ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

73 / 114

今回、ジンがポケモンハンター達に対して、結構ブラックな所を見せています。


VSドラピオン

 

 鋭い視線で睨みつけてくるドラピオンに対し、ジンは楽しそうな笑みを浮かべるとポケットからモンスターボールを取り出し、投げつける。

 

「ゴドォッ!」

 

 モンスターボールから現れたボスゴドラはジンとドラピオンの間に入り込み、ジンを守る為、盾の様に立ち塞がった。

 

「来いよ。先手は譲ってやる」

 

 ジンはドラピオンを煽るような口調で攻撃してくるように催促した。このドラピオンが本当にシャインが言っていた凶暴なポケモンなのか見極めるつもりらしい。

 

「ドラァッ!」

 

 ドラピオンは両腕の爪をボスゴドラに向けた。爪が白く光り、その先端から幾つもの鋭い針がボスゴドラに向けて発射される。

 

「受け止めろ!『てっぺき』!」

 

 ボスゴドラは『てっぺき』にて防御の姿勢を取ると、迫りくる『ミサイルばり』を正面から受け止める。虫タイプの技はダメージ半減な上に『てっぺき』で防御力は上がっていた為、大したダメージもなく受けきることが出来た。

 

「今度はこっちが行くぞ!『もろはのずつき』!」

 

 『ミサイルばり』を受けきったボスコドラは攻勢へと転じた。ドラピオン目掛けて全ての力を込めた頭突きをくらわせようと急接近する。

 

「ドッ!?ドラ!」

 

 迫りくる威圧感から、ドラピオンは瞬時にボスゴドラを止められないと判断したのだろう。その場で両腕を回転させると自身の真下の地面を掘り始め穴の中に逃げ込んでいく。

 

(『あなをほる』で逃げたか……)

 

 酒場でシャインが話していた情報に、カバルドンの群れが襲われた現場には穴を掘った痕跡があるとは聞いていた。恐らく、ドラピオンは今と同じ様に受け止めきれない技や周囲を囲まれた場合、地中に逃げる事で窮地を凌いでいたのだろうと推測できる。

 

 だが、この回避方法はアメジオのガブリアスや他にも多くのポケモンやトレーナーが使ってきたやり方だ。対処は然程、難しくはない。

 

「『じしん』だ!」

 

 地中に逃げたのであれば、地中ごと揺らしてしまえばいい。ボスゴドラは片足を上げるとそのまま力を込めて地面を踏みつける。その結果、地面は大きく揺れ地中にいたドラピオンは大ダメージを受け穴から強制的に引きずり出され宙に浮いてしまう。

 

「狙うぞ!『ストーンエッジ』!」

 

 『じしん』の影響で空中に飛び出たドラピオンに向けてボスゴドラは身体の周辺に生み出した尖った岩の欠片を次々に発射していく。

 

「ドラァッ!」

 

 ドラピオンはまるで舐めるな!とでも言うかの様に叫ぶと両腕の爪を光らせ、更には尻尾を鉄の様に硬化させると、迫りくる『ストーンエッジ』を爪で切り裂き、尻尾を振り回す事で叩き落していく。

 

(『つじぎり』と『アイアンテール』を同時に……なかなかやるな)

 

 効果抜群の『じしん』に耐える辺り、耐久力も悪くない。『ストーンエッジ』を全て防ぐのを見れば攻撃力も及第点以上だ。まだまだ正確な強さは測り切れていないが、それが幸か不幸か分からないが、この時点でドラピオンはジンの中で一定の評価を得ることに成功する。

 

「いいぞドラピオン……お前の力、もっと見せてくれ!」

 

 ジン言葉に呼応するかの様にドラピオンは地面に着地すると腕をクロスさせながら、その場で一回転し続いて両腕の爪を体に突き刺し始める。バトルを見ていたリコやハンター達にはドラピオンの行動の理由が分からなかった様だが、ジンは直ぐにその行動の意味を察した。

 

(『つるぎのまい』に『つぼをつく』……積み技もあるとは技が豊富だな)

 

 しかも『つぼをつく』はどの能力が上がるのかはランダムで決まる技だ。『つるぎのまい』で攻撃を上げているのは確定として他の能力もとなると油断が出来ない。

 

「ボスゴドラ!『じしん』だ!」

 

 一気に勝負を終わらせようと、ボスゴドラは再度、『じしん』を発生させた。ドラピオンにとっては二度目の効果抜群の技だ。如何に防御力があろうとも、もう一度、この技を受ければ次は耐えきれないだろう。

 

「ドッラァ!」

 

 しかし、ドラピオンは『じしん』が命中するよりも早くに行動を起こし始めた。尻尾を地面に叩きつけるとその反動を利用し、再び空へと飛びあがり『じしん』を回避したのだ。

 

(『つぼをつく』で上昇したのは素早さだったか……)

 

 今の一連の動きから、ジンはそう確信した。ボスゴドラは手持ちで最も鈍足かもしれないが、それを抜きにしても先程よりもドラピオンの動きが早くなっている。

 

 しかし、結果的に見ればジンにとっては幸運とも言える。元々、ボスゴドラは鈍足で素早さでは負けていたのだ。今更、少し素早さに差が出来た所で大勢に影響は出ないだろう。

 

(『ストーンエッジ』は恐らくまた防がれる。だったら……)

 

「地上に落ちてくるタイミングを狙うぞ!『もろはのずつき』だ!」

「ゴドォッ!」

 

 遠距離攻撃が駄目ならば従来通り、ボスゴドラの得意な接近戦で倒すだけだ。ボスゴドラはドラピオンが落ちて来るであろう落下地点に向けて前進していく。ドラピオンが何か技を使い迎撃してこようともボスゴドラの防御力ならば問題なく受けきり攻撃を命中させられると判断した。

 

「ドラァァ!」

 

 しかし、ここでドラピオンは思わぬ技を選択する。ドラピオンは3つの怪しい紫色の光球を生み出すとそれを連続でボスゴドラに向けて放った。

 

「……なるほど」

 

 ドラピオンが使用したのは『あやしいひかり』だ。全ての攻撃を受けるつもりで突っ込んでいたボスゴドラは当然、この『あやしいひかり』を避ける事は出来ない。『あやしいひかり』はボスゴドラの顔面へと到達すると頭部を何回転もし、ボスゴドラの正気を奪っていく。

 

「ゴ?ゴ、ゴドォ?」

 

 『あやしいひかり』を受けたボスゴドラは、その場で立ち止まり混乱状態に陥ってしまう。それを見て好機だと思ったのだろう。ドラピオンは地上に降り立つと自らの牙に炎を纏わせると、ボスゴドラに噛みつこうと一気に迫った。

 

 混乱状態になった今こそが、絶好の好機。その判断に間違いはない。だが……

 

「ボスゴドラ!」

「ゴッッッドォッ!」

 

 その瞬間、ジンの声が僅かに届いた様でボスゴドラは自ら頭を地面に向かって力の限り叩きつけた。すると混乱状態に陥っていた筈のボスゴドラは正気を取り戻し、ドラピオンを視界に捉える。

 

(……それでいい)

 

 ボスゴドラはジンのポケモン達の中で最も小細工を嫌い、そして苦手としている。その為、ジンも敢えてボスゴドラにはジュカインやサーナイトの様に細かい技の指示は出さない。その代わりにこの様な混乱状態に陥った場合の対処法だけは仕込んでいたのだ。

 

「ドラッ!?」

 

 その行為にドラピオンは驚愕するが、ここまで勢いよく接近しては攻撃を中断する事は難しい。下手にそうすれば、その隙を狙われるのは明らかだ。その為、ドラピオンは危険だと分かっていても攻め込む以外の選択肢が存在しない。

 

「ドラァァァァァァァァッ!」

 

 覚悟を決めたドラピオンは己を鼓舞するかの様に雄叫びを上げながら突き進む。それに対し、ボスゴドラは左腕をまるで己を守る盾の様に突き出すとドラピオンの『ほのおのキバ』を真正面から受け止めた。

 

「ゴッ!?……ゴッド!」

 

 だが、予想外だったのはその技の威力だ。『つるぎのまい』で攻撃が上がっている事を加味しても強い。他のポケモンであればもしかすれば受けきるのは難しかったかもしれない程だ。

 

(なるほど『スナイパー』か……)

 

 特性『スナイパー』、自分の攻撃が急所に当たると、ダメージが1.5倍ではなく2.25倍になる効果がある。この特性が発動し、ここまでのダメージとなってボスゴドラを襲っているのだろう。

 

(なるほど、それでか……)

 

 恐らくこの特性を生かし、『つじぎり』や『シザークロス』などを使用して今までこの砂漠の強敵達を倒してきたのだろう。そう考えればシャインの言っていた情報とドラピオンの特徴が完全に一致する。

 

「負けるなボスゴドラ!『アイアンヘッド』!」

 

 しかし、この機を逃す訳にはいかない。ボスゴドラはダメージに耐えつつも噛みついたままのドラピオンの頭部に向け渾身の『アイアンヘッド』を叩き込む。その衝撃で一瞬、意識が飛んだのかドラピオンは『ほのおのキバ』を解除してしまった。

 

 ボスゴドラはその隙を見逃さず、解放された左腕でドラピオンの頭部を掴みそのまま地面に叩きつける。

 

「これで決めるぞ!『じしん』だ!」

 

 叩きつけられた事で意識を取り戻したのか、ドラピオンは必死にその場から逃げ出そうとするが『アイアンヘッド』の衝撃で頭がふらついているようで上手く動くことが出来ない。

 

 そこにボスゴドラは右足を上げると全体重を込め、まるで四股を踏むかの様に『じしん』をドラピオンの胴体に向けて解き放った。ドラピオン越しであった為、周辺の大地への揺れは殆どなかったのだが、『じしん』のパワーをその身で受けたドラピオンは別だ。

 

「ドラァァァ!……ドッ……ラァ…………」

 

 ドラピオンは悲痛な叫び声を上げるとそのまま意識を失いうつ伏せのまま倒れ込む。ドラピオンのその姿を確認したジンは空のモンスターボールを取り出し投げつけた。

 

 モンスターボールが当たったドラピオンは赤い光線に包まれボールの中に入って行く。そのままモンスターボールは数度、左右に揺れ抵抗を見せるが次第に大人しくなり、カチリという音と共に完全に動きを止めた。

 

「よしっ!ドラピオンゲットだ!」

 

 ジンはドラピオンの入ったモンスターボールを回収すると早速、スマホロトムで能力値の確認を行い始める。

 

(特性はやはり『スナイパー』か……攻撃、防御共になかなか、素早さも悪くない。技の種類も豊富だし、鍛えがいがありそうだな)

 

 ただ惜しむべき点があるとすれば、もっとドラピオンとのバトルを楽しむことが出来なかった事だろう。毒タイプを持っている相手であった為、毒の効かないボスゴドラを出したのだが、それが却ってドラピオンの攻撃の範囲を狭めて全力を引き出すことが出来なかった。

 

(まぁ、いい。ドラピオンについては後で考えよう。まずは……)

 

 モンスターボールをポケットにしまうとジュカインによって拘束されていたハンター2人とその傍にいたリコとフリードの元へと近づいて行く。

 

「ジン!お疲れ様!」

「いいドラピオンだったな。新しい戦力になってくれそうじゃないか」

「あぁ、ちょっと鍛えれば即戦力として使えそうだよ。だけど、今は……こっちが先だ」

 

 ジンは改めて、拘束されている2人のポケモンハンターを見据えると、ゆっくり近づき始めた。ポケモンハンター達はジンが一歩近づく度に、恐怖の感情が襲い掛かってきている様で顔が徐々に青褪めていく。

 

「さて……それじゃあ、話を聞かせてもらおうか?」

「うぐっ!?お、俺達は何にも話さねーからな!」

「そう結論を急ぐ事もないだろう?じっくり行こう……ロトム」

 

 ジンの呼びかけに応じ、スマホロトムはひとりでに起動すると宙へと浮かび上がった。

 

「この2人の写真を撮れ。その後、警察サイトに接続して賞金首の一覧に同一人物がいないか顔認証にかけろ」

『了解ロト!』

 

 スマホロトムはカメラモードを起動するとポケモンハンター2人の顔を撮影する。その後、バウンティサイトに接続し一致する顔写真がないか検索を始めた。

 

『検索完了!1件ヒットしたロト!』

 

「どれどれ……ふぅん。ポケモンの密猟や違法販売の前科ありか。今から約2年前、出所してから活動を始めた5人組のポケモンハンター集団、主な活動拠点は砂漠と荒野か。へぇ、一応賞金首みたいだな」

 

 サイトには2人のハンターの他に仲間の3名の手配書も存在した。活動期間は知られているだけでも2年程、一応、それなりに経験のあるポケモンハンターの様ではあるのだが……

 

「5人全員合わせてもたった数十万か……あんたら、かなりしょぼいな」

 

 悪名高いハンターであれば、もっと高い値が付くことが多い。2年という言うキャリアがありながら、たったのこれだけの懸賞金しか懸けてもらえていない辺り、彼らの実力が窺えるという物だ。

 

「しょ、しょぼいって言うんじゃねぇ!」

「そうだ!俺達はこれからお嬢の資金でもっと大きな集団になる予定なんだぞ!」

 

 ジンの物言いが頭に来たのか、ハンターたちは先程まで恐怖で青褪めていた顔が今度は怒りで真っ赤に染まっていく。ハンター達の態度にこそジンは興味を示さなかったが、ハンターの1人が口走ったある単語を聞き逃してはいなかった。

 

「……お嬢?」

 

 自分達のボスの娘の事をそう呼ぶ事はそれなりにある。だが、それだとお嬢の資金というのは辻褄が合わない。この事から考えられるケースは1つだけだ。

 

「そのお嬢というのは、あんたらの依頼人……いや、パトロンかな?まさかここに来てるのか?」

 

 その問いにハンター2名は大量の汗を流しながら、ジンから目を背ける。口にこそ出していないが、その様子から正解だと物語っていた。

 

「はははっ……そうか。じゃあ、次の質問だ。あんたらのボスとそのお嬢がどこにいるのか教えてくれないか?」

「だ、だから何も喋らないって言って……ひぃっ!?」

 

 その瞬間、ジュカインの『リーフブレード』がハンターの1人の左頬を切り裂いた。出血は浅く、かすり傷程度ではあったが、やられた側の恐怖は計り知れない。

 

 ポケモンの力は人間よりも遥かに強い。故にトレーナーのポケモンは普通は人を傷つけたりはしないのだ。それが堅気であれば尚更だ。その筈なのに……

 

「おっと、失礼した。申し訳ないな、俺の相棒はこう見えて結構、せっかちな性格でね。話が進まないとイライラして手を出してしまう悪癖があるんだよ。ここからは、ちゃんと止めるから許して欲しい」

 

 そんな事を言われても安心できる筈がなかった。自分達の命は今、ジュカインとそのトレーナーである目の前の少年、ジンに握られているのだ。しかも彼らには暴力に対して一切、躊躇いが見られない。まるでこんな事を何度もしてきたかの様だ。

 

「しかしだ。こちらの忍耐力にも限度はある。何度も止めるのは難しい訳だ……もう1回、同じ質問をするようで申し訳ないんだけど、あんたらのボスとお嬢の居場所……教えてくれるよな?」

 

 無名とは言えプロのポケモンハンターとして仲間とクライアントの居場所を吐くなどあってはならない。それがプロの誇りでもあり矜持でもある。しかし、そんなものは目の前にいる少年とジュカインから自分達の身を守ってはくれない。

 

 その事を悟ったハンター達は、誇りも矜持も全て捨て去り、ジンの問いに全て正直に答えるのだった。

 

「……なるほどね。情報提供感謝するよ」

 

 そこからのポケモンハンター達2名は非常に協力的となった。彼らはボスとクライアントの居場所だけでなく、彼らが所持するポケモンやそこに囚われているポケモンの詳細までも事細かに話し始めたのだ。それで判明したのだが、ジン達の探していたアノクサもそこで捕らわれているらしい。

 

「情報はこんなもんだな……よし、チームを2つに分けよう。俺とリコはポケモン達を助けに行くから。フリードはこいつらの見張りとシャインさんに連絡を頼む」

「うん!急ごう!」

「…………」

「フリード?」 

「あ、あぁ……分かった」

 

 リコとは対照的にフリードの反応はやや鈍い。ジンにべた惚れしているリコと違い、フリードは仲間ではあるが、やや客観的な視点で先程のやり取りを見ていた。

 

 勿論、捕まったポケモンを助ける為には急ぐ必要がある。その情報を引き出す為に、あのような脅す様な手段を取った事も責めるつもりはない。その様に合理的に考えることは出来るが、感情的に考えるとなると話は別だ。

 

(あれが、ジンのもう一つの顔か……)

 

 フリードはジンの事を決して悪人だとは思っていない。船で自分達に見せていたのも本当の姿なのだろう。だが、ジンは相手が悪人で自分達の目的を果たす為であれば暴力も多少は許容し、傷つける事を厭わない。そんな危険性も秘めているのだと理解してしまう。

 

 だが、捕らわれたポケモン達を助ける為に懸命に働いているのも事実だ。困っている人やポケモンの為に頑張れる。これもまたジンの本質の1つだと言う事をここまでの旅を通してフリードは知っている。

 

(まぁ……心にしみ1つない奴なんていないよな)

 

 フリードはそう心の中で結論付け、シャインに連絡を入れながらポケモン達の解放の為に走っていくジンとリコを見送るのだった。

 

 

 

***

 

 

 

「あれだな……」

 

 捕らえたハンターから吐かせた情報通り、集合場所とされている場所には3人の男と女性が1人、滞在していた。直ぐ傍のトラックには捕まえたハンター達が乗っていたのと同じトラックが置かれており荷台の折にはアノクサを始めとした複数のポケモン達が載せられている。

 

「別動隊まだ~?」

「もう少しで戻ると思いますので……おい!お嬢にお飲み物でもお持ちしないか!」

 

 離れた場所から様子を観察すると男性たちは女性に対して、明らかに胡麻を擂っている様子が見受けられる。予想通り彼女がクライアントであると考えて間違いないだろう。

 

「ジン、どうするの?」

「そうだな……偶には慈悲を与えてやるか」

「え?それって……」

 

 どういう意味なのか、そう問おうとするが、ジンはそれに答える事無くその場を離れるとハンター達の前に堂々とその姿を現した。

 

「どうも!ちょっとよろしいですか?」

「あ?なんだ、小僧?ここは子供の来る場所じゃねぇぞ。さっさと帰んな」

「まぁまぁ、そう言わずに話を聞いてくださいよ。ちょっとお願いがあるだけなんですから」

 

 突然、現れたジンにハンターの1人の小太りの男が怪訝そうな表情を浮かべながらそう言うが、ジンは笑顔で受け流す。

 

「帰れっ言ってんだろうが!これ以上、しつこいと痛い目に合わせるぞ!」

「ちょっと~なにさっきから騒いでんの?」

 

 騒ぎを聞きつけたお嬢と呼ばれていた女性が残り2人のハンターを引き連れ、近づいてくる。

 

「お嬢……そ、それがこのガキが……」

「ん~?なんなのあんた?」

「ですから、ちょっとお願いがありまして……単刀直入に言うんですけど、ポケモン達を解放して皆さんで自首してくれませんか?」

「……はぁ?何言ってんの?」

 

(じ、ジン?)

 

 それについては残りのハンター達もそして隠れた場所から見ていたリコも同じ意見だった。今更、説得などに応じる筈がない。リコとしても人間の善性は信じたい所ではあるが、流石に無謀にしか見えなかった。

 

「やっぱり、駄目ですか?」

「……あんたなんなの?いきなり出てきてウザいんだけど!」

「これは手厳しいな……いつもだったら、問答無用で倒して、その後、ゆっくり捕らえる所なんですけど……一応、あなた方には感謝しているんでね。一度位はチャンスを与えてあげてもいいかなと思ったんですよ」

 

 ジンの言葉を聞きハンター達は全員、首をかしげる。間違いなく彼らとジンは初対面だ。それにもかかわらず、感謝しているなどと突然言われ困惑している。

 

「こっちの話なので気にしないでいいですよ」

 

 現在のライジングボルテッカーズは資金不足の危機にある。そこに仕事の依頼と合わせて賞金首のポケモンハンターが現れたのだ。しかもクライアントのセット付である。これならば、上手く交渉すれば賞金だけでなく追加のボーナスまで貰える可能性があるのだ。

 

 ジンからすれば彼らは、鴨が葱だけでなく鍋とガスコンロまで背負って向かって来てくれているという状況である。感謝の言葉の1つも与えたくなるという物だ。

 

「でも、まぁ、交渉決裂って事で…………死ぬほど後悔させてやるよ」

 

 その瞬間、ジンの纏っていたオーラが一気に変貌していく。先程までの礼儀正しくにこやかな笑顔は消え去り、今はハンター達への敵意のみが前面に出ている。

 

「ひぃっ!?」

 

 お嬢と呼ばれていた人物は恐怖心から思わずにその場に腰を抜かして座り込んでしまった。残りの3人も恐怖心が全身に襲い掛かっていたが、経験値故か速やかにモンスターボールを取り出し投げつける。3つのボールから、それぞれオムスター、ストリンダー、バンバドロが姿を現しジンとお嬢の間に入り込む。

 

「ジュカイン」

 

 それに対し、ジンはモンスターボールからジュカインを出した。それと同時に首に掛けられていたペンダントに手を伸ばす。

 

「本当はあんたら程度に使う必要ないんだがな。ポケ質を取られても面倒なんで速攻で終わらせてもらうぞ」

 

 その瞬間、ペンダントに取り付けられたキーストーンとジュカインのスカーフのメガストーンが同時に輝き始める。

 

「限界を超えろ『メガシンカ』!」

 

 メガストーンの輝きはジュカインの全身を包み込んでいき、やがてメガジュカインへと変貌し姿を現した。その圧倒的なまでの強者のオーラ、それを見た瞬間にハンター達は誰一人例外なく、同じ事を考えていた。

 

 自分達はここで終わる……と

 

「年貢の納め時だ……『リーフストーム』!」

 

 そこから先の事は特に特筆すべき事はない。ただ、1つ言える事はポケモンハンター達は最初にジンが降伏を促した時に素直に従っておけばよかったと後日、供述したそうだ。

 

 

 

***

 

 

 

 その後、フリードの連絡によりシャインとジュンサー達が到着した。お嬢と呼ばれた女性とハンター達は手錠を掛けられるとジュンサーが乗って来た護送車に移送されてようとしていた。

 

「…………」

「どうしたの?」

 

 護送車に移送されていくポケモンハンター達をジンは黙って見つめていた。あまりにも真剣そうな表情で見つめている事にリコは疑問を抱いた様だ。

 

「この光景を見るのが好きなんだ。彼らの姿を見てみろよ。これから訪れる自分の未来を想像し、顔を青くしながら首を引っ込めて護送車に入って行く。まるで……亀みたいじゃないか?」

 

 ジンの言う様に護送車に入れられた者達は全員、顔を青褪めている。お嬢と呼ばれた人物に至っては周りの目も気にせずに泣きわめく始末だ。

 

 だが、それも無理はない。ポケモンハンター達はこれまでにも多くの罪を重ね、その上前科もある。それを踏まえれば最低でも10年は牢獄暮らしが確定している。更にお嬢に関しては、いい所の令嬢の様だが、現行犯で捕まった以上、言い訳のしようがない。ポケモンハンターのクライアントやパトロンは彼らと同等か下手をすればそれ以上の罪に問われる場合があるのだ。我儘し放題だった彼女にとって、これから先の生活はとても辛いものになるのだろう。

 

「ひょっとして……ジンとジュカインが亀ポケモンが好きな理由ってそれ?」

 

 リコの問いに対して、ジンは一瞬だけ笑みを浮かべると何も答えずその場を離れていく。だが、その笑みが答えそのものと言っても過言ではないのだろう。

 

 しかし、護送される犯人に似ているから亀が好きなど、あまりにも特殊な考え方だ。普通の人であれば、ちょっと……いや、かなり引くかもしれない。だが、リコは去り際に見せたジンの笑みに魅了されている様で引く様子はなく、それ所か顔を赤くしながらジンの背中を見つめていた。 

 

 

 

***

 

 

 

 迷子探しから始まった一連の騒動から、数日が経った。仕事料と懸賞金を手に入れた事で活動資金に余裕が出来たライジングボルテッカーズはパルデア地方を目指し、航行を続けていた。そんな中、リコはリモートで授業を受け、課題であった『理想の絆』のレポートを発表する。

 

「私が理想の絆として選んだのは……隣のクラスのジン、そしてその相棒のジュカインです」

 

 リコの課題の対象を聞いた瞬間、隣の席に座っていたアンは自分の顔がニヤニヤしていくのを抑えることが出来なくなった様で、咄嗟に俯いてしまう。

 

「この2人は本当に凄いです。彼らは言葉を交わさなくても目を合わせるだけでお互いの考えを理解し合って、バトルの時や有事の際には絶妙のコンビネーションを見せてくれます」

 

 リコの脳裏には先のポケモンハンターの一件でドラピオンがトラックごと、ポケモン達を吹き飛ばした時の事が思い浮かぶ。ジュカインはただボールから出ただけで状況を理解し、ポケモン達を救出した上にハンター達を捕らえジンと共に情報を引き出していた。

 

 あのような芸当は自分やニャオハには出来そうにない。ジンやジュカインの様な強さと絆がなければ不可能なのだろう。

 

「彼らの絆がどれ程の物なのか、完全には理解できないけど……彼らの絆は、メガシンカという奇跡すら起こせる程に強靭な物でした。一緒にいると、危ない事も多いけど彼らなら何があっても乗り越えることが出来る。そんな確信を持つ事が出来ます。いつか、私もパートナーのニャオハと一緒にジンやジュカインの様な関係のトレーナーになりたいです」

 

 リコがジンに対して強い憧れを抱いている。初めての異性の友人でもあり、師匠として自分とニャオハを導いてくれた存在だ。そんな彼の様になりたいと感じるのは当然の感情と言えるだろう。

 

 だが、リコが彼に抱いている感情は当然、それだけではない。

 

「私は……そんな彼らが……彼が大好きだから、これからも誰よりも近くから、しっかり見つめて行こうと思います」

 

 これはある意味で、正式なカミングアウトと言える。彼女がジンに対して特別な感情を抱いているという証明だ。この事を知っていたのはアンだけだったのだが、今の発言でこのクラスにいる全員にそのことが知れ渡ってしまった。

 

 いや、それだけでは済まないだろう。良くも悪くも活発な十代ばかりの学校では、この手の噂の巡りは早い。明日にはジンのクラスや他のクラスにまで知れ渡っていくかもしれない。

 

『『『…………』』』

 

 こうしてリコは発表を終えるが、拍手は起こらない。レポートの内容に関係なく、全員が最後の発言に驚いてしまっている様だ。男子達はリコの表情に見惚れ、女子達はアンを含め全員が顔を赤らめながらリコを見つめていた。

 

『……リコさん』

 

 全員が沈黙を貫く中、担任の先生が恐る恐るといった様子で話しかけ始める。

 

「はい」

『大変、素晴らしい発表でした。あなたがジン君と相棒のジュカインをよく観察したのが窺えます』

「ありがとうございます!」

『ですが……後で大事なお話があります。授業が終わるのを待っていてください。よろしいですね?』

「…………はい」

 

 その後、リコと訳も分からないまま呼び出されたジンの両名は両担任から不純異性交遊について疑われ、保健体育と道徳の授業を受けさせられる事となる。

 

 また、その際、ジンがとあるサーフィンが好きな格闘ジムリーダーの影響で異様なまでに保健体育の知識が豊富であった事が、不純異性交遊の疑いを更に深刻な物にさせる事となった。

 





今週のアニポケ見て思ったのですが……タイカイデンが弱すぎる!進化したのにあれじゃあ、納得できませんわ!

作品の要望などあれば気軽にメッセージを送ってください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。