ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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最近のアニポケ、一気に進化していきますね。順番的に次はカヌチャンかな?


白い霧の歌声

 

 モンスターボール工場を後にして、数日の時が経過した。この数日、ジン達はいつもと同じ様にトレーニングや船の手伝いなどをしながら平穏な日々を過ごしていた。

 

「それでは始めましょうか?」

 

 しかし、それとは別にジンはリコ達には内密にしたまま、とある極秘の計画を着々と進めていた。今回はその計画の進捗状況を確認する為にスマホロトムを通じて計画の協力者2人に連絡を入れている。

 

『へい!若旦那!』

『うん。いつでもいいよ』

 

 スマホロトム越しに会話をしている相手、1人はダイアナの古い知り合いのインチキ商人から冒険者へと復帰しようとしているテペン、そしてもう1人はモンスターボール工場で出会った職人のカーナだ。

 

 今回の計画にはどうしてもジンとテペンだけでなくモンスターボール職人の彼女の力が必要だったので、協力を依頼した。もっとも最初はテペンの悪評をリコ達から聞いていた為、協力には懐疑的な様子であったが、テペンが改心したというジンの説得を受け渋々ではあるが引き受けてくれたようだ。

 

「ありがとうございます。では、早速ですが、状況を教えていただいてもよろしいですか?」

『カーナさんのお陰で順調ですよ!』

『あはは……多分、数日中には完成品を作れると思うよ』

 

 2人が現在、行っているのはテペンが生み出した『自家製超強力眠り粉』を包み込むボールの作成だ。

 

 このボールは対象物・対象者に向けて投げると、ぶつけた衝撃でボールが開き中の『自家製超強力眠り粉』が対象物・対象者に向かって広がっていく仕組みになっている。実用化できればポケモンの力を借りずとも対象を無効化出来る予定だ。

 

「分かりました。完成次第、データをこっちに送ってください。それと、ホウエンのジュンサーに話は既に通してありますので、テペンさんはホウエン地方へ移動をお願いします」

 

 ジンは旅の途中、カーナは工場から遠く離れることは出来ない為、必然的にホウエン地方にはテペンが1人で向かって貰う必要がある。

 

「それと……テペンさん。もう一度確認しておきたいんですが……」

『分かってますよ。『自家製超強力眠り粉』の製法については秘密にするんですね?』

『ふぅん……別にいいんだけど秘密にする必要あるの?』

 

 今でこそ、工場のガスを吸ってもらう事で共存を果たしてはいるが、マタドガス達は強い野生のポケモンとカーナは認識していた。そのポケモン達を簡単に眠らせる薬の威力は確かに強力な物なのだろうと素人ながら分かる。だが、それを秘密にする必要性が理解できていない様だ。

 

「えぇ、万が一に備えてね」

 

 テペンの作った『自家製超強力眠り粉』は便利な道具ではあるが、それと同時にとても危険な一面も持っている。その製法並びに生みの親であるテペンの情報などについては厳重に管理する必要がある。

 

「カーナさん、以前、俺がマタドガス達を眠らせた時の事を覚えていますか?」

『そりゃ勿論。なかなか衝撃的な光景だったし』

「では、もしも俺がポケモンハンターだったらマタドガス達はどうなっていたと思いますか?」

『あっ……』

 

 そこまで口にした事でカーナもようやく、『自家製超強力眠り粉』の危険性に気が付いた様だ。あれはタイプ相性に関わらず、一度に多くのポケモンを眠らせることが出来る。

 

 もしもあれを邪な密猟者などに大量に手に入れてしまえば、ポケモンの乱獲に利用される可能性がある。それだけは何としても避けなくてはならない。その為にも製法と生みの親であるテペンの事は内密にすべきだ。

 

「そんな訳なので2人共、情報の扱いには最大限の注意をお願いします」

『う、うん……』

『了解です』

「それでは、今日はこの辺で、引き続きよろしくお願いします」

 

 ジンはそう言うと、通話を切り椅子にもたれかかり上を向いた。

 

「ふぅ……後は交渉次第か……」

 

 既に『自家製超強力眠り粉』の製法とテペンについて秘密にする事で話は済んでいる。だが、正式に契約するのかどうかと契約金についてはまだ話が纏まっていない。それについては現物を見てから判断したいとの事だ。

 

 交渉相手に選んだのはジンの知り合いのジュンサーであり、彼女もジンの事は信頼してくれている様だが、流石にそれとこれとは話が別という事らしい。

 

「ま……やるしかないか」

 

 その交渉次第でジンの取り分も大きく変わってくる。ボールの製作の段階で出番のないジンにとっては、そこが唯一にして最大の見せ場となるだろう。

 

『ロトロトロト!ロトロトロト!』

 

 契約金を少しでも吊り上げる為、交渉の時に使えるカードを再確認しようと思っているとスマホロトムに通知が入る。確認すると、ライジングボルテッカーズアプリを通してマードックが全員に呼びかけている様だ。

 

『皆!お茶とお菓子を用意したぞ!ミーティングルームに来てくれ』

 

 満面の笑みと共にケーキと紅茶の入ったポットを持ったマードックの写真が送られてくる。

 

「……後でいいか」

 

 この作業は完成品のデータを見てからでも遅くはない。それまでまだ時間もあると考え、自室を出るとミーティングルームへと足を進める。

 

 

 

***

 

 

 

「白い霧の歌声?」

 

 ミーティングルームでマードックの作ったケーキを食べ終え、一服しているとダイアナがある出来事を話し始める。

 

「あぁ、船乗り達の間で囁かれている噂でね……霧で迷った船を歌で導き助けてくれる。そんな不思議なポケモンがいるんだ」

 

 ある日、大量の荷物を積み込んだ一隻の船が大海原を進んでいた。順調に航海を進めていたのだが、突然、船を包み込む程の白い霧が発生し視界は奪われ、船は大きく揺れ始める。このままでは遠からず転覆するかもしれない。

 

 船員たちがそんな絶望に飲み込まれそうになった時、霧の中から不思議な歌声が響き始める。歌声の聞こえた方に目を向けると、霧の中に青く体を光らせる1体のポケモンの姿があった。

 

「そのポケモンは光り輝くラプラスだと言われている」

「ラプラス……」

「もしかして六英雄の?」

「勿論、そうとは限らないさ。だが、可能性はゼロじゃないと私は思うよ」

 

 確かにダイアナの言う様にこれだけでは六英雄のラプラスであると断ずるには少々、情報不足だ。だが、特別な力のあるラプラスである事は間違いないだろう。

 

(ラプラスか……)

 

 白い霧の元に現れるラプラス、その噂はジンも知っていた。ホウエン地方は海が多い地方であり、旅をする以上、船での移動は不可欠だ。その為、船乗りの知り合いも必然多くなり、彼らからその伝説を聞いたことがある。

 

(六英雄でなければ俺がゲットしたいな……)

 

「六英雄……おばあちゃん!私、そのラプラスに会ってみたい!」

「まだ確実にそうだとは断言できないよ。それは直接会ってみない事にはなんともね……実は私も若い頃、その謎を追いかけた事があるんだ。でも、一度も会った事がないんだ」

 

 ダイアナは当時、様々な伝から得た情報を頼りにラプラスを探した様だが、発見情報のある現場に向かった頃には既にその姿はなかったらしい。それを何度も繰り返し、最終的には諦めるしかなかったそうだ。

 

「でも……今は違う」

 

 当時のダイアナには情報を得る伝はあってもそれを確認しに行く為の足がなかった。だが、今のダイアナにはこのブレイブアサギ号とライジングボルテッカーズが付いている。過去に出来なかった事でもこのメンバーと一緒なら成し遂げられる。そう考えた様だ。

 

「頼むよ。一緒にラプラスを探してはくれないかい?」

「勿論!絶対に見つけよう!」

「僕も手伝う!」

「個人的にも興味がありますしね。当然、俺もです」

 

 ダイアナの頼みをジン達は1人残らず、承諾しライジングボルテッカーズの次の目標が決定した。

 

「となるとまずは情報を集めないとな」

「それなら抜かりはないよ」

 

 ダイアナがそう言うと、ミーティングルームに備え付けられているスクリーンにとある海域の海図が映し出される。そして、その海図には赤いマークが次々に浮かび上がっていく。どうやら白い霧の発生したポイントを纏めた物の様だ。

 

「これ、おばあちゃんが作ったの?」

「まさか、ドットに頼んだのさ。しかし……科学の力ってのは凄いねぇ。私が若い頃にもこんな技術があれば……ドット!あんた大したもんだよ」

『ま、まぁね……』

 

(いつの間に……流石おばあちゃん)

 

 いつの間にかダイアナはドットとも打ち解けていた。その様子を見たリコは、自分は苦労してそれなりに長い時間をかけてドットと友人になったというのに、それをこの短期間でやり遂げたダイアナの事を改めて尊敬した。

 

『それと、もう一つ朗報がある。最近、ラプラスを見たって人が近くの港にいるみたいだ』

 

 ドットはパソコンを操作し、海図に新たな緑色の点を表示させその場所を示す。確かにここから近く、早ければ数時間とせずに到着するだろう。

 

「まずは、話を聞いてみるか……行ってみよう!」

 

 

 

***

 

 

 

 白い霧が大量に発生した海域にある小さな小島、そこにラプラスの目撃者がいると知ったジン達はブレイブアサギ号を港に停泊させ船を降りる。今回のメンバーはいつもの様にジン・リコ・ロイ・フリードの4名だ。ジン達は情報提供者である貨物船の船長の元へと向かう。

 

「それは美しい歌声だったよ」

 

 港には一隻の小型の船、そしてその傍には恰幅のいい男性とそのポケモンのフローゼルがいた。詳しく話を聞くと、やはり彼らがラプラスの目撃者で間違いない様だ。

 

「じゃあ、本当にラプラスが?」

「あぁ、俺達は荷物を運んでいる途中だったんだが、沖に出たら突然、辺り一帯を覆い尽くす程の霧が発生して進路が分からなくなってね」

 

(……霧が突然?)

 

 海霧というのは暖かく湿った空気が温度の低い海面上に流れ込み、その空気が冷やされる事により、空気中に含みきれなくなった水蒸気が凝結して微水滴となり、目に見えるようになった状態を指している。だが、それが発生する時には何らかの前兆が見られる筈だ。

 

 長年、船乗りを続けていたであろう彼ならその事に気づきそうな物だが、噂のラプラスに出会えた事に興奮し、そこまで頭が回っていない。現に、今もラプラスに感謝し続けている様だ。

 

「そのラプラスは今、どこに?」

「さて……霧を抜ける前に姿を消してしまったからよく覚えていないんだ」

「船長!貨物の積み直し始めますよ」

「ん?あぁ、よろしく頼むよ」

 

 船長の許可を得ると背後にいた船員がトロピウスの顔が描かれた箱をブイゼルと共に船へと運び込んでいく。

 

「積み直し?」

「それが、霧が現れた時に岩礁と船がぶつかったみたいでな。その時に船が大きく揺れて積み込んであった荷物を全て落としてしまったんだ」

「……積み荷の固定はしていなかったんですか?」

「勿論してたさ。でも、結構大きな揺れだったからな。そのせいで外れてしまったのかも……お陰でもう一度仕入れ直す事になったが、ラプラスに会えて船も船員も無事だったし、良しとするよ」

 

 船長はどうやらあまり深くこの事態について考えていない様だが、ジンからすれば正直、怪しい点だらけだ。突然の霧の発生にしてもそうだが、屈強な船乗りがポケモンと2人掛かりで何とか運んでいる貨物が全て海に落ちるなど普通では考え難い。

 

(……突然、現れた霧……全ての積荷がなくなった……まさか……)

 

 偶然も1度だけならばあり得るかもしれない。しかし、2度も続けばそこには誰かの思惑が存在する可能性がある。少なくともジンはその可能性を無視できる程、楽天家ではない。

 

「ありがとうございます。3人共、船に戻ろう」

「「うん」」

「…………」

「ジン?どうした?」

「……いや、なんでもない」

「霧が出ても案ずるな。きっとラプラスが導いてくれるさ」

 

 船へと戻ろうとしていくジン達に船長は笑顔を浮かべながら、そう宣言する。何の疑いもなくラプラスを信じ切っている船長に対し、ジンは複雑な感情を抱きながらも笑顔で対応する。

 

「えぇ、そうだといいですね。本当に……」

 

 

 

*** 

 

 

 

 ブレイブアサギ号は現在、先程の港から出航し霧の発生地点を目指し北上している。

 

「……成程な。言われてみれば確かに奇妙だ」

 

 そんな中、操舵室ではジンはフリードに先程の船長から聞いた話について違和感がある事を伝えていた。当初はフリードもあまり深くは考えていなかったが、ジンの話を聞き冷静に考えれば違和感を感じずにはいられない。

 

「まだ確証はない。だけど、ラプラスは確か『しろいきり』が使えた筈だ。船を霧で包み、前方に注意を向けさせれば、共犯者に盗みを働かせるのはそれ程、難しくないと思う」

 

 視界が定かではない事態に陥った状態で、目の前には種族的にも信頼が厚いラプラスが導く。そうすれば船員達の視線は前方に向き、背後にまで気が回らなくなる。もしもこれが計画的犯行であるなら、かなり質が悪いと言わざる得ない。

 

「ラプラス……とんだ食わせ者かもな」

「繰り返し言うが、まだ可能性の段階だ。そうでなければいいと思ってるよ」

 

 六英雄の可能性もある以上、今後、協力関係も結ぶ必要がある為、ジンとしても出来ればラプラスと敵対する事はしたくない。ただの考えすぎであれば、それに越したことない。

 

「だが……」

「あぁ、確かめる必要があるな」

「だな。目的地まで時間がない。急いで作戦を考えよう」

 

 その後、ジンとフリードは共にこの一件の真相を知る為の計画を立案していく。ジンとフリード、どちらもポケモンについての知識が豊富な為、霧への対策は直ぐに思い付いた。更にラプラスに共犯者がいた場合の対策なども並行して行っていく。

 

「……よしっ!こんなもんだな」

 

 大まかな計画は作成できた。しかし、情報がまだ少ない為、現場での微調整は必要になる。その上、目的地には間もなく到着してしまうので時間もない。

 

 最初は到着を遅らせる事も考えたが、ラプラスが移動を続けている可能性がある為、却下した。この機を逃せば次にいつラプラスと巡り合えるか分からない。

 

「それじゃあ、俺は先に準備に入るよ」

「あぁ、後でな」

 

 ジンは操舵室から出ると真っすぐに甲板へと出て行く。そこにはリコとロイがおり、空から海を眺めている。

 

「何してるんだ?」

「あっ!ジン、やっと来た!」

「ラプラスを探してるんだよ!」

「……そんな簡単には見つからないぞ」

 

 ラプラスが噂通りなのかそれともジンの予想通りなのかは置いておくとしてもそう簡単に姿を見せる様な真似は残念ながらしてこないだろう。そうであれば、もっと多くの発見情報が寄せられている筈だ。

 

「あはは……やっぱり?」

「ねぇ!ジンはラプラスに会ったことあるの?」

「見た事はあるよ。でも、船の上から遠巻きでだけどな」

「そうなんだ……僕、会った事あるよ。島にいた時に海辺によく遊びに来てたんだ。人懐っこいポケモンで背中に乗せてくれたんだ!」

「へぇ~いいな!私達も仲良くなったら乗せてもらえるかな?」

「きっと乗せてくれるよ!」

「楽しみ!」

「……そうだな」

 

 純粋なまでにラプラスと出会う事を楽しみにしているリコとロイ、そんな2人を見ているとジンも自然と笑みがこぼれる。それと同時に出来る事ならば、自分の推理が見当違いな物であって欲しい。そう思わずにはいられなかった。

 

 その後、ドットにラプラスの撮影を頼まれたクワッスが合流し、暫く談笑していると船がゆっくり高度を下げ始めていく。

 

「あれ?何か高度が落ちてない?」

「本当だ。ひょっとして、また空気が抜けたの?」

 

『ロトロトロト!ロトロトロト!』

 

 リコとロイが船の心配をし始めるとスマホロトムに通信が入る。通信相手はフリードであり、アプリを通してメンバー全員に呼びかけ始めた。

 

『みんな!今から船を着水させる。ラプラスを探すにはこの方がいいからな』

 

 ブレイブアサギ号はゆっくりと海に着水し、海の上を走り始める。元々は釣り船であるこの船にはこの程度の事は問題なく行える様だ。

 

(さてと……準備に入るか)

 

 船が着水したのを確認するとジンはポケットからモンスターボールを取り出し、甲板へと投げた。

 

「ミロォォ!」

 

 ボールの中から出たポケモンはミロカロスだ。ジンはポーチからある道具を取り出すとミロカロスの首へと掛け始める。

 

「ジン?どうしたの?」

「それって……貝殻?」

「あぁ……似合ってるだろう?」

 

 ミロカロスの首に掛けられたのは貝殻で出来たアクセサリーの様にリコ達には見えた。デザインはなかなか可愛らしい。その上、ミロカロスはこの世で最も美しいと呼ばれているポケモンだ。そんなミロカロスが付ける事により、更に美しさを増した様に感じさせる。

 

「うん。可愛いと思うけど……急にどうしたの?」

「久々の海だからな。ミロカロスにも偶には伸び伸びと泳がせてやりたくなってね」

 

 水タイプのポケモンは皮膚の手入れが一番大事であり、体毛のある陸上のポケモンはブラッシングで済むが水ポケモンはウェットな状態を保たせることで活力のあるボディが作られる。その為には、水浴びをさせるだけでなく広い海を泳がせることが必要なのだと説明する。

 

「へぇ~」

「そうなんだ……」

 

 リコとロイはジンの説明を聞き、納得した様子を見せる。自分達が水タイプを持っていないという事もあるが、まだまだポケモンについて知らない事があると再確認した様だ。

 

「パゴ?パーゴ」

 

 海の上を進み始めると、ぼんやりと海を眺めていたテラパゴスが鳴き声を上げ始めた。テラパゴスの突然の行動にジン以外の全員の視線がテラパゴスにのみ集中する。

 

「テラパゴス?」

「もしかして……ラプラス?」

「本当に六英雄なのかも!」

「きっとそうだよ!」

「ねぇ!ジンはどう思う?」

 

 テラパゴスの反応から、この付近にいるラプラスは本当に六英雄なのかもしれない。そんな希望が出て来たリコはジンにそう問いかける。しかし、ジンはテラパゴスに目もくれずにミロカロスに何かを飲ませ、耳元で小声で話をしていた。

 

「……頼むぞ」

「ミロッ!」

 

 ミロカロスはそれを最後に船から海へと飛び込む。そのまま海に顔を沈め船の上からではその姿を視認できなくなった。

 

「……ジン?」

「ん?あぁ、悪い悪い。ちゃんと聞いてたよ。六英雄の可能性が出て来たな」

「やっぱり!そうだよね!」

「う、うん」

 

 多少、遅れての返事ではあったが、ジンの言葉にロイは嬉しそうな反応を示す。それに対し、リコはジンの行動に何か奇妙な動きを感じてはいる様だが、その正体にまでは気づいていない。

 

『みんな、目標の海域に入ったぞ。これから船の速度を落として、ゆっくりと海の上を回っていく。リコ、ロイ、ジン、それにダイアナさん、ラプラスを見つけてくれよ』

 

 フリードの指示を受け、ジン達は引き続き甲板からダイアナは展望室からラプラスの捜索を開始する。

 

「海は広いし、少し役割分担するぞ」

 

 まず、ジンはこのまま船の前方に残る。そしてリコとロイは後方へと回ってもらい、出来るだけ死角をなくそうとする。

 

「分かった!」

「こっちは任せて!」

 

 見張りの数を少しでも増やす為に、ポケットから更に4つのモンスターボールを取り出し宙へと投げた。中から出たのはジュカイン、サーナイト、ライボルト、ボーマンダだ。ジンは1体1体に事情を説明し細かい指示を出していく。ボーマンダはサーナイトを乗せて空にライボルトは前方に残り、念の為にジュカインは後方のリコ達の元へと向かわせる。

 

「さてと……」

 

 これでジンの準備は完了した。フリードの準備はどうなっているのかと思い、スマホロトムを取り出し連絡を入れる。

 

「そっちはどうだ?」

『問題なし。順調だ』

 

 船の舵はランドウに取ってもらい、オリオは機関室でいつでも船を動かせる様に待機、手の空いていたモリーとマードックに餌となるポケモンフーズや木の実を大量に船の中央に用意させたらしい。その際、何の説明もない事にモリーたちから文句もあった様だが、概ね順調な様子だ。

 

「よし、なら後は……っ!?」

 

 待つだけ。そう口にしようとした瞬間、辺り一面を白い霧が包み込んで行く。

 

「フリード!来たみたいだ!」

『そうみたいだな。こっちも最後の準備を始める。そっちは頼んだぞ』

 

 フリードとの通話を終えると、ジンは改めて周囲を見渡し始めるが霧が思っていたよりも濃く、周囲の様子は全く分からない。暫くすると船が突然、大きく揺れ始める。ジンは咄嗟に手すりを掴み体勢を維持した。

 

「港で聞いたのとまったく同じ状況か……ここからだな……」

 

 視界が塞がれているこの状況では動きようがない。ジンはそこから振り返り、ウイングデッキのある方角へと視線を向けた。当然、霧に阻まれ見えはしなかったのだが、突然、その中心から雷雲の竜巻の様な物が発生し、白い霧を全て吹き飛ばした。

 

「へぇ……」

 

 フリードが霧はなんとかすると豪語したので任せたのだが、これはジンにとっても想定外の解決法だ。リザードンではなくキャップの技だと予想できるが、この様なことが出来るピカチュウは滅多にいない。

 

「もっと近くで見たかったが……まぁ、それは後でいいか」

 

 ジンはその場から船の側面を覗き込む。そこには船に横付けしている巨大なクジラの様なポケモンのホエルオーとその上にはエテボース、リククラゲ、ヤルキモノなどの陸上ポケモン、更に海中にはブルンゲル、マンタイン、オクタンなどのポケモンも確認できる。

 

「ふん……嫌な予感が当たったか。まあ、その程度の浅知恵が通用すると思われるくらいには舐められているということか……」

 

 エテボース、リククラゲが先陣を切る様に船に無断で乗船するとポケモンフーズを設置した場所に向かって一目散に進み始める。ここまで来てしまうと残念な事にジンの懸念は正しかったと判断すべきだ。

 

「ライボルト、ここはいいから予定通りマードック達の援護に回ってくれ」

「ライボォ!」

「それと……分かってると思うが、恥知らずな海賊共に木の実もポケモンフーズも1つとして渡すなよ。丁重に歓迎してやれ」

 

 ライボルトは強い表情で頷くとその場を走り出し、船の中央へと向かう。事前にジュカインにも同じ指示を出してある為、リコやロイも駆け付けるだろう。ジュカインやライボルトだけでも十分そうではあるが、船の守りは鉄壁なものとなる。

 

「さてと……」

 

 ライボルトに指示を出したジンは改めて船の前方へと視線を向ける。そこには1体のポケモンが佇んでいた。凹凸のある甲羅を背負い、首長竜の様な姿をしている。ジン達が探していたポケモン、ラプラスが直ぐ傍にまで迫っていた。

 

「…………」

 

 ラプラスは警戒する様にこちらへとゆっくり振り返る。図鑑の絵よりも鋭い眼をしており、その左目には大きな傷があった。いや、目だけでなく体の至る所に傷があり、その姿はまるで長年、戦い続けてきた戦士の様な印象を抱かせる。

 

(……これは当たりだな)

 

 レックウザ、オリーヴァ、ガラルファイヤーと比べても遜色ない威圧感、古のモンスターボールこそまだ確認していないが、このラプラスは間違いなく六英雄の1体であると確信する。

 

「霧の中で迷った船を導いてくれる心優しきラプラス……その正体は海賊まがいのマッチポンプか……せこい真似をするんだな。六英雄の名が泣いてるぞ。それとも…… まさかそれもルシアスの命令か?」

「ラァァプラァァァァァァァァ!」

 

 ジンの言葉に対して、聞き捨てならない侮辱と受け取ったラプラスは力強い咆哮を上げた。ここまで来ると、もはやバトルを避けることは出来ない。ジンもラプラスもそう感じ取っていた。

 





お気づきの方もいるかもしれないですが、ジンは海賊の事がとにかく嫌いです。具体的な理由については作中で今後、触れて行きたいと考えていますが、それ程、重い過去がある訳ではないのでそこは安心してください。

次回はVSラプラスになります。

☆10
ssknsxさん

高評価ありがとうございました。

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