これでいいんだろうか……最後まで悩みましたが、取り合えず完成しました
ガラル地方から旅を続け、ようやくパルデア地方へと戻って来たライジングボルテッカーズ。彼らは今、ここまでの長旅の疲れを癒す為に、ハッコウシティ周辺のビーチへと遊びに来ていた。
「到着しましたーー!」
先頭を駆け抜け、海へと一番乗りを果たしたロイは久々の海にテンションが上がっているのか、元気そうに叫んでいる。それに続くようにジンやフリード達男性陣が少し、遅れて到着した。
「海か……久しぶりに楽しめそうだな」
海にテンションが上がっているのは当然、ジンも同様だ。生まれこそ、内陸ではあるが海の最も多いホウエン地方出身としては、こうして海に来るとそれだけで地元に戻った様な気分になり、否が応でも気分が上昇するらしい。
「アチゲ~!」
「ワルゥ!?」
「はははっ!」
ロイは既にモンスターボールからポケモン達を出し、一緒に波打ち際で遊び始めている。と言ってもアチゲータはともかく水が苦手なワルビルは割と全力で迫って来た波から逃げている様だが。
「皆、出てこい!」
ジンもロイに続くように、ファスナー付きのポケットからモンスターボールを取り出すとポケモン達を外に出していく。
「今日は久々に休養だ。それぞれ好きに過ごしていいぞ」
彼らはジンの許可を得ると嬉しそうに雄叫びを上げると、それぞれ海で泳いだりビーチでのんびりと過ごしたりと自由気ままに過ごし始める。
「それにしてもリコ達、遅いね?」
ロイはふと思い出したかのようにそう発言する。そう、今この場にはまだ男性陣しかいない。因みに彼らはランドウ以外は既に海パンにアロハやラッシュガードなど各々水着に着替えているのだが、女性陣はまだ着替えの途中の様だ。
「女性の準備には時間がかかるんだよ」
「そうなの?」
「まぁ、その内来るだろうから。のんびり待ってようぜ」
フリードはそう言うとマードックと共にレジャーシートを広げるとその中央にパラソルを立て始める。
「そう言えば、今日はドットも来てるんだよな?正直、意外だったな。海とか好きじゃなさそうなのに……」
「あぁ、俺も驚いたよ。あのドットが買い物だけじゃなく海にまで来るなんて……本当に子供の成長は早いよな」
フリードが言う様に水着を買いに行った女性陣の中にはドットも含まれている。マードックはドットの成長を素直に喜んでいるが、実はこれにはちょっとした裏がある。
「…………」
そして、当然、それに関わっているのはジンだ。彼らはいつかのピクニックの時と同じ様にまたしてもポケモンのクイズで海に行くかどうかの勝負をしていた。そして、その結果は大方の予想通り、ジンが勝利したのだ。因みにその時の問題は、またしてもポケモンシルエットクイズである。
『このポケモンはなんだ?』
『ジュカ……いや、大丈夫。それはジュカインで間違いない』
前回の事からひどく疑い深くなっていたドットだが、前回の『上から見たプリン』と違い今回の問題は明らかに正面から見たジュカインのフォルムだ。間違えのはずがないと自信を持って答えたのだが、相手があまりにも悪すぎた。
『はい。残念』
『嘘だろ!?』
ジンはスマホロトムを操作し、シルエットの向こうにいるポケモンを表示させる。するとそこには間違いなくジュカインの姿があった。
『やっぱりジュカインじゃないか!』
『よく見て見ろ?』
確かにジュカインの姿はあったのだが……そのジュカインは突如として輝き始め次第にその姿を変貌させ、本当の姿へと戻っていく。
『モンモン♪』
『正解はジュカインに『へんしん』したメタモンでした』
『インチキだ!?』
などと言ったやり取りがあり、ドットは当然の様にインチキ問題に怒り狂ったのだが、最終的にはジンの口車に乗って海へと同行する事が決まったのだ。
そんな事情を知る由もなく無事、拠点を確保した彼らはそのまま女性陣が来るのを待っていたのだが、暫くするとビーチの入り口付近に若い男性達が集まり始めていた。
「……やれやれ、またか」
「よしっ、行くぞ。ジンも来るか?」
「ん?……あぁ、そういう事か。勿論、行くよ」
その様子を見たフリードとマードックは直ぐに事態を把握したらしい。ジンも数秒程、遅れて事情を理解した為、2人と共にビーチの入口へと向かって歩き出した。そのまま歩くと、やはりとでも言えばいいのかモリーとオリオ、そして2人の背後に隠れるリコとドットの元に数名の若い男性達が集まっていた。
オリオは大胆な黒のビキニ姿で胸元には2つの大きな果実が瑞々しく実っていた。更にキュッとしたくびれに長い美脚が伸びており見事なスタイルと表現するしかない。
モリーは紺色のハイネックビキニを身に纏っていた。オリオに比べると些か胸の大きさは劣るが、そのスレンダーなスタイルと白く透き通るような美しい肌には多くの男性が目を惹かれている。
(ふむ……)
何を隠そうジンもその1人である。水着姿の女性はホウエン出身であるが故に割と見慣れているのだが、相手がよく知る相手な上に見事なスタイルの持ち主なのだ。目が行かない方がおかしいと自己弁護を心で行う。
「ねぇ、お姉さんたち。一緒に遊ばない?」
「悪いけど、ツレがいるから」
「そう言わずにさぁ!」
男性達の狙いは彼女たち……と言うよりもオリオとモリーの2名なのだろう。あまりにも古典的なナンパである。しかも、彼らもこの手のナンパをしなれているのか一度、断られた程度では諦めたりしないらしい。その様子を見たジン達は速やかに行動に移る事を決めた。
「よぉ、うちのツレ達になんか用か?」
「……なんだ。本当にボディガード付きかよ」
「い、行こうぜ……」
ナンパ男達とオリオ達の間にフリード、マードック、ジンの3人が入り込んだ。ガタイの良い巨漢のマードックとフリード、ジンの3人の鋭い視線を受けナンパしていた男性陣は肩身が狭くなったのかすごすごと撤退していく。
「来るのが遅い!」
「もっと早く来なって。あの手の輩は追い払うの大変なんだから」
「わ、わりぃ」
オリオとモリーはどうやらフリードたちが助けに来る事を最初から分かっていたらしい。彼らの様子を見るにこの手の状況は今回が初めてではないのかもしれない。
「リコ、ドット、大丈夫か?」
ジンに話しかけられリコとドットはそれぞれオリオとモリーの背後から姿を現した。そこでようやく2人の水着姿が目に映る。
「う、うん……」
「……あんな古いナンパする奴、本当にいたんだ。都市伝説かと思ってた」
リコは白とエメラルドグリーンを基調としたセパレートタイプの水着だ。トップスにはフリルがあしらわれており、スカートの部分には『このは』の意匠が施されている。
ドットは少し色の薄い紫色のワンピース型の水着だ。あまり肌を出したくない為か、他のメンバーに比べて面積が多い物を着ている。
(……これはこれでいいな)
2人とも、オリオやモリーに比べてしまえばスタイルについては年相応と言った所だ。しかし、元々のビジュアルの良さや成長途中の肉体からは将来性を大いに期待させるものがある。
「2人共、なかなか似合ってるぞ」
「は、恥ずかしいよ……あんまり見ないで…‥」
ジンのストレートな言葉を受け、リコは顔を赤くしながら目をそらしてしまう。その様子を見ていたドット、オリオ、モリーは呆れたような顔をしながら話しかける。
「何が見ないでだよ。あれだけ必死に水着選んだんだから、しっかり見て貰えばいいじゃんか」
「そうそう。私らもあんだけ付き合わされたんだから」
「しっかり見せてジンをメロメロにしてもらわないとね!」
久しぶりの海という事で以前まで持っていた水着は成長期のリコには少し小さくなっていた。その為、新しい水着を女性陣と一緒に購入しに行ったのだが、いざ到着すると、どれを着ればジンの気を引けるのか悩みっぱなしだったのだ。
尚、その時の様子だが……
『こ、これを着ればジンを……』
『ちょ、ちょっと!それほぼ紐じゃないの!?』
『でも!これ位じゃないと!』
『絶対に駄目!私らの目の黒いうちはこんなの着させないから!』
などと言ったやり取りが店内で何度も行われていたらしい。リコも周りにオリオやモリーというスタイルの良い大人の女性がいた為、ジンの視線が行かない様にと無意識の内に張り合おうとしてい様だ。最終的にドットが最新の水着の情報を調べ、オリオとモリーがリコに似合うと思われる水着を探し出し、ようやく今着ている水着に決まったのだ。
「うっ……ジン……ど、どうかな?」
色々と協力してくれた女性陣に詰められ、リコは顔を赤くしながらジンに水着姿の感想を求める。それに対し、ジンは恥ずかしがる様子もなく堂々と自分の気持ちを口にした。
「さっきも言ったが、似合ってるよ。色合いがリコに合っていて凄く可愛らしい」
「はうっ!?」
「リコはスタイルについて気にしてるみたいだけど、年齢を考えれば十分だ。これから、成長するだろうし普段、見れないリコの姿はとても新鮮で思わず、視線が行ってしまうよ」
「も、もういいから~~~~!!」
止まる事無く誉め言葉を口にするジンに限界を迎えたリコが接近し、手で口を塞ぎに掛かる。リコは恥ずかしさで気づいていないが、そうなれば必然的に密着率は上昇していく。普段からこの距離でいる事は珍しくないが、今回は水着という事もあり、素肌で触れ合う部分がかなり大きい。
そんな2人の姿を大人達はニヤニヤしながら見つめ、ドットは恥ずかしさからかそっと目をそらしてしまった。
「……今日はいつもよりも積極的だな」
「え?……ひゃぁっ!?」
ジンの言葉でようやく今の状態を理解した様だ。リコは慌てて離れようとするがジンはリコの体に手を回してそれを阻止する。
「じ、ジン!?」
「リコさえよければ俺はこのままでいたい……どうかな?」
こんな間近で耳元で囁くように言われてしまえば、ジンに手遅れなレベルで惚れこんでいるリコには断る事など出来る筈がない。リコは顔を真っ赤にしながら、コクコクと首をゆっくり動かした。
「よしっ……じゃあ、ミロカロスに乗ってちょっと沖まで遊覧にでも行くか?勿論、2人だけでな」
「は、はい……」
この時、リコは既にジンから何を提案されたのかもよく理解していなかった。ただ、言われるがままにジンと一緒であればなんでもいい、彼女はそれ以外、考える事が出来なくなっていた。
「それじゃあ、ちょっと行って来るよ」
「楽しんできなよ~!」
「あんまり、リコにイタズラするんじゃないよ」
若干、信頼されていないのかモリーに釘を刺されるが、ジンは空いていた片腕をヒラヒラさせながら一応、承諾しその場を離れていく。
***
「~~~~~~っ!?」
ジンとリコが2人だけでミロカロスに乗り沖へと遊覧に出て暫く経った。当初こそ、ジンの背中に掴まりぼーっとしていたリコだが、今では漸く理性が戻ってきたようで先程の醜態を思い出し唸り始めてしまう。
「そんなに気にしなくても……」
「だって!皆の前で、あんな……う~~~~~~!」
リコは恥ずかしがっているが、正直、ジンを含めそれ以外のメンバーからすれば、もう見飽きる程に見た光景である。今更、リコが醜態を晒そうとも気にする者は1人もいないだろう。
(ちょっと、やり過ぎたか……)
こうなってしまった以上、リコが落ち着くまでの間は仲間達が待つビーチに戻るのはリコが嫌がるだろう。暫くの間は2人でのんびりするのも悪くないと思っていたのだが、それは予想外の存在によって阻まれる事になる。
「アチゲ~~~!?」
「ん?」
「今のって……アチゲータ!?」
突如としてアチゲータの声が海へと響き渡る。慌てて周囲を見渡すとビーチからかなり離れた海のど真ん中にホエルコ型の浮き輪に乗ったアチゲータの姿が確認できた。
「アチ!?アチ!?アチゲ!?」
どういう理由でそうなったのかは分からないが、その慌てようからアチゲータにとってもこの状況は予想外の様だ。慌てるあまり『じだんだ』を発動する勢いで足踏みをし始めてしまう。
「あの馬鹿……リコ掴まってろ!」
「う、うん!」
「ミロカロス!」
「ミロ!」
あれでは程無くして浮き輪に穴が開き、アチゲータは海に沈んでしまう。基本的に炎タイプのポケモンは水に強くない。アチゲータも例外ではない筈で恐らく泳ぐことも出来ないだろう。
「アチゲッ!?」
アチゲータの乗っていた浮き輪に遂に穴が開いてしまった。ミロカロスは全速力で向かっているのだが、如何せん距離がある。ジンは咄嗟に距離とスピードから到着までの時間を計算するが、どう考えても浮き輪が沈む前には辿り着けそうにない。
「何だ……」
だが、その瞬間、ビーチの方角からアチゲータに向かって海の中を何者かが超高速で突き進み始めた。その存在は海中で突如として輝き始めアチゲータの真下の海面から飛び出した。
「プルルルルル!」
飛びだしたのは、アメコミ風のムキムキの筋肉にその中心にはハートマークが描かれたポケモンだ。そのポケモンはアチゲータを抱えると体に纏っていた水のリングを海面に展開し、浮き輪の様にするとアチゲータを乗せ、そのままビーチへと向かって進み始める。
「凄い……」
「今のは……とにかく、俺達も行くぞ。頼む、ミロカロス」
「ミィロ!」
アチゲータ達に少し遅れる形でビーチに到着しミロカロスから降りると、そこでは無事に帰還したアチゲータとロイが涙を流しながら抱きしめあっていた。
「アチゲータは大丈夫そうだね」
「そうみたいだな……ところで、あのポケモンは?」
ジンが視線をロイ達から逸らすとそこには先程、アチゲータを救出したポケモンがポーズを取って立っていた。更にそこにはカメラを持った3人の男性、通称:スナップ小僧がおり、様々な角度からそのポケモンの写真を撮っている。
「説明しよう!」
「うわっ!?」
「……あの、どちら様で?」
「海パン野郎って呼んでくれなのだ!」
ジン達の背後に現れた男性、本人曰く海パン野郎と言うらしい。名前の通り海パンを履いてはいるが、あんまりにストレート過ぎる名前にジン達は思わず呆れたような表情を浮かべてしまう。
「そんな事よりも今はあのポケモンの事なのだ!彼の名はイルカマン!ピンチの人を助けてくれる海のヒーローなのだ!」
イルカマン、パルデア地方のポケモンだ。ジンも以前、フリードから話だけは聞いたことがあったが実物を見るのはこれが初めてである。
「イルカマンは数多くの能力が備わっている。噴気孔から噴き出す水の勢いで空を飛び、目に纏った水泡レンズのお陰で視力が上昇する!更に泳ぐ速度は50ノット!クルーズ船を軽々と持ち上げる怪力を持ち、そして必殺の『ジェットパンチ』は水泡グローブをジェットの様に飛ばすことが出来るのだ!」
海パン野郎は台本でも用意してあるかのような勢いで次々にイルカマンの能力を紹介していく。それらがすべて事実であるのなら、確かにイルカマンは海のヒーローと呼ぶに値するポケモンで間違いないだろう。
「イルカマンは今日も海の平和を守るのだ!」
役目を終えたイルカマンはそのまま海へと飛び込み、遠くへと泳いでいく。ロイやアチゲータを含め彼に助けられた人々はその背中に向かって最大限の感謝を込めながら大きく手を振っていた。
しかし……多くの者がイルカマンに憧れや感謝を気持ちを向ける中、ただ1人の人物だけはまるで獲物を見つけたハンターの様な視線を向けていた。
「…………悪くないな」
「駄目!」
ジンが一人、そう呟いた瞬間にそれまでイルカマンに感謝を伝えていたロイが接近し、ジンの頭を叩きつけた。普段のロイであれば、その後の報復を恐れ決して行わない行為である。
「……なんだよ?」
「なんだよ?じゃない!ジン!今、イルカマンをゲットしようとか考えてたでしょう!」
「……駄目なのか?」
「「「「な、なにぃっ!?」」」」
ジン達の会話が聞こえていたのか、今度は海パン野郎とスナップ小僧の3名までもがジンに迫り寄ってくる。正直、暑苦しい事、この上ない。
「き、君ぃ!イルカマンをゲットしようなんて何を考えているんだ!?」
「イルカマンは皆のヒーローなんだ!ゲットするなんてもってのほかだぞ!」
「そうだ!我々からイルカマンを奪おうとするな!」
スナップ小僧の3人は必死に訴えかけるがジンはそれに対して困ったような表所を浮かべている。ここポケモン保護区ではないしイルカマンも珍しくはあるが、絶滅危惧種の様な存在ではない。ゲットするのはトレーナーの権利として認められているのだが、彼らはそれを許す気はない様だ。
「そもそもイルカマンはとても強いんだぞ?君如きが勝てる訳ないじゃないか!」
「その通り!イルカマンの『ジェットパンチ』の威力は君の想像以上の威力なのだ!」
「ちょっと!?そういう言い方はやめてよ!ジンが益々、やる気出しちゃうじゃないか!?」
付き合いが長いだけあり、ロイはジンがどんな言葉に反応するのかよく心得ている。ジンは見ず知らずの相手に多少、侮られたりしても気にはしない。だが、イルカマンが如何に強力なのかをアピールするのはまるっきり逆効果だ。
「じ、ジン!」
このままではジンはイルカマンをゲットしに行ってしまう。個人的にはそれでも構わないが、下手をすればこの街のイルカマンのファン達、全員を敵に回しかねない。そう考えたリコはジンを止める為に、咄嗟にジンの腕に自分の慎ましやかな胸を必死に押し当てに掛かった。
「…………ん?」
小さいながらも確かに存在するリコの胸、それが腕に当たっている触感で、脳内がバトル一色で染まりかけていたジンを強制的に現実に引き戻した。
「リコ?」
「ジン!前にサーフィン出来るって言ってたよね?私、ジンがサーフィンする所、見たいな~」
リコは羞恥心から顔を赤くし上目遣いで必死に誘惑しようとしてくる。リコのそんな慣れない姿を見てその真意を理解できない程、ジンは鈍感ではない。
「……そうだな。元々、今日は休養のつもりで来たんだし、楽しむとするか」
「う、うん!海の家でサーフボードのレンタルやってたよ!」
「よしっ!じゃあ、早速、行ってみるか」
ジンとリコは互いに腕を組んだまま、海の家に向かって歩き始める。ロイ、海パン野郎、スナップ小僧達は、突然、いちゃつき始めたジン達に呆気を取られ、ただ黙って見送るしかなかった。
***
ジンとリコが去った後、スナップ小僧達は浜辺に用意したレジャーシートの上に座りながら先程、撮影したイルカマンの写真のチェックを行っていた。
しかし、その中の1枚には偶然、映りこんだジンとリコの姿もあった。その写真を見た瞬間、スナップ小僧の1人が思わずと言った様子で口を開く。
「さっきの2人にさ……色々と見せつけられた気がするよな」
「それ以上、言うな!悲しくなるだろう!」
イルカマンの写真を撮る事に青春を捧げている彼らだが、やはり人並みには恋人を欲している。先程のジンとリコのイチャイチャぶりを見て羨ましいと感じるのは仕方のない事だ。
「……そうだな。それよりもイルカマンの写真を共有して保存するぞ」
気持ちを切り替え、改めて3人の撮影したイルカマンの写真を再確認する。アチゲータを助けた場面や落とし物を探し当てたシーンなど様々な写真があるが、そこには彼らが一番欲しているシーンの写真は存在しない。
「やっぱり……イルカマンの変身シーンの写真が欲しいな」
「確かにな……」
「でも、難しいんじゃないか?」
イルカマンは普段はナイーブフォルムと呼ばれる進化前のナミイルカとほぼ同じ姿だが、誰かの助けの声を聞くと先程、アチゲータを助けた時のマイティフォルムへと変身する。
そんなイルカマンの変身シーン、それは撮影は疎か見た者すらいない。マニアやポケモンの研究者ですら欲しているシーンだ。簡単に見ることは出来ないだろう。
「でも、誰も見た事のないイルカマンの変身シーンを撮影出来たら凄いぞ!」
「そりゃそうだけど……」
「でもさ、イルカマンは誰かのピンチの時しかマイティフォルムにならないわけだし……」
「……あっ!それだ!」
***
海の家でサーフボードをレンタルしたジンは、早速、沖に出ると波を捕まえては、海の上を滑るように進みある程度、波乗りを楽しむと浜辺へと戻ってきた。
浜辺にはリコとビーチチェアに横になったオリオとモリー、そして体力切れを起こしパラソルの下で、ぐったりと倒れているドットの姿があった。
「凄い!凄い!かっこいい!」
「本当にサーフィン出来たんだ~」
「なんだ?信じてなかったのか?」
「てっきり、リコの前で格好つけてるだけだと思ってた」
ジンはホウエン地方で僅かではあるが、トウキというジムリーダーから師事を受けた事がある。彼は『格闘ビッグウェーブ』のキャッチコピーを持つ通り、自分だけではなく相棒のハリテヤマもサーフィンを得意としているのだが、ジムに挑戦した際にサーフィンがバランス感覚を鍛えるのに最適な競技である事を知り、彼から直接手解きを受けた事があるのだ。この程度の小さな波ならば悠々と乗る事は難しくない。
「じゃあ、ボードを返してくるよ。フリード達に任せっきりにするのも悪いしな」
フリード、マードック、ランドウ、ロイの4名は海で一通り遊ぶと夕食用のバーベキューの食材の買い出しに出向いている。8名分の食材の買い出しとなるとそれなりの荷物となる。今からでも合流し、それを手伝おうと考えたジンはレンタルしていたサーフボードを返却しに向かって行く。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!誰かぁぁぁぁぁっ!助けてぇぇぇぇっ!」
ジンが海の家に入ったのとほぼ同じタイミングで、リコ達から見て右方向にある崖から助けを求める悲痛な叫び声が聞こえて来た。
「な、なにっ!?」
「あそこからだ!」
「行くよ!」
「ぼ、僕も行くの!?」
オリオ、モリー、そしてリコに手を引かれたドットの4名は悲鳴の聞こえた方向へと向かって走り始める。崖壁にまで到着したリコ達は上を見上げると先程のイルカマンを撮影したスナップ小僧の1人が複数体のポケモンに囲まれ断崖にまで追い詰められていた。
「あれは、ガケガニ!?しかもあんなに!?」
「あのままじゃまずい!皆、行くよ!」
リコ達はスナップ小僧を助ける為に崖の上に向かって再び、走り出した。崖の麓に回り込み、大急ぎで登っていく。幸いにも崖までの道は緩やかでありスナップ小僧とガケガニの元に到着するまでは然程の時間もかからなかった。
「助けてくれぇぇぇっ!」
リコ達の存在に気付き、スナップ小僧は必死な形相で助けを求める。その様子を見て、躊躇っている余裕はないと判断したリコ達は速やかに彼を助け、ガケガニを落ち着かせる為にバトルへと移行する事を決意した。
今、リコ達の元にいるポケモンは共にここまで来たニャローテとクワッスだけだ。他のポケモン達は船やビーチで自由にさせている為、この2体だけで対処するしかないが、ガケガニは岩タイプでニャローテたちの相性はいい。しかし、相手は6体、数の利は向こうにある為、戦況は五分と見ていいだろう。
「ニャローテ!『マジカルリーフ』!」
「クワッス!『みずでっぽう』!」
スナップ小僧を囲うガケガニに向け、ニャローテとクワッスはそれぞれ技を放つ。『マジカルリーフ』と『みずでっぽう』はガケガニの背に命中、効果抜群の技だけあり、かなりのダメージを与えたがそれがますます、彼らを怒らせる要因に繋がったらしい。
「「「「「「ガッ!ガケッ!」」」」」」
ガケガニ達はその場から同時に両手の鋏を黄緑色に光らせると『シザークロス』を撃ち出した。撃ち出された12の斬撃は『マジカルリーフ』と『みずでっぽう』を打ち破り、ニャローテとクワッスへと命中し吹き飛ばす。
「ニャローテ!?」
「クワッス!?」
「「「ガケェッ!」」」
ガケガニ達はまだ怒りが収まらないのか、次にトレーナーであるリコ達をターゲットにした様だ。続けて攻撃の準備を行うと、連続で『シザークロス』の斬撃を撃ち出していく。
「危ないっ!?」
「皆、避けて!?」
リコ達は咄嗟にその場から飛び跳ねた。身体能力が決して高くない彼女たちだが、奇跡的に水着を僅かに擦らせる程度で済んだ様で、4人共、体にダメージはない。ほっとしたのも束の間、ガケガニ達は更に続けて『シザークロス』を撃ち出す準備に入っていた。
「また来る!?」
だが、次の斬撃は恐らく回避しきれない。この中で最も身体能力の低いドットは本能的にそれを感じると、思わずその場で動きを止めてしまう。リコ達はそんなドットを守る為に盾になろうとするが、ガケガニ達から見れば獲物が同じ場所に固まり、狙いがつけやすい状況になってしまったのだ。この機を逃す筈がない。
「「「「「「ガケッ!」」」」」」
ガケガニ達は再び、『シザークロス』を放った。斬撃は真っすぐにリコ達に向かっていく。ニャローテとクワッスは大急ぎでトレーナーの元に向かおうとするが、この距離では間に合わない。もう駄目だ。その場にいた誰もがそう考え、思わず目をつぶり痛みに耐えようとする。
「…………えっ?」
だが、いつまで経っても痛みが襲ってこない。それに疑問を感じた彼女たちは恐る恐る目を開く。そこには迫って来た斬撃を受け止めくれたであろう、2体のポケモンが立っていた。
「イルカマン!それに、サーナイト!?」
この海でイルカマンが助けに来てくれることはなんら不思議ではない。だが、このタイミングで何故、サーナイトまでもが助けに来たのか。思わず、そんな疑問が頭によぎった。
「ギリギリ間に合ったか……」
「ジン!」
「あ、あんた、いつの間に……」
いつの間にかリコ達の横には先程、分かれたばかりのジンが立っていた。ジンはリコ達の前に出るとガケガニ達を睨みつけ敵意を示す。
「選手交代だ。ここからは俺達が相手になってやる」
***
時は少しだけ遡る。
リコ達が崖を登り始めようとした頃、ジンはサーフボードを返却し再び、リコ達のいたパラソルの傍に戻っていた。
「あいつらどこに行ったんだ?」
フリード達がどこに買い出しに行ったのかを聞こうとしていたのだが、何故か彼女たちは1人もこの場にいない。リコ、オリオ、モリーならともかく、疲れ切っていたドットまでいないのは奇妙だ。そう考えたジンは何か動かざるを得ない様な事件が起こったのではないかと本能的に察した。
「……あそこか!」
周囲を見渡すと崖の上にガケガニに囲まれ、追い込まれそうになっているスナップ小僧の1人が目に映った。リコ達の姿こそなかったが、自分よりも近くにいた彼女たちがこの事態に気付かない筈がなく、また、この状況で無視を決め込む事もしない筈だ。そうなると必然的にリコ達もあの場に向かっていると考えられる。
「サーナイト!一緒に来てくれ!」
「サナ?」
ジンは辺りを見回し、パラソルの日陰で涼んでいたサーナイトに声をかけると一目散に崖に向かって走り始める。かつてトウキと共に砂浜を走った経験が活きたようで、あっという間に崖の近くにまで到着した。
「ん?」
崖下から上を見上げる。先程までは距離もあり気づかなかったが、その中腹には崖の上で囲まれているスナップ小僧の仲間の2人がカメラを構えながら海を見ていた。仲間があれ程、助けを求めているのに奇妙なまでに落ち着いている。その事に疑問を感じたジンは、その視線を追う様に海へと視線を向ける。
「……そういう事か」
彼らの視線の先にいたのはナイーブフォルムのイルカマンだ。彼らがこの状況で尚、カメラを向ける理由があるとすればイルカマンがマイティフォルムに変身する場面を撮影する為と考えるのが自然だ。彼らの落ち着きぶりから見て恐らく、仲間が危機に追い込まれたふりをし、そこを助けに来たイルカマンの変身シーンを撮影するつもりだったのだろう。
だが、崖の上で予想外の出来事が起こり本当に危険な状態に陥ってしまった。イルカマンは直ぐにでも助けに行きたいが、変身シーンを見られる事を嫌がり動けないでいる。今の状況は大凡、そんな所なのだろう。
「……ふむ」
このままジンが助けに向かっても構わないのだが、それでは少し面白くない。崖の上のスナップ小僧については自分の行いを反省してもらう意味を込めてギリギリまで放置していいだろう。だが、イルカマンの力をこの目で確かめるには丁度いい機会だ。
「彼らの動きを止めろ。その後、『サイコキネシス』で森まで運んでくれ。扱いは……まぁ、怪我させない程度に適当でいい」
「サナッ!」
ジュカインに次いで長い付き合いとなるサーナイトは、ジンの思惑を即座に察してサイコパワーを解放し、スナップ小僧2人とそのポケモンのと思われる3体のミネズミを拘束する。
「うわっ!?な、なんだっ!?」
「ズミ!?」
「い、イルカマン!?助けて!?」
スナップ小僧達とミネズミは突然、体が動かなくなった上に空中に浮かび上がった事で恐怖心からイルカマンに助けを求める。
「プル!?」
イルカマンも突然の事態に困惑した様子だが、咄嗟に周囲を見渡しジンの存在に気付いた様だ。互いの目が合うとジンとサーナイトはそのままイルカマンから目をそらし背中を向ける。ジンにとって、一番の興味はイルカマンの強さにある。その一方で研究者気質な一面もある為、変身シーンにも当然、興味があった。そんなジンが見つめていたのではイルカマンも安心して変身することが出来ないだろう。そう配慮したのである。
「…………」
暫く、無言でジンの事を見つめたイルカマンは意図を理解したのか、コクリと頷くと体を輝かせマイティフォルムへと変身を始める。
「崖の上に『テレポート』だ」
背中越しでも分かる光、恐らくこれが変身の合図だ。やがて光が収まり、爆発的な水音が響き渡る。イルカマンが崖の上に跳躍した。そう感じたジンはサーナイトに指示し『テレポート』で崖の上に瞬間的に移動する。
崖の上に到着するとそこには予想通り、リコ達の姿とそして6体のガケガニが存在し、計12の『シザークロス』の斬撃が迫って来ていた。
「っ!『まもる』」
イルカマンが『ジェットパンチ』で斬撃を迎え撃つ中、サーナイトは『まもる』を展開し、取りこぼしに備える。万全の守りを敷いた為、誰一人として負傷者はいなかった。
「ギリギリ間に合ったか……」
「ジン!」
「あ、あんた、いつの間に……」
目をつぶっていたリコ達からすれば、イルカマンを始めジンとサーナイトも突然現れた様に見えたのだろう。だが、律義にここまでの状況を説明している余裕はない為、ジンはその問いかけを黙殺しながらも彼女たちの前に出る。
「選手交代だ。ここからは俺達が相手になってやる」
ジンの言葉に呼応する様にイルカマンとサーナイトも同じく前に出る。数の利は先程のバトルと変わりはないが、多対一という状況はジンにとっては割と慣れた展開だ。正式なポケモントレーナーになる以前、オダマキ博士を助ける為にキモリのモンスターボールを選んだ時に至っては、3匹のポチエナを撃退した直後に親のグラエナを相手にした事だってある。あの時の状況に比べれば焦る程の事ではない。
「だが、その前に……そこのスナップ小僧さん」
ジンはヤシの木の後ろに隠れていたスナップ小僧を指差す。
「……えっ?お、俺?」
「そうだ。森の方に貴方の仲間達を移動させてある。迎えに行ってやってくれ」
「で、でも……」
彼としてもこの事態に多少は責任を感じているのだろう。イルカマンの変身シーン見たさに作戦に協力したが、この状況になっても尚、反省せずに我さきにと逃げ出そうと考える程、彼の人格は歪んではいない。
「いいから行って下さい。ここにいてもやれる事はないし、何をしたのかは知らないが、ガケガニの狙いは貴方だ。そんな相手がいつまでも此処にいたんじゃ、奴らを落ち着かせることもままならない」
「……わ、分かった。気を付けてくれよ!」
多少、悩んだ末に自分の存在が足手纏いだと理解したスナップ小僧は崖を降りていく。途中でガケガニ達が攻撃をしようとするがイルカマンとサーナイトという強敵を前に隙を見せる愚は犯さなかった。
「さてと……どう攻めるかな」
「プルゥ!」
ジンの独り言にイルカマンが一歩前に出てこちらに少しだけ振り返る。どうにも、ここは任せろ。そう言っている様だ。
「……いいだろう。お手並み拝見だ。こっちはサポートに回らせてもらう」
拙い連携を披露するよりも完全にサポートに回った方が戦いやすい。万が一、イルカマンが破れたなら、今度はサーナイトがバトルすればいいだけの事だ。
「サーナイト!『てだすけ』!」
「サーナッ!」
「プルルルゥ!」
サーナイトの『てだすけ』を受け、イルカマンは先手必勝とばかりに『ジェットパンチ』を繰り出した。正面にいたガケガニは防御の体勢を取り、それを受け止める。しかし、予想以上の威力であった様で、ガケガニは思わずのけ反って倒れてしまった。
(なかなかだな……海パン野郎が、あれだけ絶賛するだけの事はある)
これで1体はほぼ戦闘不能だ。確かにあれだけのスピードと威力であれば自慢の武器としての活用できるだろう。
「ケガッ!」
すると今度は、『ジェットパンチ』を受けた個体の真横にいたガケカニが、イルカマンに『シザークロス』を放つ。
「『リフレクター』」
だが、それはサーナイトの『リフレクター』が展開され、完全に防がれてしまう。ジンとしてはサポート役を引き受けた以上、イルカマンへの攻撃を完封するつもりでいる。即席のダブルバトルとて負けるつもりはない。
「『かなしばり』で動きを止めろ!」
更に続けて『かなしばり』でガケガニ達の『シザークロス』と動きを封じる。これで後は、ガケガニ達にイルカマンが『ジェットパンチ』でとどめを刺せばそれだけでこの場を収めることが可能だ。
(さて、次は何を見せてくれるんだ?)
ジンとしては『ジェットパンチ』以外のイルカマンの技が見たい所だ。次の行動に注目して見ていたのだが、イルカマンは突然、その場から大ジャンプすると予想外の行動に移る。
「…………は?」
イルカマンは空中から回転しながらガケガニに接近すると後ろから抱きしめた。不思議な事にハグされたガケガニは今までの怒りが消え失せたようで笑顔を取り戻していく。次々とそれを繰り返すと事で全てのガケガニは完全に落ち着きを取り戻してしまった。
(なんだそりゃ……)
理屈では理解しているつもりだが、全くと言っていい程に理論的ではない。無論、理論だけでポケモンを理解することが出来ない事などジンも承知の上だ。トレーナーとして様々なポケモンの神秘に触れて来たが、今回ばかりは本当に何が起こっているのか分からない様だ。
「プルルルゥ!」
イルカマンはガケガニが落ち着いたのを確認するとポーズを取り、海に向かって飛び込んでいく。ジンはその姿をただ黙って見送る事にした。
「ジン?よかったの?」
「……あぁ、構わないよ」
「意外ね。あんたならイルカマンに勝負を挑むかと思ったのに」
ジンの性格を理解している仲間達はイルカマンに勝負を挑まない事に疑問を抱いた様だが、それは正しい。実際、ジンはイルカマンが最初に『ジェットパンチ』を撃ち出したのを見た時はそうするつもりでいたし、あわよくばゲットする事も考えていた。だが、興が削がれたとでも表現すればいいのだろうか。最後の一連の動きを見てそんな気が失せてしまったのだ。
(イルカマン……スペックはいいが、俺とは合わないな)
ジンが自分のポケモンに求めるのは能力だけではない。重要な点が幾つかあり、それはバトルを楽しむ事が出来る性格である事、そして少し言い方は悪いが、いざという時には躊躇わずに敵を倒す冷徹さを持っている事だ。
『かなしばり』で完全に動きを封じたにも関わらず、イルカマンはガケガニを倒す事よりも落ち着かせることを優先し、あのよく分からないハグを行った。勿論、それはヒーローとしては正しいのかもしれない。だが、ジンが求めるのはあの状況でも技を繰り出し、敵を倒しに行けるポケモンだ。
イルカマンは根が善良すぎて、いざという時に……以前の砂漠であったポケモンハンター達を尋問した時の様な手段を取る事が出来ないだろう。そういったポケモンはジンの手持ちに加わらない方が、お互いの為である。
「そろそろ戻るぞ。話を付けなきゃいけない相手もいるしな」
「え?」
「話って?」
「今回の黒幕たちにだよ」
それは勿論、スナップ小僧達の事だ。ジンとしてもポケモンに対する好奇心から無茶をする気持ちは理解できるが、それでも今回の行動は少しやり過ぎだ。相手は年上だが、苦言を呈する必要があるだろう。
「黒幕?何の事?」
「……?あぁ、そうか。知らなかったな。実は」
リコ達に今回の一件の説明を行おうと振り返った。その瞬間、ビリっという音と共にリコ、ドット、オリオ、モリーの水着の肩紐が破れ、トップスがゆっくりと落ちていていく。
最初に目に飛び込んできたのはオリオだ。水着を着る事により強調されていた巨乳は、枷を外されたかのように揺れ動きながら露出されていく。よく見ると揺れ動く胸の中央には茶褐色の輪と少し大きな突起が確認できる。
更に視線を横にずらし見えたのはモリーだ。オリオに比べれば胸のボリュームは劣るが、平均的な大きさは備わっており、傷1つない美しい肌色の胸の中央には髪の色と同じく、ピンク色の突起が顔を出していた。
次に目に映ったのはドットだ。彼女はこの中で一番、歳が若く普段の食生活の影響しているのか体が一番未発達であり胸には全く膨らみがなく、なだらかだ。だが、その胸には小指の大きさ並みの小さなピンク色の突起があり、目を引き付ける物がある。
そして、最後に目に映ったのがリコである。大人組に比べれば小さいが、それでもドットと比べれば成長途中の僅かな膨らみがあり、更に胸の中心部には薄いピンク色の突起が見て取れる。自分の恋人でもある為、少し贔屓目になっているのかもしれないが、年齢以上に魅力的にジンには感じられた。
「っ!?」
突然の事態にジンは目を見開き、その光景を脳裏に刻み込んだ。因みにこの間、約0.11秒の出来事である。これは人類最速の反応速度であり、運動神経には自信があるジンでもここまでの反応は出来たことがない。だが、この状況を前にジンは己の限界を乗り越えた様だ。
しかし、何故こうなったのか?
ジンが知る由もないが、彼女たちの水着はガケガニの『シザークロス』により、僅かだが切り裂かれていたのだ。そして、本人たちも気づかない程に小さな切れ目を残していた。動きを止めている内は問題なかったが、安全が確保され動き出したために切れ目も段々と大きくなり、今に至ったのである。
「……っ!?」
一瞬の間を置き、彼女たちも自分達の胸が見えてしまっている事に気付く。羞恥心から顔を赤く染め上げた彼女たちは、大慌てで胸を隠し始める。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょっ!?な、なんでっ!!」
「ど、どうなってるんだ!?」
「じ、ジン!?こっち見んな!?」
彼女たちの黄色い悲鳴がビーチ全体へと響き渡った。しかし、ジンは動くに動けない。あり得ない伝達スピードで活発に働く頭と違い、体の方は硬直したままだ。
「サナッ!?」
ジンよりも先に♀である為か、硬直が解かれたサーナイトが動き始める。サーナイトはリコ達4人をジンの視線から守る様に抱きしめるとそのまま『テレポート』し、その場から消えていく。行先は恐らく、ブレイブアサギ号だ。そこに着替えを取りに行ったのだろう。
「…………結果的にだが、誰もいなくてよかったな」
その場に残されたジンはそう呟いた。スナップ小僧も全員、追いやった為、ジン以外に彼女たちの裸体を見た者はいない。これがビーチのど真ん中であれば、もっと大勢の人々に見られていた筈だ。そうなるよりはずっと良かったと断言できる。
だが、今後の彼女たちとの付き合いに置いては少々、肩身が狭くなることを覚悟せざるを得ないだろう。どんな形であれ彼女たちの胸を見てしまったのは事実なのだ。ジンに非が無くてもこういう状況で見てしまったという事の方が重要視されるのは仕方のない事だ。
後で彼女たちに再会したら、兎にも角にもまずは謝るべきだろう。そう考えたジンは取り合えず、この場を離れようとするが……
「……もうちょっと時間がいるな」
4人の胸を見た影響で、下半身に自然と血液が充満し生理現象が起き始めていた為、ジンは落ち着くまでの間、暫くその場から動けずにいるのだった。
そんな訳で女性陣にポロリしてもらいました。結構、前にしたアンケートで圧倒的にポロリを希望する人が多かったので仕方ないですよね!
全く関係ないですが、アニポケ最新話でミロカロスを見たロイが「何だこのポケモン?」って言うシーンを見て、そっかロイってミロカロスの事知らないんだって思いました。自分の小説とアニポケをごっちゃにしすぎですねw
☆9
りおんさまさん
高評価ありがとうございます
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