ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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今回、ジンの7匹目のポケモン(ハッサムよりも前にゲットした)が登場します


7匹目

 

 ラプラス海賊団との対立、予期せぬ黒いレックウザの登場など様々な出来事があったが、ジン達はなんとか全員無事に船に帰還する事に成功した。

 

 しかし、全員無事とは言っても全く問題がない訳ではなかった。ブレイブアサギ号の医務室では今、テラパゴスが深い眠りについている。

 

「モリー、テラパゴスの様子は?」

「ケガをした様子はないよ。限界まで力を使って疲れたんだろう」

 

 あの後、テラパゴスは『りゅうせいぐん』を打ち消すと普段の姿に戻ってしまい、それ以降はずっとこうして眠り続けている。モリーの診断で外傷などは見られなかった様だが、リコはとても心配そうにテラパゴスを見つめていた。

 

「今夜は私が付いてるから、2人共寝ていい。特にジン!ラプラスにレックウザとバトルの連戦だったんだ。ちゃんと休むんだよ」

「いや、俺は別に……」

「駄目だよ。ジンもちゃんと休んで。部屋まで送るから」

「……俺は怪我人じゃないぞ」

「怪我はなくても疲れてるんでしょう?それ位は私にだって分かるよ」

 

 実際、リコやモリーの指摘通り、ジンはかなり疲労がたまっていた。六英雄のラプラスとのバトル、海賊団の壊滅の為の作戦を練り、更にはレックウザとのバトルまで行ったのだ。肉体には外傷などは無くても精神的な疲労は蓄積している。

 

「……医者と恋人の前では隠し事は出来そうにないな」

「当然」

「うん。隠し事なんてしちゃ駄目だよ」

 

 隠し事、その単語が出た瞬間、咄嗟にサンゴの事が頭に浮かんでしまう。ジンは出来るだけ表情に出さない様にしたが、リコはその僅かな変化に疑問を抱いた。

 

「……どうしたの?」

「なんでもない……それよりも、部屋まで送ってくれるなら、そのまま一緒に添い寝でもしてくれないか?」

「えぇっ!?」

「ご指摘通り、疲れてるからな。リコが一緒に寝てくれれば、あっという間に体力も回復……」

 

 そこまで言った瞬間、ジンの頭にモリーの『かわらわり』が叩き落される。あまりの威力にジンの言葉は途切れ、頭を押さえた。

 

「な、なかなかの威力だ……」

「このエロガキ……そういう事に興味があるのは分かるし、この先一生するなとも言わない。だけど……1人で帰りな」

 

 モリーは顔を真っ赤にしたリコを背中に回し守る様な位置取りを取ると、怖い顔をしながら、ジンを睨みつける。その姿はまるで大切な妹を守ろうとする姉の様にも見えた。

 

「……了解。素直に引き上げるよ」

 

 今まで様々な試練を乗り越えて来たジンであってもその守りを突破するのは難しいと断念した様で、両手を上げ戦意がない事を示すと1人で医務室から撤退していく。

 

「全く、あいつは……リコ?あんた大丈夫?嫌なことは、はっきり嫌だって言わないと伝わらないよ」

 

 ジンが医務室から出るとモリーはリコを解放し、正面に見据える。だが、リコは未だに顔を真っ赤に染め上げ下を向いていた。

 

「……モリー」

「ど、どうした?」

 

 次の瞬間、リコは顔を勢いよく上げる。相変わらず真っ赤ではあるが、その顔は興奮が隠しきれていない。

 

「一緒に寝ようって……そういう事なのかな!?」

「…………は?」

「だ、だから!ジンは私とそういう事をしたいのかなって!?」

「ちょっ!?リコ!?落ち着いて!」

「わ、私、そういうの初めてだから、どうすればいいのか分からなくて……はっ!そうだ!参考にしたいからモリーの初めての時はどうだったのか詳しく教えて!」

「お、おい!?」

「やっぱり初めてって痛いのかな!?」

「っ!?落ち着け!この脳内ピンク!」

「ふぎゃっ!?」

 

 ジンに続きリコにもモリーの『かわらわり』……微妙に手加減していたので『からてチョップ』が炸裂し、リコはあまり女の子が上げてはいけない様な声を出しながら、その場に蹲る。名誉の為に記載するが、モリーにそう言った事の経験がない為、技を繰り出したなどと言う事実は恐らくない。

 

「うぅぅ……」

「この思春期カップルが……」

 

 蹲ったリコを見ながらモリーはそう罵倒する。しかし、それと同時に先程までのテラパゴスを心配して意気消沈していたリコが少し元気になった姿を見て、どこか嬉しくも感じていた。

 

 

 

***

 

 

 

 医務室を後にしたジンは自室へと向かって足を進める。しかし、こうして歩いていると先程のモリーの『かわらわり』の影響で頭が微妙に痛くなる為、その足取りはやや重い。

 

(思っていた以上に、効いたな……)

 

 未だに痛みを引かない頭を押さえながら歩くが、自室に戻る前に少し外の空気でも吸って行こうと考え、甲板へと出る。

 

「ふぅ……」

 

 ブレイブアサギ号は飛行中という事もあり、気持ちのいい風が吹いていた。不思議と先程よりも気分が楽になったジンは軽く一息つく。その場で風に当たりながら夜空を眺めていると自然と痛みも消えていき、改めて自室に向けて歩み始める。

 

「ん?」

「あっ……」

 

 甲板を進んでいるとそこにはロイ、そしてその横には頭をウトウトさせながら眠そうにしているホゲータがいた。昼間の一件の事もあってか、ジンとロイは暫しの間、互いに無言で気まずい空気が流れている。そんな中、先に口を開いたのはロイだった。

 

「……折角、会えたのに何も出来なかった。それどころか相手にすらしてもらえなかった」

「…………」

「ジン、言ってたよね?本気でレックウザをゲットしたいのなら、今の自分に何が出来て何が出来ないのかを正確に把握出来るようになれって……」

「……あぁ、言ったな。それでどうしたいんだ?」

「僕なりに色々考えたけど……やっぱり、強くなるしかないと思う。今は無理でもいつかレックウザに届くと信じて鍛え続けるしかないと思うんだ。だから……」

 

 そこまで言うとロイは真っすぐジンの事を見つめると、頭を下げ始める。

 

「僕たちに特訓を付けてください!」

 

(……こんな風に本気で頼まれたのは初めて会った時以来か)

 

 カントー地方の離島で出会った時、ロイは弟子入りを志願しジンはそれを承諾した。だが、それ以降は厳しい特訓に参り半ばジンにより強制的に参加していた節がある。そんなロイが自分の弱さを認め改めて特訓を付ける様に頼んできたのだ。

 

「本当に俺でいいのか?」

「レックウザとのバトルを見て確信した。ジンじゃなきゃダメなんだよ!」

 

 ジンの強さなどもはや疑う余地もない。更にレックウザと同じ伝説のポケモンのダークライを使いこなす姿はロイにとって決定的となった。ジンに特訓を付けてもらい、認められるトレーナーになる。そうすればレックウザをゲットできるかもしれないと。

 

「……分かったよ」

「っ!いいの?」

「あぁ、元々、途中で投げ出すつもりもないしな」

 

 師匠を引き受けた以上、ジンとしては最低でもロイが本気のジムリーダーと互角に戦える様になるまでの間は指導を辞めるつもりはなかった。本人にやる気が出たならば、むしろ大歓迎であった。

 

「それじゃあ、早速!」

「いや、今日はもう遅い。俺もそうだが、お前もホゲータも疲れてるだろう?今日はゆっくり休め」

 

 ジンにそう言われ、ロイは横にいたホゲータに視線を送る。先程まではウトウトしていただけだが、いつの間にか本格的に眠りについており、今から特訓するのは明らかに不可能だ。

 

「……そうだね。じゃあ、また明日!」

 

 ロイはホゲータを抱えると明日に備える為に、自室へと戻り、その場にはジン1人だけが残った。

 

「ロイの奴、焦ってるな……まぁ、やる気がないよりはいいか」

 

 伝説のポケモンのゲットを目指す者は多い。しかし、大概は出会う事も出来なかったり、出会えたとしてもその強さからゲットする事を断念する場合が多々ある。現状を考えるとロイは、そうならなかっただけ良かったと考えるべきだろう。

 

「21時か……この時間ならまだ起きてるな」

 

 ジンはスマホロトムを取り出し時間を確認すると、連絡先の中からとある人物を選び通話を掛ける。コールが鳴り待つ事数分、目的の人物は電話へと出た。

 

『やぁ、ジン君かい?』

「どうも、夜分遅くにすいません……オダマキ博士」

 

 ジンが電話を掛けた相手はジンにキモリを託し、ポケモンについて様々な事を教えてくれた人物でもある。ポケモンの分布を主に研究しているホウエン地方では有名なポケモン博士のオダマキだ。

 

『構わないよ。それよりもどうしたんだい?』

「実はポケモンの転送をお願いしたいんです」

『それは勿論、構わないが……今回は随分と早いね』

 

 ジンは手持ちの入れ替えを1週間に1度のペースで行っていた。だが、前回入れ替えてからまだ数日ほどしか経過していない。今までのパターンから外れるその行動に疑問を感じるのは当然と言えるだろう。

 

『それでどの子を送ろうか?ハッサムかい?それともコノヨザル?新入りのカビゴンかな?3体共元気にしてるよ!』

「それは良かった。ご迷惑おかけしてませんか?」

『大丈夫!こっちに来た初日にハッサムに手を挟まれたり、コノヨザルに殴られたり、カビゴンにのしかかられただけで問題はないよ!』

 

 問題だらけである。だが、オダマキ博士にとっては、それが日常の様だ。

 

「……なんかすいませんね」

『気にしないでくれ。私が迂闊に近づぎ過ぎただけなんだから』

 

 ジンにはその光景が用意に想像できる。オダマキ博士はポケモンに対して深い知識を持ってはいるが、凶暴なポケモンの逆鱗に触れるのが得意という変わった特技があり、彼に会うと何故かいつもポケモンに襲われていたりする。

 

『でも問題ないよ。いつも通り、あの子が助けてくれたからさ。この間もフィールドワーク中に野生のグラエナに襲われたんだが、あの子が撃退してくれたしね』

「……実は、そいつをこっちに送って欲しいんです」

 

 ジンがそう言った途端、オダマキ博士から笑顔が消え、真面目で深刻そうな顔つきとなっていく。

 

『あ、あの子をかい?』

 

 ジンが希望したのは言うなればジュカイン・サーナイト・ボスゴドラ・ライボルト・ミロカロス・ボーマンダに続く7匹目のポケモンだ。様々な理由からずっとオダマキ研究所に預けていたが、今回ある目的の為に久々に手持ちに呼び戻すつもりでいる。

 

「えぇ、ちょっとあいつの力が必要でして」

『う、うん……いや、勿論、転送はするんだが……その……こんな事、本当は言ってはいけないんだが、あの子がいなくなると色々と困るんだ……』

「……また喧嘩ですか?」

『あ、あぁ。そうなんだ……あの子がいないとまた争いが起こるかも……』

 

 オダマキ研究所には様々なタイプのポケモンが生息している。それ故に縄張り争いが定期的に発生していた。

 

 しかし、預けているそのポケモンは能力上、様々なポケモンの気持ちを理解できる為、研究所内のまとめ役を務めている。そんなポケモンが長期間いなくなれば再び研究所内に争いが起こるかもしれない。その事をオダマキ博士は危惧していた。

 

『ちなみに期間はどれくらいかな?』

「早ければ数日、長くても一週間って所ですかね」

『一週間か……分かった。それならなんとか……直ぐに転送の準備をするよ』

「いいんですか?」

『あぁ、あの子は君のポケモンだからね。ただし、一週間で戻してくれよ?その間に争いが起きたら私が、何とかして見せるから』

「分かりました。必ず」

『ところで、ジン君は今、6体持っているよね?誰をこっちに送るんだい?』

「あ、そうですね……」

 

 今の手持ちの6体の内1体を除いたポケモン達は入れ替えたばかりだ。流石に直ぐに研究所に送るのは忍びない。そうなってくると、必然的に送るポケモンは彼に決まりなのだが……

 

(……送って大丈夫だろうか?)

 

 ジンが送るべきか悩んでいるポケモンとはダークライだ。順番的に送る事は決定的なのだが、送ったら最後、オダマキ博士の事だ。研究の為と悪夢を自分から見に行く可能性がある。

 

(この人、たまたまポケモンの研究が出来るだけで心は子供のまま体だけ大きくなった様な人だからな……)

 

 温厚で偉ぶる事無く気さくに接してくれる良い人ではあるが、大人としての自覚が少々欠けているというのも事実である為、満更あり得ない話でもないのだ。

 

『ジン君?どうかしたかい?』

「……いえ、何でもないです」

 

 とは言え、ダークライだけをずっと手持ちに置いておくのも良くない。今後もポケモンは増えていくだろうし、その時に一度も研究所に送っていないと後々、何らかの支障が出るかもしれない。そう考えたジンはダークライの入ったモンスタボールを取り出した。

 

『さて、どの子かな?』

「ガラル地方でゲットしたポケモン……ダークライがこの中に入っています」

『ダークライだって!?まさかあのダークライかい!?シンオウ地方に伝わる幻のポケモンがなぜガラル地方に!?」

 

 ダークライの名を聞くとオダマキ博士は途端に目を輝かせ始める。高名なポケモン博士であろうとも伝説のポケモンと関わった事のある人は少ない。しかも別地方のともなれば尚更の様だ。

 

「実はですね……」

 

 ジンはなぜダークライがガラル地方にいたのかを説明していく。推測の部分も多い上に、ダークライの説明をする上で六英雄やテラパゴスの事も話さなくては行けない為、説明には少々時間を要した。

 

『なるほど。そんな事が……』

「どこから情報が洩れるか分からないので暫くは内密に頼みます」

『あぁ、勿論だ。それにしても……優しいポケモンの様だね。君のダークライは』

「…………そうですね」

『よしっ!私もダークライに興味が出て来た!是非、送ってくれ!』

「はい……ところで、扱いには注意してくださいね。悪夢を自分から見に行くのとかやめてくださいよ?」

『はははっ。いくら私でもそんな事はしないよ!』

 

(本当だろうな……)

 

 そこで一旦、通話を切ると転送の準備を開始した。それから程無くしてオダマキ博士も準備を終えた様でダークライの入ったモンスターボールが転送され、新たなモンスターボールがジンの手に納まる。

 

「出てきてくれ」

 

 新たに手持ちに加わったモンスターボールを宙に投げるとそこから1体のポケモンが飛び出してくる。そのポケモンは甲板に降り立つと嬉しそうな顔をしながらジンの肩へと飛び移った。

 

「久しぶり……悪いなオダマキ博士のお守りを任せて」

 

 このポケモンを常に研究所で預けているのには研究所内のまとめ役の他にもう1つの理由がある。フィールドワークに出ると必ずと言っていい程、野生のポケモンに襲われるオダマキ博士の護衛役も兼ねている為だ。

 

 その為、このポケモンは基本的に研究所に預けたままでジンも滅多に手持ちには呼ばない。だが、今回は例外だ。ロイの成長の為にはこのポケモンの存在が必要だと判断した。

 

「早速で悪いんだが、この動画を見てくれ」

 

 スマホロトムを操作し、保存された動画を表示するとそのポケモンに向け見せ始める。

 

『見てなさい!そこのポケモン!私が捕まえて見せる!……ふふっ……なんちゃっ……て』

「あ、悪い。間違えた」

 

 これは以前、モンスターボール工場の外で撮影したリコの恥ずかしい動画だ。突然、見知らぬ女性の訳の分からぬ動画を見せられ、そのポケモンは困惑している。今まであまり、女性に興味を持たなかったジンがこんな動画を持っていた事にも驚いている様だ。

 

「ほれ、こっちが見せたかった奴だ」

 

 リコの動画を一旦、止めると改めて目的の動画を再生する。その動画にはロイとホゲータ、カイデンが映っている。次々に彼らの特訓している場面やバトルシーンなどがハイライトの様に流れていく。

 

「今までに撮影しておいた動画を纏めた物だ。今夜中にこの2体の動きを完全に覚えてくれ。お前なら簡単に出来るだろう?」

 

 動画を見終えたそのポケモンは軽く頷くともう一度、再生ボタンを押し動画を見直し始め細かい癖を分析している。どうやら問題はないらしい。

 

「……明日が楽しみだな」

 





切りが良かったので今回はここまでです。7匹目の正体については次回明らかにします。

そのポケモンがずっと研究所に預けられている理由はサトシのフシギダネと同じ様な理由+いつでもどこでもポケモンに襲われるオダマキ博士を守る為と思ってください。

☆8
七奈南さん

☆9
スローイング

高評価ありがとうございます

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