ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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いよいよ来週からポケモンも新シリーズか。結局、ペパーの出番は最後にちょっとだけしかありませんでしたね


VSガオガエン

 

 昨日のミミズズの一件により、ブレイブアサギ号は少なくない被害を受けた。船底には内と外を含め数か所の穴が開いており修理を終えるまでは出航できそうにない状態だ。

 

「マードック、板を頼む」

「あいよ」

 

 そんな中、ジン、フリード、オリオ、マードックの4人は船の修復作業に取り掛かっていた。穴の開いた個所に板を釘打ちするだけの簡単な作業、少々、張りぼて感があるのが否めないがこの分ならば明日にはまた船を動かせる様になるだろう。

 

「キュキュッ~!」

「カヌチャン!勝手にどんどん行くなってば!」

「クワ~」

 

 船の修理を行うジン達の横をドット、そして相棒のクワッスと新たに手持ちに加えたカヌチャンが通り過ぎていく。どうやらカヌチャンの作るハンマーの材料を買いに街に繰り出すようだ。

 

「前回の買い物やミミズズとのバトルで自信が付いたみたいだな」

「あぁ、子供の成長って奴は早いよな……」

 

 そんなドットをジンとマードックは微笑ましそうに見ていた。特にマードックの変化は顕著であり涙ぐんですらいる始末だ。

 

「また、言ってるよ……」

 

 オリオは少々、呆れているが、元々、ドットは引きこもりがちで部屋から出てくる事すら稀だったのだ。叔父のマードックの立場になるとドットが一歩踏み出し外に出てくれた、それだけでとても嬉しいのだろう。

 

 

 

***

 

 

 

 ジン達が船の修復作業に勤しんでいた頃、ウイングデッキではロイとリコがバトルの特訓を行っていた。普段であれば、ジンが2人の特訓を見守っているのだが、今回は船の修理で忙しい為、自主的に始めた模様だ。

 

 因みにアチゲータには炎技の威力を上げる『もくたん』、ニャオハには草タイプの技の威力を上げる『きせきのたね』がそれぞれ首元にネックレス状になってぶら下がっている。

 

「アチゲータ!『かえんほうしゃ』!」

「『でんこうせっか』で躱して!」

 

 迫ってくる『かえんほうしゃ』を『でんこうせっか』のスピードで回避したニャオハはそのままアチゲータに向かって突き進んでいく。

 

「『ハイパーボイス』!」

 

 素早さではニャオハに敵わない。そう判断し、アチゲータはその場に留まるとニャオハが接近してきたタイミングを見計らい口を広げ、うるさく船に響き渡る程の振動を放つ。

 

「ニャッ!?」

「ニャオハ!?一旦、離れて!」

「逃がさないよ!『かえんほうしゃ』!」

「『マジカルリーフ』いっぱい!」

 

 距離を取ろうとするニャオハにアチゲータは追撃の炎を仕掛けるが、ニャオハは咄嗟に『マジカルリーフ』を大量に発生させ自身を守る盾の様に活用する。しかし、元々、タイプ相性で不利な上にホゲータから進化した事で技の威力も上昇している。以前までならばともかく、今のアチゲータの炎を防ぎ切る事は非常に困難だ。

 

「ニャァッ!?」

 

 案の定、『かえんほうしゃ』は『マジカルリーフ』を打ち破りニャオハに命中する。『マジカルリーフ』のお陰で多少の威力の軽減は出来た為、即時、戦闘不能には至らなかったがそれでもそれなりにダメージは通っている様だ。

 

「一気に行くよ!連続で『ひのこ』!」

 

 ロイはこの場面で『かえんほうしゃ』よりも威力が弱まる反面、連続で撃ち出す事の出来る『ひのこ』を選択する。ダメージを負っても尚、ニャオハの素早さは落ちていない。それならば数で押し少しでもダメージを蓄積させようと考えた様だ。

 

「ニャオハ!避けて!」

 

 ニャオハは『ひのこ』を回避しようとバトルフィールド内で縦横無尽に駆けまわる。しかし、アチゲータの『ひのこ』はニャオハの移動に合わせ幾つも放たれ、徐々に迫り寄っていた。

 

(躱しきれない!?)

 

 リコ自身、以前から薄々とではあるが感じていた事ではあるが、今のロイの実力は既に自分よりも上だ。だが、それも無理からぬ事、ロイは文句を言いながらもジンのクレイジーな特訓にいつも最後までやり遂げている。

 

 それに対し、リコは特訓こそ続けているがその内容はロイ達とは比べればかなり優しい内容だ。当初あった差がなくなってしまうのも当然と言えるだろう。

 

(でも、この威力なら!)

 

「もう一度『マジカルリーフ』いっぱい!」

 

 『かえんほうしゃ』程の威力でないなら防ぎ切れる。そう判断し、ニャオハは飛び上がるともう一度『マジカルリーフ』を盾の様に展開していく。確かにリコの考えた通り、『ひのこ』を防ぎ切る事は然程、難しくはない。

 

「そう来ると思ったよ!アチゲータ!『ニトロチャージ』でニャオハの背後に回り込んで!」

 

 だが、ロイはその行動を読んでいた。アチゲータはその場で足踏みし体に炎を纏うといつもよりも素早い動きで『マジカルリーフ』を回避しニャオハの背後へと回り込もうとする。後は空中に飛び上がったニャオハに『かえんほうしゃ』を命中させれば勝利できる。そう確信した瞬間、予想外の形でバトルは終了を迎える事となる。

 

「ニャ!?」

「あっ!?」

 

 バトルに夢中になっていて、気付かなかったが展望室に繋がる階段からバトルを見ていた筈のテラパゴスとミブリムがいつの間にかバトルフィールド内に入り込んでいたのだ。

 

「危ない!」

 

 ニャオハの『マジカルリーフ』はもう止められない。このままではテラパゴス達が危険だと判断したリコは咄嗟に彼らの前に出ると自分の体を盾にし『マジカルリーフ』を受け止め後ろ向きに倒れる。幸運にも『ひのこ』を受けた後の為か、『マジカルリーフ』の威力はかなり下がっていた。無論、それでもリコが耐えられる筈もないが通常の威力であれば大怪我を負う事は免れなかっただろう。

 

「リコ!大丈夫?」

「う、うん。ちょっと転んだだけだから……」

「ニャ~……」

「ニャオハ、大丈夫だよ……うっ……」

 

 大丈夫とは言う物のリコは明らかに左手を庇っている。怪我をさせてしまったニャオハも当然、その事には気付いた様で浮かない顔つきでリコを見つめていた。

 

「怪我したの?」

「手を着いた時にちょっとね……」

 

 リコの左手は少しだが、赤く腫れあがっていた。本人の言う様に酷くない様には見えるが素人が判断するのは危険と考え、救護室にいるモリーの元へと向かう事となった。 

 

 結論から言うとモリーの診断もリコ達の物と然程、変わりはなかった。軽くひねっただけ、少しの間、動かさずに重たい物なども持たなければ直によくなるとの事だ。その診断を受け、リコとロイは安心した様子を見せる。

 

 ただ、1体、ニャオハだけを除いて……

 

 

 

***

 

 

 

「やっと終わったか……」

 

 作業開始から約一時間、ミミズズが船の至る所に掘り進めた穴は無事、塞ぎ終える事に成功した。4人掛かりで急ピッチで進めた事もあり予想以上の時間短縮が出来た為、オリオによると予定を早め今日中には出航が可能となったらしい。

 

「ん?」

 

 出航まで間、自室で休むかリコで遊ぶか悩みながら歩いていると船の外でニャオハが砂漠を抜け森へと向かっている姿が目に入ってくる。

 

「ニャオハ?」

 

 ニャオハの向かおうとしている森の先、そこには一軒の建物が存在した。その建物は、猫を彷彿させるデザインをしており、方角的に考えても十中八九、ニャオハはあの建物を目指していると推測する事が可能だ。

 

「……追ってみるか」

 

 特に予定がなかったのもあるが、ジンはそれ以上にニャオハの様子が気にかかっていた。いつもと違い、元気がなく全体的に落ち込んでいる様子だったのが遠巻きに見ても感じ取れた為だ。このまま放っておくのは少々、心配だと感じ、船を降りるとニャオハの向かっているであろう建物を目指し進み始める。

 

「そろそろだな……」

 

 船を降り森に入ってから既に5分は経過した。ここまで走って進んできたこともあり、目測であればそろそろ目的地と定めた建物に到着する計算である。

 

「ニャァァァッ!」

「っ!ニャオハの声だ!」

 

 前方からニャオハの威嚇するかのような鳴き声が森に響く。ただ事ではないと感じたジンはその場から急いで走り出した。少しするとそこには目的地であった猫の形をした建物があり、その入り口の前にはニャオハ、そしてもう1体、別のポケモンがニャオハを鋭い視線を向けながら睨みつけていた。

 

「ガァオガァァァァァァ!」

 

 そこにいたのは、上半身の筋肉がプロレスラーのように発達した二足歩行の猫の様な姿をしている、ヒールポケモンのガオガエンだ。

 

 ガオガエンは新たに現れたジンに対しても同じ様に鋭く睨みつけると強い敵意を向けて来る。明らかにこちらを敵として認識している様だ。

 

「落ち着け。争うつもりはない……ニャオハが何か失礼な事をしたなら謝罪もするし、直ぐにこの場から退散する事を約束するよ」

「ニャァ!ニャァァ!ニャァッ!」

 

 ジンは丁寧に対応しなるべく穏便に済ませようと努力するが、ニャオハはそれに異議がある様だ。その場で何度もジャンプしたり大声を出す事で反論の意を示している。

 

「おい、落ち着けって!何があったんだ?」

「ニャァァァァァァッ!」

 

(参ったな……)

 

 どうにも聞く耳がないらしい。よく分からないが、ニャオハは目の前のガオガエンに対して強い敵愾心の様な物を持っている様だ。普段、マイペースな性格ではあるが、一度、こうなってしまうとジンの言葉だけでは踏みとどまる事はないだろう。

 

(……仕方ない)

 

 こうなったニャオハを止めることが出来るとしたら、トレーナーであるリコ、それ以外だと彼女が尊敬を寄せている存在のジュカインだけだ。そう考えたジンはポケットからモンスターボールを取り出そうとする。

 

「ガァオォォォォォ!」

 

 しかし、その瞬間、ガオガエンが我慢の限界を迎えてしまった。右腕に紫色のエネルギーを纏わせるとニャオハに向けて『じごくづき』を叩きつけようとする。ニャオハは間一髪で後ろにジャンプする事で事なきを得たが、今の攻撃でガオガエン、ニャオハともにバトルのスイッチが入ってしまった様だ。

 

「ニャァァァァッ!」

「ガアオガアァァァッ!」

 

 建物の入り口を守るガオガエン、ジンの真横にまで後退したニャオハ、両者は互いに鋭い視線で睨みつけ今すぐにでもバトルが始まろうとしている。

 

「はぁ……ニャオハ下がれ。俺たちがやる」

 

 もはやバトルは避けられそうにないが、それでもニャオハをバトルさせるべきではない。相性の差もあるが、それ以上にあのガオガエンはニャオハを上回る強さだ。ジンの指示を受ければ多少、ましになるかもしれないが拙い連携は却って危険を招く恐れもあり、何よりもニャオハも素直に指示聞くとは思えない。

 

「ニャオハァッ!」

 

 ニャオハは当然の様に異議を唱えるが、それは予想通りの反応だ。故にジンはニャオハに対しての切り札を出す。

 

「出てきてくれ!」

「ジュカッ!」

「ニャァッ!?……ニャァ~」

 

 ジンはポケットからモンスターボールを取り出し、ジュカインをその場に出した。するとニャオハは先程まで見せていた敵意を引っ込めるとジュカインの肩に飛び移り頬をすりすりと摺り付け始める。

 

「……ジュカ」

「ニャ~~~ン」

 

 更にダメ押しでジュカインに頭を撫でられ、ニャオハは頬を赤く染めながら蕩ける様な表情を見せる。どうやらガオガエンの事は彼女の頭の中から既に消え去っている様だ。

 

「ニャオハ、後ろでジュカインの事を応援してやってくれ」

「ニャァッ!ニャン!ニャ~!」

 

 ニャオハ元気よく返事をするとジュカインの肩から降り、ジンの真横に移動すると早速、ジュカインの応援に移り始めた。

 

(やれやれ……)

 

 なんとも調子がいいと言うべきか、トレーナーに似て色ボケし始めたと表現すべきか悩みどころではあるが、それは一旦横に置き差し迫った問題への対処に掛かり始める。

 

「待たせて悪かったな」

「……ガォ」

 

 ガオガエンはここまで攻撃せずに待っていてくれた。というよりも突然のニャオハの変貌に驚き、呆気に取られたという方が正しいのかもしれない。

 

「先手は譲ってやるよ。待たせた詫びだ」

 

 ジンの言葉に合わせる様にジュカインは腕を伸ばすとガオガエンに向けて中指を立て挑発する。するとガオガエンは直ぐに頭に血が上った様でその場から駆け出すと先程の様に、紫色のエネルギーを纏わせた右腕で『じごくづき』を繰り出してくる。

 

「引き付けてから『リーフブレード』だ」

 

 ジュカインは自身の喉に『じごくづき』が命中しそうになった瞬間に頭を僅かに右に反らす事で回避すると左腕の深緑の刃で斬り付けカウンターを決める。

 

「ガオッ!?」

 

 ガオガエンはそのまま勢いよく後方の建物を囲う鉄柵にまで飛ばされそうになる。しかし、空中で一回転し体勢を立て直すと鉄柵を足場に使用し勢いを付けると両腕を交差させ『クロスチョップ』を構えながらジュカインに向けて突っ込んでくる。

 

「『まもる』!」

 

 これは回避できないと判断し、ジュカインは緑色のオーラを体に纏わせ『まもる』を発動した。『まもる』により『クロスチョップ』は弾かれるが、ガオガエンは攻撃の手を緩めない。

 

「ガオガァッ!」

 

 距離を取ったガオガエンは腰の炎のベルトの中心部から『かえんほうしゃ』をジュカインに向けて発射する。回避する事は容易いが、それではこの森の周辺が火事に見舞われてしまう事は確実だ。

 

「森でそんな技を使わないでほしいんだがな……『つるぎのまい』で上空に受け流せ!」

 

 ジュカインはその場で回転しながら『つるぎのまい』を発動した。向かって来る炎を回転しながらなんとか木々のない上空に向けて受け流す事に成功する。

 

「ガオォォッ!」

 

 だが、正にその瞬間、ガオガエンが『じごくづき』を構えながら一気にこちらに向けて突き進んできた。ジュカインは咄嗟に右腕で『リーフブレード』を発動させ応戦する。互いの技がぶつかり合い、小さくない振動が発生し森の木々を揺らしていく。

 

「ジュカァァッ!」

 

 『つるぎのまい』の効果、回転の勢いを利用した事もありジュカインの『リーフブレード』の威力は上昇している。このまま行けば、ジュカインが押し勝つと思われたが、ガオガエンの狙いは別にあった。

 

「グォッ!」

「ジュ、ジュカッ!?」

 

 ガオガエンは空いている腕でジュカインの左腕を掴み、動きを封じると牙に炎を纏わせジュカインの首元に向けて『ほのおのキバ』を突き立てる。牙を通して体全体に炎が広がってゆき、流石のジュカインも苦痛な悲鳴を上げた。

 

「ほぉ……やるな」

 

 恐らくだが、ガオガエンはジュカインならば『かえんほうしゃ』を躱す、もしくは受け流す事が出来ると判断し、この策を実行したのだろう。両腕は封じられ首元に噛みついた事で頭を動かすことも出来ない。この状態ならば動きだけでなく、かなり多くの技も封じられてしまったと言っても過言ではない。

 

(だが、抜け道はある)

 

 そう、封じられたのはあくまでも両腕と頭だけだ。この状態でもジュカインには使える技が残っている。

 

「ジュカイン!『けたぐり』!」

「ジュッカァァッ!」

 

 ジュカインは炎に耐えながら、ガオガエンの足に向け渾身の蹴りを仕掛ける。『けたぐり』はガオガエンにとって効果抜群の技だ、その衝撃はかなりの物だったらしく堪らずジュカインの首元から牙を放してしまう。

 

「今だ!『エナジーボール』!」

 

 『ほのおのキバ』から解放された事で頭が自由に動く様になったジュカインは口元に草のエネルギーを集中させると『エナジーボール』を生成しガオガエンに向けて撃ち出した。連続で繰り出される攻撃、これを避ける事は出来ず、ガオガエンは『エナジーボール』を顔面で受けてしまい後方へと吹き飛ばされていく。

 

「……少し、焦ったか?」

「ジュカ!」

「冗談だよ。だが、まんまとやられたのも事実だ……なかなかいい物を持ってる。野生かな?」

 

 ジンの発言を聞き、ジュカインは軽く息を吐く。どうやらまた悪い癖が出始めてしまった、長い付き合いの為、直感でそう感じ取ってしまった様だ。

 

「まぁ、それは後でいいか……それで終わりじゃないだろう?お前の力をもっと見せてくれ」

「グッ……ガァォォォォォォォ!」

 

 鉄柵を背に倒れていたガオガエンはフラフラしながらもなんとか立ち上がると力を振り絞り咆哮を上げる。どうやら、次の攻撃に残りの力の全てを出し切るつもりの様だ。両腕の掌に炎を出現させると両腕を広げ、その場で超高速で回転し始め、ジュカインに向けて突き進み始める。

 

「『DDラリアット』か。素晴らしい威力だ……」

 

 例え直接、受けずともその威力の高さが見て取れる。自信を持ち、最後にこの技を選んだのも頷ける程だ。この威力で回転しているのでは『エナジーボール』などを放っても受け流され、『リーフブレード』では相殺できるだろうが、かなりのダメージを受ける事が予想される。

 

「ならばこちらも全力で迎え撃つだけだ。ジュカイン!『ハードプラント』!」

 

 ジュカインは両拳を地面に叩き付け草のエネルギーを流し込む。すると地面を割る様にして太い棘の付いた蔓が幾つも現れ、回転しながら接近するガオガエンを囲うように展開し次々に襲い掛かっていく。ガオガエンは一本目の蔓こそ弾き飛ばす事に成功したが、四方から次々に来る蔓全てを払いのける力は既に残っていなかった。

 

「ガオォッ!?」

 

 『DDラリアット』と『ハードプラント』の真っ向勝負は『ハードプラント』に軍配が上がり、ガオガエンは悲痛な叫び声を上げながらその場に叩きつけられる。それと同時に蔓は消え去り、その場には目を回し地面に倒れるガオガエンの姿があった。

 

「ここまでだ。ジュカイン、お疲れさん」

「ジュカ!」

「ニャァ!」

 

 バトルを終え、ジュカインに労いの言葉を掛ける。それと同時にニャオハもその場を駆けだし、ジュカインの元へと近づいた。どうやら、多少なりともダメージを負ったジュカインを心配していたらしい。

 

(これは尊敬なのか、それとも……)

 

 ニャオハのジュカインに対する想い、それはただの尊敬だけとはジンには見えなかった。まだ確定ではないし、ニャオハが自覚しているかは分からないが恐らく、それは恋慕に近い感情なのかもしれない。

 

(いや、まずはガオガエンだな)

 

 流れでバトルする事になってしまったが、まずはガオガエンの処遇について決めねばならない。ただの野生ならばゲットしてから治療してもいいが、人のポケモンであるならばニャオハを守る為とは言え、少々、過剰防衛が過ぎた事を謝罪する必要がある。

 

 だが、ジンの本心を言うと出来る事なら……

 

「野生であって欲しいんだがな……」

「う~ん。野生とは言い難いわね」

「そうか……え?」

 

 突然の返答に驚き、声の聞こえた方に視線を向ける。鉄柵の向こう側、そこに紫色の髪をした老婦人が笑顔を浮かべながらこちらを見つめていた。

 

「こんにちは」

「……こんにちは。ジンと申します。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「あらあら。ご丁寧にどうも。私はマーニャ、ここの管理人をしている猫タイプ専門のブリーダーよ」

 

 ポケモンブリーダーの中には特定のタイプのみを育てる人が多い。どうやら、マーニャの場合はそれがニャオハやガオガエンなど猫のフォルムをしたポケモンに集中している模様だ。

 

「猫タイプ……という事はこのガオガエンもマーニャさんが?」

「えぇ、うちの子よ」

「そうでしたか……申し訳ありません。悪気はなかったのですが、どうにもガオガエンから敵と認識されてしまった様で……いえ、俺自身、途中からバトルに夢中になり過ぎて必要以上にダメージを与えてしまいました」

「あぁ、気にしないで良いわよ。その子、バトルが大好きでね。ここに近づく野生のポケモンやトレーナーを見かけると誰でも構わず、バトルを仕掛けちゃう困った子なのよ」

 

 マーニャは困った様な笑みを浮かべながらそう答える。その様子から見てもこのような事態になったのは今回が初めてではないらしい。

 

「ごめんなさいね。本当は直ぐに止めようと思ったんだけど、あなた達が凄く楽しそうにバトルするものだから、なかなか声が掛けられなくて……でも、あの子に勝っちゃうなんて、あなたとジュカイン、強いのね。つい見入ってしまったわ」

「……恐縮です」

「ふふっ……あら?」

 

 マーニャがジュカインの横にいるニャオハに気付き、視線を集中させる。ニャオハもその視線からマーニャの存在に気付いた様で笑顔を向け始めた。

 

「あらあら。あなたは……」

「ニャオハの事、知ってるんですか?」

「えぇ、よーく知ってる子だわ……道理でガオガエンが喧嘩を売る訳ね」

 

 ニャオハの事をよく知っている、猫タイプ専門のブリーダー、そしてニャオハがここを訪ねようとした理由、それらの情報を纏め上げると1つの答えが見えてくる。

 

「もしかして、ここは……ニャオハが嘗ていた場所……ですか?」

「正解。あなた強いだけじゃなくて賢いのね」

 

 マーニャはそう言うと猫の形をした鉄の門扉を開いた。

 

「中にいらっしゃい。ガオガエンやジュカインの手当てもしないといけないし、それが終わったら、その辺りの事を詳しく話すわ」

 





今回出て来たガオガエンの詳細については次回、説明しようと思います

☆8
チーバ君さん

☆10
ボルボロックスさん

高評価ありがとうございます

作品の要望などあれば気軽にメッセージを送ってください
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