ポケットモンスター 新たなる冒険   作:malco

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switch2見事に落選しました……


VSオニキス

 

 オレンジアカデミーのエントランスルーム

 

 現在、この場所には、リコ達を含め、テラスタル研修を受けている研修生数十人、そしてこのオレンジアカデミーの教師達が集まっていた。

 

「皆さん!レポート提出ありがとうございました。後で、ゆっくりと見させてもらいますよ~」

「さて、次の課題なのですが……その前に皆さんにちょっとしたお楽しみを用意しました」

 

 突然のクラベル校長からの発言に、その場にいた研修生全員が関心を寄せ始める。

 

「それは交流戦です。学園に招いた特別ゲストの方々とバトルを行って頂きます」

「バトル!」

「そうこなくっちゃ!」

 

 ロイやアンを始めとしたバトルが大好きな者達が、歓声を上げる。そんな中、研修に紛れ込んでいたエクスプローラーズの1人、サンドウィッチ事サンゴが発言し始める。

 

「どうせバトルするんなら、鬼強い相手とバトルしたいんですけど~」

 

 直接、言葉にはしないが、それはその場にいた研修生全員が同意見だった。そんなバトルに対して積極的な生徒達を見たクラベル校長は、嬉しそうな顔をすると小さく微笑み、彼らの対戦相手について説明し始める。

 

「それならご安心を、皆さんの相手は……おっと、ちょうどいらした様ですね」

 

 正にその瞬間、正門が開き、1人の女性がエントランスルームに入ってくる。見覚えのあるボリュームのある特徴的な髪型をしたその人物の登場に研修生全員が驚き、目を見開いた。

 

「お待たせしました」

 

 現れたのは、このオレンジアカデミーの理事長にしてパルデアにおけるポケモンリーグの最高責任者でもあるオモダカだ。彼女はそのままクラベル校長の横に移動すると、生徒達に向かって話し始める。

 

「今回は特別にパルデアリーグ四天王の4名、そしてそれに並ぶ実力者を1名招きました。彼らに皆さんの交流戦の相手を務めて頂きます」

「四天王とバトル!?」

「ほぅ……」

「少しは楽しめそうじゃん」

 

 四天王とのバトル。それを聞くと研修生達のテンションは一気に上がっていく。だが、そうなるのも無理はない。四天王とは憧れの対象であり彼らとバトルする機会など滅多にないのだ。

 

「……ん?でも、四天王級の実力者って?」

 

 四天王という単語で浮かれていたが、それとは別にもう1人ゲストがいるとオモダカは言っていた。この交流戦にゲストとして出る以上、四天王クラスの強さを有している事は確定している。そんな人物はそうそういないが、リコには1人だけ心当たりがあった。

 

(……も、もしかして?)

 

 ちょっと用事が出来たとだけ言って、先程、別行動に入ったリコにとって最愛の人物の顔が頭に思い浮かぶ。

 

「ふふっ……ここにいる何名かの方はご存知の方ですよ?それでは、どうぞお入り下さい」

 

 オモダカの合図に合わせて、正門から再び、1人の人物が入ってきた。その人物を見た瞬間、以前のアオキとのバトルを見ていた数名の研修生は表情に驚愕と同時に僅かな恐怖が表れ始める。

 

「ジンと申します。初めての方は、どうぞお見知り置きを」

 

 ジンは軽く頭を下げると、研修生達の横を通り過ぎ、オモダカの隣へと移動した。

 

「こちらのジンさんは、今はまだ四天王ではありませんが、チャンピオンクラスの実力を有しています。今回は、特別ゲストとして皆さんの相手の1人を務めて頂く事になりました」

 

 オモダカはジンの事を軽く紹介するが、研修生達の内、何名かは反応は微妙な物だった。一度でもジンのバトルを見ていれば、文句などある筈がない。しかし、それを知らない研修生達から見ればジンは突然、現れたただのトレーナーでしかないのだ。四天王というブランドには残念ながら敵わない。

 

「オモダカさん。やはり、必要かと」

「……どうやら、その様ですね」

 

 しかし、この状況は、ジンもオモダカも予想していた。その為、こうなった場合の策は準備してある。

 

「皆さん、ジンさんの力を見たい様ですね……では、交流戦のオープニングセレモニーとしてジンさんにはバトルを披露して頂きます」

 

 オープニングセレモニーとして、ジンのバトルを披露する。そうする事でアオキとのバトルを見ていなかった研修生達を納得させようと言うのだ。

 

「では、肝心のその相手ですが……」

「失礼。オモダカさん、相手は俺に指名させて下さい」

「えっ!?」

 

 事前の話し合いでは、ジンの相手はオモダカが務める予定だった。それにも関わらず、この土壇場でジンは自らバトルする相手を選ぶつもりらしい。

 

「申し訳ない。トップチャンピオンである貴女とのバトルも面白そうなんですが、お楽しみは出来るだけ後に残しておきたいんですよ」

 

 オモダカとは四天王に就任すれば、いずれはバトルする事ができる。いずれ来るであろう、対決の日までのお楽しみとして取っておく事にした様だ。

 

「それに……今はどうしてもバトルしたい相手がいるものでして」

 

(ジンがどうしてもバトルしたい相手って、もしかして……)

 

(ジンと練習じゃなくて本気のバトルができる……)

 

(こんなに早く……リベンジのチャンス!)

 

(ジン君の相手ってそんなの決まってるよね~)

 

 ジンがどうしてもバトルしたい相手、そう言った瞬間、研修生達の中で4人の少女達が、顔を上げた。図らずもその4人は、意識的にしろ無意識にしろジンに対して淡い想いを寄せる面々である。

 

 しかし、ジンはその事を察した上で黙殺し、期待に満ちた表情をした彼女達の横をすり抜け目的の人物へと近づき、手を差し出した。

 

「是非、バトルの相手をして欲しい……オニギリ君」

 

 ジンが指名したのは、サンゴと同じく研修に紛れ込んだもう1人エクスプローラーズのオニギリことオニキスだ。

 

「……俺か」

「あぁ、以前にも話しただろう?いずれバトルがしたいと」

「光栄だな……しかし、本当に俺でいいのか?他にもバトルしたがっている者が多いようだが?」

 

 ジンがオニキスを指名した瞬間、エントランスルームから嫉妬の籠もった4つの冷たい視線が自分に集まっている事を感じ取っていた。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」

 

 特に隣にいる相方などは、嫉妬と怒りを隠そうとする努力すらしていない。まるでグランブルの如く歯を剥き出しにしている程であり、これで気付かない者はいないだろう。ジンも当然、その事には気づいており、気まずさからか額に小さな汗をかいている。

 

「……まぁ、彼女達とのバトルもいいんだが、まだ、一度もバトルしていないお前が最優先だ……改めてお願いする。バトルの相手をお願いしたい」

「……いいだろう。望むところだ」

 

 

 

***

 

 

 

 グラウンドには既に大勢の生徒が揃っていた。研修生は勿論、この催しに興味を持った在学生などもおり、彼らはこの日の為に増築された2つのバトルフィールドの周りや観客席などに座り、今か今かとバトルが始まるのを待っている。

 

「押忍!熱き血潮のキハダだ!このバトルのジャッジを務めさせていただく!両者!トレーナーゾーンへ!」

 

 キハダが審判ゾーンに入り、彼女に促され、ジンとオニキスは左右に分かれトレーナーゾーンへと入った。

 

「本来、この交流戦は研修生と基礎テストを担当したジムリーダーがタッグを組みバトルするのが決まりだ。しかし、両者の強い希望により今回だけは特別に通常のルールでダブルバトルを行う物とする!」

 

 ジムリーダーはバトルには参加しない。これは、ジンがオニキスの性格を考慮し提案したものだ。ジン個人としては、ジムリーダー共々相手にしても良かったのだが、オニキスの性格上、助っ人に頼るバトルは恐らくできない。むしろ、マイナス要素が増え本来の実力を発揮できなくなる可能性が高くなると判断した。

 

「片方のポケモンが2体共、戦闘不能になったらバトル終了だ。両者共にそれで良いのだな?」

 

 キハダの問いかけにジンとオニキスは首を縦に振り、肯定する。それを見て満足そうな顔をしたキハダはポケモンを出す様に指示を出す。

 

「ミロカロス!ボスゴドラ!頼んだ!」

「行け!キョジオーン!プテラ!」

 

 ジンはミロカロスとボスゴドラ、オニキスはキョジオーンとプテラの組み合わせだ。単純な相性で言えばジンの方が有利にも見えるが、プテラ・キョジオーン共に地面タイプの技が覚えられ、ボスゴドラに4倍弱点を突ける可能性がある。戦い方次第ではどうなるか分からない組み合わせだ。

 

「では……バトルスタート!」

「キョジオーン『しおづけ』!プテラは『いわなだれ』だ!」

 

 キョジオーンが両腕の先端から大量の塩をミロカロスに撃ち出し、プテラは空中にどこからともなく岩を生み出し、ボスゴドラへと向けて放った。

 

「ミロカロス『ハイドロポンプ』!ボスゴドラ『メタルクロー』!」

 

 迫りくる両者の攻撃。ミロカロスは『ハイドロポンプ』を撃ち出す事で塩を相殺し、ボスゴドラは鋼鉄の爪で岩を切り裂く。

 

「……それが全力か?」

「慌てるな。まだ、バトルは始まったばかりだぞ……プテラ!飛べ!」

 

 オニキスがそう言うと、プテラは突如、空中で翼を大きく広げると空高く舞い上がり高度を一気に上げる。しかし、ある程度の高さまで上昇するとその場でターンし、落下の勢いを付けながらフィールドに向かって来た。

 

「キョジオーン!『ワイドガード』!」

 

 キョジオーンは両手を前に突き出し、目の前にオレンジと薄黄色のハニカム状バリアを張った。その瞬間、ジンは次のオニキスの一手に気付くが、落下を利用したプテラのあの速さの前では、迎撃は間に合わない。そうなると次にできるのは如何にダメージを少なくできるかだ。

 

「ミロカロス!『とぐろをまく』で防御を固めろ!ボスゴドラは俺の合図に合わせてフィールドに『アイアンテール』だ!」

「……何のつもりかは知らんが、加減はしない。プテラ!『じしん』だ!」

 

 ジンの指示を受けると、ミロカロスはその場で長い体を渦巻き状に丸め込み防御を高め、ボスゴドラは尻尾に力を込め、いつでも動き出せる様にその場で待機した。両者が何とか準備を終えたのを確認したジンは、空中から落下してくるプテラを見て、その瞬間をじっと待つ。

 

「…………今だ!」

 

 プテラが空中から勢いよくフィールドを踏みつけ、巨大な地響きを発生させようとした瞬間、ボスゴドラは『アイアンテール』でフィールドを叩きつけると、その反動を利用し僅かではあるがその巨体を空中に飛び上がらせ『じしん』を回避した。360.0kgを優に超える重量が一瞬とは言え宙を舞うのは圧巻の一言である。

 

「なにっ!?」

 

 オニキスは、この『じしん』でボスゴドラに大ダメージを与えるつもりでいた。しかし、蓋を開ければダメージを受けたのはミロカロスだけだ。そのミロカロスにしても『とぐろをまく』の効果で防御が上がっていた為、致命的と呼べる程のダメージ量ではない。六英雄のラプラスを相手に勝っている耐久性は伊達ではなかった。

 

 何かしらの防御策でダメージを軽減する程度の事は想定していたが、まさかこの様な手段でボスゴドラが『じしん』から逃れるとは想定していなかった様だ。

 

「だが、空中では逃げ場があるまい!キョジオーン『しおづけ』!プテラは『アイアンヘッド』だ!」

 

 空中からフィールドに落ちていくボスゴドラに対し、キョジオーンとプテラは追い打ちを掛けるかの様に攻撃を集中させる。本来は避ける事も防ぐ事も難しい状況だが、予想していたと言わんばかりにジンは冷静に対処を下す。

 

「ボスゴドラ!『いわなだれ』を前方に展開!ミロカロスは『じこさいせい』で体力を回復させろ!」

 

 ミロカロスが『じこさいせい』により体力を回復させ、ボスゴドラは複数の岩を自身の目の前に出現させる。その岩の内の半分をまるで盾の様に利用し、『しおづけ』を防ぐと残りの半分の岩を迫りくるプテラに向けて放った。

 

「まだだ!」

 

 しかし、半分の岩だけではプテラを止めるには弱かった様だ。プテラは『アイアンヘッド』の強力な頭突きで岩を破壊するとそのままボスゴドラに向けて突き進んで行く。

 

「プテラ!『かみくだく』だ!」

「ミロカロス!『ハイドロポンプ』!」

「っ!?プテラ止まれ!」

 

 プテラが牙を尖らせ、ボスゴドラに襲い掛かろうとした瞬間、両者の間に体力を回復させたミロカロスの『ハイドロポンプ』が割り込んできた為、プテラは慌ててその場で動きを止めた。

 

「……躱されたか」

 

 あわよくば、プテラに命中させ一気に勝負に出る事も視野に入れていたのだが、ここは咄嗟の判断で回避したプテラとオニキスを称賛する他ない。

 

「分かっていたつもりだったが、ここまでとはな……嬉しい誤算だ」

 

 ジンの強さなどオニキスも百も承知だ。しかし、オニキスは此処まで一度としてジンと正面からバトルした事がない。その為か、ジンの強さを少しばかり力を見誤っていたのは確かな様だ。

 

「……待ってやるよ」

「なにっ?」

「だから、待ってやると言っているんだ。中途半端な決着なんて求めていない。どうせなら、全力のお前とバトルがしたいんだ。だから……さっさと本気を出せ!」

「……では、お言葉に甘えるとしよう!」

 

 オニキスは左腕を懐に入れ、そこからテラスタルオーブを取り出し、エネルギーを集中させ始める。更に、それで終わる事無く、その間に今度は右腕にはめられたバングルをプテラに向けて突き出した。

 

「鍛錬の果てに得た力、ここに示せ!『メガシンカ』!」

 

 バングルに装着されたキーストーンとプテラの鞍のメガストーンが共鳴し、輝く。光はプテラを包み込み、メガシンカにより大きく姿を変えて現れる。

 

「聳え立て!キョジオーン!」

 

 続いて、今度はエネルギーを充填したテラスタルオーブをキョジオーンの頭上に目掛けて投げつける。全身をいくつものクリスタルに囲まれ、次の瞬間、クリスタルが弾け飛んだ。そこから現れたのは、全身をクリスタル化し、頭上にはギリシャ風の神殿の王冠を生やしたキョジオーンの姿だった。

 

「テラスタルとメガシンカ!?」

「すげぇっ!両方、同時なんて初めて見た!」

 

 テラスタルとメガシンカのポケモンが同時に現れ、バトルを見ていた観客達は大いに盛り上がり始めた。『これならば、もしかしたら勝てるんじゃないか』……そんな考えを持つ観客が、この瞬間、それなりにいたのは間違いないだろう。

 

「はははっ……いいぞ! ──それを待っていたんだ!」

 

 テラスタル及びメガシンカにより力を大幅に上げたオニキスのポケモン達を目の当たりにしたジンは、喜色満面の笑みを浮かべるが、その眼差しは冷徹な強者の光が秘められていた。ここに来て漸く、ジンはオニキスを対戦相手と認めたのである。

 

「メガシンカとテラスタルをするだけの時間を与えた事を精々、後悔しない事だな」

「しないさ。相手の全力を踏み越え、全てを糧にした上で勝利する。それが俺のバトルの信条だからな」

「っ!?……ならば行くぞ!キョジオーン『ストーンエッジ』!」

 

 キョジオーンは両腕でフィールドに叩きつけ、地面から多数の岩を出現させる。テラスタルした事により、威力は向上しており、通常よりも大量の岩がボスゴドラ目掛けて突き進んで行く。

 

「パワー勝負がお望みか? ボスゴドラ!『もろはのずつき』!」

 

 迫りくる多数の岩に対して、ボスゴドラは一切の小細工も逃げる素振りも見せずに命を懸けた渾身の頭突きを披露する。巨大な岩を次々に破壊しながら突き進むその姿は、天敵であるバンギラスに負けず劣らずの破壊獣っぷりである。

 

「プテラ!『アイアンヘッド』でボスゴドラを止めろ!」

「させるな!ミロカロス『ハイドロポンプ』!」

 

 プテラが、頭を鋼鉄の様に硬くしボスゴドラの進行を阻止しようと動き出す。しかし、それよりも早くミロカロスの『ハイドロポンブ』が正確無比にプテラを狙い撃ち、逆にフィールドに墜落させられてしまう。

 

「くっ!?キョジオーン!『てっぺき』で受け止めろ!」

 

 ここまできては、ボスゴドラを止める事は出来ないと悟ったのか、キョジオーンは『てっぺき』により、防御を上げ正面から受け止める準備に入る。実際、大量の岩を破壊し続けた事でボスゴドラの勢いは、当初よりもかなり落ちていた。『もろはのずつき』を受け止める、それだけを目的にするならば、この選択肢は間違いではない。 

 

「ゴッドォッ!」

「キョォッ!」

 

 ボスゴドラの渾身の頭突きは、キョジオーンの両腕によって受け止められてしまう。元々、効果が今一つの岩タイプの技である事もあるが、『てっぺき』で防御を上げていた事も大きな要因と言えるだろう。

 

(掛かった!)

 

 しかし、それは狙い通りの展開である。ジンは自身の仕掛けた罠に獲物が掛かったのを見て、狩人の様な鋭い視線をキョジオーンに向けた。

 

「ボスゴドラ!そのままキョジオーンの腕を掴め!」

 

 ボスゴドラは両腕を伸ばし、キョジオーンの両腕を掴み動きを封じに掛かる。ジンは今までのバトルのパターンなどから、オニキスのキョジオーンは攻撃・防御共に、両腕を起点とする使用する技しか使っていない事に早い段階から気が付いていた。

 

 だからこそ、この状況で両腕を封じる事に大きな意味が存在する。

 

「その状態じゃ、『ワイドガード』は使えないよな?」

「なにっ?……まさかっ!?プテラ!ミロカロスを止めろ!」

「もう遅い!ミロカロス!『なみのり』!」

 

 プテラが動き出すよりも早く、ミロカロスはフィールド上に大量の水を生み出す。そしてその水を変幻自在に操作し、巨大な津波を作り出した。

 

「くっ!?味方事、巻き込む気か!?」

 

 このままでは、キョジオーン達どころかボスゴドラまでも『なみのり』に巻き込まれる。地面・格闘程ではないが、水タイプの技もボスゴドラには効果抜群の技だ。まさか、ジンが自分のポケモンを巻き込む事を前提とした策を実行するとは余りにも予想外だった様だ。

 

「生憎だが、巻き込むつもりはない。ボスゴドラ!キョジオーンを投げ飛ばせ!」

 

 バトル終盤で予想外の作戦により生まれた僅かな隙、それをジンとボスゴドラは見逃さなかった。ボスゴドラはキョジオーンの右腕を両腕で掴み、そのまま一本背負いで迫りくる『なみのり』に向かって投げつけた。

 

「馬鹿なっ!?」

 

 キョジオーンは体重240kgもあるポケモン全体の中でもかなり重量のあるポケモンだ。それをこうも軽々しく持ち上げ、投げつけるなど想定外にも程があった。

 

「お前達のお得意の戦法、真似させてもらうぞ。ボスゴドラ!『まもる』」

 

 オニキス、そしてサンゴのコンビが普段からよく使用している戦法。オニゴーリが『ふぶき』で全体を襲い、キョジオーンが『ワイドガード』で自分と味方へのダメージを防ぐ。今からする戦法は、彼らの連携を参考にし生み出したものである。

 

「くっ……プテラ!上昇だ。急げ!」

 

 投げ飛ばされているキョジオーンを助ける事は出来ない。そう判断したオニキスはフィールドに叩き落されていたプテラに慌てた様子で指示を出す。

 

「プテッ!?」

 

 キョジオーンが倒されるのは、もう目に見えている。ここで自分まで『なみのり』に巻き込まれれば、バトルが終わってしまうと本能的に理解しプテラは死に物狂いで空へと舞い上がった。その甲斐あってか、なんとか『なみのり』が到達するよりも早く、その場から離脱する事に成功する。

 

 しかし、その代償はやはり大きい。キョジオーンは波に飲み込まれてしまい、大ダメージを負って水の中に姿を消してしまった。暫くして水が少しずつ消えていくとフィールドの中央でテラスタルが解除され、仰向けになったキョジオーンの姿が発見される。

 

「キョジオーン戦闘不能!」

 

 キハダの宣言を聞き、オニキスは僅かに悔しそうな表情を見せるが、まだバトルは終わっていないと思考を切り替え、次の一手に移る。

 

「まだ終わっていない!ミロカロスに『かみなりのキバ』!」

 

 攻撃をした直後、僅かに隙があるミロカロスに向かい、プテラは牙に雷を纏わせ突き進む。タイプ不一致の技ではあるが、特性『かたいツメ』により、相手に接触する技の威力が高くなっており命中さえすれば、かなりのダメージが期待できる。

 

 ただし、命中すればの話である。バトルを諦めない姿勢は、ジンも評価したがこれはダブルバトルだ。片方に意識を集中すれば、もう片方が自由に動けるのは道理である。

 

「ゴドォ!」

「なっ!?」

 

 ミロカロスにプテラの牙が突き刺さろうとした瞬間、重量級とは思えない瞬発力で駆けつけたボスゴドラが自身の腕を間に入れ込み、盾の役割を果たす。メガシンカした上に特性の効果もあってか、ボスゴドラはそれなりにダメージを負い、僅かに表情を歪めるが、ここまで来れば後は決着をつけるまでの間、耐えるだけいい。

 

「急いで離れろ!」

「残念だが、これで終わりだ。ボスゴドラ!『アイアンヘッド』!」

 

 プテラは急いで空へと飛ぼうとするが、ボスゴドラは左腕で翼を力強く押さえつけ、その場に留まらせると、頭部の鋼の鎧を白く光らせ、全ての力を込めて強烈な頭突きをする。中庭全体に鉄同士がぶつかる様な鈍い音が響き渡り、ボスゴドラが手を放すと白目を向き、メガシンカが解除されたプテラがフィールドに倒れ込んで行く。

 

「プテラ戦闘不能!勝者ジン!」

 

 キハダのジャッジと同時にバトルを見守っていた観客の生徒達から大きな歓声が上がった。ジンとオニキスはそれぞれポケモンをモンスターボールに回収すると、フィールドの中央まで赴いて行く。

 

「完敗だ。流石とだけは言っておく……」

「それはどうも。中々、楽しませて貰ったよ」

 

 メガシンカとテラスタルをダブルバトルで使用できるトレーナーなど世界中を探しても滅多に存在しない。ポケモンもトレーナーの実力もあり、中々に充実したバトルだったと言えるだろう。

 

「しかし、バトルしていて思ったんだが、ひょっとして……ダブルバトルの経験はあまりないんじゃないか?」

「…………」

 

 ジンの問いかけにオニキスは目を逸らし、無言となる。しかし、その表情や仕草が図星であると物語っていた。

 

「答えたくないなら好きにしていい。だが、1つだけ忠告だ。ダブルバトルでシングルのバトル以上に焦りは禁物だぞ。例え劣勢になっても、一瞬たりともボスゴドラから目を離すべきじゃなかった」

「……返す言葉もない。忠告、痛み入る」

「気にしないでいい。敵は強ければ強い程、バトルは楽しくなるんだからな」

 

 ジンはそう言うとその場から離れ、再び、トレーナーゾーンへと向かって歩き始める。オニキスは気づけば、少しずつ離れていくジンの背中を見ていた。手を伸ばせば届く距離にいる筈なのに絶望的にすら感じる程、遠い場所にいる。しかし、そんな格上のトレーナーを前にしてもオニキスから闘志は消え去っていなかった。

 

「……次は勝つ。二度は負けん」

「あぁ、楽しみに待ってるぞ。お前達には結構、期待しているからな……アメジオと……ついでにスピネルにもそう伝えておいてくれ」

 

 その言葉を最後にジン達は会話を終えた。オニキスはポケモン達を回復させるために、中庭を出ていき、ジンは割り当てられた次の挑戦者とのバトルの準備へと入って行く。

 

(さてと……) 

 

 ジンはそっと観客席にいる研修生達に視線を送る。オモダカの紹介で現れた時には懐疑的な目で見て来る者もそれなりにはいたのだが、今は既にそんな者はいなかった。それどころか、積極的にバトルをしたがっている者が多い様に見られる程だ。

 

「次の挑戦者は?」

「は、はい!僕です!」

「了解だ。名前は……ライ?」

 

 ジンがリストで名前を確認すると、次にバトルする相手はライという帽子を被り、ダルマッカをパートナーとする、どこかロイと似た雰囲気の少年だ。

 

「…………」

「あ、あの、どうかした?」

「いや……ただ、何となく君を見ていると手を抜かずにボコボコにした上で全力で鍛え上げたい気分になるんだ」

「な、なんでぇっ!?」

「大丈夫大丈夫。オモダカさんから指導も兼ねたバトルをする様にって言及されてるし、君にはジムリーダーもついてるんだ。自信を持って挑めば、酷い事にはならないさ……多分な」

 

 本気なのか冗談なのか分からないが、5人もいる対戦相手からジンに割り当てられた自分は物凄く不幸なのではないか。ライは割と真剣にそう思いながら、バトルの準備に入るのだった。

 





次回はリコ&カエデVSチリのバトルを書いて行こうと思ってます

☆9
「kumase」さん、通りすがった暇人さん

高評価ありがとうございます

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