鮮血の追憶   作:バートリ

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第3話

 あれから黒川あかねはネットの視聴者から罵詈雑言を浴びせられている。

 番組が始まってから一緒に過ごしてきたメンバーにはネットで視聴者が書き込んでいることのほとんどが、いや全てが誤りで間違っていることは理解しているが、あかねが真面目で全ての意見を真正面から真摯に受け止めようとすることも理解していた。

 恋愛リアリティショーは世界各国で人気だが、今までに50人以上の自殺者を出している。

 国によっては法律で出演者へのカウンセリングを義務付けられている程、自分自身を曝け出すことによるリスクと批判によるダメージは大きい。

 まだ17歳の彼女が罵詈雑言の集中砲火に晒されていることを心配しメンバーは電話やメッセージでやりとりを試みるもどこか上の空な返事に不安が募る。

 そして台風の中、外出するというメッセージがあったきり連絡がとれない。家へ向かっても、戻ってこない。

 メンバーは嫌な予感な苛まれ、手分けして周辺を探し回る、

 そんな中メンバーの1人、アクアから連絡がある。

 

 その知らせを受けたメンバーは直ちに駆けつけた。

 あかねは――橋から身を投げようとしていたところをすんでのところで保護されていた。

 保護されたという渋谷警察署へ向かい、署内を5人で駆ける。

 たどり着いた時には母親らしき人物とアクアがそばにおり、あかねも落ち着いているようだ。

 

「あかねっ!」

 

 ゆきが駆け寄り、あかねの頬をはたく。

 あかねは呆然としていた。

 

「この、ば……!

 なんでそんな……、心配させて……!」

 

「ご、ごめ……」 

 

「なんでもっと……相談してよぉ……!」

 

 炎上前のように再び抱き合う二人。

 涙を流すあかねに、アクアは問いかける。

 

「あかね、お前これからどうしたい?」

 

「どうって……」

 

「このまま番組を降りるって選択肢もある。

 これは番組側の監督責任を問われる問題でもあるからこういう状況になった以上、辞めると言われても文句は言えない。

 本名晒して活動してるんだ、引き時は自分で見極めるんだ」

 

「……私、もっと有名な女優になって、これからも演技続けていくためにがんばってきた。

 皆にも、いっぱい助けてもらって……。

 でも、こんな風になっちゃって……」

 

「あかね……」

 

「怖いけど、すごく怖いけど……。

 …………続ける」

 

 ゆきの手を握るあかね。

 涙は止まり、決意に満ちた表情となっていた。

 

「このまま辞めたくない」

 

「…………わかった。

 だってさ、問題ないよな?」

 

「当たり前だろ!」

「何の問題もありません!」

「最初からそう言ってるんだけどなー」

 

「私達もできる限りフォローするから……!」

 

 好き勝手曰うネットの視聴者、エンタメ性優先のためそれを煽る番組サイド。

 励ますメンバーを尻目に署内を歩くアクアはそれらを思い浮かべながらある一室へ向かう。

 そこでは各報道機関が最新情報を受け取るために記者が待機しており、24時間常に新ネタを待ち望んでいた。

 

 

 ――――

 

 あかねの自殺未遂のニュースが流れた。

 ネットでは様々な記事が書かれ議論が巻き起こったかれた。

 そこで手のひらを返し身を引く者もいれば、新たな火種に中傷を加速させる者もいる。

 あかねはなんとか番組出演続行の意思は持っているものの、復帰の目処は現在も立っていない。

 あかね不在での収録の後、アクアとMEMちょがメンバーを招集した。

 

 現状はあかねへの叩きが目立っているが実態としては数%にも満たず、大多数は自殺未遂というセンシティブな話題に対して叩くべきか擁護するべきか浮動するサイレントマジョリティ。

 正義と答えを探っているユーザーが多い中に、共感性の高い意見を投下することで浮動層はそれを正義と思い込む。

 大多数のそれらを動かすことができれば、世間の意見すら望むように上書きできる。

 そして投下するのは、メンバー目線の今ガチ映像。

 公式アカウントへアップロードすることは契約上も問題なく、ユーザーの導線も確保できている。

 アクアの編集技術と、MEMちょのバズらせのノウハウ。二つがあわされば、それも不可能ではない。

 

「ふぅん……じゃあ俺、楽曲提供するよ」

 

 ギターを背負ったケンゴが申し出た。

 

「できるのか?……そういえばプロだったな」

 

「おうよ、なんかエモい感じで泣かせりゃいいんだろ?」

 

 短く弦を鳴らすも節々に技術と努力の結晶が垣間見えるケンゴに、アクアは安心したように任せる。

 

 それを見たエリザはすくっと姿勢を正し、徐に取り出した玩具のマイクを手に口を開く。

 

「なら私はコーラスを担当しましょう。

 laaaa〜〜〜」

 

「エッ……あれ、上手くなってる?」

 

「めっちゃ美声じゃん!エリちゃんすごぉい」

 

「ほんとに!エリザやっぱりアイドルなんだ」 

 

「それほどでもないわ、うふふ……」

 

「いやマジで、この間のアレはなんだったんだ……」 

 

 マイクを手にしたエリザに戦線恐々だったメンバーだったが、響いたのは神様にすら止められないような歌声で、彼女の潜在能力の片鱗を感じ取ったのだった。

 そうしてMEMちょが個人的に撮影していた動画や画像データの素材を元に編集を開始するアクアだったが、ゆきが思い出したように声をあげた。

 

「でもやっぱりさ、あのシーン欲しくない?」

 

「あのシーン?」

 

「ほら、私を叩いちゃったあかねを優しく抱きしめるシーン!」

 

「でもあそこカメラ止まって……」

 

「ふふ、甘いなぁ。プロモデルである私が定点カメラの位置を気にしてないと思う?

 一応カメラに気持ちよく写るポジションとってたんだよ?一応ね」

 

「色々台無しなんだけど……」

 

「絶対スタッフはその映像持ってるよ、分かってて隠してるんだよ」

 

「…………」

 

 編集に集中するアクアと、同じく編集画面を見ながら意見を出し合うメンバー。

 エリザは音も無くその場を離れ、次回収録の準備をしているスタッフ達の元へ足を運んだ。

 

 ――――

 

 夕暮れ時、エリザは今一度問い詰める。 

 

「ディレクター」

 

「うーん……いや、あるにはあるけどね?

 映像データは持ち出し厳禁だから流石に渡せないよ」

 

「そうね。

 表に出れば出演者を悪役に仕立て上げる演出をしたと白状するようなものですから。

 番組が注目されている今そんなことになればあかねへのバッシングがそのまま番組へ向かいかねませんもの」

 

「……理解が早くて助かるよ。

 僕らがやっているのはリアリティショーというエンタメなんだ。

 皆リアリティがあるイザコザを楽しみで番組を見ている。

 僕らはあかねに何も強制していない。

 あれはあかねの選択で、僕らはそれを視聴者に分かりやすいように演出をしているだけ。

 嫌ならNGを出せば良かったんだ、そうすればこっちだって使わなかった。違うかい?」

 

「あかねは責任感が強いのよ」

 

「そりゃ知ってるよ、ずっと撮ってるんだし。

 あかねはプロで、僕らも仕事でやっている」

 

「プロねぇ……ディレクターは今おいくつですか?」

 

「……40だけど」

 

「あかねは17歳よ。

 プロだろうと何だろうと、17なんて間違いばかりの子供よ。

 ……間違ってることに気づけないし、間違ったまま手遅れになってしまうこともある」

 

 顔を伏せて、拳を握りしめるエリザ。

 雪のように白い手の平は赤くなっていたが、拳を緩めると赤みはやがて引いていく。

 顔を上げた時には、黄金の瞳が夕陽を反射して緋色に輝いている。

 

「大人が子供を守らなくて……どうするのよ」

 

「…………はぁ」

 

 疲れたように俯き、背を向けるディレクター。

 その背は先ほど聞いた年齢よりも、老いて見えた。

 

「言えてるなぁ」

 

 ――――

 

 あれからエリザが戻ってからより豊富な素材を入手したメンバーはMEMちょの自宅へ場所を移し、時間を忘れて全員で意見を出し合いながら動画を完成させた。

 メインで作業していたアクアは疲労困憊だったが、編集用のパソコンがインフルエンサーのMEMちょが使用しているハイスペックなものとなったおかげで捗っていた。

  

 そうしてアップロードされた動画は24時間で大量のリツイートを記録し、黒川あかねのイメージを変革すると同時に今ガチの人気を決定付けるものとなった。

 

 動画により炎上騒ぎはある程度の収束を見せ、動画を見て心動かされたあかねも収録へ復帰した。

 アクアとMEMちょのアドバイスにより、復帰後は役を演じることでキャラ付けするとともに素の自分を晒さないことで鎧をつくることにしたあかね。

 あかねは早速情報収集を行い、深い考察と洞察で徹底的に役作りし――かつて存在した伝説的アイドル、アイを完璧に演じた。

 リアリティショーでは映える性格ではないが役者としては天才的なあかねは収録が始まるとメンバー、スタッフ、カメラマン全ての視線を奪った。

 伝説的なカリスマ性を再現して魅せたあかねに、アクアは明らかに意識した様子を見せる。

 番組が終盤へ近づくにつれて、二人でトラブルを乗り越えた関係からも視聴者はアクアとあかねのカップリングを望み出す。

 そして迎えた最終回、アクアはあかねへ告白しカップリングが成立した。

 二人のキスで終幕し、視聴者もスタッフも納得の結末となった。

 あかねを見つめるアクアの目には、目的のため直走る歪んだ星が浮かんでいた。

 

 

 ――――

 

お洒落なオープンカフェで、落ち着いた色合いの庇が大きく舗道に向かってせり出しテラス席が街頭に照らされている。

 店内は間接照明のミニマルな内装で、ガラス製の棚に無数のワインボトルが陳列されている。

 それが瀟洒なアクセントになった空間で乾杯の音頭が上がる。

 

「『今からガチ恋始めます』全収録、終了です!

 お疲れ様でした〜!」

 

 グラス同士が重ねられる音が響き、やがておしゃべりの声や皿の音が溶け込んでいく。

 メンバー達もこれまでを振り返って語り合う。

 

「色々あったけど楽しかった」

 

「あかねがそう言ってくれるなら文句ねぇな」

 

「あの動画も本当に嬉しかった!皆ありがとう……」

 

「ケンゴのギターとエリザの歌も良かったよね〜」

 

「だよねだよねぇ、エリちゃん本当は歌上手だったんだね!」

 

「なぜか、誰かのために歌おうとすると綺麗な音程になるのよね……不思議すぎる……けど」

 

 エリザはグラスを両手で挟み込み、そうつぶやく。

 女子3人はうずうずと慈愛が胸に溢れ、エリザへ抱きついた。

 

「それで……早速聞いて良いかな……?」

 

 ゆきとMEMちょが抑えきれないといった様子であかねへにじり寄る。  

 エリザは耳をそば立てていた。

 

「最後のキス!本当に付き合うの!?どうなるの!?」

 

 あかねは目を逸らして、ジンジャーエールを口に含んだ。

 

「……わかんない。

 番組の流れ的にあれは受けるべきだったし……。

 仕事もあるのに彼氏なんて……」

 

「いやいや芸能人とはいえ高校生にもなったら彼氏の一人や二人当然でしょ!」

 

「ゆきとかとっかえひっかえじゃないの?」

 

 ノブユキとMEMちょが冗談めかして話すがゆきはむっとした表情で言い返す。

 

「私そんなイメージ?

 本当に仕事第一でやってきて、今まで彼氏作ったことなんて無かったんだよ、マジでリアルに」

 

 そして隣のノブユキへ目線を送る。

 撮影の時に告白するシーンがあったが、そこでは振っていたのだ。

 ゆきらしいテクニカルなムーブだった。

 

「うっそ!」

 

「これ本当の話らしいよ、ゆきと同じ芸能科の子も言ってた」

 

 驚いたMEMちょにあかねがフォローする。

 

「意外な身持ちの固さ……。

 でも番組で付き合えばスキャンダルになりようもなくて良いよね!」

 

 ゆきへ目線を向けていたMEMちょは、はっとしてあかねに振るも逡巡した様子の彼女。

 あかねは悩んでいるようだ。

 

「そうそう、上手い具合に番組を使って欲しいよ」

 

いつの間にか近くにいたディレクターがジョッキを煽りながらそう吐き出した。

  

「こっからは番組側は関与しない。

 付き合おうが別れようが当人同士の自由。

 ちゃんと自分で考えて、自分で決めるんだ。

 この業界、君達の才能を利用するだけ利用して捨てる悪い大人が沢山いる。

 この業界は甘い誘惑が多いけど、雰囲気に流されやすい子が行き着く先は決まって奈落だからね。

 ……悪い大人からのアドバイスだよ」

 

 ――――

 

 

 今ガチの注目度はかなり高く、大成功と言って良い番組となった。

 そしてそれは、事務所に許可を得て作成していたアイドルユニットとしてのYouTubeチャンネル『Fire Work』の登録者数にも影響を与えていた。

 

 ころもとゆらの元々の知名度と、事務所のサポートもあり好調なスタートだったが更にブーストがかかった状態となり現在は5万人程度となっている。

 

 自己紹介動画は既に投稿しており、基本的には3人の日常を動画にしていた。

 新しく投稿するための動画の撮影がひと段落したところで、羅杭がやってきた。 

 

「――ジャパンアイドルフェス、通称JIF。

 参加するのは10ステージのうち『ハッピーガーデン』だ。メインではないが、規模としては大きいものだ」

 

 Fire Workにとってのファーストライブとなるステージの知らせだった。

 3人は驚きと共に待望のライブに沸く。

 

「ようやくだね〜」 

「JIF……SA芸能すごーい」

「ええ、そんな大舞台に……」

 

 エリザ以外は何度か小さなライブの経験はあるが、きゃいきゃいと姉妹のように身を寄せ合ってはしゃぐ3人。

 

「そして楽曲だが……」

 

「あら、それならとっておきの曲があるわ」

 

 羅杭とゆらところもは嫌な予感がしたが、玩具のマイクを手に姿勢を正したエリザを見て諦めた。

 

「いやエリザ、提供された楽曲が……」

 

「♪恋はドラクル(朝は弱いの)優しくしてね

  目覚めは深夜の一時過ぎ

 ♪狩りはマジカル あたしクビカル

 ♪今夜もアナタを監禁させて〜♪」

 

「…………すまないが、却下だ」

 

「何でよー!?」

 

 ゆらところもは放心状態だった。

 話題になった例の今ガチ公式動画での歌声を聴いていて油断していたが、何故か音程が崩壊していた。

 美声ではあり完全に否定できないのが惜しい。

 

「……恐らく観客にエリザの歌を受け入れる度量はまだないだろう。また今度録音しておこう。

 さて、ライブだが今回は事務所で用意した楽曲がある。

 センターは――ころも、お前に頼む」

 

「え、やったー! ……2人は、いいのー?」

 

 ころもは飛び上がるが、不安そうにゆらとエリザを見やる。

 

「もちろんだよ〜! ころもちゃんはアイドルとしての経験は1番長いし、歌もダンスも安定してる。

 私も妥当だと思うな〜」

 

「私も貴女のふんわりしているようで妥協のない活動には賞賛の念を禁じえないわ。

 ころもちゃん、素敵な貴女が適任だと思うわ」

 

「そうかな……。でもありがとー。

 それじゃあ、私頑張りまーす!」

 

 ころもは柔らかな笑みで手を上げた。

 それを見届けた羅杭は安心したように詳細や今後のスケジュール、練習内容についての説明を続ける。

 

 説明が終わればその後は早速練習へ向かう。

 

「……」

 

 珍しく熱意に溢れるころもと後を追う2人だったが、先ほどは表面上笑みを浮かべてころもを応援していたゆらが少しの不満と諦念を滲ませた暗い表情をしている。

 そんな横顔を、エリザの金の瞳が見つめていた。

 

 

 Fire Workの3人は普段からSA芸能の充実した設備と優秀なトレーナー達によるサポートによる体力作りやダンス・歌の練習に励んでいたが、明確な目標とパフォーマンスする曲が定まったことでより力を入れ、本番までの特訓の日々を過ごしていた。

 

 ――――

 

 そして訪れた本番の日。

 雲ひとつなく冴え渡る晴天の元、JIF会場へ到着したFire Workの面々。

 

「はえー」

 

 ころも、ゆら、エリザの3人は完成された特設ステージを見上げて声を漏らす。

 テレビ局や科学館等の周辺施設の広場等に10ステージ設営されており、今回Fire Workは『ハッピーガーデン』というテレビ局横の公園広場だ。

 程良い緊張に励まし合う3人に、送迎車を駐車して来た羅杭が声をかける。

 

「楽屋に関してだが……ついてこい」

 

 そう案内されたのは、熱気と喧騒が飽和状態となった戦場だった。

 出演者達の焦った声や怒声が際限なく横行している。

 

「着替えや休憩はこの大部屋を共有することになるから、出演者や関係者数百人が詰め込まれてる。荷物の置き場もない。

 着替え部屋もないから各々パーテーション裏で着替えることになる」

 

「まー、今回みたいにステージが多いフェスではしょうがないよねー」

 

「ステージ側のは出番直前にしか使えないらしいよ〜。

 さ〜て、お弁当とか準備するなら今のうちだね」

 

「あっ、かなちゃんとMEMちゃん」

 

 ころもとゆらはある程度落ち着いており準備を進め、エリザはどこかそわそわした様子だったが有馬とMEMちょを見かけ話しかけにいく。

 どうやらアイドルグループを結成していたようで、アクアの妹であるルビーもメンバーらしい。

 それから3人は食事や着替えを済ませ、出番までの時間をお互いに声を掛け合いながら過ごす。

 そして、いざファーストステージへ。

 

 ――――

 

 Fire Workがライブをするのはハッピーガーデンという公園広場に設営された特設ステージだ。

 どうやらスターステージの方で大きく盛り上がっていたようで、観客の話し声が聞こえる。

「B小町」「有馬かな」「ルビー」「MEMちょ」

 ルビーとはまだ面識はないが、他2人に関しては共演したことがあり楽屋で少し話をしていた。

 

「いよいよ本番だねー。

 いやーライブは何回か経験あるけどやっぱり毎回緊張するよー」

 

「そうだね〜。

 私も久々だけど……楽しもうね」

 

「そうね、私たちは1人じゃないわ。

 恐れずに……挑戦しましょう」

  

 やがてFire Workの出番が回ってくる。

 メンバーのサイリウムカラーはころもが水色、ゆらが緑色、エリザが赤色。

 登壇後、軽い自己紹介を行いイントロが流れる。

 

 ライブが始まるとセンターのころもとゆらは安定しており練習の成果を表現する歌声とダンス。

 エリザは1番経験が浅いが確かな努力が見えるダンスと歌は控えめにしているが美声が成長性を感じさせる。

 元々の知名度もあり客入りはそこそこで、サイリウムの割合は水色と緑色が多い。 

 

 興奮している観客の歓声。 

 ころもちゃんやゆらちゃんを呼ぶ叫びが聞こえる。 

 大音量でセットや舞台装置が震えている。

 遠目に見えるマネージャーは満足げに頷いている。

 

 そんな中。

 赤色のサイリウムが視界に入った。

 中学生くらいの女の子だった。

 

 黄金の瞳が煌めく。 

 その瞬間、無意識に観客はエリザの貴い資質に濃密に包み込まれ、一挙一動に惹きつけられる。

 やがて興奮は熱狂へと変わった。

 

 エリザの魅了や威圧とも言うべきカリスマが放たれた後、しかしメンバーもパフォーマンスが向上し魅力もより引き出されていた。

 観客のサイリウムも徐々に赤色の割合が増え、3色で等分されている。

 

 ――嗚呼、やっぱりアイドルは最強よ。

 誰よりも美しく鮮烈に、人々に輝きを魅せる姿を指す職業!

 

 届かないからこそ挑戦するの。

 天上になど至りようもないと、そんな弱気に駆られたこともあったわ。

 でも求めた世界が今、この行く先に屹立している!

 ならば超える! 誰よりも強く美しくなり、天上へと至る!

 なぜ今になるまで気付かなかったの。

 この胸の高鳴りこそが天上の調べ!

 冴え渡る蒼穹、喝采の灯火。

 そう、私は今、空を夢見ている。

 例え翼がもがれ、この身が砕けようとも!

 この瞬間! この時に勝る至福があるものですか!

 

 

 ――――

 

 

 このステージ以降、何度か小さいライブも開くことになる。

 

 配信業でも、エリザはS風ツンデレ&ポンコツ美女として順調にファンからの人気を得ていく。

 

 こうしてエリザはアイドルの頂へ向かって歩み出す。

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