最近のアニポケ、これまでの遅れを取り戻すかの様に進化が連続してますね。ホゲータも進化するのかな?
ホゲータ達が進化してから数日、この数日間はひたすらアチゲータ達とメタモンによるバトルに費やされたのだが、その甲斐もあり、2体は大幅にレベルアップする事に成功した。今ならば、敵意を示せばレックウザの視界に入る事は可能な筈だ。
「思っていた以上に順調だ。メタモンのお陰でもあるが、なかなか頑張ってるな……」
ジンは、自室にてスマホロトムで撮影した特訓の映像を見返しながら、2体の事を評する。
アチゲータについてはホゲータの頃から、その片鱗があった。しかし、タイカイデンは進化した事で才能が開花したと言っていいだろう。ボーマンダと共に特訓し、空中戦にも磨きがかかっており、今後の活躍が期待できそうだ。
「……研究所は大丈夫かな?」
動画のチェックを終えると、ふとオダマキ研究所の事が思い浮かぶ。ポケモン達の纏め役であるメタモンを連れ出してしまい、その後の様子については少々、気にかかっていた。
オダマキ博士は1週間は大丈夫と豪語していたが、ジンにはどうにもオダマキ博士の言葉を正面から信じる気になれない。無論、人間性は信頼できるのだが、何か問題を起こしているのではと気になってしまう様だ。
『ロトロトロトロトロトロト』
一度、気になってしまうと確認せずにはいられず、ついオダマキ博士の番号を選び電話を入れる。数コール後、電話に出たオダマキ博士の顔が画面に映った。
だが……
『ジン君?どうかしたのかい?』
画面に映ったオダマキ博士の顔は、心なしかむくんでおり、更には目は充血し、目の下にはクマができている。徹夜明けの、寝不足の人間の特徴がこれでもかと詰め込まれている。
「……オダマキ博士、ひょっとして悪夢を見て寝てないんじゃないですか?」
『な、何の事だい?私は、昨日の夜から、しっかり8時間も睡眠をとっているよ」
「しょうもない嘘つかないでください。その顔で8時間睡眠は無理がありますよ」
『あ、あはは、やっぱり分かっちゃうか……すまない。こんな機会、滅多にないからね。つい我慢できなくなってしまったんだ……」
どうやら、ダークライを送る前に散々、注意したにも関わらず、オダマキ博士はダークライにより悪夢を見せられた……この場合は、見せてもらったという方が的確かもしれない。
『しかし、ジン君!ダークライの悪夢は凄いよ!口にする所か、思い出すだけで恐怖で体が震えるんだ!どうすればこんな事が出来るのか興味が尽きないよ!』
オダマキ博士の顔が画面いっぱいに広がる。寝不足顔なのに対し、妙に生き生きしており正直言って、かなり怖い。
「……まぁ、気持ちは分かります」
『だろう!』
ジンも拠点がブレイブアサギ号の様な集団生活の場ではなければ、興味本位で悪夢を見せてもらいたいとは常々思っていた。そして、オダマキ博士には研究所内にポケモンの特性などを抑え込む特注の研究室がある。そうなれば試したいと思うのは研究者の性なのだろう。
「……その件は置いておくとして、研究所は大丈夫ですか?」
『あ~……それなんだがね……』
「まさか、既に問題が?」
『いや!まだ、そこまでではないんだ。だが……メタモンがいない事で少々、危うい雰囲気を出し始めているのも事実でね』
予想していた事ではあったが、数日とは言えメタモンが不在というのは大きな意味がある様だ。オダマキ博士の様子から見ても、いずれ問題が発生するのは時間の問題なのだろう。
『今は、私とジョシューでなんとか抑えているし、約束通り1週間は大丈夫だと思う。だけど、それ以上は少し厳しいかもしれないな……』
因みにジョシューというのはオダマキ博士の助手をしている青年の名前である。正に助手になる為に生まれてきたような名前だが、とても優秀で誠実な人物だ。ジンも何度か話したことがあるが、信頼できる人物だと記憶している。
「……分かりました。では、数日以内にメタモンをそちらに送りますよ」
『すまないが、そうしてくれると助かるよ』
オダマキ博士は申し訳なさそうな顔をしながら謝罪をする。だが、ジンは元々、メタモンの手持ちの長期滞在は難しいと思っていた。むしろ一週間だけでも手持ちに呼ぶ事が出来れば、それだけでも十分な価値がある。
メタモンは研究所に預けているジンのポケモン達と積極的に模擬戦を行っている。今後も新しいポケモンをゲットすれば、勝手に『へんしん』のレパートリーを増やしてくれる。そうして偶に手持ちに戻し、調整を行う。それだけで、十分、戦力として期待できるだろう。
「ちなみに、ダークライの様子はどうですか?」
『あぁ、来た当初は私の事も警戒していたけど、今ではかなり気を許してくれるようになったと思うよ。もっとも研究室からは出たがらないけどね……』
ダークライからしてみれば、研究室から出て他のポケモンを傷つけたくないのだろう。その反面、悪夢を恐れない所か見せて欲しいと懇願してくるオダマキ博士とはなかなか、いい関係を築いている様だ。
『どうする?ダークライをそっちに送り返そうか?』
「……いえ、そういう事でしたらもう数日、お願いしてもいいですか?」
『勿論だよ!』
ダークライがオダマキ博士に懐いてくれたのはいい傾向だ。研究所にいれば大勢の人やポケモンと触れ合う機会も増える上に、ポケモンの入れ替えもやりやすくなる。オダマキ博士の健康面以外では良いこと尽くしだ。
「それでは、研究所内で何か問題があれば直ぐに連絡を……それと少しは寝てくださいね」
『あははっ……気を付けるよ』
そこで通話は切られる。スマホロトムをポケットにしまうとジンは大きくため息をついた。
(研究所が落ち着いてるのもダークライが気に入り始めたのもいい傾向だけど……オダマキ博士が心配だな)
ダークライの悪夢を調べたいという気持ちは理解できた為、口出しはしなかったが、やはりダークライを送るのは精々、数日程度にとどめておき一度預けたら暫くは手持ちに残す方が良さそうだとジンは判断した。
「……ん?」
メタモンが、もうすぐ研究所に戻る為、今後の特訓メニューについて、変更点がないか模索していると突如、扉がノックされる。
『ジン!いる?』
「リコか?開いてるから入っていいぞ」
ジンの許可を得たリコは扉を開け、中へと入ってくる。
「どうしたんだ?」
「うん。実は……」
リコの話とはダイアナについてだった。話を要約するとダイアナが次の港でこの船を降りる事が決まっているらしく、彼女には内緒でお別れパーティーを開きたいと考えているらしい。ジンにもその手伝いをお願いしたいそうだ。
(少し、寂しくなるな……)
冒険者の大先輩であるダイアナの冒険譚はジンにとってもいい刺激となっていた。リコの祖母である事を抜きにしても、もっと一緒に冒険をしたいというのが素直な意見だ。
だが、それと同時にどこか納得も出来てしまう。何度か話をして感じていた事だが、ダイアナという人物は1つの場所に定着せず、団体行動をあまり得意としないタイプだ。遅かれ早かれ、この船を降りるのは避けられなかったのだろう。
「そういう事か……分かった。勿論、手伝うよ」
「ありがとう!じゃあ、ジンは私と一緒にカレー作りを手伝って!」
「了解だ」
ロイはポケモン達と一緒に飾り付け、ドットは出し物の動画編集などを行っているらしく、夕方までに準備を終えるとなれば、あまりのんびりしている時間はない。ジンとリコはダイアナに見つからない様に急ぎつつも静かに厨房へと向かうのだった。
***
レックウザとのバトル後、本部に帰還したアメジオはギベオンと謁見する為にエクスプローラーズの本部へと帰還していた。
「ギベオン様がお目覚めです」
謁見の間にはアメジオの他に執事のハンベルがいる。所定の位置で2人が待機していると目の前にあった壁の一部が光り始め、模様の様な形を成していく。
『アメジオ……真っ先に黒いレックウザに辿り着いたのはお前であったか』
「ですが、取り逃がしました」
『黒いレックウザ……あれと戦い何を感じた?』
「……持ちうる全ての力を出しきれば、勝算はあると思います」
実際、アメジオはレックウザを追い詰めていた。ジンの介入さえなければ、あの場で決着を付ける事も不可能ではなかったという自負がアメジオにはあった。
『ほぅ……』
アメジオの報告を聞き、ギベオンは意外そうな反応を示す。アメジオが成長した事はハンベルを通し、聞いていた。だが、それでもレックウザ相手にここまで堂々と勝算があると言い放つとは予想していなかった様だ。
「ですが……レックウザにはまだ、何か切り札がある。バトル中にそう感じました」
それはレックウザを追い詰め、確かな手応えを感じた時の事だ。レックウザが体から緑色のオーラを発生させた際、途轍もなく強い力をアメジオは感じ取っていた。正体は分からないが、もしも、あれが発動していたら勝者がどちらだったのかはもはや神のみぞ知ると言った所だろう。
『そうか……やはり、底知れぬポケモンの様だな』
「次こそは、必ずレックウザを手に入れてみせます!」
『我が楽園ラクアへの道、その鍵はレックウザとテラパゴスだ。必ず手にいれよ……』
その言葉を最後にギベオンの声は途切れ、壁の模様は消え去っていく。
「アメジオ様、謁見はここまでです」
アメジオとハンベルは共に謁見の間を退室していく。扉を出るとアメジオはハンベルと向き合うと、ある頼み事をし始めた。
「ハンベル、俺とバトルをして欲しい」
「私とですか?私が教えられる事は既に全て教えましたが?」
「はぐらかすな。お前が今まで全力を出していなかった事は分かっている。真剣勝負をして欲しいと言っているんだ」
「真剣勝負……ですか?」
「そうだ。俺はもう一度、黒いレックウザに挑む。その為には、奴が切り札を持っていようとも制圧できる力が必要だ。その為にも……」
「……かしこまりました」
決意の籠った真っすぐな眼差しを受けハンベルはアメジオとのバトルを承諾する。するとハンベルの影から1体のポケモンが姿を現した。
「ヨノワール、手加減はいらないそうです。久々に全力を出しますよ」
「ヨワール!」
その後、2人は本部内に設置されているバトルフィールドへと向かい、それぞれトレーナーゾーンに入って行く。既にフィールドにはハンベルのヨノワールが入り、アメジオのポケモンを待っている。
「頼むぞ!」
アメジオはモンスターボールを1つ取り出し、フィールドに投げつける。中から出て来たのは手持ちの中で最も付き合いの長く相棒と言って差し支えないソウブレイズだ。
「ブレッ!」
ヨノワールはゴースト単タイプ、ソウブレイズは炎・ゴーストの複合タイプ、相性だけで見れば五分五分と言った所だろう。
「いつでもどうぞ」
「……では、そうさせてもらう。ソウブレイズ!『つるぎのまい』だ!」
先手を譲られたソウブレイズはその場で剣を交差させると一回転し、攻撃を二段階上昇させる。その様子を見たハンベルは態度にこそ出さなかったが、予想外の技に驚いている様だ。
(アメジオ様がこの様な技を……)
ハンベルの知るアメジオは、常に強気で攻める事しかしなかった。『ゴーストダイブ』を使用し回避などもしたが、それはあくまでも次の攻撃の為でしかなかった筈だ。
「行くぞ!『サイコカッター』!」
「『シャドーボール』で迎え撃て」
いつまでも驚いている暇はなく、ソウブレイズは続いて右腕の剣を振り上げ『サイコカッター』を飛ばす。それに対し、ヨノワールは右の掌に『シャドーボール』を生み出すと『サイコカッター』にぶつけ相殺した。
しかし、相殺した際に煙が巻き起こり、フィールド全体を包み込んで行く。ソウブレイズは一瞬でその場を動き煙へと紛れた。
「煙に紛れましたか……」
正面、側面、背後、この煙を活かすのであれば攻撃はそこから来る事が予測できる。加えてソウブレイズは『つるぎのまい』で攻撃が上がっている為、油断はできない。ハンベルとヨノワールは最大限の警戒をし備えていた。
だが、攻撃はなかなか来ない。ハンベルが不審に思い始めているとソウブレイズは予想外の場所から現れた。
「っ!?上か!」
ソウブレイズは『ゴーストダイブ』を使用し、ヨノワールの真上に現れるとそのまま飛びだし、斬り付ける。
「『ゴーストダイブ』!」
「無駄です!ヨノワール!」
ソウブレイズは再び、『ゴーストダイブ』で闇に入り込み距離を取ろうとする。しかし、ヨノワールは速やかに態勢を立て直すと闇の中に両腕を突っ込み、ソウブレイズの両肩を掴み拘束した。
「逃がしはしません。手づかみポケモンのヨノワールには、この程度、お手の物です」
アメジオが再び、『ゴーストダイブ』を使う事は彼の事をよく知るハンベルには読めていた。それ故に先読みしソウブレイズを拘束する事が出来たのだ。しかも、両肩を封じた事で自慢の双剣を使うことも出来ない。
「一気に行かせて頂きます。『シャドーボール』!」
双剣が使えない以上、ソウブレイズに打つ手はない。そう考えたハンベルはここで一気に勝負を仕掛けに行く。
「ソウブレイズ!『ひかりのかべ』!」
「なにっ!?」
『シャドーボール』が届くよりも早くソウブレイズは『ひかりのかべ』を展開する。効果抜群の技故に完全にダメージを消し去る事は出来なかったが、ダメージ量はかなり下がったと見ていいだろう。
(アメジオ様が防御を……)
それは『つるぎのまい』の時の衝撃の比ではなかった。攻撃重視のアメジオでは考えられない技の選択、その事に流石のハンベルも驚きを隠せない。
「もう一度『シャドーボール』!」
驚きこそしたが、まだ有利なのは自分だ。ハンベルはそう自分に言い聞かせ、攻撃の指示を出す。確かに双剣は未だに封じたままだ。『ひかりのかべ』はダメージを下げる事は出来ても無効化は出来ない。攻め続ければいずれはソウブレイズは倒せるのだから、その判断は間違っていない。
だが……
「双剣を止めようともこの技の前では関係ない!『アイアンヘッド』!」
ソウブレイズは『シャドーボール』を撃つ準備をしていたヨノワールの頭に目掛けて鋼の様に硬化させた頭で渾身の頭突きをぶつける。ヨノワールは強烈な一撃を受け、思わず両腕を放しソウブレイズを解放してしまった。
「驚きました。まさか、その様な技まで会得させていたとは……」
「ソウブレイズの双剣を封じる……あいつのやりそうな事だからな。対策位は考えている」
ソウブレイズの攻撃の要は両腕の剣だ。故に剣を封じてその隙に倒す。確かにジンならばそう言った手法を取る可能性がある。数えきれない程、ジンとのバトルをシミュレーションしてきたアメジオはその事に気づき、剣に頼らない技を習得させていた。
「アメジオ様……成長なさいましたね」
「当然だ。あいつに……ジンに何度も敗れ、強くなると決めた。たとえ、今までの自分のバトルを捨てる事になろうともだ」
「……成程。敗北が……いや、好敵手と呼べる存在。それがアメジオ様をそこまで強くしたのですね」
競い合う相手がいる方が人は成長できるというのは一般的によく知られている。しかし、アメジオにはそういった相手はおらず、黙々と1人で強くなるしかなかった。だが、ここに来て現れた宿敵ともいえるジンの存在がアメジオを急激に強くなる要因になったのだとハンベルは推測する。
「力を求める、その意思は本物の様ですね。ならば……」
ハンベルは懐に手を入れるとそこからテラスタルオーブを取り出した。ここから先は正真正銘、全力を出しアメジオとの勝負に挑むという事らしい。
「こちらも全力で応えねばなりませんな」
「やっと本気になったか……ハンベル!」
ハンベルとアメジオ、双方が鋭い眼光で睨み合っているとハンベルの持つテラスタルオーブにエネルギーが収縮していく。
「深淵を歩め!ヨノワール!」
エネルギーのチャージが完了したテラスタルオーブをヨノワールの頭上に投げつける。無数の結晶が包み込み、中から現れたヨノワールは宝石の様に輝く体と頭上の冠には幽霊を生やした姿となっていた。
「ヨノォォォォォォォォ!」
ヨノワールはテラスタル化と同時に雄叫びを上げる。
「『シャドーボール』!」
ヨノワールはテラスタル化した事によりゴーストタイプの技の威力が上がっている。先程よりも遥かに強力な『シャドーボール』を生み出すとソウブレイズ目掛けて撃ち出す。
「切り裂け!『むねんのつるぎ』!」
迫りくる『シャドーボール』をソウブレイズは『むねんのつるぎ』を発動し、右腕の剣で一刀両断にする。しかし、その際に発生した煙の影響で視界を奪われてしまう。
「『シャドーパンチ』!」
その瞬間、ソウブレイズの前方の煙が吹き飛び、そこに拳を構えたヨノワールが現れる。回避する事は出来ない。一瞬の内にそう判断したソウブレイズは左腕の剣を咄嗟に持ち上げ、ヨノワールと自分の体の間に挟み込み、防御を取ろうとする。
「ヨノッ!」
だが、それでも完全に防ぎぎる事は出来ない。僅かばかりダメージを抑えることは出来たが、ソウブレイズは勢いよく吹き飛ばされ、壁へと激突した。
「ソウブレイズ!?」
威力の上昇した『シャドーパンチ』を受けたソウブレイズだが、防御が間に合った事もあり何とか立ち上がって見せる。しかし、体は傷だらけで体力も既に限界が近い。後、1撃でも攻撃を受ければ倒されてしまうだろう。
「今のを耐えますか……」
今の一撃は決定打になるという確信があった。それだけにソウブレイズが、こうして立ち上がったのはハンベルにとっても予想外の事態だ。
それだけではなく、ハンベルにとって更に厄介な事がこのタイミングで発生する。立ち上がったソウブレイズの鎧の外装が一瞬紫色に輝くと砕け落ちていく。
(『くだけるよろい』……厄介な)
特性『くだけるよろい』、物理技でダメージを受けると、防御が1段階下がる代わりに素早さが2段階上がる効果を持っている。ソウブレイズはもはや瀕死寸前だ。防御が幾ら下がろうと関係ない。この状況ではデメリット以上にメリットがある特性と言えるだろう。
(ソウブレイズの限界は近い。勝負をかけるならば今だ!)
(回避に徹すれば、いずれソウブレイズは体力が尽きる……いや、『つるぎのまい』と『くだけるよろい』でソウブレイズの攻撃、素早さは格段に上がっている。もしも攻撃を受ければ、ヨノワールと言えども危険……ならばダメージを負ったばかりの今が絶好の好機!)
ソウブレイズの残りの体力を考え短期決戦に挑むアメジオ、攻撃と素早さの上がったソウブレイズの一撃を警戒し、勝負を着けに行こうと考えたハンベル、両者の意見は偶然にも一致し最後の技を持って勝負を仕掛けに出る。
「ソウブレイズ!『シャドークロー』!」
「ヨノワール!『シャドーパンチ』!」
素早さが上のソウブレイズが最初にその場から駆け抜けフィールドの中央にいたヨノワールへと向かっていく。ヨノワールはソウブレイズを見据えると、その場から動かずに拳を構え待ち受けた。
「ブレィィィィィ!」
「ヨノォォォォォォ!」
ソウブレイズは右腕の剣で斬り下ろし、ヨノワールは右腕の拳を振りかざした。両者の剣と拳がフィールドの中央でぶつかり合い、激しい衝撃音が部屋に響き渡る。互いに死力を振り絞り、繰り出した技の威力は、ほぼ互角だ。
「ソウブレイズ!」
「ヨノワール!」
アメジオとハンベルの声にも熱が籠っている。互いに意地をかけた攻防は無限の様にも感じられたが、遂に決着の時が来た。
「ソウッ!」
ソウブレイズは反対の左腕の剣を振り上げヨノワールの右腕を斬り付ける。ヨノワールは咄嗟の事に対応できず、攻撃を受けてしまった。全ての力を集中した右腕に僅かにでもダメージが入れば当然、『シャドーパンチ』の威力は落ちる。
互角であった攻防に置いて、この差は決定的な物となってしまった。ソウブレイズの右腕の剣はヨノワールの拳を叩き落し、そのまま胴体を斬り付け駆け抜けていく。
「ッ!?……ヨッ……ヨノッ……ッ……」
ヨノワールは苦痛な声を出しながら、その場に倒れうつ伏せになる。それと同時にテラスタルは解除され、目はぐるぐると渦を巻いており、戦闘続行は明らかに不可能だ。
「ハンベル……俺の勝ちだ」
「えぇ……私の敗北です」
ハンベルは正真正銘、全力を尽くした上でこのバトルに敗北した。悔しいという気持ちは当然ある。だが、それ以上に嘗ての教え子でも会ったアメジオがここまで強くなった事を心から喜んでもいた。
互いにソウブレイズとヨノワールをモンスターボールに回収するとフィールドの中央で2人は向かい合う。
「本当にお強くなられましたね」
「いや、まだまだだ。俺はもっと強くなる。そして、レックウザに……ジンに勝ちたいんだ」
既にアメジオは十分に強い。ポケモンリーグに出れば優勝し、上手くやれば四天王に勝てる程の強さを手に入れている。だが、それでも貪欲に今よりも強くなろうと必死に藻掻いていた。
「その気持ちを持っていれば、いずれは遥か高みに到達できます。ギベオン様の様に……」
そんなアメジオの姿を見たハンベルは、今のアメジオであれば託すことが出来る。そう判断した様で、ポケットから2つのボールを取り出し、アメジオに差し出す。1つは通常のモンスターボール、そして、もう1つは……
「これは……テラスタルオーブ?」
「はい。お受け取り下さい」
ハンベルが差し出したボールの内1つは、先程までハンベルが使用していたテラスタルオーブだ。確かに、これがあれば戦略の幅が広がり、戦力が一気に向上する。
「貰っていいのか?」
「えぇ……ですが、テラスタルの力を引き出せるのかはアメジオ様次第です」
「使いこなして見せろという事か……分かった。テラスタルを知り、必ず強くなって見せる」
アメジオはテラスタルオーブを受け取るとポケットにしまい込む。そして、ハンベルの差し出してきたもう1つのモンスターボールへと視線を送った。
「この中には何が入っている?」
「とあるポケモンが入っております。今から3億年前のポケモンとされており、嘗てイッシュ地方に存在したプラズマ団という組織が研究していたポケモンです」
「3億年……化石ポケモンか?」
「その通りです。プラズマ団壊滅後、警察が手を付けるよりも早く彼らの研究施設に1つだけ残されていた化石と僅かなデータのみを回収していたのですが、研究班の者達の奮闘もあり、つい先日に漸く復活と改造に成功したのです」
正直、アメジオにはそれがどれだけの偉業なのかは理解できなかった。だが、ハンベルの様子からどれだけ大変な事であったのかは伺える。
しかし、アメジオが興味のある事は1つだけだ。
「このポケモンは役に立つのか?」
これがアメジオにとって最も重要な事だ。珍しいポケモンだという事は理解できるが、それが戦えるのかと聞かれればまた別の話である。ハンベルには感謝しているが、戦力として期待できないポケモンを手持ちに加えるつもりはアメジオにはない。
「勿論です。単純な強さならばヨノワールやソウブレイズ以上である事を保証致します」
「なにっ!?」
ヨノワール、ソウブレイズは共に並みのポケモンでは勝つことが出来ない程の強さを有している。その事を理解しているハンベルがそう断言したのだ。未だに名も知らぬポケモンではあるが、即戦力になるのは間違いない。
「ゲノセクト……それがこのポケモンの名前です」
アメジオにとっては名前すら聞いたことがないポケモンだ。だが、即戦力になると分かった以上、興味は惹かれる。思わず、手を伸ばしモンスターボールを手に収めると途端にボールが開き、ゲノセクトが姿を現した。
「これが……ゲノセクト」
紫色の体をしており、まるでロボットを思わせる全身人造物らしい鋭角的なラインで構成されている。更に背中には砲台の様な物も付いており、とても化石ポケモンの様には見えない。
(……強いな)
レックウザやダークライを見た時にも感じた強者のオーラ、それが目の前のゲノセクトからは漂っている。ハンベルがソウブレイズ以上と太鼓判を押すのも理解できる程だ。
(欲しい……)
トレーナーとしての本能が目の前にいるゲノセクトを求めていた。たとえ、この場でバトルする事になってでもこのポケモンを手持ちに加えたい。その衝動を抑える事の出来なかったアメジオは気づけば、ゲノセクトに目掛けてモンスターボールを突き出していた。
「俺と……共に来い」
短くも強い意思の籠った言葉だ。ゲノセクトは真っすぐにアメジオを見つめ、アメジオもそれに応えるかの様に目を逸らさない。
「…………」
暫くするとゲノセクトは頭を軽く下げ、アメジオの手にあるモンスターボールに自らの意思で戻っていく。
「……どうやら、アメジオ様を主と認めた様ですね」
「そうか……」
態度にこそ出していないが、アメジオの表情は心なしか微笑んでいる様に見受けられる。本人は認めないかもしれないが、これ程のポケモンに認められた事をどこか喜んでいる様だ。
「ですが、お気を付けください。ゲノセクトはプラズマ団の手により復活しイッシュ地方で5体、その存在を確認されています。そのゲノセクトは恐らく、復活した者達の中で最も強く好戦的な性格で戦う事を何よりも喜びと感じている個体です。アメジオ様が主に相応しくないと判断すれば、問答無用で弓引く存在にもなり得る事をお忘れなき様に……」
ゲノセクトはアメジオを一応、主と認めたが現段階では仮の主と言った所なのだろう。これから、本当の主として認められるには、その強さを示し続けなければならない。それが出来なければ、ゲノセクトはあっさりアメジオを見限るという事だ。
「……いいだろう。望むところだ」
***
新たに決意を固めるアメジオ、そんなアメジオの様子をこっそりと監視するポケモンがいた。そのポケモンは同じエクスプローラーズの幹部でもあるスピネルのオーベムだ。
「ゲノセクト……ですか」
オーベムに取り付けたカメラを通して別室ではスピネルが、アメジオ達の様子を監視していた。アメジオの強さにも驚いたが、それ以上にゲノセクトの存在にスピネルは興味を惹かれている。
「……まさか、アメジオがハンベルに勝利するとはな」
スピネルの背後から、もう1人の幹部のアゲートがチャーレムを引き連れ現れる。
「見ていらしたのですか?」
「途中からだ。しかし、まさかゲノセクトまで託すとは……」
「おや?ゲノセクトについて何かご存じで?」
「詳しくは知らん。報告書で読んだ程度だ」
ゲノセクトの復活を担当していたのはアゲートではない。だが、他の幹部と比べて研究班の元に立ち寄る事の多い彼女はその存在だけは知っていた様だ。
「アメジオがあのポケモンを扱えるかどうかは分からんがな」
アゲートが報告書で読んだ限り、ゲノセクトは強力な力を有している。だが、それ故に扱えるトレーナーがいなかった為、泣く泣く戦力にするのを諦めたポケモンだ。
アメジオが強くなったのは映像を見て理解していたが、それでもゲノセクトを扱いきれる可能性は低い。アゲートはそう分析していた。
「まぁ、好きにさせておきましょう。こちらにはテラパゴスの共鳴反応データがあります」
「あぁ、黒いレックウザを手に入れるのは我々だ」
***
アメジオが新たな戦力としてゲノセクトを手持ちに加えていた頃、ブレイブアサギ号ではダイアナの送別会のサプライズパーティーが行われていた。
パーティーではジンとリコの二人が作ったカレーやマードック特製のスペシャルケーキなどが振る舞われ、更に出し物としてダイアナとライジングボルテッカーズの出会いや旅の思い出を編集した動画が上映された。
ダイアナはこのサプライズパーティーを楽しんでくれた様で、別れの寂しさはあったのかもしれないが屈託のない笑顔を浮かべながら、喜んでいた。
「今日は本当に楽しかったよ。2人共、本当にありがとう」
「いえ、こちらこそ楽しませてもらいましたよ」
「うん。私もパーティーってなんだか久しぶりで、ちょっとはしゃぎすぎちゃった」
パーティーを終え、他のメンバー達は騒ぎ疲れてそれぞれの部屋で休む中、ジン・リコ・ダイアナの3人はパーティーで使用した食器の後片付けを行っていた。
「……やっぱり見違えたね」
「もう……おばあちゃん、そればっかり言うんだから」
「実際、そうだろ。俺と初めて会った時の内気なリコはどこに行ったのやら……」
「そ、そんなに変わったかな?」
リコとしては自分にそれ程、変化があったとは思っていなかった。自分に起こった変化というのは気づきにくい物なので仕方ないとも言えるのだが、リコの変化は他者から見れば明らかである。
「変わったさ。同室のアンと俺以外に学園に友達なし。授業でペアを作るときも他の子には話しかける事ができなくて結局、アン以外とはコンビを組めないし、それから……」
「わーーーーーー!それ以上は言わないでいいから!」
ダイアナの前で次々に公表されていくリコの黒歴史の数々、と言ってもこの程度は氷山の一角に過ぎない。思い返せば、初めて会ったジンに抱き着き、その日の内にお姫様抱っこされるなど上げれば次々とリコの黒歴史は湧いてくる。
「もぅ……おばあちゃん、ペンダントを託してくれてありがとう」
「ん?」
「前におばあちゃんが言ってた通りだった。怖いのは最初の一歩だけ……一歩ずつ踏み出して自分の気持ちを口に出来る様になって見た事のない景色がどんどん広がっていった。ドキドキしたりハラハラする事もいっぱいあったけど、仲間と一緒だから平気、ずっとワクワクが続いてるよ」
リコはダイアナが船を去る前にどうしてもこの事を伝えておきたかった様だ。
もしも、ダイアナからペンダントを託されていなければ、リコは今でも学園内で生活していただろう。学園で、ジンやアン、ニャオハと共に過ごす日々は、きっと楽しい物になった筈だ。だが、そこにはミブリムやテラパゴス、ライジングボルテッカーズのメンバーはいない。
彼らとの出会いがなければ、今のリコの成長には繋がらなかった。ダイアナはリコを見違えたと評価したが、そのきっかけを作ったのは他でもないダイアナ本人なのだ。
「リコ……本当にいい仲間たちと巡り合えたんだね」
「うん!」
「それに恋人まで作って……結婚は何年後にするんだい?」
「け、結婚!?」
ダイアナからの突然の問いに慌てたリコは持っていた皿を放り投げてしまう。床に落ちる寸前でジンがキャッチした為、事なきを得たが慌てすぎていてその事にすら気づいていない様だ。
「お、おばあちゃん!?気が早すぎるよ!?」
「そうかい?ジンはどう思う?」
「そうですね……このまま特に問題がなければ二十歳位を目途にでいいかと」
「じ、ジン!?」
「ふむ……まぁ、それが現実的な数字だろうね」
「とは言え、六英雄やラクアを探す冒険に区切りがつかないとそれも難しいですけどね」
冒険家という仕事は基本的に収入がない為、儲からない。その状態では結婚など難しい、特にリコの父のアレックスは認めてはくれないだろう。ジンであればチャンピオンや四天王、ポケモン関連の仕事であれば就職はそこまで難しくはない。
だが、その為には六英雄やラクアを探す旅を終わらせなくてはならない。この冒険をあと何年間続けるのかによって結婚の時期はずれてしまうだろう。
「リコはその辺、どう思……」
「二十歳……結婚……はうぅぅ……」
リコの意見を聞こうとするが、リコは顔を赤くし混乱状態へと陥っていた。思っていた以上に具体的数字が出てしまった為に未来の姿を想像し、脳のキャパシティーを超えてしまった様だ。
「こうなると、暫く待つしかないんですよね……」
「……結婚は、まだ当分、先になりそうだ」
ジンとダイアナは暫く、そのままリコの事を放置する。それから約五分後、リコの混乱が解けた。まだ顔は少し赤いが、徐々に落ち着きを取り戻している。ジン達が不用意に揶揄いさえしなければ問題はないだろう。
「そうだ……リコ、それにジンもちょっとついてきな」
食器を洗い終えるとジンとリコはダイアナに連れられ、展望室へと移動する。ここはダイアナが仮の住まいの様に使っており、彼女の荷物などが纏めて置かれている。ダイアナはその中から一冊の本を取り出すとリコに差し出した。
「持っておゆき、きっと役に立つ筈だ」
ダイアナがリコに差し出した本は、彼女の冒険の記録だ。ベテラン冒険者であるダイアナの記録、確かにこれを読んでおけば、いざという時に役に立つ日が来るかもしれない。
「でも、おばあちゃんの大切な本の筈じゃあ……」
「私はね、リコを見ていたら昔、抱いていた冒険への憧れが蘇ってきたんだ。私は新しい冒険を始める。だから……これは、あんたに託すよ」
「おばあちゃん……分かった。じゃあ、代わりにこれを上げる」
リコはそう言うとポケットからある物を取り出し、本と交換する形でダイアナに差し出した。
「素敵だね……」
リコがダイアナに送ったのは青色を基調にしたミサンガだ。そのミサンガをダイアナの左腕の手首に巻き付けていく。
「学校の友達に作り方を習ったの。ペンダントを貰ったから、代わりのお守りにしてね」
「ありがとう、大事にするからね……2人共、テラパゴスの事を頼んだよ」
「うん!」
「任せてください」
その後もジン達は、そのまま展望室に残り色々な事を話した。ダイアナの冒険記、リコとジンの出会いや学園での出来事、話す事は山の様にあった。そうしていると、いつの間にか時間が経っていた様で、日が昇り始めていた。
***
全員と挨拶を済ませたダイアナはブレイブアサギ号を下船し港へと降り立った。去っていく船と船尾にいるリコとジンに手を振り、最後に伝えたい事を2人に聞こえる様に大声で叫ぶ。
「リコ!ジン!私が生きている内に曾孫を抱かせておくれよ!」
これだけ離れた距離でも分かる程にリコは顔を赤くし、ジンはそんなリコを面白そうに見ている。何度も見た光景だが、不思議と何度でも見たくなってしまう。
「ふふっ……このやり取りも当分は見納めか」
ジンとダイアナがリコを揶揄い辱める。これが恒例のパターンであり、ダイアナ自身、リコのその姿を楽しんで見ていた。それが当分、見られなくなる。ダイアナが今、抱いている寂しさの中には恐らくその事も含まれているのだろう。
「リコ……」
「ウィン……」
寂しそうにしているのはダイアナだけではない。彼女のポケモン達も同じ様だ。
「クヨクヨしてる暇はないよ!私達も頑張らないとね!行くよ、ウインディ!イキリンコ!」
ダイアナは荷物を背負い、ブレイブアサギ号に背を向けるとポケモン達と一緒に新しい冒険へと旅立っていく。
この先、彼女が何を目指し旅をするのかは本人にしか分からない。だが、ダイアナがジン達と再び出会う時はきっと来る。そんな予感がしていた。
***
「俺達は六英雄を見つけ出す」
ブレイブアサギ号の船首、そこには今、メンバー全員……ドットは例によりスマホロトム越しではあるが揃っていた。全員に確認をとる様にフリードは今後の目標を語り始める。
「黒いレックウザ」
「仲間になってくれたオリーヴァ、ガラルファイヤー、ラプラス」
『それとまだ未発見のバサギリとエンテイ』
「素直に協力してくれればいいが……果たしてどうなるか」
ジンとしては、穏便に済むならばそれに越したことはないと思っている。だが、出来る事ならば2体共、バトルをしてみたい相手である。そんな矛盾気味の複雑な感情を抱いていた。
「古の冒険者ルシアスと一緒に旅したポケモン達」
「テラパゴスもルシアスと一緒だったんだよね」
「共に歩もうぞ」
全員が円を組む様に丸まり、最初にランドウが拳握り円の中央に伸ばした。
「全ての六英雄と出会えば……」
「テラパゴスが本来の力を取り戻し……」
「ラクアへの道が開かれる!」
ランドウに続くようにマードック、モリー、オリオの順に同じ様に続いて行く。
「きっとラクアに連れて行ってあげる!」
「約束だからな」
『神秘的で刺激的だ!ドキドキする!』
「残るは後3体!」
「六英雄の調査を進めつつ、パルデアへ向かいテラパゴスの事を調べる」
リコ、ジン、ドット、ロイ、そして最後にフリードが拳を伸ばし、全員の拳が中央でぶつかり合い、手を上下させる。
「ライジングボルテッカーズ出発!」
こうしてライジングボルテッカーズはパルデアへと向けて旅立つのだった。この先、パルデアでの冒険で何が待ち受けているのか、この時はまだ誰も知らない。
今回は割とアメジオメインの話しでした。更に6体目にゲノセクトを追加です。
レックウザVSダークライVSゲノセクト……早く書きたいな~
☆10
バルセロスさん
高評価ありがとうございます。
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