ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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アンケートへのご協力ありがとうございました。

やはり予想以上に「とばしていい」という意見が多かったので、「パフュートンの仲良し大作戦!」はとばし「ホゲータ、ワルになる!?」を今回から始めていきます


VSワルビル

 

 リコのレポート発表を終えてから数日程、経過した。アンによると、どうやらジンとリコが交際をしているという事は既に学年中に知れ渡ってしまったらしい。

 

 あれ程、大胆に好意を明確にしてしまったのだ。隠し通す事はやはり不可能だった様で、ジン達が学園にいないのをいい事に様々な推測が広がってしまっている。なんでも2人は毎日の様にキスをしているとか、ジンとリコは共に保健体育の勉強に励んでおり、性行為も間近など様々だ。

 

 まぁ、割と当たっているのだが……その手の悪い噂などジンからすれば欠片も興味がない為、今日も今日とてウイングデッキにて特訓に励んでいる。

 

「ドラピオン!今度は『クロスポイズン』!カビゴンは『まるくなる』で受け止めろ!」

 

 新メンバーとして手持ちに加わったドラピオンはフィールドを駆け抜け、正面にて仁王立ちしどっしりと構えたカビゴンに向け突っ込んでいく。

 

「ドッラァ!」

「カンビィッ!」

 

 ドラピオンは両腕をクロスさせると紫色の光の刃を形成し、腕を振り抜いて刃を飛ばした。カビゴンは身体を丸めると大きなお腹で正面から受け止めに掛かる。

 

「カッビィィ!?」

 

 カビゴンは『クロスポイズン』に耐え切る事に成功したが、かなりのダメージを受け顔色が悪い。どうやら今の『クロスポイズン』で毒状態になってしまった様だ。

 

「そこまでだ」

 

 ジンはカビゴンに近づくとポケットからモモンの実を取り出し、カビゴンに与える。それにより無事、毒状態は解除されたのだが、ダメージがかなり蓄積していた様で傷を受けた個所を擦りながらその場にゆっくりと座り込んでいく。

 

 カビゴンに防御を固めさせ、そこをドラピオンがひたすらに攻める。互いの能力値を探る為に始めたこの特訓だが、カビゴンは既に10発近くドラピオンの技を受け続け、その内の半分以上は急所に命中していた。体力のあるカビゴンでも流石にそろそろ限界らしい。

 

「……まぁ、いいだろう。2人共、お疲れ。今日はここまでにしよう」

 

 カビゴンとドラピオンに労いの言葉を掛けるとモンスターボールへと回収していく。

 

(カビゴンの耐久力は、流石だな。防御も今でも十分、高いが鍛える余地はある。それに対して、ドラピオンは防御に関しては能力任せといった感じだが攻撃、特に急所を狙う能力は高いな。どこかの街で『ピントレンズ』と『たべのこし』を調達して持たせてみるか……)

 

 道具に頼りきるのはあまり良くないが、戦闘を有利に進める上では非常に役に立つ。それらの道具を揃えるだけでカビゴンとドラピオンは今よりも更に強くなれるだろう。 

 

(……まぁ、それは置いておくとしてだ)

 

 ジンは2体の総評を終えると、反対側のウイングデッキで自主トレをしているロイ達へと視線を送る。

 

「レックウザが現れた!」

 

 勿論、本物ではない。黒いレックウザの形をした張りぼて(ロイの手作り)だ。レックウザとのバトルをシミュレーションする為に作った様だが……まぁ、画力についてはコメントを差し控える。

 

「アチゲータ!タイカイデン!新技で攻撃だ!」

「アチゲ!」

「カーイ!」

 

 ロイの指示を受け、タイカイデンは大空に舞い上がり両翼を広げ、アチゲータはその場で足踏みをし始める。するとタイカイデンの翼から三日月型の刃を幾つも飛ばし、張りぼてレックウザを斬り付けていく。更に追い打ちをかけるかの様に体中に炎を纏ったアチゲータが突っ込み、張りぼてレックウザを完全に粉砕した。

 

「よっし!命中!」

 

 アチゲータが行ったのは『ニトロチャージ』、タイカイデンが行ったのは『エアスラッシュ』だ。進化してからの特訓の日々で身に着けた新技である。

 

(ようやく形になってきたな……)

 

 メタモンを始めとしたジンのポケモン達との模擬戦を繰り返した成果が出始めている。更に両者共、進化した事で能力値も大幅に上昇しており、技の威力も中々だ。これならば、レックウザに勝つ事は難しくともバトルを成立させる事は出来るだろう。

 

「ジン!どうかな?」

「悪くない。特訓の成果が出ていると思う。だけど、レックウザに勝つにはまだ足りないな……」

「うぅ……やっぱり?もっと特訓しなきゃダメか~」

「まぁ、それもあるが……俺が言いたいのは手持ちの数だ。何時までも2体だけじゃ少し、不安だな」

 

 それなりに旅を続けてきたが、ロイの手持ちはアチゲータとタイカイデンの2体だけだ。レックウザを相手にするのであれば、少々、心許ない。出来る事ならば、早々にフルメンバーを6体揃え、連携を取る訓練をした方が効率がいいだろう。

 

「アメジオがレックウザとバトルした時の事は覚えているな?」

「……うん。レックウザを追い込んでた」

「そうだ。あのバトルでアメジオは手持ちのポケモンの力を引き出し、連携を図る事でレックウザを追い込んでいた。お前にとっては業腹かもしれないが、あれはいい手本だ。参考にするといい」

「僕に……アメジオと同じ事をしろって?」

「あぁ、残念だがアチゲータとタイカイデンだけで勝てる程、レックウザは甘くない」

 

 アチゲータとタイカイデンだけで勝つとなると2体をレックウザとある程度、同レベルになるまで育成しなければならない。そうなると最低でも数年は時間が必要だ。勿論、最終的にはそれを目指すがそれを加味しても手持ちは多い方がいい。

 

「……そうだね。でも、何をゲットすればいいの?」

「それはお前次第だな。何を目的にするのかでゲットするタイプも変わってくる」

 

 レックウザを倒す事だけを考えるならば、ドラゴン・氷・フェアリータイプだ。だが、手持ちの弱点を補完するならば水タイプを加えるという選択肢もある。それとも、そう言った事は考えずにフィーリングの合うポケモンをゲットするのもありだろう。

 

「まぁ、難しく考えなくていい。何も今すぐにって話じゃないしな……取り合えず、休憩しながらちょっと考えて見ろ。眉間にしわが寄って、変な顔つきになってるぞ」

 

 ジンの言う様にロイは今、眉間にしわが寄ってまるで何か怒っているのではないかと錯覚してしまいそうな表情をしている。

 

「え?そう?」

「あぁ……この環境じゃ慣れてないとそうなるだろうな」

 

 ジン達は今、砂漠のど真ん中にて停泊しており、とても強い日差しに晒されている。比較的に温暖なホウエン地方出身のジンと比べてロイには、あまりこの気候は馴染みがないのだろう。

 

(しかし、遅いな。まだ始まらないのか……)

 

 ジン達は今回、仕事の依頼を受けここに来ている。フリードの知り合いの考古学者が遺跡発掘に邪魔な岩を運んで欲しいという簡単な仕事を依頼してきたのだ。

 

 前回の迷子探しやポケモンハンターの賞金で暫くは食つなぐことは出来るが、金というのはなければ困るが、多少、多く持っていても困る事はない。しかも、簡単な割に報酬がいいというコスパの高い仕事、引き受けない理由がなかった。

 

(まぁ、待つしかないか……)

 

 遺跡というのは絶妙なバランスで出来ているものも多いと聞く。岩を運ぶのは簡単だが、その結果、遺跡に被害が出ては本末転倒だ。依頼者側にも準備の時間が必要なのだろう。

 

「2人共!お疲れ様!飲み物持ってきたよ!」

 

 特訓を一旦、中断した所にリコがツボツボの木の実ジュースを持ち、展望室から現れる。ジンとロイはそのジュースを受け取ると展望室に繋がる階段に腰かけ、休憩を取り始める。

 

「飲み物サンキュー!助かるよ~」

「……ロイ、なにか怒ってる?」

「え?全然?」

「リコ、ロイはただ日差しが眩しいだけだ」

 

 先程と変わらず眉間にしわが寄っている為か、事情を知らないリコにはロイが怒っている様に見えていた。この日差しが原因であることを説明するとリコは納得した様子を見せる。

 

「ジンにも言われたけど、僕ってそんなに目つき悪くなってるの?」

「う、うん。正直、不機嫌なんだと思っちゃった……」

「……仕方ないな。ちょっと待ってろ」

 

 ジンはその場を離れると展望室に移動するとそこに置いてあったバッグから、ある物を取り出し戻ってくる。

 

「ほら、これ貸してやるよ」

「これって……サングラス?」

「正確には違う。『くろいメガネ』っていう道具だ。サングラスの役割も果たしてくれるから、気にせず使ってくれ」

 

 『くろいメガネ』は持たせると悪タイプの技の威力を上げる効果がある道具だ。しかし、メガネと言う名はつくが、度などは入っていない為、サングラスの代わりに問題なく使用する事が可能なのである。

 

「おぉ!なんか凄いカッコよくない!」

 

 ジンに手渡された『くろいメガネ』をロイは恐る恐るかけるが、どうやら気に入った様で、スマホロトムを取り出すと幾つもポーズを取り自撮りまでし始めている。

 

「ロイ、すっかり気に入ったみたいだね」

「そうだな……ところで、リコはどうする?まだ余ってるから眩しいなら貸してやるけど?」

「う~ん……私は大丈夫かな?そんなに眩しくないし」

 

 リコはどうやらこの日差しでも問題がないようなので、もう一つの『くろいメガネ』をバッグに戻そうとするが、その様子をアチゲータは目をキラキラさせながら何かを訴えるような目つきで見つめてくる。

 

「アチゲータ?なんだ?お前も欲しいのか?」

「アチゲッ!」

「……まぁ、いいけど」

 

 アチゲータにもう一つ『くろいメガネ』をかけさせる。元々、陽気そうな見た目であったが、そこに見た目がほぼサングラスである『くろいメガネ』が加わった事で更にメキシカンを感じさせる姿へと変貌していく。

 

「アチゲータ!かっこいいよ!」

 

 その姿はロイの琴線に触れるものだった様だ。ロイとアチゲータは更にテンションを上げ様々なポーズを取り始める。

 

「今なら、さっきよりも強くなってる気がする!」

 

 まぁ、『くろいメガネ』の効果で悪タイプの技の威力は上昇しているので、満更勘違いとも言えなくもない。しかし、道具1つ付けただけここまで元気になれる両者をジンとリコは、微笑ましそうにまるで弟を見守るかのような視線で見ていた。

 

 

 

***

 

 

 

 休憩を終え、トレーニングを再開してから10分程経過するとライジングボルテッカーズアプリを通じてフリードからメンバー全員の招集がかかる。ジン達はトレーニングを中断し、ミーティングルームへと移動した。

 

 ミーティングルームに全員が揃ったのを確認するとフリードは早速、事態の説明に入る。フリードはなかなか作業が始まらない事に疑問を感じ依頼人でもある知り合いの学者を直接、訪ねて事情を聴いてきたらしい。

 

 なんでも遺跡のある現場では、依頼人たちが作業をしようとするとワルビルとワルビアルに襲われてしまい、作業が全く進歩していないとの事だ。

 

 その事に、業を煮やした彼らは……

 

「それで……ワルビアル達を退治するって?」

「ひどっ!」

「だがな、実際に襲撃されてるのも事実だ……」

 

 モリーやオリオはワルビアル達を退治する事に反対の様だが、この状況で依頼人達を責めるのも酷だろう。彼らからすれば、仕事をしようとしているだけで襲われ重機を破壊されているのだ。既にそれなりの被害が出ている。退治しようと考えるのは当然の見解だ。

 

(ワルビルとワルビアルか……)

 

 確かにあまりいい噂を聞くポケモンではない。獰猛な個体が訳もなく暴れていると言われても納得は出来る。だが、重機を破壊するだけでそれ以外のポケモンは襲わず、しかも食料などの物資には手を付けていないというのは少々、気になる所だ。

 

 単に暴れたいだけなのか、それとも他の理由があるのかは調査して見なければ分からないが、少なくともラプラス海賊団の様な略奪者ではないのは間違いないのだろう。

 

「とにかく、何が起こってるのか調査してこようと思う。ジン、一緒に来てくれるか?」

「分かった」

 

 ジンとしてもワルビアル達の行動理由には興味がある。単に暴れたいだけならば、ジンが相手をし追っ払って終わりだが、止むに止まれぬ理由があると言うならば協力するのも吝かではない。だが、その為には、彼らの襲ってきた理由について知る必要がある。

 

「僕も行きたい!」

「私も!」

「駄目だ。襲ってきたワルビルとワルビアルがいるんだぞ。今回は俺とジンだけで行って来る」

「僕達だって皆の役に立ちたいよ!」

「絶対に危ない事はしないから!」

 

 リコとロイは真剣な表情で頼み込む。2人からすると、普段から自分達が雑用以外では殆ど役に立っていないという思いが強いのだろう。家事・修理・医療・情報収集・バトルに至るまで他のメンバー達に頼り切りになっている面がある以上、何か役に立ちたいと考えるのは自然な事だ。

 

(危険かもしれない……いや、でも考えようによってはそれもありか……)

 

 ワルビアル達とバトルになるかもしれない為、危険はある。しかし、普段からバトルする相手が不足しているリコとロイにとって、これは貴重な経験値を稼ぐチャンスかもしれない。特にロイには進化したポケモン達が野生の強力なポケモン相手にどこまでやれるのかを試すまたとない機会になる筈だ。

 

(危なそうなら、俺が相手をすればいいだけだしな……)

 

 情報が正しければ今回の相手はワルビルとワルビアルだ。アチゲータとタイカイデンにとっては相性のいい相手とは言えない。本当に危険だと判断したら直ぐにでも手助けに入る準備は必要だろうが、それでも今の彼らなら直ぐに負けるようなことはないだろう。

 

「フリード、連れて行ってもいいんじゃないか?」

「……はぁぁ。仕方ないな。単独行動は厳禁だぞ」

「「うん!」」

 

 最終的にはジンの口添えもあり、今回はフリードとジンだけでなくリコとロイも遺跡とワルビアル達の調査に加わる事が決定する。

 

 

 

***

 

 

 

 ジン達はブレイブアサギ号を降りると件の遺跡へと調査に来ていた。遺跡の中は暗く、発掘作業員たちが用意したと思われる壁のあちこちに取り付けられたランタンがなければ、周りを見渡すことも難しい程だ。

 

「わぁぁ……」

「なんか……凄い」

 

 初めて遺跡を訪れたリコとロイはその光景を見ると思わずといった様子で素直な感想を呟く。

 

「2人共、油断するなよ。ガラル鉱山の時みたいな展開は、もうお断りだぞ」

「同感だ。まずはワルビアル達の痕跡を探す。逸れずについてきてくれ」

「「はーい」」

 

 ジンとフリードに注意され、2人は改めて周囲を警戒し始める。そんな中、フリードの肩に乗っていたキャップが突然、地面に降りると何かの気配に気付いた様で背後へと走り始めた。

 

「どうした?キャップ?」

「追ってみよう!」

 

 そうしてジン達はキャップを追う様にその場を走り出す。ただ1組のコンビを除いて……

 

「う~ん……」

「アチゲ~……」

 

 先程の返事はなんだったのか、未だに遺跡に夢中になっているロイ、そしてアチゲータは地面を興味深そうに眺めており、ジン達がいなくなった事にも気づいていない様だ。

 

「アッ?」

 

 するとアチゲータが地面に一際、膨らんでいる個所がある事に気が付いた。更には生き物らしき気配も感じられる。興味を持ったアチゲータはそこに近づくが、その瞬間、その膨らみは地面へと埋もれていく。

 

「アチゲ?」

 

 しかし、まだ周囲には気配が残っている。アチゲータはそれを頼りに背後、左右と次々に視線を送るが、どれもハズレだ。何時まで経っても見つからず、アチゲータの警戒が薄れた正にその瞬間、背後から1体のポケモンが地面から飛び出し、アチゲータの尻尾へと『かみつく』をお見舞いする。

 

「アチゲーッ!?」

「アチゲータ!?大丈夫か?」

 

 アチゲータの叫び声を聞き、ロイはアチゲータへと駆け寄る。その時、ようやくこの場にもう1体他のポケモンがいる事に気が付いた。

 

「あいつは……」

 

『メグロコ さばくワニポケモン 地面・悪タイプ 砂の中に潜り込み泳ぐ様に移動する ワルビル、ワルビアルへと進化する』

 

「ワルビルとワルビアルに……じゃあ、こいつも悪さをしてるっていうポケモンの仲間か」

 

 ロイとアチゲータは瞬時に相手を敵と認識すると戦闘態勢へと移行する。するとその事に臆したのかメグロコはロイ達に背を向け背後へと逃げる様に走り出した。

 

「アチゲッ!」

 

 尻尾を噛まれた恨みからかアチゲータは全力でメグロコの後を追いかける。ロイも慌ててそれに続くが、メグロコは意外と足が速く追いつけない。

 

「逃がすなアチゲータ!『ニトロチャージ』!」

 

 アチゲータはその場で足踏みをすると体に炎を纏わせ、一気にメグロコへと距離を詰めていく。あと数歩でメグロコへと命中する。そう確信した瞬間、メグロコとアチゲータの間の地面から更にもう1体、別のポケモンが現れた。

 

「ワルビッ!」

 

 そこに現れたのはメグロコの進化形のワルビルだ。拘りがあるのか口に葉っぱの様な物を咥えている。二足歩行で両手を自在に操るワルビルは『ニトロチャージ』したアチゲータに対して、両腕の爪に緑色の光を纏わせ切り裂きにかかる。

 

 『ニトロチャージ』と『ドラゴンクロー』は互いに押し合いを続けるが、威力はほぼ互角の様で両者は互いにダメージを受けながら後退していく。

 

「ワル!ワルビィ!」

 

 ワルビルは背後にいたメグロコに何かを話し始めた。するとメグロコはその場で地面を掘り進み、そのまま姿が見えなくなってしまう。どうやら、逃げる様に指示を出した様だ。

 

「逃がした……だけど!」

 

 本音を言えば、後を追いたい所ではある。だが、目の前のワルビルはそれを許してくれそうにない。ジン達と合流するにしてもまずはバトルをする必要があった。

 

「やるぞ!アチゲータ!『かえんほうしゃ』!」

 

 アチゲータは口から強力な炎を発射する。炎はワルビルへと突っ込んでいくが、ワルビルは逃げる事無く正面から対峙するつもりの様だ。

 

「ワールッ!」

 

 ワルビルはその場で地面を殴りつける。すると地面から大きな岩が発生し、『かえんほうしゃ』から身を守る盾となった。それだけに留まらず岩は更に生み出されアチゲータに向かって進んでいく。

 

「これって『ストーンエッジ』?……だったら、『ニトロチャージ』で回り込んで!」

 

 アチゲータは『ニトロチャージ』で素早さを上げつつ、『ストーンエッジ』を回避するとワルビルの死角となっていた側面へと走り出す。

 

「今だ!『かえんほうしゃ』!」

 

 避けられるとは思っていなかったのかワルビルは側面に現れたアチゲータへの対応が遅れて『かえんほうしゃ』が直撃してしまい、そのまま遺跡の壁へと押し付けられた。

 

「ワッ!?……ワビィ!」

 

 ワルビルはなんとかその場から立ち上がると今度は自らアチゲータに向かって突き進む。再び、『ドラゴンクロー』を構え、切り裂こうとするがアチゲータはステップを踏みながらまるで踊る様にして回避し続ける。

 

「ワルッ!」

 

 だが、結果的にワルビルはアチゲータを壁際にまで追い込む事に成功する。ここが好機と感じたのだろう。ワルビルは渾身の『ドラゴンクロー』でアチゲータを切り裂こうとする。

 

「『ハイパーボイス』!」

 

 その瞬間、アチゲータは響く大きな振動を放つ。ワルビルは『ドラゴンクロー』で迫ってくる攻撃を迎撃しようとするが、残念ながら振動を切り裂くことは出来ず、ダメージを負ってしまう。更にあまりにも大きな振動に思わず足を止め、耳を塞いでしまった。

 

「アチゲータ!そのまま続けて!」

 

 アチゲータは『ハイパーボイス』で攻め続ける。やがて、限界だと感じたのかワルビルはその場から距離を取ると足元の地面を掘り進み姿を隠してしまった。

 

「逃げた?……いや、『あなをほる』で隙を狙ってるのかも。気を抜かないで!」

 

 ロイとアチゲータは周囲を警戒するが、ワルビルが攻め込んでくる気配はない。本当に逃げたのかもしれない。そう思った瞬間、足元に異変がある事にロイ達は気が付いた。

 

「……え?」

 

 それはワルビルの奇襲……ではない。ロイとアチゲータの足元の地面が一か所に向かって流れ徐々に沈んでいたのだ。

 

「な、なにこれっ!?」

 

 流砂と呼ばれる物で、脆い地盤に圧力などが掛かる事で崩壊する現象だ。先程のバトルが引き金となり偶然にも発動してしまったのだろう。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 初めての現象に驚きを隠せないロイとアチゲータは成す術もないまま徐々に自由を奪われ、砂の中へと消えて行ってしまった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 ロイが流砂に飲まれていた頃、ジン達はキャップに続き、遺跡内を走っていた。暫く、キャップの後を追うように走っていくと一際、広い場所へと到達する。そこには人間の物ではない、足跡が幾つも残っていた。

 

「これはポケモンの足跡だな……」

「あぁ、恐らくこれはメグロコ、ワルビル、ワルビアルの足跡だ。結構あるな……」

「たくさんいるのかな?」

「多分な。どこかにワルビアル達の巣があるのかもしれない」

「……あり得るな。そうなってくると、ちょっと見方が変わってくるぞ」

「どういう事?」

「まだ確かな事は言えないが、例えば……遺跡の発掘が彼らの巣に何かしらの影響を与えていてワルビアル達は自衛の為に襲撃を仕掛けてた……とかだな」

 

 考えられる話である。それならばワルビアル達が重機のみを破壊し、撤退していた事にも納得することが可能だ。

 

「そんな事が……」

「まぁ、まだ確定した訳じゃない。もう少し、詳しく調査を進めてみないとな」

「そうだな。リコ、ロイ、俺達から離れるなよ」

「うん!」

 

 リコは真剣な表情で返事をする。それに続くようにロイも返事を……ロイの返事が返ってくる事はなかった。なぜなら、既にその場にはロイとアチゲータの姿はなかったからだ。

 

「ロイ!?」

「ど、どこにもいないよ!?」

「あいつは……逸れるなってあれ程、言ったのに……」

「……仕方ないな。一旦、来た道を戻るぞ」

 

 ロイとアチゲータを探す為に、ジン達はここまで来るのに使った道を戻っていく。途中、入れ違いになる事がない様に注意しながら進んだが、ロイ達の気配はない。結局、そのままキャップが走り出した地点にまで戻ってしまった。

 

「ロイ~~~~!アチゲータ~~~~!」

「どこだ~~?」

 

 大声を出し、ロイ達を呼ぶが返事はない。どうやら、声の届く場所には2人はいない様だ。

 

「ったく、ロイの奴、どこに行ったんだ?」

 

 こうなった以上、もう少し、奥まで探しに行ってみるしかない。全員がそう考え始めると再び、キャップがその場を走り始め、先程とは逆の方向に進んでいく。

 

「キャップ?」

「またか……今度はロイ達だといいんだけど」

 

 ジン達は再び、キャップを追いかける。その最中、遺跡の壁や地面などにも注意しながら進む。そうする事で気づいたのだが、この周囲だけ明らかに他の個所と違う点にジンは気が付いた。

 

(今のは爪痕か?それにあっちには炎が当たった様な焦げ跡もある……まさかバトルしたのか?)

 

 その様な点からここでアチゲータと何者かがバトルしたのではないかと考察しながら進んでいくと、キャップが足を止めた為、ジン達もその場で立ち止まる。

 

「ピカッ……ピーカ!」

 

 キャップはその場で軽くジャンプすると地面に向かい、体重をかける。すると途端に足元の地面に変化が起こり始めた。

 

「えっ……な、なんだ?」

 

 ジン達の足元にあった砂が沈んでいき、それに巻き込まれどんどん体が砂の中へと埋まっていく。

 

「流砂か……面倒だな」

「じ、ジン!どうすればいいの?」

「今、ロープを取り出す!必要以上に動くなよ!」

 

 ホウエン地方に存在する砂漠で何度か流砂に巻き込まれたジンは仕事場が砂漠と聞き、既に準備はしてあった。直ぐに脱出に必要な金具付きのロープを取り出そうとするがその手をキャップは、はたき落して止めに掛かる。

 

「キャップ?」

「ピッカ!」

「……付いてこいって事か?」

「ど、どうして?」

「分からないが……もう手遅れだ」

 

 キャップに手をはたかれている間にも事態は進んでいる。既に体の半分以上は砂に飲み込まれてしまい、自由に体を動かすのもままならない。今からではロープを投げるのは不可能だ。

 

「くっ……行くしかないか!」

「そ、そんな……」

「こうなった以上はキャップを信じるしかないな……」

 

 体も自由に動かせない為、もはや流砂に飲み込まれていくしか道はない。フリードやリコは慌てているが、それに対してキャップはどっしりと構えている。もはや打てる手がない、そう判断したジンも冷静に覚悟を決め、4人はそのまま流砂へと飲まれていくのだった。

 





今回はここまでです。ちょっと半端な箇所になるんですが、今週はちょっと忙しくて時間が取れず、明日からも連勤なので次の更新は、ちょっと先になるかもしれないです。

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