ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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最新のアニポケの予告見ました。コノヨザルをゲットするタイミング完全に間違えたかもしれない……


モンスターボール工場

 

「…………」

 

 ブレイブアサギ号の一室、元々、誰も使用していなかったこの部屋は現在、ジンがとある目的の為に使用している。

 

「……次はこの薬草をすり潰して混ぜ込むと」

 

 机の上には様々な木の実や薬草、そしてそれを調合する為に、モリーから借りた薬研や乳鉢などが置かれている。ジンは薬研を手に取り中に複数の薬草を入れると力の限り碾き、すり潰し粉末化させる。最後に同じ要領で粉末化させた他の木の実の粉末などと一緒に乳鉢で混ぜ合わせ、小瓶へと注いだ。

 

「ふぅ……」

 

 作業がようやく一段落付き、一息つこうとするとトントントンと部屋の扉がノックされる。

 

「ジン、ダイアナだ。入っても大丈夫かい?」

「ダイアナさん?どうぞ」

「失礼するよ……うわっ!?なんだい!?この匂いは!?」

 

 ジンの許可を得て部屋へと入ってきたダイアナは、その部屋から漂う様々な薬草や木の実が混じり合ったような異臭に驚き思わず後ずさってしまう。

 

「あぁ、すいませんね。今、換気しますんで」

 

 ジンは付けていたマスクを外すと部屋の窓を開け、異臭漂う部屋に新鮮な空気を取り入れる。それでも部屋から異臭が消えたわけではないが、かなりましになった様でダイアナも顔をしかめながらもなんとか部屋には行ってきた。

 

「一体、何をやってたんだい?」

「ちょっと、薬の調合を」

 

 ジンが視線を向けた先には合計で10本程の小瓶が置かれている。よく見て見るとその小瓶の中に入っている薬はダイアナにも見覚えのある物だった。

 

「それって、この間、テペンから買い取った薬かい?」

「えぇ。テペンさんが色々、買ってくれたお礼にって薬のレシピをくれたんです。なので折角だから、自分でも作っておこうかと」

「わざわざ手作りまで……」

 

 テペンの作ったヘンテコな薬を買った時から、変わった趣味があると思っていたダイアナだが、まさかレシピを元に手作りで再現までし出すとは思っていなかった様だ。

 

「最初は使い手側が眠ってしまうという欠点をなくす様に改良しようとしたんですが、これがかなり難しくて……眠りから覚ます効果のあるカゴの実をほんの少しだけ混ぜてみたりもしたんですが、それをすると威力が落ちて肝心の草タイプまで眠りにつかせるという最大の長所を消してしまうんです」

 

 ジンは思いつく限り、様々な方法を試しこの欠点を改良しようと奔走したのだが、結局、全て失敗に終わってしまった。改めてレシピを見るとそこにはテペンの物と思われるメモ書きがかなり細かく書かれている。テペンも恐らく何度も調合した結果、このレシピが最適だと思い至ったのだろう。

 

「このまま完成という形にするのは少し、不本意ではあるんですが俺の持つ知識と技術ではこの欠点をなくすのは不可能な様です。デメリットなくしてメリットなしって事なんですかね……」

 

 だが、ジンはまだ諦めたわけではない。今後、新しい木の実や薬草が発見されれば、それを利用してこの欠点をなくす事が可能性はゼロではない筈だ。冒険を続けていればいずれそんな特殊な物を発見できる日が来るのかもしれない。今はただ、その日を待つと決めた様だ。

 

「……あんたもだいぶ変わってるね」

 

 初めて会った時、ダイアナはジンの事を年齢の割に落ち着いているが割と普通の子だと思っていた。もっともそんな評価は船の上で共に過ごす間にあっという間に覆ったのだが、それでもこの様な研究者の様な一面まで持ち合わせているのは予想外だった。

 

「それで?どうかしたんですか?」

「ん?あぁ、そうだった。ちょっと頼みがあるんだ。ちょっとリコ達の様子を見てきてくれないかい?」

「リコ?船にいないんですか?」

「え?あぁ……そう言えばあんたずっと部屋にいたんだったねぇ。もう目的地に着いたからリコ達は船の外だよ」

「えっ!?いつの間に!?さっき朝食を食べたばかりなのに……」

「……朝食から既に数時間は経ってるよ」

 

 どうやら薬を作るのに夢中になっている間に思っていた以上の時間が経ってしまった様だ。何かに夢中になると時間を忘れて作業に没頭してしまう昔からジンの悪癖である。

 

「リコ……なんで声をかけてくれないんだ」

「あんたの邪魔をしたくなかったのさ。分かっておやりよ」

 

 そう言われては責めることが出来ない。リコの事だ。一緒に行きたかったのを堪えてジンの作業を優先してくれたのだろう。それに本を正せば、船が地上に着いた事にすら気づかなかったジンにも責任はある。

 

「……まぁ、いいか……それで?リコ達は大丈夫なんですか?」

「あぁ、それがね……」

 

 ダイアナに詳しく聞くと今回はリコ・ロイ・フリード、そして珍しくオリオも一緒に行動していたらしい。目的地にあったのはエクスプローラーズとは全く無関係のモンスタボール工場とそこで働くカーナという女性だったそうだ。

 

 カーナと意気投合したオリオは工場の機械弄りを始め、リコとロイは工場で作られたボールを試しているらしい。特にやる事がなく危険性もないと判断したフリードはそのまま船に戻り、この件を部屋にこもっていたジンを除く全員に報告したそうだ。

 

「……特に問題なさそうに聞こえますが?」

 

 話を聞く限り、特に問題もなさそうで時間になれば全員、戻ってきそうだ。わざわざ様子を見に行く必要性をジンは感じなかった。

 

「まぁ、そうなんだがね。ちょいと来てくれ」

 

 ダイアナに手招きされ、ジンは後をついて行く。向かった先はミーティングルームであり、部屋の外から中の様子を窺うと船に残っている3人の大人たちが騒ぐ声が聞こえてきた。

 

「フリードだよ!」

「マードックだ!」

「モリーだろ!」

 

 騒いでいるのはフリード・マードック・モリーの3人だ。詳しい経緯は不明だったが、どうやら3人共、互いに責任を擦り付け合っている様に見受けられる。

 

「……なんですか?あれ?」

「実はね……」

 

 ダイアナによると諍いの切っ掛けはオリオの仕事量についてだ。この船で機械関係の仕事を一任されている彼女に誰が一番負担をかけているのか責任を擦り付け合っているらしい。

 

「そんなの全員に責任があるに決まってるだろう……」

 

 船の機械類、計器から冷蔵庫、そしてエレベーターに至るまで何か問題があれば全員、オリオに頼っている。誰か1人が悪いなどという事の方がおかしい。

 

(俺も何か手伝えたらいいんだけどな……)

 

 だが、残念ながらジンも機械の修理を手伝える程、機械に精通してはいない。エレベーターが止まった時、内側から電子機器に電力(ライボルトなどが)を送り無理やり動かす方法ならば知っているが、直すとなると話は変わってくる。

 

「まぁ、御覧の通りでね。フリードがもう一度、様子を見に行く予定だったんだが、長くなりそうだろう?代わりに行ってきてくれないか?」

「……分かりました。ちょっと行ってきますよ」

 

 ここにいてもやる事がない。それにずっと座って作業をしていたので体を動かしたいと思ったジンはダイアナの頼みを承諾し、その場を後にする。

 

「……あれだな」

 

 甲板に出ると森を抜けた先に煙を出す煙突と巨大なモンスターボールと歯車の付いた建物が目に付く。なかなか迫力があり、これでもかという程に特徴的だ。これであの建物がモンスターボール工場でないなどと言う方が考えにくい。

 

「歩くか……」

 

 工場までの距離は近いとも言い難いが、然程、離れてはいない。ボーマンダに乗って飛んで行けばすぐだが軽い散歩も兼ねてジンは森の中を歩いて進んでいく。歩き始めて10分程、経過しただろうか。建物が徐々に大きさを増していく。ここに来るまでの間、野生のポケモンに遭遇するなどのハプニングもなく珍しい程、平和に辿り着きそうだ。

 

「……ん?」

 

 建物の入り口を視認できる距離にまで近づくとそこに見覚えのある人物、リコとその相棒ニャオハを発見する。向こうは背中を向けている為、まだこちらに気づいていないらしい。よく見るとリコの片手にはモンスターボールと思われる物が握られていた。

 

「見てニャオハ、このボールすっごく綺麗だよ」

「ニャオ~」

「…………」

 

 ジンは咄嗟にスマホロトムを取り出し、撮影モードへと入る。なぜそうしたのかは分からないが、ジンの第六感がそうしろと叫んでいたのだ。己の本能に従い、そのまま撮影を続けているとリコがジンの方向を振り返り、片手のモンスターボールを構え堂々と宣言する。

 

「見てなさい!そこのポケモン!私が捕まえて見せる!……ふふっ……なんちゃっ……て」

「…………」

「…………」

 

 そこまで宣言した事でようやくリコはジンの存在に気づいたらしい。誰もいないと思って行った自分の行動を見られていた上に撮影された事を知り、リコの顔は一気に赤く染まっていく。

 

「ちょっ!?いつからいたの!?」

「見てニャオハの辺りから」

「最初からじゃん!?」

「細かい事は気にするなよ……それで、何をゲットする気だったのか具体的にどうぞ」

「い、意地悪!ジンの意地悪!しかも、なんで撮影してるの!?」

「なんとなくだ。いいものが撮れそうな気がしたから……大当たりだったな。急いでリコ用のフォルダに保存しないと」

「消して!お願いだから消して!?っていうか私用のフォルダってなに!?」

「リコの可愛らしい瞬間を撮影した写真や映像が詰まったフォルダの事だ。今回のタイトルは……『リコの華麗なゲット!』にでもしておくか……」

「やめてぇぇぇ!?」

 

 リコは必死になりスマホロトムを奪い取ろうとジンに飛び掛かるが、身体能力でリコが敵う筈もなく無残にも動画は保存されてしまう。

 

「う~~~~~~~」

「……リコ、その表情は俺に対しては逆効果だといい加減、学んだ方がいいぞ」

 

 顔を赤くし涙目で睨んでくるリコだが、そんな表情を見せられるとジンはもっとリコの事をイジメたくなってしまうだけだ。

 

「ところで、さっきから気になってたんだが、そのボールは何だ?」

 

 ジンが興味を持ったのは先程からリコが持っていたモンスターボールについてだ。機能そのものは普通のモンスターボールと変わらない様だが、並の職人では真似できない様な繊細な装飾が施されており見ているだけで癒される。インテリアとしての価値もありそうな代物だ。

 

「……この工場のカーナさんが作ったボールだよ」

「へぇ……」

 

 モンスターボールについてはジンもトレーナーとして多少の知識はある。だが、この様な見た目のボールには出会った事がない。こんなボールを作る職人に興味が出てきた様だ。

 

「ちょっと挨拶してみるか……」

「でも、中でカーナさんとオリオが作業してるよ」

「そうか……作業の邪魔しちゃ悪いし、取り合えず中の様子を見てみるか」

 

 アポイントメントを取る事なくいきなり訪ねておいて、入れ代わり立ち代わり訪ねたのでは相手に迷惑が掛かる。しかし、モンスターボール工場にも興味のあったジンは一先ず、中の様子を外からこっそりと窺う。

 

 工場内にはオリオともう1人の眼鏡をかけた女性が楽しそうに会話をしていた。恐らく、彼女が話に聞いたカーナなのだろう。2人は分野は違えど同じ職人同士、気が合う所が多い様だ。

 

「ねぇ、オリオ……私と一緒にここで働かない?」

「え?」

「あなたの技術と私の装飾、この2つが合わせれば、もっと凄いモンスターボールが作れそうな気がするんだ!」

 

 カーナは思いついたモンスターボールのアイディアを次々に出し、オリオもそれを面白そうに聞き、時には自分のアイディアを出す事で具体的に話が進んでいく。

 

「ど、どうしよう!?オリオが船を降りちゃう!?」

 

 外からその様子をジンと共に見ていたリコは分かりやすい程におろおろと慌てた様子を見せる。だが、そうなるのも仕方がない。ライジングボルテッカーズは少数精鋭の集団だ。1人1人が各分野で凄腕のテクニックを持ってはいるが、船の調整が出来るのは彼女しかいない。

 

 これが料理人のマードックや医者のモリーであれば、ジンや他のメンバー達でカバーする事もある程度は出来るかもしれないが、オリオの抜けた穴は決して埋まらない。客観的に見てもメカニックの彼女の存在はそれ程までに重要なのだ。

 

「……足にしがみ付いて残ってもらうように懇願してみるか?見捨てないで~って」

「ジン!真面目に考えてよ!」

「でもな……オリオの意思を尊重するしかないだろう」

「そ、そうだけど……」

「とにかく、もう少し、様子を見よう。オリオは立派な大人だ。ちゃんと考えて答えを出すさ」

 

 そのまま暫く様子を見ていると、2人は作業に戻り始める。カーナは出来上がったボールの完成具合をチェックしながら箱詰めを行い、オリオは工具箱を手にするとジン達のいる外へと歩き出し遭遇する。

 

「あれ?ジン?どうしてここに?」

「あぁ、ダイアナさんからちょっと様子を見てくるように頼まれたんでね」

「そうなんだ。カーナも私もまだやる事あるから、ゆっくりしてて」

 

 オリオはそう言うと工場の外にある配電盤へと向かう。配電盤を開けると中にある配線を確認し、作業へと入っていく。素人目にはもはや何をしているのかも分からないが、とても緻密な作業の様だ。

 

「オリオ、なんだか楽しそうだね……」

「船の上だと、色々と頼まれてばかりだもんな。久々に自由に機械をいじれて楽しいんだろう」

「そっか……」

 

 ジンの言う事にも一理ある。船にいるメンバーは誰一人として例外なく、何かが壊れればオリオを頼っている。そんな生活にストレスがないとは、リコには断言できなかった。

 

「ん?リコ、どうしたの?」

 

 暗い顔を見せ始めたリコを心配したのか、オリオが作業を一旦、中止し2人の傍へと歩いてくる。

 

「う~ん……分かった!ジンにいじめられたんでしょう?」

「違……わない……かも?」

 

 否定しようとしたリコだが、その瞬間、先程の録画場面を思い出してしまった。確かにあれは、感じ方によっては立派ないじめと言えなくもない。

 

「ジン……2人の関係に口挟む気はないけど、リコの事を泣かせたら許さないからね」

「…………善処します」

「って違う違う!そうじゃなくて!……オリオ、毎日、楽しい?」

「え?楽しいよ?」

 

 リコの質問に対し、オリオは迷うことなくはっきりとそう答えた。毎日、頼みごとをされ大変な様子ではあるが、それでもリコの考えていた様なストレスや嫌悪感はないらしい。

 

「そっか……オリオはどうしてフリードと旅に出たの?」

 

 ライジングボルテッカーズはフリードとキャップが出会った事が誕生のきっかけだ。だが、現在の飛行船で旅をする形になったのはオリオの協力が大きい。元々、ランドウの船をフリードの幼馴染みであったオリオが改造したのだ。その事は以前、フリードから聞いたことがある。しかし、オリオがその時の仕事を捨ててまで船に乗る事を決めた理由は教えられていない。

 

「あれ?言ってなかったっけ?」

「聞いてないよ……」

 

(……フリードとオリオって意外と似てるな)

 

 2人共、話した気になって実は肝心は所を伝えていないという共通点が存在する。そういった所に幼馴染ならではの不思議な繋がりを思わず感じてしまった。

 

「いい機会だから、話しておこうか……」

 

 オリオは昔、ジンの出身地でもあるホウエン地方で造船所に勤めていた。仕事は楽しく、やりがいもあり同僚にも恵まれていた。何不自由なく働いていたが、このままでいいのか……そんな気持ちがどこかにずっとあったそうだ。

 

「今の仕事が私にとって一番大切な事?本当にやりたいことってなんだっけ?って思ってた」

 

 そんな時、彼女の運命を大きく変える事が起こる。フリードからの連絡だ。フリードの頼みは先程、説明したように船を飛行船に改造して欲しいという無茶な頼みだった。

 

『できるのか?』

 

 フリードにかけられたその言葉が彼女の心に火をつけた。

 

「やり遂げられるかなんて、正直、分からなかった。でも、やれるかどうかはやってみなくちゃ分かんないから。フリードの言葉がきっかけになったのは事実だよ……でも、私はずっと自分の力を試したかったのかもしれない。だから、船の改造を終えた時に分かったんだ。私が本当にやりたかった事が何なのか」

「オリオがやりたかった事?」

「それはね……」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 リコからの核心を突く質問にオリオが答えようとした。その瞬間、森の奥から叫び声が聞こえてくる。3人が慌ててそちらに視線を向けると、そこにはロイとホゲータ、そしてそれを追いかけるポケモンがいた。

 

「あれは……マタドガス?」

 

 進化前のドガースが2つ連結したような特徴的な姿を持つポケモンだ。しかし、ジンが見慣れた姿と違い、そのマタドガスは紫ではなく灰色で頭頂部からまるでシルクハットを連想させるような煙突を生やしている。

 

「あれはリージョンフォームか……興味深い」

「観察してる場合じゃないでしょう!?なんとかしないと!」

「いや、だがな……ロイ!そいつ1体位なら自分で何とか出来るだろう?」

 

 あのガラルマタドガス、野生にしては確かにそれなりには強い。だが、今のロイとホゲータなら問題なく対処できる相手だ。どんな経緯で追われているのかは不明だが、わざわざここまで逃げずとも対処できる筈だ。

 

「1体だけじゃないんだよぉっ!」

 

 ロイの叫び声に応えるかの様に森から次々とガラルマタドガスの大群が現れ、ロイを追いかけ工場に向かって攻め込んでくる。

 

「あれま、大量発生だな……」

「ど、どうするの!?」

 

1体1体のレベルは然程高くはなさそうだが、それでもあれ程の数を相手にするとなると流石に少し面倒だ。

 

「何の騒ぎ?わぁっ!?」

 

 ロイの叫び声が聞こえていたのか工場内にいたカーナまでも外に出て来るが、彼女のポケモンはひだねポケモンのブビィのみだ。戦力的にはあまり期待できそうにない。

 

「ロイ……何したんだ?」

「じ、実はカーナさんから貰ったボールを試しで投げてたら、マタドガスにぶつけちゃって……最初に襲ってきた奴は追い払ったんだけど……」

「群れを引き連れて来ちゃった訳か……」

 

 見た所一度バトルした事でガラルマタドガス達はかなり、荒ぶってしまっている。ここから説得を行うのは残念ながら難しいだろう。

 

(仕方ない。やるしかないか……)

 

 面倒ではあるが、こうなった以上はジンが対応せざるを得ない。問題なのはどのような対応を取るべきなのかだ。ジンがポケモンを出し、ガラルマタドガス達を倒すのは造作もないが今後の生態系の事などを考えるとあまり乱暴な事はすべきではない。

 

(……試してみるか)

 

「全員下がれ!」 

 

 ガラルマタドガスの大群がこちらにやってくるまで、あと数秒程、瞬時に作戦を立てたジンはそれを実行に移す為にポケットから2つのモンスターボールを取り出し宙へと投げた。

 

「ジュッカ!」

「ボォダァ!」

 

 ボールから出たジュカインとボーマンダはガラルマタドガス達を見たことで状況を直ぐに把握し、いつでもバトルが可能なように戦闘態勢へと移行する。

 

「まだ動くなよ」

 

 ジンはボールをしまうと今度は背中のショルダーバッグから小瓶を6つ取り出し、左右の手の指の間に挟む。十分に引き付けたと判断したジンはガラルマタドガス達に向かって投げつける。

 

「ジュカイン!『タネマシンガン』で小瓶を狙い撃て!」

 

 ジュカインは口から6つ『タネマシンガン』を発射し、小瓶を正確に射撃する。すると小瓶は割れて、中から青紫色の粉が空中に散乱した。

 

「ボーマンダ!『おいかぜ』!」

 

 ジンは続いてボーマンダに指示を出す。ボーマンダは翼を羽ばたかせると『おいかぜ』により風向きを変える。青紫色の粉はその風に乗り、ガラルマタドガス達を包み込む様に広がっていく。

 

「ドガー?ど、ドガァ……zzz……」

 

 最初に先頭で頭にたん瘤ができていたガラルマタドガスがゆっくりと眠りにつき、その場に倒れ込む。それに続くように後続も次々に眠りにつき、最終的に全てのガラルマタドガス達が眠りについた。

 

「い、今のって……」

「そう『自家製超強力眠り粉』だ。と言っても今、使ったのはレシピを元に俺が作った奴だけどな。思ったよりも上手くいったみたいで良かったよ」

 

 先程まで船で作った10本の内の6本を実験も兼ねて使用したが、効果については申し分ない。初めて作った薬という事もあり、少し不安もあったが、テペンから買い取った本家の威力と比べても遜色ない様子だ。

 

(やっぱり使えるな……)

 

 多少、使う場面を選ぶ物ではある。しかし、状況が整っていれば効果は御覧の通りだ。ジンが行った様なやり方をすれば、治安維持組織などが凶暴化したポケモンや人々などを鎮圧する為に利用する事も出来る。正しい使い方さえすれば様々な人が重宝する筈だ。

 

(……テペンさんに売り込む様に薦めてみるか)

 

 もしも正式に採用されれば、契約内容次第ではそれなりの報酬と定期的な顧客を手にする事が出来る。そうなれば今後の彼の冒険者としての活動資金獲得にも繋がっていく筈だ。

 

(ホウエンのジュンサーだったら知り合いが何人かいるし、そこら辺から試してみるか……上手くいけば仲介料でもそれなりに……おっと、その前に……)

 

 警察・テペン・ジンにとっていいビジネスチャンスではあったが、それよりも先に考えるべき事案があった。ジン達の眼前でいびきをかきながら、ぐっすりと眠るガラルマタドガス達、彼らをどの様に対処するのかだ。

 

「ジン、マタドガス達の事どうしよう?」

「……そうだな。フリードに聞いてみるか」

 

 ガラル地方のポケモンに関して、特にリージョンフォームしたポケモンについてジンはそれ程詳しくはない。だが、ポケモン博士であるフリードならば知識もあり、良い解決策を出してくれる可能性がある。そう考えたジンはスマホロトムで船にいるフリードを呼び出した。

 

「ところで、カーナさんでしたか?」

 

 スマホロトムをしまうとジンは工場の入り口で未だに驚愕していたカーナへと話しかける。

 

「え、えぇ。そうだけど……」

「ここではモンスターボールの販売などはしてますか?」

「え?一応やってるけど?欲しいの?」

「勿論。出来たら、ヘビーボールとかの実用性のある物から変わった効果のあるボールまで色々、売って欲しいんですが、何かないですかね?」

「そういう事なら任せて!お勧めのボールがたくさんあるから!あっ……でもお金大丈夫?」

「ご心配なく。持ち合わせはあります。それに少し金の当てが出来たので」

 

 ジンとカーナはフリードが来るまでの間、工場内に戻ると中にあった様々なボールを楽しそうに見るといつくかを購入すると決めた様だ。

 

(ジン……変な物ばっかり買ってる……)

 

 テペンの作った怪しげな薬に続き、カーナが再現したヒスイ地方にあったボールなど一風、変わった物をジンは好んでいる様だ。その姿を見ると、以前、テペンの店で大量に買い物をするジンを見た時にダイアナから言われたことを思い出す。

 

『……お財布はリコが管理した方がいいかもしれないね』

 

 あの時は流石にそこまではと思ったリコだが、今の状況を見るとそれも考慮した方がいいのでないかと本気で思い始めていた。

 

 

 

***

 

 

 

 その後、ジンから連絡を受けたフリードが工場に駆けつけ、事態は収束する事となる。フリードはポケモン博士らしくガラルマタドガスの習性を利用した策を考え、実行に移す。工場の機械の出力を最大にまで上げ、煙突から煙を吐き出させそれを目覚めたガラルマタドガス達に食べさせる事で落ち着かせたのだ。

 

「私のやりたかった事?」

 

 オリオは結局、カーナからのスカウトを辞退し、船へと戻っていた。そんな彼女にジンとリコは先程の質問の続きを問いかける。

 

「それはね。やったことがない事……大変だけど初めてだったり、自分がやってなかったりした事、この船に乗ってればできる気がしたの。リコもそうじゃない?」

「あっ……」

 

 オリオの言葉を聞き、リコはこれまでの旅での出来事を断片的に思い出していく。オリオの言う様にリコも本質的には同じなのかもしれない。

 

「……その通りかも」

「でしょう?」

 

『ロトロトロト!ロトロトロト!』

 

 その時、ライジングボルテッカーズアプリを通じオリオのスマホロトムに連絡が入る。

 

『オリオ!プロペラの様子がおかしい!直ぐに見てくれ!』

『なんか空調の調子が悪いんだけど……』

「また?仕方ないな……」

 

 またしてもトラブル発生である。オリオが仕方なさそうに対応をしようとすると機関室の扉が開き、そこからマードック、モリー、ロイが続いて入ってきた。

 

「大変だ!コンロの火が点かない!このままじゃ夕食の準備ができねぇ!」

「展望室のドアが開かなくなった!」

「ごめん!ボール投げてまた壁に穴空けちゃった!」

『「「なんとかしてくれ~~!」」』

 

 オリオに負担を掛けているという自覚はある様だが、皆、全く懲りていない様子だ。次から次に頼まれ事をされるオリオだが、彼女は苦笑いしつつもいつもの様に仕方なさそうにそれらを全て受け入れる。

 

「あぁ、もう分かったから。行けばいいんでしょう。順番に行くからちょっと待ってて!」

「オリオ、壁の穴くらいだったら、俺がやるよ」

「え?ジン、そんな事できるの?」

「勿論。木工作業は割と得意分野だぞ」

 

 ジンはホウエン地方で旅をした際に、旅の拠点となるひみつきちの作成などでこの様な作業は一通り経験済みだ。その時の経験さえあれば壁の穴を塞ぐ程度ならば問題なくこなせるだろう。

 

「わ、私も何か手伝うよ!」

「ははっ……2人共ありがとう!じゃあ、壁の穴はジンに任せるからリコは私に付いてきて」

「うん!」

「了解」

 

 その後、オリオ達は船の不調を1つ1つ解決していく。そうする事でジン達は改めてこの船においてオリオの存在がどれ程、重要なのかという事を再確認したのだった。

 





読者の方からの提案もあり、最初はガラルマタドガスをゲットもしくは船に乗せようかと考えていました。でも、書き始めたら思っていたのと違う展開になっていき、気づけばこんな感じの話しになってました。本当、すいません。

☆10
sskあっちゃんさん

高評価ありがとうございました。

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