ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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お待たせしました。今回、レックウザとのバトルシーンはありますが短めです


覚醒

 

「貴様……」

 

 アメジオはジンに向け強い怒りの籠った鋭い視線を送っている。だが、それも無理からぬ事だ。

 

 レックウザとバトルしゲットする事を望んでいたのはなにもロイだけではない。アメジオもまたレックウザをゲットする事を目的としていた。しかもジン達の様に偶然ではなく様々なデータを手に入れ計算した上でここまで辿り着いたのだ。その上、バトルで追い込み、いよいよといった場面で邪魔が入る。これで怒るなと言う方が難しい。

 

「…………」

 

 ジンはアメジオから送られる怒りの視線を甘んじて受け入れた。もしも自分が同じ様に狙っていたポケモンとのバトルに途中から割って入ってこられたら、それこそ相手に軽く殺意を覚えるかもしれない。同じトレーナーとして気持ちはよく分かってしまう様だ。

 

「まぁ、気持ちは分かるよ……だが、もう少し冷静になるべきだな。お前のポケモン達、かなり危ないぞ」

「……なに?」

 

 ジンの言葉を受け、アメジオは自分のポケモン達の状態を確認する。岩礁の上のソウブレイズとガブリアス、海面のメガギャラドス、この3体は眠っているにも関わらず、とても苦しそうな表情を浮かべている。

 

「これは……そうか!?ダークライの特性!」

 

 ダークライの特性、『ナイトメア』。この特性は眠っている相手に悪夢を見せダメージを与える効果がある。ダークライが忌み嫌われる理由の1つでもあるが、この状況に置いては大いに役に立っていた。

 

「正解だ。早く回収してやらないとダメージが増える一方だぞ」

「くっ…‥‥アーマーガア!」

 

 アメジオはバンギラスをボールへと戻すとアーマーガアを呼び寄せた。そのままアーマーガアの背に飛び移り、ポケモン達の回収に向かう様だ。

 

(そうだ。それでいい……)

 

 少なくともこれでアメジオの事は暫く気にしなくていい。まだポケモンは残っているが、残りのバンギラスとアーマーガアだけではレックウザの相手は難しい。この場に於いては事実上のリタイアと見ていいだろう。

 

「さてと……」

 

 アメジオの問題は取り合えず、片が付いた。暫くは放置していても問題はない。しかし、本当に難しくなるのはむしろここからだった。

 

「きりりりゅりゅしぃぃ!」

「……やっぱり怒ってるよな」

 

 メガギャラドス達の攻撃が止んだ事で先程までの緑色のオーラは消え去っていたが、レックウザの怒りは消えていない。怒りで暴走している為か、先程助けたにも関わらず、視界に入ったダークライを攻撃対象に定めた様だ。

 

「話し合いで解決できればベストだったんだが、仕方ないか……ダークライ!」

「ダァク!」

 

 事ここに至ってはバトルをしないという選択肢は残念ながら存在しない様だ。覚悟を決めたジンとダークライは改めてレックウザと向かい合う。

 

「ダークライ!『ダークホール』!」

 

 ダークライは上空からレックウザに向けて『ダークホール』を放つ。ソウブレイズらと同じ様に眠りにつかせようとするが、レックウザは目にも止まらぬ速さでその場から動き出すと一気にダークライに突き進んでくる。

 

「『まもる』!」

 

 ダークライは咄嗟に『まもる』を発動し、己の周りを緑色のオーラで覆う。それにより『しんそく』で突撃してきたレックウザから身を守る事に成功する。

 

(今のは『しんそく』か……これでは『ダークホール』を当てるのは難しいな)

 

 既に『ダークホール』の効果はレックウザにバレている。その上、このスピードで動かれてはまず命中しない。やるとしたらそれは確かな隙を作り出してからだ。

 

「それなら……『かげぶんしん』だ!」

 

 ダークライは『かげぶんしん』で空中に大量の分身体を出し、レックウザを囲い込む。それを見たレックウザは速やかに反撃に移る。『りゅうのはどう』を何発も放ち、分身体を消しにかかった。それでいて警戒も怠っておらず、いつでも『しんそく』を発動できる様にしている。

 

 だが、この程度でレックウザに隙が出来るなどとはジンも端から思ってはいない。ただ、レックウザの注意を引けさえすればそれでよかったのだ。

 

(怒っている割には戦況をよく理解している。流石だな……)

 

「なら今の内に準備に入るとするか……『わるだくみ』!」

 

 分身体に攻撃が集中している内にダークライは『わるだくみ』で特攻を二段階上昇させる。アメジオの様に万全の策を練るのはこの状況では難しいが、最低限の戦う準備はこれで完了した。

 

「ダークライ!レックウザの前に出ろ!」

 

 分身体に紛れていたダークライは、周囲にあった分身体を消すとそのままレックウザの前へと移動する。分身体から本体のダークライへと標的を移したレックウザは再び『りゅうのはどう』を放つ。

 

「迎え撃つぞ!『あくのはどう』!」

 

 相手がどれだけ早く動こうと正面対決であれば問題にはならない。『りゅうのはどう』と『あくのはどう』は互いの丁度、中央でぶつかり合う。数秒、互いに技が押し合うが『わるだくみ』で特攻を上げていた事もあり『あくのはどう』が『りゅうのはどう』を打ち破る。

 

 『あくのはどう』を正面から受けたレックウザは悲痛な叫び声を上げる。レックウザ程のポケモンならばここからでも立て直す事は可能だ。だが、ジンはその隙を与えない。

 

「反撃の隙を与えるな!『れいとうビーム』!」

 

 レックウザが立て直すよりも早くダークライに新たな指示を出す。ダークライの両手から『れいとうビーム』が発射され、レックウザへと命中した。最もダメージの大きい氷タイプの技を受け、レックウザは身体の一部を凍らせながら海へと落下していく。

 

(……思っていたよりも早く終わったな) 

 

 ダークライの技が強力であった事も理由ではあるが、それ以上に先程のアメジオとのバトルでレックウザはダメージを負っていた様だ。もっと過酷なバトルになる事を予想していた為、少々あっけない終わりに感じてしまう。

 

(出来る事なら万全の状態のお前とバトルしてみたかったよ……)

 

 カントーで出会った時はまだ勝てるかどうか分からなかった。しかし、レックウザに出会った事で、初心に戻り特訓を重ねジンとポケモン達は更に強くなった。その強さを試す意味でもレックウザとはいずれ本気のバトルがしたいと思っていただけにこの結末は残念でならない。

 

「……これで終わりだ」

 

 後はレックウザを『ダークホール』で眠らせるだけで終わる。眠りから覚めれば話し合いも可能になるだろう。ジンはそう考え、ダークライに最後の指示を出そうとする。

 

 だが……

 

「きりゅりゅりぃぃ!」

 

 レックウザは身体に纏わりついた氷を咆哮で破壊すると途端に体勢を立て直し、口元にエネルギーを集中させると空に浮かぶダークライ目掛けて解き放つ。

 

 相手はレックウザだ。ジンは最大限、警戒しているつもりだった。だが、それでも認識がまだ甘かったのかもしれない。伝説のポケモンにして古の冒険者ルシアスの最強の相棒がこの程度で終わる筈がなかった。

 

「っ!?躱せ!?」

「ダァァク!?」

 

 打ち上げられた『りゅうせいぐん』をダークライは紙一重で回避する。しかし、その為、『りゅうせいぐん』はダークライの頭上で破裂し空から複数の光球が隕石の様に辺り一面に降り注ぎ始める。

 

「しまった!?」

 

 この位置取りではダークライもジンを乗せているボーマンダも『りゅうせいぐん』を避けるので精一杯でブレイブアサギ号や仲間達への援護に向かうことが出来ない。

 

(くそっ!?どうする!?)

 

 リコ達の傍にはジュカインを残してはいる。更にリザードンやウインディと連携すれば最低限の迎撃は出来ると思われるが、この規模の『りゅうせいぐん』を全て打ち消すのは通常状態のジュカインでは難しい。どうにか打開策がないかあらゆる可能性を模索していると、突如、リコ達の周辺から強い光が発生する。

 

「あれは……」

 

 その光には見覚えがあった。テラパゴスがペンダントであった当時から、リコにピンチが訪れた時に発生していた光と酷似している。ただ違いがあるとすればその規模だ。今回の光はリコだけではなく彼らのいた岩礁を全て包み込んでいく。

 

 やがて光が収まると、そこには1体の光り輝くポケモンが宙に佇んでいた。クリスタル状の甲羅と首と尻尾はふさふさの毛が生えており、ウミガメの様な姿をしている。

 

「テラパゴス……なのか?」

 

 

 

***

 

 

 

 時同じくしてアーマーガアに乗り、ポケモンの回収を終えたアメジオもまた光り輝くテラパゴスに目を奪われていた。

 

「あの輝きは進化?……いや、違う」

 

 

 

***

 

 

 

「ジュッカァァ!」

 

 上空より無数の光球が降り注ぐが、ジュカインは目の前まで迫っていた光球の1つを『リーフブレード』で斬り落とす。更にジュカインはそのまま『エナジーボール』を作り出すと一番近くの光球へと飛ばし相殺する。

 

「リザードン!『かえんほうしゃ』!」

「ウインディ!こっちも『かえんほうしゃ』だ!」

「ホゲータも『かえんほうしゃ』!」

「ニャオハ!『マジカルリーフ』!」

 

 ジュカインだけではない。リザードン、ウインディ、ホゲータ、ニャオハもそれに続くように技を繰り出し『りゅうせいぐん』への対処を行っていた。『りゅうせいぐん』の光球1つ1つは彼らであれば問題なく対処できる。

 

 しかし、やはり問題のはその規模だ。レックウザ程のポケモンが全力で放った『りゅうせいぐん』の規模は並ではない。5体のポケモンの技をすり抜け、いくつかの光球が岩礁の付近へと落ち始めていく。

 

「うわっ!?」

「ニャァッ!?」

「リコっ!?」

 

 その衝撃でリコはバランスを崩しその場に倒れてしまう。トレーナーであるリコが倒れた事で心配になったニャオハはその傍に駆け寄る。ただでさえギリギリであった防衛ラインはニャオハが抜けた事で遂に限界を迎えてしまう。

 

「くっ!?」

「このままでは……」

 

 フリードとダイアナはその穴をカバーしようと奮闘するが、それもわずかな時間だけの事だ。ニャオハの抜けた穴を1つの光球が潜り抜けて倒れていたリコへと迫っていく。

 

「あっ……」

 

 『りゅうせいぐん』が迫りくるが、リコは動けない。リコにはまるでその光景がスローモーションの様に見えていた。迎撃は間に合わず逃げることも出来ない。直撃したらどうなるのか。そんな最悪の状況だけが頭の中に思い浮かんでくる。

 

「パァァァァァァァゴォォォォォォォォォ!」

 

 しかし、その瞬間、テラパゴスの咆哮と共に強い光がリコ達のいた岩礁を包み込んで行く。至近距離にいたリコだけがテラパゴスの変貌していくその姿を見ていた。

 

 光の中でテラパゴスの首元と両手両足にふさふさの毛が生え、甲羅が大きく巨大化していく。その甲羅は歪な五角形となっておりポケモンのタイプマークの様な模様が確認できる。

 

「……テラパゴス?」

 

 リコは座り込みながら呆然とした様子で呟く。今までにも不思議な事は起こってきたが、今回のは全く違う変化だ。戸惑うのも当然だろう。

 

「パァァゴ!パッ!」

 

 テラパゴスが力強い咆哮を上げると体から一本の巨大な光の柱が発生し空へと向かい伸び始める。更にその光の柱から無数の光弾が生み出され『りゅうせいぐん』に向け発射された。リコ達に迫る『りゅうせいぐん』はテラパゴスの放った光弾により全て相殺され、その際に発生した光の粒が雨の様に降り注いでいく。

 

「綺麗……」

「こいつは一体……」

「テラパゴス……その姿は……」

 

 リコはその光景の美しさに、フリードとダイアナはテラパゴスの変化にそれぞれ注目し各々の感想が口からこぼれる。

 

「…………」

「…………」

 

 リコ達がその光景に戸惑う中、テラパゴスとレックウザは互いの技が完全に打ち消し合うと海を挟んで静かに対峙する。

 

「パゴ……」

 

 暫く互いに睨み合いを続けていた両者だが、突然、テラパゴスの体が大きく揺れ元の姿へと戻り、岩礁の上へと落下していく。

 

「テラパゴス!」

 

 その姿を見たリコは慌てて駆け寄るとテラパゴスを抱きかかえ、無事を確認する。気を失ってはいたが外傷などは見られない。一先ずは安心したい所ではあるのだが……

 

「きりゅりりゅぃ……」

 

 まだレックウザの問題が残っている。先程までと違い、怒りに囚われている様子は見られないが、だからといって油断していい相手ではない。

 

(テラパゴスを守らないと……)

 

 リコはテラパゴスを守る素振りを見せるが、レックウザはそのままリコ達に背を向けるとこの場を離れ、飛び去って行く。

 

「あっ……」

 

 去り行くレックウザを見てロイは思わず、手を伸ばし引き留めようとする。

 

『やめておけ。今のお前が行った所で、なにも出来やしない』

 

 手を伸ばそうとした瞬間に先程、ジンに言われた言葉が頭の中に思い浮かび、伸ばそうとした手を引っ込めた。

 

(今の僕じゃ勝てない……)

 

 アメジオとジン、彼らのポケモン達がレックウザに挑む姿はロイもしっかり見ていた。彼らが全力でバトルする姿を見てもなお自分が勝てると思う程、ロイは自惚れてはいない。

 

(でも、それじゃあどうすれば……)  

 

『ロイ……お前が本気でレックウザをゲットしたいのなら、今の自分に何が出来て何が出来ないのかを正確に把握出来るようになれ』

 

(今の僕に出来る事……)

 

 

 

***

 

 

 

「ダァァ……」

「いや、追わなくていい」

 

 遠くへと飛び去って行こうとするレックウザを見てダークライは追撃を仕掛けようとするが、ジンはそれを止める。

 

 レックウザはかなりのダメージを受けていたが、まだ余力がありそうだ。その上、アメジオとのバトルで見せようとした切り札がある事も予想される。この場でこれ以上、バトルするのはかなり危険だと判断した様だ。

 

「お疲れさん。休んでてくれ」

 

 ジンはダークライを労うとモンスターボールへと回収する。直接的なダメージこそ殆どなかったが、レックウザと対峙したのだ。少しの間は休ませておいた方がいいだろう。

 

(取り敢えずは、これで安全は確保できたか……いや、エクスプローラーズがいる可能性はあるか)

 

 アメジオがここに現れた以上、近くに部下の2人がいる事は確実だ。可能性は低いが他の幹部クラスがいる事も考えられる以上、長居するのは得策ではない。

 

「とにかく一旦、戻るか。ボーマンダ、船まで頼む」

「ボォダァ!」

 

 ボーマンダはジンの指示を受け、ブレイブアサギ号へと向かって進み始めた。

 

(しかし、さっきのテラパゴスはルシアスの手記に描かれていた姿に似ていた。やはり、あれが本当の姿なのか?)

 

 進化の様には見えなかった。ただのフォルムチェンジなのか覚醒したのか、残念だがここでいくら考察しても答えは出ない。全ての真実に辿り着く為には、やはりレックウザを含めた残りの六英雄に出会うしかないのだろう。

 

(まぁ、いいさ。この短い期間に3体の六英雄と出会い、レックウザも含めれば4体とバトルする事が出来た。全ての六英雄が揃うのも案外、近いかもしれない)

 

 残りの2体、バサギリとエンテイ、情報こそないがこのポケモン達と出会えれば、今までのパターンから見て恐らくそこにレックウザも現れる。その時こそ、万全の状態のレックウザとバトルする事ができるかもしれない。

 

 バサギリとエンテイ、この2体とのバトルもジンにとっては楽しみの1つだ。ポケモンの性質から見てもオリーヴァやラプラス以上に戦闘タイプである事が予測できる。だが、やはり一番興味を惹かれるのはレックウザだ。

 

「その時が来るのを楽しみにして待つとするか……」

 





次回はちょっとオリジナル要素を入れるかもしれません

☆8
Ganzinさん

高評価ありがとうございます。

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