ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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VSアン

 

 テラスタル研修の基礎テストを終え、既に数日の時が流れていた。リコ達は、オレンジアカデミーを目指しつつその途中でポケモンのレポートを書く為に自然の中で様々なポケモンに触れあっている。そんな中、ジンはまだハッコウシティのフリード達が滞在しているホテルに留まり、大量の資料に囲まれていた。

 

「……手掛かりなしか」

「あぁ、残念だがな……」

 

 フリードと共に、ルシアスの手記、ダイアナの冒険記、パルデア地方に残るテラパゴスと思わしきポケモンの記録など様々な角度から資料を集め、2人掛かりで調べ尽くしたのだが、テラパゴスやラクアに関する情報は残念ながら得られなかった。

 

「まぁ、そう簡単には行かないか」

 

 多少、無念に思いながら、ずっと座りっぱなしで固くなっていた軽く体を伸ばす。すると突然、扉が開き外から3つのマグカップを持ったオリオが入って来た。

 

「2人共、お疲れ様。フリードにはコーヒー、ジンはホットモーモーミルクね」

「おぉ!サンキュー!」

「助かるよ」

 

 オリオが持ってきてくれた飲み物を軽く一口飲むと、オリオはジン達に進捗を訪ねて来る。しかし、ジン達の浮かない表情を見て、全てを察してしまった様だ。

 

「と、ところでジン?本当にモーモーミルクでよかったの?昨日まではずっとブラックコーヒーばっかり飲んでたのに」

「あぁ、作業中は眠気覚ましも兼ねてるからな。別にコーヒーも嫌いじゃないが、やっぱり、これが一番落ち着くんだ」

 

 ジンは割と甘党だが、そうなったのには彼の師匠が大きく起因している。僅かな時間ではあったが、見た目に反して甘い物ばかりを好む彼と行動を共にし、同じ物ばかり食べた結果、見事に感化されてしまったのだ。

 

「そっちこそ、船の修理は順調に進んでるのか?」

「うん。順調だけど、まだ半分って所かな」

「ん?もう半分も終わったのか?」

「流石は天才メカニックだな!」

 

 ブレイブアサギ号の半壊から、まだ一か月程度しか経っていない。人手も不足している中でこのスピードでの修理は流石と褒めるしかないだろう。

 

「ふふ~そうでしょう?実はそれだけじゃなくて、パワーアップも考えててさ!上手く行く保証はまだないけど、楽しみにしてて!」

 

 簡単な機械工作ならば兎も角、飛行船に関しては門外漢である為、ジンにはその内容を推測する事さえも出来ない。だが、オリオの様子から見て、ブレイブアサギ号のパワーアップにはそれなりの期待を持つことが出来そうである。

 

「分かった。船の事はオリオに任せる……俺はちょっと出かけて来る。ジン、お前はそろそろリコ達と合流してやれ」

「いいのか?まだ、何か当てがあるんだろう?」

「まぁな。だが、今から行く場所は俺一人の方が色々と話をスムーズに進めやすい。任せてくれ」

「……分かった。じゃあ、そっちは任せるよ。そろそろ合流してやらないとロイ辺りが特訓をサボりそうだしな」

 

 元々、リコ達がオレンジアカデミーに到着する前には、合流する予定だったのだ。これ以上、こちらに残ればそれも難しくなってしまう。切り上げるタイミングとしては、この辺りが妥当な所と言えるだろう。

 

「……程々にしてやれよ」

「分かってる。だが、この数日、俺がいなくてロイにとってもいい休養になった筈だ。少しくらいは厳しくしても問題ないだろう?」

 

 フリードはまだ何か言おうとしたが、ロイに特訓をするのが楽しみなのか、ウキウキした顔つきのジンを見て言葉を引っ込めてしまう。付き合いはまだ長いとまでは言えないが、この顔をしたジンを止めるのは不可能なことはフリードも理解しているらしい。

 

「それじゃあ、行って来る。何か分かったら連絡してくれ!」

 

 ジンはそう言い残すと部屋の外へと出て行ってしまう。その様子を見守ったフリードとオリオは、ただロイの無事を祈るばかりであった。

 

 

 

***

 

 

 

 フリード達に別れを告げてから、数時間後、ジンは現在、ボーマンダの背に乗り、リコ達との合流を目指していた。

 

「この辺りだな……」

 

 ジンとリコは互いにスマホロトムの位置情報を共有しあっている。その為、アプリを確認すれば大凡の居場所は分かるのだ。アプリによるとオレンジアカデミーにはまだ到着していないらしく、その周辺にいる事は間違いない。

 

「ボーマンダ、もう少し高度を下げてくれ」

「ホダァ」

 

 スマホロトムをしまうとボーマンダは徐々に高度を下げていく。地面が視認できる程度にまで降下し、周囲を見回すと岩場の麓で食事を摂っているリコ達の姿が見られた。しかも、その場にはリコ・ロイ・ドットの3人だけでなく、もう1人、ジンとリコの友人であるアンも確認できる。

 

「みぃーーつけた!」

 

 リコ達を発見したジンは空中から大声でそう叫ぶ。それに合わせる様にボーマンダは翼を大きく広げ最高速度を維持しながら急降下する。そして、地面に激突するギリギリのタイミングでジンは、ボーマンダの背から地面に飛び降りた。

 

「じ、ジン!?」

 

 突如、空中から現れたジンとボーマンダ。その登場にアンは心底、驚いた様子を見せる。それに反しリコ達はそれ程、驚いていない。普段からジンの規格外の行動を目にしてきた為、耐性が出来てしまった様だ。

 

「アン、久しぶりだな」

「う、うん。久しぶり~……じゃなくって!もう!すっごいびっくりしたんだから!」

「悪い悪い。この登場の仕方、一度やってみたかったんだよ」

 

 それは、セキエイ学園で初めてフリードと出会った時の事だ。中々、派手で印象的な登場で、機会さえあれば何時かやってみたいとジンは秘かに思っていた。そして、偶然にも絶好の機会が目の前に現れ、ついやってしまったらしい。

 

「ところで4人共……休憩中か?」

「うん。ドットが疲れちゃったから、皆でおやつ食べてたんだ」

 

 ドットのスタミナ切れによる休憩、もうこの面子の中では休憩を挟む為の定番の理由である。当初は自分の足で歩き、旅をすれば多少は改善されると思っていたのだが、ここまで来ても一向に体力が増える様子が見られない。どうやら、ジンが思っていたよりも重症の様だ。

 

「ドット、やっぱり体力トレーニング一緒にやらないか?」

「絶対嫌だ!」

「頑なだな……まぁ、いい。折角、合流したんだ。俺も話に混ぜてくれ」

 

 その後、ジンはリコ達から、ここ数日の出来事の報告を聞くことになる。リコ達はここ数日で紆余曲折あったもののレポートは何とか完成させたらしい。色々と興味深い内容だったが、特に驚いたことは、やはり、リコのミブリムがテブリムに進化した事だ。

 

(結果的にだが、離れていて正解だったか?)

 

 リコ達によると、ミブリムが進化するに際し、野生のコノヨザル達とのバトルが大きな要因となったらしい。仮にだが、もしもその場にジンがいれば、恐らく真っ先にバトルを仕掛けそのまま倒してしまっただろう。そうなればミブリムには出番は来ず、進化する事はなかったかもしれない。

 

「テブッ!」

 

 因みにそのテブリムは、ジンのサーナイトと楽しそうに談笑している。以前までと比べ、進化した事でかなり活発な性格になった様だ。

 

(これなら、今までやって来なかった実戦形式のトレーニングも出来そうだな……まずは、サーナイトと一緒にエスパーとフェアリー技を覚えさせる所から始めるか)

 

 進化し性格が変わったのをいい事にジンは、脳内で着々とテブリム強化計画を密かに進行していく。

 

「テブリッ!?」

 

 エスパータイプ故か一瞬で嫌な予感を察知し、慌てた様子で振り返るが、ジンはテブリムと目が合う前に顔を背けてしまう。ちなみに、そんなジンの思惑をサーナイトは既に察していた。サイコパワーを使わずとも、付き合いの長さ故にそれくらいは把握出来るのである。

 

 その後、暫く基礎テストのジムリーダーとのバトルについての話で盛り上がっていると、意を決した表情をしたアンがその場から立ち上がり、語り掛ける。

 

「ジン!私とバトルして!」

「バトル?俺とか?」

「あ、アン!?本気なの!?」

「分かってる。今の私じゃ勝てないって事くらい……でも、ジンに挑めるこのチャンスを逃したくないから」

 

 ジンはいずれ遠からず、四天王やチャンピオンとなるトレーナーだ。今後、そんな彼に正面から挑むとなると、ポケモンリーグで優勝し、その後、チャンピオンリーグを勝ち抜く必要がある。ある意味、今がバトルを申し込む絶好のチャンスなのだ。

 

「分かった。バトルを受けよう。ルールはどうする?」

「じゃあ、使用ポケモン1体で一本勝負でお願い!」

「了解だ。リコ、審判を頼む」

「わ、私!?」

「リコ、お願いね!」

「う、うん!任せて!」

 

 審判をリコに任せると、ジンとアンはその場から少し離れバトルに適した距離を取った。

 

「ジン!出来ればジュカインを出してくれないかな?」

「……別に構わないが、いいのか?」

「うん!今の私の全力でどこまで通じるのか試してみたいの!」

 

 ジュカインは間違いなくジンの最強のポケモンだ。同じ学園で共に生活していたアンは当然、その事は知っている。その上で、自分の力を試すつもりの様だ。

 

「いいだろう。行け!ジュカイン!」

「フタチマル!お願い!」

 

 ジンとアンはそれぞれ自分のポケモンをモンスターボールから出した。ジンは要望通りに相棒のジュカイン、そしてアンが出したのは、しゅぎょうポケモンのフタチマルだ。

 

「おっ!フタチマルか。進化してたんだな」

「へへへ。驚いた?」

「あぁ。それに、良く育てられてるみたいだ」

「勿論!私の自慢の相棒だからね!」

 

 フタチマルはアンが最初に貰った相棒ポケモンだ。進化もしており、全体的に高水準の能力を有している様だが、相性から見てもジュカインが有利である。それでも尚、フタチマルを出す辺り、何か狙いがあるのだろう。

 

「それじゃ、お喋りはこの位にして、そろそろ始めるか……」

「うん!リコ、お願い!」

「はいっ!……只今から、ジンとアンのポケモンバトルを始めます。使用ポケモンは1体、戦闘不能になったらバトル終了です。それじゃあ……バトルスタート!」

 

 リコの合図と共にジュカインとフタチマルは同時にその場を駆け出した。素早さではジュカインが上だが、フタチマルの素早さも決して侮れる物ではない。

 

「『リーフブレード』!」

「フタチマル!こっちも『シェルブレード』!」

 

 ジュカインは両腕の愛刀に草のエネルギーを集め深緑の二刀流となる。それに対抗するかのように、フタチマルは両腿部分に収納されている2つのホタチを手に取ると水のエネルギーを込め、同じ様に二刀流の構えを取った。

 

「ジュカァ!」

「フタッ!」

 

 両者の刃はぶつかり合い、鍔迫り合いの状態となる。しかし、元々、相性が不利な上にレベルも上であるジュカインの勢いには勝てなかったようで、フタチマルは後方へと弾き飛ばされた。

 

「まだまだ!『みずのはどう』!」

「『こうそくいどう』で回避。続いて、『エナジーボール』だ!」

 

 フタチマルは、渦巻く水流を口から噴く。しかし、ジュカインはその場から目にも止まらぬ速さで移動し、回避する。そのままフタチマルの背後に回り込み、口元にエネルギーを集中させ緑色の光球を発射する。

 

「フタチマル!後ろから来るよ『シェルブレード』!」

 

 アンの声に反応し、フタチマルは即座に後ろを振り向いた。そのまま再び、両手にホタチを持ち二刀流となり迫りくる『エナジーボール』を切り裂き、一刀両断にしてしまう。

 

「ほぉ……アン、成長したな」

「当然!2人がいなくなった後もトレーニング続けてたんだから!」

 

 セキエイ学園にいた頃、ジンは何度かアンにアドバイスし、トレーニングの相手を務めた事がある。もっとも、クラスが違う上に当時はまだ内気だったリコを手伝う事が多かったので、そこまで頻繁にではなかったのだが、それでもこうしてバトルすれば確かな成長を感じさせた。

 

「今度はこっちの番!『つばめがえし』!」

 

 フタチマルはホタチをしまうと、両拳を光らせ一気に駆け寄って来る。『つばめがえし』は草タイプ対策として覚えさせた技であり、しかも回避する事が出来ない技だ。この場面で使うに最も適していると言えるだろう。

 

「『まもる』!」

 

 ジュカインは両手を突き出すと、緑色のオーラで体全体を覆っていく。結果、フタチマルの拳は『まもる』によって弾かれた。その瞬間、ジュカインは『まもる』を解除し、攻撃の態勢に移る。

 

「『リーフブレード』!」

 

 ジュカインの自慢の2本の愛刀がフタチマルに襲い掛かる。ジュカインの左右の『リーフブレード』はフタチマルをX字状に切り裂こうとするが、フタチマルは咄嗟にホタチを手に取り体の前に突き出し身を守る盾にしようとする。

 

「フタッ!?」

 

 ホタチを盾にした事で直撃は免れたが、それでも効果抜群の技を完璧に防ぐ事は難しかった様だ。フタチマルは勢いよく後方に吹き飛ばされていく。

 

「……本当にやるな」

 

 ジンとしては今の『リーフブレード』で勝負を決めるつもりだったのだが、フタチマルの咄嗟の判断により防がれてしまった。

 

(それに、ジュカインを指名した理由がよく分かった……)

 

 ジュカインとフタチマル、タイプこそ違うが、この2体は戦闘スタイルに似通っている点が多い。同じ二刀流である事は勿論、際立った素早さを活かし相手を翻弄しようとする所なども似ていると言えるだろう。現在は経験値やほぼ全てのステータスでジュカインの方が上であり、上位互換と言ってもいい。だからこそ、アンはこの機を逃さず、フタチマルに格上のジュカインとバトルさせたかったのだろう。

 

「少し、サービスするか……」

 

 勝てないと分かっていながらも、敢えて上位互換へと挑もうとする挑戦者が目の前にいる。ならば、下手な加減などは却って失礼という物だ。だからこそ、全力で迎え撃たなくてはならない。

 

「ジュカイン!『エナジーチャージ』!」

 

 ジュカインはジンの指示を受けると、口元に『エナジーボール』を作り出しそのまま口の中に入れ、エネルギーを取り込んだ。莫大なエネルギーを吸収し、緑色のオーラを肉体に纏い身体能力を一気に向上させる。

 

「これって、あの時の……」

 

 アンもオレンジアカデミーでのアオキとのバトルで既にこの技を見ている。だが、観客としてみるのと敵対する立場で見るのでは、感じ方がまるで違った。ただでさえ強力だったジュカインが自分では計り知れない程の強さに至り、深緑の暴風の如し威圧感が、アンとフタチマルを圧倒する。

 

「すっごい……」

 

 気づけば、アンはそんな言葉を呟いていた。ジンとジュカインが強い事は知っていたが、まさかここまでとは予想できる筈もない。しかし、そんな強大な敵を前にしてもアンとフタチマルの目から光は失われていなかった。

 

「流石だよ。ジン……」

 

 学園にいた頃は、リコに隠れ手気味ではあったが、アンもまたジンの強さに憧れていたトレーナーの1人だ。もしもの話だが、ジン達があのまま普通にセキエイ学園に通い続けていれば、恐らく弟子入りを志願していただろう。

 

 アンにとってジンは友人であり、それと同時に憧れの人物でもあった。いつの日かは追いつき、肩を並べたい。そう思っていた人物は自分の期待を遥かに上回る程に強い。それがアンには堪らなく嬉しかった。

 

「まだまだ!最後まで諦めないよ!」

「はははっ……それでいい!最後まで全力で来い!ジュカイン!『ソーラーブレード』!」

 

 ジュカインは攻撃の構えを取ると右腕の草刀にエネルギーを集め始める。しかし、『ソーラーブレード』とは使用するまでにそれなりに時間を有する技だ。アンはその姿を見て、ここが絶好のチャンスだと判断する。

 

「今度こそ!『つばめがえし』!」

 

 フタチマルはジュカインに向けて一気に駆け寄っていく。ここを逃せば、もうチャンスは回ってこないと本能で理解している為か手負いにも関わらず、このバトルの中で一番のスピードだ。この早さならば、エネルギーが溜まり切る前にジュカインに一撃入れる事が出来る。

 

「ふっ……」

 

 その光景をジンはまるで全てを見透かした狩人の如し眼光で射抜いた。その瞬間、攻撃が決まると確信していたアンとフタチマルは、途端に嫌な予感が全身に回っていく。

 

「───ジュカイン!」

「ジュッカァァ!」

 

 ジュカインは『エナジーチャージ』によって取り込んでいた体中の草のエネルギーを操作し、右腕へと集束させた。その瞬間、本来では数十秒を要する準備時間を一気に短縮し、巨大な光の刃が瞬く間に形成される

 

「うそっ!?」

 

 余りも早すぎる。『にほんばれ』を使ったわけでもないのに、ほぼノータイムで『ソーラーブレード』を生み出した事にアンもフタチマルも驚愕した様子だ。

 

「決めろ!」

 

 ジンの合図に合わせて、ジュカインは視認出来ない速度で右腕を振り抜き、まるで居合切りの如く光刃を抜刀する。猛スピードで接近していたフタチマルは既にジュカインの間合いに入っており、回避も防御も間に合わない。効果抜群となる『ソーラーブレード』の一太刀を受けたフタチマルは、斬られたことを自覚する間もなく、その場に倒れてしまった。

 

「フタチマル戦闘不能!よって勝者ジン!」

 

 審判をしていたリコのコールを受け、バトルは終了となった。それと同時にアンはその場から駆け出し、倒れていたフタチマルを抱きしめた。

 

「フタチマル!大丈夫!?」

「ふ、フタ~……」

 

 フタチマルはダメージこそ負い、体は動かせない様だが、意識は残っていた。実は『ソーラーブレード』が命中する瞬間、ジュカインは咄嗟に急所以外の個所を斬り、最低限のダメージとなる様に調整していたのである。

 

「よかった~」

「アン、キズぐすりだ。使ってくれ」

「あ、ありがとう!使わせて貰うね」

 

 ジンからキズぐすりを受け取ると、早速、フタチマルに使用する。徐々にではあったが、体力を取り戻した様でフタチマルの顔色は良くなっていく。後は時間と共に回復していくだろうと判断したアンはフタチマルをモンスターボールへと戻した。

 

「負けちゃったかぁ……悔しいけど、やっぱりジンは強いね」

「アンも強かったぞ。短期間の間に随分、頑張ったみたいだな」

「うん!アンもフタチマルも凄い強かったよ!最初の攻防なんてジュカインにも負けてなかったし!」

「ま、まぁね。私も何時かジンみたいにポケモンリーグで活躍するトレーナーになるのが夢だし!……ジンから見てどうかな?私達、ポケモンリーグ行けると思う?」

 

 アンは不安そうな顔つきでジンの事を見て来る。ポケモンリーグの経験があるジンの意見を聞くのが少しだけ怖い様だ。

 

「そんな心配そうな顔するなって。アンにそういう顔は似合わないぞ」

 

 ジンはアンに近づくとその頭に手を乗せ、ぽんぽんと軽く撫で始める。咄嗟の事でアンは不意を突かれた様子だったが、次第にジンの行動を理解し顔を徐々に赤くし始める。

 

「じ、ジン?」

「さっきよりかは良くなったな。やっぱり、アンには明るい顔が良く似合う」

「ひぅっ!?」

 

 ジンの言葉を受けアンの顔は益々、赤くなっていくが、ジンはその事を気にせず、先程のアンの質問に嘘偽りのない回答をしていく。

 

「さてと……さっきの質問だが、正直な意見を言うと、今のままでもフタチマルはポケモンリーグに通用するが優勝は難しいと思う」

「う、うん……」

「だが、伸びしろはあるしこれからの鍛え方次第では、十分に優勝を狙えるポテンシャルはある。問題なのは手持ちの少なさだな」

 

 アンの手持ちはフタチマル以外だとサンドしか存在しない。サンドは進化していないこともあり、フタチマルに比べれば少々、力不足だ。最低でもあと4体のポケモンをゲットし、ある程度鍛えた上で互いの弱点をカバーするのは必須とも言えるだろう。

 

「そうだな。テラスタル研修が終わったら、まずは、草タイプに相性のいいポケモンをゲットして弱点をカバーする所から始めてみたらどうだ?」

「わ、分かった……だから、その……そろそろ手を……」

「ん?……あぁ、失礼」

 

 リコやドットの頭をよく撫でている為か、ジンは自分でも無意識の内にアンの頭を撫でていた。漸く、その事に気付いたジンはアンの頭から手を離す。

 

「あっ……」

 

 アンは若干、名残惜しそうな表情をするが、直ぐに頭をぶんぶんと横に振ると怒った様子を見せながらジンを睨みつける。

 

「もうっ!女の子の頭をそんなに簡単に撫でたら駄目だよ!ジンはリコの彼氏なんだから!」

 

 アンの言葉を聞き、背後にいたリコも何度も頭を前に振り、口にこそ出さないが、その通りだと言いたげな表情をしている。

 

「分かってはいるんだがな……目の前で落ち込んでいたり、頑張った娘がいるとつい頭を撫でてしまうんだよ。特に仲のいい娘や自分に好意を寄せてくれる相手とかに」

「それが駄目だって言ってるんでしょう!?」

「そうだよ!ジンってば、ただでさえ、癖のある人にモテるんだから!」

「まぁ……その……善処するから許してくれ」

 

 ジンはそう言うと今度はリコを軽く抱きしめ、左手を背中に回し右手で頭をゆっくりと撫で回し、唇を重ねる。怒り心頭といった様子だったリコだが突然のその行為に顔を赤くし、徐々に表情が蕩けていく。

 

(しかし、どうしたもんかな……)

 

 善処するとは言ったが、何分、無意識に行っている事だ。先程のアンの頭を撫でた事も注意されなければ今も続けていただろう。自分でも意識していない行動をどうすれば止められるのか、ジンには全く見当もついていなかった。

 

「……ねぇ?あの2人っていつもあんな感じ?」

「まぁ……大体そうかな?」

「リコを怒らせたジンが、ああやって抱きしめて許しを請う姿は何度か見たな」

「へ、へぇ~」

 

 セキエイ学園にいた頃、アンはリコとジンがくっつく事を望んでいた。互いに好意を抱いていたが、中々、きっかけが出来ずにヤキモキしていた程だ。だからこそ、2人の友達である自分がなんとかしよう!そう思っていた。今のジンとリコは嘗て自分が望んでいた通りの関係だ。この光景が見られて嬉しい。嬉しい筈なのだが……

 

(あ、あれ?)

 

 具体的にどこかは分からなかったが、胸が少しだけ、ずきっと痛みを発し始める。

 

「でも、何かあっても結局、最後はリコが許しちゃいそうだよね」

「有り得る。リコは、手遅れなレベルでジンに惚れてるからな。案外、浮気とかされても『ジンを失う位なら……』とか言って許しちゃうかも」

 

 ロイとドットのそんな言葉が耳に届く。その瞬間、胸の痛みが微かに和らいだのをアンは感じた。理由は本人もまだ分かっていない。だが、不思議と急に希望が降ってきた様なそんな気分へとなっていた。

 

「2人共!いつまでイチャイチャしてるの!そろそろ、オレンジアカデミーに戻るよ!」

「……そうだな。このままだと着くのが夜になる。急いで出発だ」

「ご、ごめん!今、準備するから!」

 

 こうして、ジン・リコ・ロイ・ドット、そしてアンを加えた4名は改めてオレンジアカデミーへと向けて帰路に就く事となる。その間、アンは心なしか以前よりも、ジンとの距離が近くなっていた。

 

 しかし、この日、アンがジンに抱いた感情は、後に彼らの関係に大きな変化をもたらす事となる。だが、その事にはまだ誰も気づいていなかった。

 





作者は後先をちょっとしか考えてないですが、後悔はしてないです!
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