんの知り合いだし、あまり大事にはしたくない。今、返してくれるなら大目に見ても構いませんよ」

「……仕方ねぇか」

 

 観念したのかポケットから古のモンスターボールを取り出したテペンに向かってロイはゆっくり歩み始める。

 

「……どうしてこんな事を?」

「それは…………」

「?」

「言う訳ねーだろ!ばぁぁぁか!お前たち!出てこい!」

 

 テペンが叫んだ瞬間、店の目印であったランプラーと更に内部から3体のポケモンが飛び出してくる。出てきたポケモンはヒトツキ、ドーミラー、そしてその進化形のドータクンだ。4体のポケモンとロイのリュックから逃げ出したタマゲタケはテペンを守る様に陣形を取る。

 

「へぇ……」

 

 目の前に現れたポケモンたちは、レベルはそこまで高くはない様だが、洗練された動きである事が一目で分かる。予想外の伏兵たちにジンは思わず感心してしまう。

 

(……感心してる場合じゃないか)

 

 テペンに投降の意思がない以上、バトルは免れない。そう覚悟を決めたジンはポケットからボールを取り出し宙に投げる。

 

「ライボー!」

 

 ボールから出たライボルトはジンとテペンの間に入ると目の前の5体のポケモン達を鋭い視線で睨みつける。

 

「くっ!?」

 

 ライボルトに睨みつけられた瞬間、テペンは自分の長年の勘がこのポケモンとバトルしてはいけないと訴えかけていた。しかし、それならばバトルしなければいいだけの事だ。そう判断したテペンの行動は誰よりも早かった。

 

「ランプラー!『くろいきり』!」

 

 テペンの前に出たランプラーは『くろいきり』を発生させ、周囲一帯を霧で包み込んで行く。

 

(そう来たか……)

 

 『くろいきり』や『えんまく』などを使用し、視界を奪う事でその場から脱する。昔から悪事を働くポケモンやトレーナーが使う手法だ。しかし、昔からあるだけでに対処法も確立されてはいる。飛行タイプの様に翼を持つポケモンが思い切り吹き飛ばせばどうとでもなるのだが……

 

(……ここで使うのはリスクが高いか)

 

 ここは露店街だ。テペンの店だけでなく他にも多くの店が並んでいる。そんな場所で強い風が舞い起これば周囲の店を巻き込むのは明らかだ。自分達の都合の為に無関係の人々を巻き込むのに抵抗を覚えたジンは動きが鈍ってしまう。

 

「リザードン!霧を吹き飛ばせ!」

「なっ!?ちょっと待て!」

 

 しかし、ジンの考えなど露知らずフリードはリザードンをボールから出すと霧を払う様に指示を出す。リザードンはそれに従い、翼を羽ばたかせ強い風を送り霧を消し飛ばす……周囲にあった他の店の商品と共に。

 

「い、いない!?」

 

 更に最悪なことにその場には既にテペンとそのポケモン達の姿はない。どうやら霧を発生させたのと同時に速やかにその場を離れた様だ。

 

「ふむ……商品は全て捨てたか。しかもあの短時間で見えない距離まで移動も可能……判断力は良いとしてもフットワークが軽い。ダイアナさんと言い、最近のお年寄りは活動的だな」

「感心してる場合じゃないよ!早く追いかけないと!」

「それは賛成だが……行かせてくれるかな?」

 

 ジンが辺りを見回すとリコ達もそれに続く。そこには周囲で店を開いていた人々が集まって来ており、怒りの籠った視線をジン達に向けていた。

 

「今のはあんた達の仕業か!」

「一体、どうしてくれるんだ!?」

「うちの店がメチャクチャじゃないか!」

「え?あっ……いや、それは……」

 

 フリードはこうなる事など予想もしていなかった様だ。その為、どうしたらいいのか即座に思いつかず困惑してしまっている。

 

(……ここで時間をかける訳には行かないな。仕方ない)

 

 ここで時間を使ってしまえば、あの一瞬でこの場から逃げ切ったテペンの事だ。追跡不可能な場所まで逃げしまう可能性は大いにある。そうなっては面倒だと考えたジンはこの場から脱する為の策に打って出る。

 

「全くだ!こんな場所であんな事をするなんて一体、なにを考えているですか!?」

「…………え?」

 

 突然、敬語で話し始めたジン。フリードだけでなくリコやロイ、そして周囲にいた人達も困惑し始める。

 

「き、君?この人の連れじゃないのか?」

「こんな人知りませんよ。俺達3人はこの店を知ってるって言うから道案内してもらっただけの他人です」

「お、おい……」

「それにあの人がリザードンをボールから出す所をこの目で見ました!」

「なっ!?」 

 

 ジンがビシッと効果音が出るかのように人差し指でフリードを指差す。その事で周囲は完全にジンの事を信じ、フリードにのみ憎悪が集中した様でジン・リコ・ロイの3人を除きフリードだけに視線を集め、徐々に包囲していく。

 

「えっと……その……」

「店を戻すまでここは通さねぇぞ!」

「さっさとしねぇか!」

 

 フリードが逃げ出さない様に店の人々が包囲網を狭めていくのを確認するとジンはリコとロイを連れその場から離れ、路地へと入り込んだ。

 

「よしっ!脱出完了だ」

「……い、いいのかな?」

「フリードの事、置いてきちゃったね……」

「いいんだよ。こんな場所で考えなしに技を使うからだ」

 

 少々、極端な考え方の様な気がしないでもないが、実際、店をメチャクチャにしたのはフリードのリザードンである以上、責任を取る必要はある。現状を考えれば、全員で残るよりもフリード達を犠牲にしてでもテペンの追跡を進めた方が遥かにいいだろう。

 

「ライボルト、古のモンスターボールの匂いを追えるか?」

「ライボ!」

 

 任せろ!とばかりに威勢のいい返事をするとライボルトは地面の匂いを嗅ぐ。するとライボルトは路地を飛びだし、走り始めた。

 

「追うぞ!」

 

 ジン達はライボルトに続き、路地を飛びだすとその後を付いて行く。ライボルトは街中をジンたちが付いてこられる程度のスピードを維持しながら走る。途中、果物などが多く売られる露店や博物館などを超えて大きな広場へと辿り着くとその入り口でライボルトは動きを止めた。

 

「ライ!ライボ!」

「ここか……急ぐぞ!」

「「うん!」」

 

 広場へと入るジン達、大きな街なだけあり広場の中も道が複数に分かれていたがライボルトの協力もあり、迷う事なく進む。暫く進んだ先には美しい花壇が広がっており、その中央にはテペンとそのポケモン達が揃っていた。

 

「ちっ!?小僧どもめ、追いつきやがったか!?」

「やっと見つけた!僕のボール返して!」

「悪いが、返すことは出来ないねぇ」

「テペンさん!どうしてこんなことするんですか!?おばあちゃんと一緒に冒険した仲っていうのも嘘なんですか!?」

「……さぁ、どうだったかな?」

「そのボールは大切な物なんです!返してください!」

「それがな……最近、たまたまこういうボールを高く買い取ってくれるって言う人が店に来てね。悪いんだが、譲ってくれないかい?」

 

(買い取ってくれる客……エクスプローラーズか?)

 

 エクスプローラーズの詳しい規模はジンは把握できていないが、それなりに資金力はあるのは間違いない。資金力のある大きな組織がダメ元でテペンの様な骨董品屋などの店を営業している者に話を持っていく。あり得ない事ではないだろう。

 

(いや、そう決めつけるのは早計か……)

 

 スピネルなどが行いそうな手ではあるが、このやり方は確実性に欠けている。今までの確実に目的を果たそうとするエクスプローラーズのやり方にそぐわない。もしかすれば古のモンスターボールを欲する第三の存在がいるのではないか。そんな疑問がジンの頭の中で思い浮かぶ。

 

「返してくれないならバトルで取り返す!」

「うん!」

 

 ジンが考えている間にも状況は変化し、ロイとリコはそれぞれホゲータとニャオハを出すとバトルの準備に入っていた。

 

「そうかい。なら仕方ないな。そっちの小僧が相手じゃないんだったら何も怖くなんかない。いくらでも相手してやるぜ」

 

 テペンとしてもジンではなく、ロイやリコが相手であれば恐れたりはしない。経験から来る観察眼がニャオハやホゲータであればどうにかなると判断し、更にはジンに手出しをさせない様にリコとロイの2人を挑発までし始める。

 

「ジン!私たちがやるから下がってて!」

「うん!僕たちだって強くなってるんだ!」

「……まぁ、いい。好きにしてみろ」

 

 まんまと挑発に乗ってしまったリコとロイ、その姿に思わずため息をつきそうになるがジンは敢えてその提案を承諾する。

 

 ポケモンのレベル的には恐らく互角、しかし、トレーナーの経験値は言うまでもなくテペンにあるだろう。リコやロイにとってジンは雲の上の存在だが、テペンは手を伸ばせば届く距離にいる相手だ。成長を確かめ、挑むには丁度いい相手とも言える。

 

「ホゲータ!『かえんほうしゃ』!」

 

 ホゲータは口から、相手のポケモン達に向け『かえんほうしゃ』を発射する。しかし、ランプラー達はそれを軽やかな動きで回避する。

 

「ニャオハ!ドーミラーに『でんこうせっか』!」

「『サイドチェンジ』!」

 

 『かえんほうしゃ』を回避したばかりのドーミラーにニャオハが急接近し、『でんこうせっか』をくらわせようとするが、その瞬間、ドーミラーとランプラーの位置が入れ替わり、ノーマル技である『でんこうせっか』はランプラーをすり抜けてしまう。

 

(……お見事)

 

 技を回避したばかりのポケモンを狙うというリコの狙いは悪くなかった。しかし、それ以上に『サイドチェンジ』などという滅多に使われないダブルバトル専門の技を使いこなすテペンの技術と判断をジンは称賛する。

 

「そのニャオハなかなか素早いな。ドータクン!『スピードスワップ』!」

 

 ドータクンの体とニャオハの体が同時に輝き始め、両者の体内からエネルギーの様な物が舞い上がると互いに入れ替わる様にドータクンとニャオハの体へと入っていく。

 

「ニャオハ!?大丈夫!?」

「ニャー!」

 

 リコはニャオハに何か異変が起こったのではないかと心配するが、ニャオハにダメージらしきものは見られない。差し当たって問題ないと判断したリコは改めてバトルに戻ろうとする。

 

「今度こそ!ホゲータ!『かえんほうしゃ』!」

「させるか!ドータクン!『あまごい』!」

 

 ホゲータが『かえんほうしゃ』を発射するよりも早くドータクンは両腕を広げ天に祈りをささげる。すると突然、雲行きが怪しくなり空から大量の雨が一時的に降り注ぎ始め、『かえんほうしゃ』を鎮火してしまう。

 

「嘘!?早い!?」

 

 見た目に反するドータクンの素早い動きにロイは困惑している様だ。鋼タイプのポケモンは総じて素早さの遅いポケモンが多い。ドータクンも決して例外という訳ではないのだが、先程、使った技がその答えでもある。

 

「だったら、ニャオハ!『マジカルリーフ』!」

「ランプラー!『ほのおのうず』!」

 

 ニャオハはお得意の『マジカルリーフ』を放つが『ほのおのうず』により放った葉は全て包み込まれ焼失してしまう。更に炎はニャオハに迫って来ていた。ニャオハは慌ててその場から逃げ出そうとするが……

 

「ニャオハ!急いで!」

 

 ニャオハ本来のスピードであれば容易く躱せた筈の攻撃だが、ニャオハは体を上手く動かす事が出来ない様でそのまま炎に包み込まれてしまう。

 

「ニャオハ!?」

「ど、どうして?」

「教えてやるよ。さっき、使った『スピードスワップ』って技はな、自分と相手の素早さを入れ替えるって効果があるのさ」

 

 これによりドータクンはニャオハとの素早さを入れ替えた。その為、ドータクンは見た目以上の、ニャオハと同等の素早さを手に入れている。

 

「それじゃあニャオハは……」

「……ニャ~」

 

 ニャオハは体がいつも以上に重く、上手く動けない理由をようやく理解する。普段、スピードを生かすバトルを得意とするニャオハにとってこれはとても大きいハンデだ。

 

「だったら!ホゲータ!もう一度『かえんほうしゃ』!」

「もう一度『あまごい』!」

 

 ホゲータが『かえんほうしゃ』を発射するよりも早く、素早さを上げたドータクンは両腕を広げ天に祈りを捧げる。その瞬間、雲行きが怪しくなり空から雨が降り始め『かえんほうしゃ』を鎮火してしまう。

 

「ニャオハ!『でんこうせっか』!」

「無駄だ!『サイドチェンジ』!」

 

 ニャオハは『あまごい』を続けるドータクンに向け『でんこうせっか』で突き進む。しかし、ドーミラーは『サイドチェンジ』で位置を入れ替え、ドータクンを守り抜く。

 

「ヒトツキ!『つじぎり』!」

 

 『でんこうせっか』を防がれ空中に浮かび上がったニャオハにヒトツキが迫り、そのまま一閃し斬り付ける。ニャオハはそのままホゲータの元へと吹き飛ばされた。

 

「つ、強い……」

 

(……まずいな。見誤ったか)

 

 リコやロイだけでなく、ジンもテペンの実力をどうやら見誤ってしまったらしい。数の利が向こうにあるとはいえ、ここまで一方的になるとは少々、予想外だ。

 

(今までにあった事のないタイプのバトルスタイル……2人には少し、やりにくい相手かもな)

 

 今までに2人がバトルしてきた相手の多くは直線的なバトルを好む者が多かった。しかし、テペンはその逆で変化技を多用し相手を思い通りに動かさない事に長けている様だ。トリッキーな戦術であるが故に使い手が少ない。慣れない内は対応しきれないだろう。

 

(経験値なんてものは今すぐどうにかできる物じゃない。この状況を打破するにはもう一手必要だ……)

 

「相手は4体!だったらこっちもだ!お願い!カイデン!」

 

 リコとロイの手持ちはニャオハとホゲータを除けばミブリムとカイデンのみだ。戦闘向きではないミブリムは出さないとすると当然、残る手札はカイデンのみ。この状況を乗り越える為には妥当な判断だろう。ロイはボールを力いっぱい空高くまで投げ飛ばした。

 

「『スパーク』!」

 

 空中でボールから出たカイデンは落下による風を利用し、電気をため込むと最高の威力の『スパーク』でドータクンへと突っ込んでいく。

 

「無駄だと言っているだろう!『サイドチェンジ』!」

 

 ドーミラーは再び、位置を入れ替えドータクンを守る事に成功する。しかし……

 

「……ド~」

「ドーミラー!?」

 

 塵も積もれば山となる。効果が今一つの『でんこうせっか』だけならばともかく最高威力の『スパーク』を受けた事で先にドーミラーの耐久力に限界が見えてきた様だ。

 

「ロイ!」

「うん!このチャンスは逃さない!カイデン『おいかぜ』!」

 

 カイデンは地面に降り立つと翼を力の限り羽ばたかせる。すると風向きが変わり始め、ニャオハ達にとって追い風となり始めた。これによりニャオハ達の素早さが大きく上昇した。

 

(上手くいったか……)

 

 以前から何度も『おいかぜ』の特訓は行っていた。最近になり、ようやく形にする事は出来たがそれでも2回に1回は失敗する技だ。バトルの実戦で使いこなせたのは僥倖と言えるだろう。

 

「ニャオハ!」

「ホゲータ!」

「「『かみつく』!」」

 

 ニャオハとホゲータは同時にその場を走り出す。途中、ランプラーやヒトツキが妨害しようとするが『おいかぜ』により素早さを上げた2体はそれをなんなく回避し、ドータクンに噛みつく事に成功する。

 

「ドタッ!?」

 

 流石に効果抜群の技を受けたドータクンは我慢できずに、『あまごい』を止めてしまう。それと同時に雨が止み再び、空には太陽が戻ってきた。

 

「そのまま『かえんほうしゃ』!」

 

 ホゲータはドータクンに噛みついたまま『かえんほうしゃ』を発射する。これでは避けることが出来ない上に相手のポケモン達はドータクンに攻撃が当たるかもしれない為、手助けが出来ない。一石二鳥な方法だ。

 

「ドッ!?ドタッ!?」

 

 ドータクンは堪らず、悲痛な叫び声を上げながら体からニャオハとホゲータを振り払おうとするが2体はなかなか離れない。

 

「ヒトツキ!『きんぞくおん』!」

 

 しかし、ここでもテペンの対応は早い。ヒトツキは鞘から抜け出し、眼を光らせつつ音波を発する。『きんぞくおん』の音波に耐え切れず、ニャオハとホゲータは『かみつく』を離してしまい、そのまま薙ぎ払われる。

 

(仕留めきれなかったか……だが、悪くない)

 

 欲を言えばあのままドータクンは倒しておきたかった。しかし、相手のサポートの要でもあるドーミラーは戦闘不能直前でドータクンもかなりのダメージだ。それに対しこちらはニャオハはそれなりにダメージを受けているが、ホゲータとカイデンはノーダメージ、ここからの展開次第では逆転もあり得る。

 

(さて、次はどうする……)

 

 両者のポケモン達は互いに睨み合い、相手の次の一手を待っている様だ。するとその間を一体のポケモンが歩いて行く。

 

「タゲタゲタゲタゲ」

 

 そのポケモンはバトルに参加せずにずっとテペンの傍にいたタマゲタケだ。タマゲタケはニャオハ達の傍を通り抜ける際に背後から青紫色の粉を噴出していく。その粉を嗅いだ瞬間、ニャオハ、ホゲータ、カイデンの3体はその場で眠りについてしまった。

 

「えっ!?」

「あれってさっきのタマゲタケ!しまった……すっかり忘れてた……って……」

 

 眠りについていたのはニャオハ達だけではない。先程、3体を眠りにつかせたタマゲタケまでもがその場で眠りについていた。よく見るとその近くには青色の小瓶が落ちている。

 

「あれは……」

「み、見たか!これがテペン様特製の草タイプにも効く『自家製超強力眠り粉』の威力だ!」

 

 どうやら今のは最初で店で紹介していた薬の効果だったらしい。ふれこみ通り、その場にいる全てのポケモンを眠りにつかせる効果がある様だ。

 

(これは驚いたな。本当だったのか……)

 

 確かにリコが指摘した様に自分も眠らせてしまうのは問題点だ。しかし、本来は草タイプのニャオハには効く事のない粉系で眠りにつかせてしまうのは見事と言わざる得ない。

 

「へへへっ……勝負あったな」

 

 少々、卑怯な手ではあるがテペンの言うように2人には既に戦闘可能なポケモンがいない。これ以上、バトルの継続は難しいだろう。

 

「あぁ、そうだな。ここからは俺が相手だ」

 

 そう、リコとロイには不可能だ。しかし、ここにはジンがいる。2人がバトルできない以上、ジンがバトルするのは普通の流れと言えるだろう。

 

「くっ……」

 

 テペンとしてもその事は当然、理解している。だが、バトルなどしなくても分かる。この強敵相手とバトルなど出来れば御免被りたい。そう考えたテペンは速やかに、ここからの脱出方法を考え始めた。

 

「そんな嫌そうな顔しないでくださいよ。傷つくな……じゃあ、ハンデを1つ。こっちはライボルト1体だけだ。こいつを倒せたら、あなたの事は見逃してやるよ」

「……なに?」

「先にバトルして疲弊してるみたいだしね。その位のハンデがなきゃ面白くない」

 

 テペンは咄嗟に頭の中でこの状況を計算する。ドータクンとドーミラーはダメージを受けているが戦闘は可能だ。仮にここで逃げたとしてもジン達は追いかけてくる。ここまであっという間に追いついかれたのだ。逃げても追いつかれるのは目に見えている。そうなれば最早、容赦はしないだろう。

 

 逆にここでライボルトを仕留めればジンは追ってこない。テペンも長く生き、多くの人と関わって来たがこの手のタイプは約束を守る人間だという事は理解している。多少、危険があってもバトルする事が得策だとテペンは判断した。

 

「いいだろう!やってやる。ヒトツキ!『つじぎり』!」

 

 先手必勝とばかりに攻め込んでくるヒトツキの一閃をライボルトは軽やかな動きで回避するとヒトツキに視線を合わせる。

 

「ライボルト!『かえんほうしゃ』!」

 

 ライボルトはそのまま口から『かえんほうしゃ』を発射し、ヒトツキを包み込もうとするがその瞬間、ヒトツキとランプラーの位置が入れ変わり、ランプラーが炎を受ける。

 

「おっと……ランプラーも『サイドチェンジ』が使えたのか」

「……まぁな。そう簡単にはやらせねぇよ」

「ふむ……だが、ダメージは通ってる。という事は特性は『ほのおのからだ』の方か」

 

 ホゲータの『かえんほうしゃ』を躱した時から予想はしていたが、どうやら『もらいび』ではないらしい。ダメージこそ少ないが無効にすることは出来ない様だ。

 

「ランプラー!『れんごく』!」

「こっちもやってみるか。『あまごい』!」

 

 ランプラーは激しい青色の炎を両腕に生み出すとライボルトに向けて放つ。しかし、ライボルトはその場で『あまごい』を発生させ、空に再び雨雲を生み出す。迫りくる『れんごく』は雨雲から降り注ぐ雨によりかき消されてしまった。

 

「な、なにっ!?」

「あなたのバトル、なかなか面白かったですよ。2人にもいい経験になった。だが、ここで終わらせてもらう『かみなり』!」

 

 空に発生した雨雲からテペンのポケモン達に回避不能の『かみなり』が降り注ぐ。一気に降り注いだ雷光から思わず目をつぶってしまったテペンがゆっくり目を開くとそこには体中に黒い火傷痕を作り倒れ込んだ自分のポケモン達が映りこんだ。

 

「こ、こりゃまずい……」

「どうします?ボールを返してくれるなら、キズぐすりをやってもいいですが?」

「うぐっ……わ、分かった」

 

 ジンが取引を持ち掛けるとテペンはそれを承諾する。テペンは古のモンスターボールをジンはキズぐすりをそれぞれポケットから取り出し交換した。

 

「ジン!ありがとう!」

「あぁ、もうなくすなよ」

「うん!」

 

 ジンは受け取った古のモンスターボールをロイへと返すとテペンに視線を向ける。受け取ったキズぐすりで簡単にではあるがポケモン達の治療を行ったテペンは逃げ切れないと判断した様でその場で正座し座りだした。

 

「さて、この人をどうするか?」

「へっ……煮るなり焼くなりに好きにしやがれってんだ」

「ならそうさせてもらおうか!」

「おばあちゃん!」

「だ、ダイアナ!?」

「あっ……フリードも」

 

 追い込まれた事で自棄になったテペンをどう対処するか悩んでいると先に答えた人物が現れる。声のした方へと視線を向けるとそこにはダイアナとそれに続くようにフリードが広場へと入ってくる。心なしか2人共怒りのオーラを隠しきれていない様子だ。

 

「フリード!無事でよかった!」

「…………」

「こんなに早く合流できるなんて、さっき地図を送っておいて正解だったよ」

「…………」

「しかし、ダイアナさんと一緒だなんて何かあったのか?」

「ジン、後で話がある」

「……はい」

 

 フリードの怒りについては、ジンも心当たりがあったので、そこは一旦置いておくとしてだ。問題なのはダイアナが怒っている理由についてだ。

 

「そ、そうだ。おばあちゃん、古文書の解読してたんじゃ?」

「あぁ、そうさ。最後まで読んでやっと気づいたよ!あんたに買わされたこの古文書が真っ赤な偽物だってね!」

 

 ダイアナは怒りのあまり持っていた偽物とされる古文書を地面に叩きつけた。それにより本が開かれるが、素人目にはとても偽物とは思えない程の出来だ。

 

「に、偽物なんて人聞きが悪いな。こいつは正真正銘の……」

「偽物じゃなきゃ『続きは動画で……』なんて書いてある訳ないだろう」

 

(そりゃ偽物だな……)

 

 偽物を売りつける事は当然許されない。しかし、逆に言えばベテラン冒険者のダイアナを最後まで読まなければ偽物だと判明しない程の古文書を作り上げたという事だ。良し悪しはともかくテペンの知識量については一定の評価を与えることが出来るだろう。

 

「昔馴染みの私によくもこんな物を売ってくれたね!ウインディ!こんがり焼いておしまい!」

「お、おばあちゃん!待って!いくらなんでもやりすぎ!?」

 

 ウィンディが口元に炎を集中させ始めるとリコは慌てて止めに入る。怒る気持ちは理解できるが、このままでは本当にやりかねない。そうなればテペンも軽い火傷では済まないだろう。そう考えたリコは慌ててダイアナを止めにかかる。

 

「……はぁ……ウインディやめな」

 

 リコが間に入った事でダイアナも少し冷静さを取り戻した様でウインディに攻撃を中止させる。

 

「全く。いつからそんな風になっちまったんだい?昔は発掘に情熱を燃やす冒険者だったじゃないか」

「え?」

「昔、遺跡の探検ではよく一緒になってね。アリアドスの糸に一週間、逆さづりになった時はもう駄目かと思ったもんさ……」

 

 それはくしくもジン達がテペンの店で最初に聞いた冒険の話と一緒の内容だった。最初から完全に疑っていたフリードやここまでの言動で評価を下げていたロイやリコもその事に驚いた様子を見せる。

 

「ふんっ……俺は元々、こんな男だよ。騙す盗むはお手のものだ。冒険なんかよりもよっぽど性に合ってるぜ」

「おや?そうかね?ちょっとごめんよ」

 

 ダイアナはその場から一歩前に出るとテペンの斜め上に浮いていたドーミラーを掴むと背中を向けさせ、それをテペンに向ける。そこには今よりも少し若く自信に満ち溢れた冒険者の頃のテペンと恐らくはランプラーが進化する前の頃のヒトモシが映し出された。

 

「ドーミラーは真実を映し出すという。どうだい?あんたの心は昔みたいに冒険者に戻りたいって言ってるんじゃないのかい?」

「……向いてないんだよ。いつも後悔するんだ。怖いし辛いし、臆病な俺には冒険なんて…‥」

 

 テペンは本心を語り始める。自分の弱さを認め打ちひしがれる彼の姿を心配したポケモン達はテペンを慰める様に近づいた。

 

「別に臆病でもいいじゃないですか」

「……え?」

「すいませんね。口を挟んで」

 

 ここまでテペンとダイアナの会話を黙って聞いていたジンが口を挟み始める。

 

「テペンさん。冒険者にとって一番大事な資質は臆病な事ですよ。確かに大胆さは時には必要かもしれない。でも冒険者が大胆なだけだったら、それは死に直結してしまいます」

 

 それはどんな冒険者であっても同じことだろう。ジンもダイアナも例外ではない。常に心に臆病な部分を残し自分に何が出来るのかどこまでならやれるのかを見極める。それができなければ待っているのは死だけだ。

 

「だとしたら、テペンさんは一番大事な資質を持っている。そしてそれを認めることが出来る。自分の弱さを認めることが出来ない奴より、よっぽど冒険者の才能があると思いますよ」

「…………」

 

 ジンの言葉を聞き、テペンはどこか感じる物があった様だ。そこにダイアナが更に言葉をかける。

 

「怖いのは最初の一歩だけ。踏み出せば忘れちまうもんさ」

 

(あっ……)

 

 それはリコがセキエイ学園に通いだすよりも前、ダイアナがリコの家に寄った時にかけてくれたのと同じ言葉だ。

 

「あの頃のあんたは今よりもずっと楽しそうだったよ。そのポケモン達は冒険で出会った大切な仲間達だろう?その子たちに悪事の片棒を担がせて恥ずかしいと思わないのかい?」

 

 ダイアナの言葉を聞き、テペンは自分の周りにいるポケモン達を改めて1体1体見つめる。彼らはテペンに懐き心から信頼している。そんな彼らの純粋な気持ちを利用し悪事に加担させてしまった事を悔やみ、両目から涙をこぼしすすり泣き始めた。

 

「……ごめん……ごめんな……」

 

 テペンは涙を流しながら謝罪の言葉を繰り返す。その姿を見たランプラー達も自然と涙を流し始めていた。この光景を見たジン達はこれ以上、彼が悪事を繰り返すことはない。そう、確信を持つことが出来た。

 

 

 

***

 

 

 

「本当にすみませんでした……」

 

 時間は少し進み、夕方となり、ジン達は最初に訪れたテペンの店へと移動していた。ばらけていた荷物を一つに纏め上げるとテペンは改めて謝罪を行う。

 

「一から出直して、またいつか遺跡の発掘に出かけようと思います。この子たちと一緒にね!」

「約束だよ」

「そうだ……あの人にも謝らないと、ボールは売れなくなったって」

 

 ダイアナが登場した辺りから話が少しずれて忘れかけていたが、元々、テペンは古のモンスターボールを誰かに売り渡す為に盗んだのだ。

 

「それってこのボールを欲しがってた人?」

「どんな人でしたか?」

「ど、どんなって……何でもモンスターボール職人の若い女性だよ。珍しいボールだったらどんなに高くても買い取るって言うから」

「モンスターボール職人……」

「それで、ここに届けるって約束してたんだ」

 

 テペンは内ポケットから一枚の紙を取り出す。受け取ったリコはその紙を開くと、そこにはモンスターボール職人がいると思われる場所の地図が描かれていた。

 

「気になるな。当てもない事だし、行ってみるか?」

「うん!」

 

 こうしてライジングボルテッカーズの次の目的地が決定する。その事を伝える為に、一同はブレイブアサギ号へと帰還していく……筈だったのだが、全員が船へと帰路につこうとする中、ジンだけはその場に残る。

 

「あ、あの~まだ何か?」

 

 先程、古のモンスターボールを盗んだのがバレた事で、この状況に少しトラウマになったのかテペンは恐る恐る声をかける。

 

「さっき使っていた眠り粉なんですが……売ってくれません?」

「えっ!?あ、あれをですか?」

「じ、ジン!?あんなの買うの?」

「あんなのはないだろう。使い道は色々、あるさ。それで、どうなんですか?」

「そ、そりゃ、勿論、構いませんが……今回のお詫びという事で別にただでも……」

 

 今回、迷惑をかけたお詫びにただで売ると申し出ようとするテペンだが、ジンはそれを片腕で制止する。

 

「テペンさん。俺はあなた商品には価値がある。そう思ったから買うと決めたんです。それをただで売ってはいけない」

「…………」

「それに、また遺跡発掘を行うなら金が入用でしょう?それに少しでも充てて下さい」

 

 遺跡発掘とはロマンがあるが、それと同時に莫大な金を必要とする。上手い事遺跡を発見できればリターンも大きいが、それ以上にリスクが大きい。今後の事を考えれば資金は少しでも持っておいた方が色々と役に立つはずだ。

 

「……分かりました」

「よかった……それで、他に何か面白い商品ってありますか?」

「そうですね~……それならこいつはいかがです?名付けて『自家製超強力火傷薬』!こいつを飲んだポケモンは炎タイプであろうとも火傷状態にする効果があります!」

「ほぉ……」

 

 テペンが新たに取り出した商品をジンは珍しそうに眺めはじめる。眠り粉が本物であった以上、この火傷薬も同じ様に効果があると考えていだろう。

 

「凄い!」

「でも、飲まなきゃ効果が出ないって事は……」

「自分のポケモンにしか使えないんじゃ意味ないだろう」

 

 先程の眠り粉は相打ち覚悟で使えば有効なのは先程、証明されている。しかし、この火傷薬は正真正銘、自分のポケモンにしか効果を与えない。しかも、火傷するだけだ。流石に使い道がないだろうとその場にいた全員が思った。

 

 だが……

 

「……よし。それも貰おう」

「「「えぇっ!?」」」

「毎度ありがとうございます!若旦那!」

 

 最初は坊ちゃん、敵対した時は小僧、そして最後は若旦那と呼び方が変わっていく。先程の恐れはどこへやら、自分の商品を絶賛し次々に購入してくれるジンにテペンは徐々に心を開き始める。

 

「ジン……」

「変な収集癖があるようだね……」

 

 それとは対照的に次々に変な商品ばかりを購入していくジンをリコ達は奇妙な目で見ていた。

 





実はアニポケで出たキャラの中でこのテペンは結構なお気に入りキャラなんです。今回、ジンが買った商品は作中でも使う予定で、チャンスがあれば偶に登場させたいと考えてます。

☆9
雪猫さん

高評価ありがとうございます。

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