冬木市ハイアットホテルの3階。部屋に帰り着いた画仙壊善はすぐさま荷物をまとめ始める。
ここには数日前から宿泊しているため、それなりの情報網を持つ者であれば、この場所がばれてもおかしくない。
大量の武器をまとめながら先程の戦闘について思考をめぐらせる。
セイバーのマスターはあのアイリスフィールとかいうホムンクルスか暗殺者の男のどちらかだろう。あの舞弥とかいう女はマスターではないことはほぼ確実だ。
セイバーの正体は本人の言葉を信じるならかの騎士王とのことだが、実はそれもこちらを騙すための嘘である可能性は否めない。しかしその言葉が真実ならおそらく宝具が剣を隠すだけというのはないだろう。もう一つの宝具、それもランクA+以上の可能性もある。通常の戦闘ではランサーに分があるようだが、隠している宝具の力がわからない以上一撃で負ける可能性もあるので油断はできない。
ライダーの
ともにいたマスターの実力は不明。警戒はしておくべきだ。
アーチャーの真名は不明。とはいえ、あれだけ大量の宝具をばらまくあの戦法。生前に多数の逸話を生んだ英霊ではなく収集したと考えるのが妥当だろう。今回、アーチャーが使用するのを確認できた宝具は40以上。そんな多くの逸話を生むなど1度や2度の人生では足りないだろう。
マスターは御三家のひとつ、遠坂家の人間で間違いないだろう。
バーサーカーはとにかく危険度が高い。とはいえ触れたものを宝具にする、というなら生前の逸話も想像はつく。おそらく決まった武器を持っていた英霊ではないのか、戦場で奪い取った武器を使って戦ったかだろう。
そのマスターはおそらくあの蟲を使役していた奴だろう。
キャスターに関してはヒントが少なすぎる。魔術師として知られる王で調べていけば真名も分かるだろう。
そのマスターの情報も少ない。現状での考察は困難だ。
画仙が思考の海から意識を浮上させるとシャワールームから誰かが出てきたことに気付く。
「おお、我が主。拠点を移す支度は整ったのか?」
「ああ、終わったが。ランサー?何をやってるんだ?」
「この時代の行水の手段はよいものだ。なにせすぐさま体を清められる」
ランサーはシャワーを浴びてきたらしい。サーヴァントが現代のことに興味を抱くのはいいことなのか悪いことなのか。
「支度が整っていないようだが?」
ランサーはテーブルの上にあるステアーAUGを見て言う。その周辺には実験器具が並んでいる。
「ああ、この作業を終えたらここを出る」
画仙はいくつかの薬品を調合し、それをトレイに注ぎそれにステアーAUGを漬ける。
「おぬし、なにをしておる」
「ああ、画仙工房が裏で動いて輸入した武器と同じ種類の武器だったからな。うちが他のところに武器を売る場合は、不良品回収用にこの薬品とのみ反応する蛍光塗料を塗っておくんだが……やはりな」
ステアーAUGの安全装置の部分に光るモノがある。それは小さい刀のマーク。そのマークは画仙工房のかかわった武器であることを示していた。
「これで、奴らの装備を幾分か把握できたわけだ」
それとともに売った武器を思いだしながら画仙は言う。
「ほう、敵の策を想定するのは重要だからのう」
「とはいえ、こちらが画仙工房であることはばれてしまったからな」
舞弥を拘束した際に使用したナイフには画仙の名を刻んでいた。とはいえ、画仙の魔術を知る者はそう多くない。こちらの名前がばれたところで宣伝程度にしかならないのだが。
「さて、拠点を移すぞ」
「承知」
ランサーに霊体化させ、自分の身体に強化を施した画仙は窓から跳躍し夜の闇に消えていった。
「キャスター、あれほどの魔術が使えるのであれば、耐魔力の低いライダーやバーサーカーは仕留められたのではないか?」
「無茶を言う。キャスターたる私が正面から戦って、戦士である奴らにかなうわけなかろう」
冬木市ハイアットホテルの一室にキャスター陣営はいた。
「代わりと言ってはなんだが、敵サーヴァントを一人仕留めておいてやったぞ」
「なに?」
「あの場を見ていたサーヴァントがいたからな。まあ、あのサーヴァントは仕留めても安心はできないが」
「サーヴァントは全て出揃っていたはずであろう?8騎目のサーヴァントとでも言うつもりか?」
セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、バーサーカー、そしてキャスター。先日、脱落したアサシンを除き全てのサーヴァントがあの倉庫街に集結していた。聖杯戦争の性質上7騎のサーヴァント以外には呼び出される英霊などあり得ない。
「8騎目ではない。そのサーヴァントはアサシンだった」
「馬鹿な!アサシンは昨日脱落したはずだ!」
「いたんだから、仕方がないだろう。それに隠れてばかりで攻撃をしていない貴殿にも問題はある」
「そうよ。ケイネス」
そこに割り込んできたのはケイネスの婚約者ソラウだった。
「使い魔を通して見ていたけれど、あなたはこそこそ隠れているばかりで何もしていないじゃない」
「し、しかし聖杯戦争はまだ序盤なんだ。初戦のうちは慎重にいくべきだ」
「あらそう?でもあのセイバーのマスターは倒せたのではなくて?」
キャスターに魔力を供給しているのはソラウである。それにより、ケイネスはサーヴァントに供給する魔力を気にすることなく魔術を行使できる。ソラウはケイネスが負うべきことを自分が肩代わりしているのにも関わらず、ケイネスが自分の役割をまっとうしていないことについて責めているのだ。
「そのようなことを言うのであれば、貴殿もほとんど何もしておらぬではないか」
「なんですって?あなたが現界しているのは私が魔力を供給しているからなのよ?」
「それは、ほかのマスターが行っていることと同じことだろう?それにあの場ではランサーが戦っているにも関わらずそのマスターは暴れていたではないか」
倉庫街に行くためにこのホテルを出る前にキャスターは
ランサーのマスターが何を行ったか。コンテナの中に隠れていた男。銃を持っていた男女。
離れたところにいたライダーは見つけていなかったが。そこにいたすべての人物の顔は把握していたのである。
「ソラウよ。貴殿はケイネスとは違い安全なところにいたのだ。魔力を多少消費しようと大した問題にはなるまい」
「それは……」
「いい加減にしろ。キャスター!ソラウは何も悪くないであろうが!!」
ケイネスが怒声をもってソラウをかばう。それを聞き、自らのマスター二人に背を向ける。
「ケイネスよ。その怒りを忘れるな。そうそう。貴殿らがもう少しでも考えれば、私を使う方法も見いだせるやもしれぬ。せいぜい頭を使うといい」
そう言ってキャスターは霊体化し姿を消した。
冬木市ハイアットホテルの屋上。
そこには美しいファンファーレが鳴り響いており。一人の男が青白い馬に乗った男、そして赤装束の男と対峙していた。
「よりにもよって貴様か!!なぜわしを呼び出した!!くだらぬ理由であれば焼き尽くしてやろうぞ!!!」
「そう言うな。ほかならぬ私が頼むのだ」
「うぐゲホッ!」
屋上に立っているのはキャスター。いつもの指輪を左手につけ馬上の男の目を見据える。
馬上にいる男は王冠を被り豪奢な服を着ており、時折口から火を吐いているように見える。
最後に赤甲冑の兵士風の男。体はぼろぼろでありながらその装束には傷一つないのはいかなる理由があるのか。
「この王に対しその口ぶり。貴様は変わらぬな!腹立たしい!じつに腹立たしいぞ!!」
「私も変わった。伝説として歴史に名を刻んだ王も今や使い魔に成り下がっている」
それを聞いた馬上の男は唖然とした後笑い出す。
「ハハハハハ!!貴様が使い魔だと!貴様は何時であれ我々を統べる王であっただろうが!!」
「その、貴様が、何の用で我々を、ガハッ!呼び出し、たのだ」
吐血しながら言う赤装束の男。
「そうだな。本題に映るとしよう。そこらの霊脈から取り出したマナを利用しているせいか、召喚を維持できなくなってしまう。簡潔に言おう。貴殿らの力を貸してもらいたいのだ」
「貴様ぁ!下らぬことに王たるわしを呼び出したのであれば首を落としてやろうぞ!!」
「話は、聴いて、やろう、ゲホッ!ゲホッ!!」
「貴殿らには……」
冬木市ハイアットホテルが放火され、宿泊客には直ちに避難するように勧告されていた。
そんなホテルをを見ている無表情の男。くたびれたコートを着た冴えない日本人といった容姿の男が放火の犯人だと疑う者は誰もいなかった。
その男の名は衛宮切嗣。魔術師を狩ることを得意とする『魔術師殺し』である。彼はこのホテルを拠点としているマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトを仕留めるためここに出向いたのだ。
(舞弥を拘束していたナイフの名『画仙』。まさかこんなところで戦うことになるとはな……。っと余計なことを考えている場合じゃない)
彼はおもむろに取り出した携帯電話に番号を入力する。
それは冬木ハイアットホテルに事前に仕掛けた爆弾の起爆のための
最小限の爆発はホテルの構造上、必要不可欠な支柱を破壊する。
冬木ハイアットホテルはいとも簡単にあっけなく倒壊した。
作者のたくヲです。
もう、なんというか読者の皆様がランサーや、キャスターの正体の予想がついている気がします。
今回の話は、冬木市ハイアットホテルの周辺を中心とした話となっています。
情報整理回。
この作品は
・ランサーのクラスが強いってことを証明したい。
・Fate/Zero本編であまりにも酷い目にあったケイネスとソラウを何とか活躍させたい。
という二つの思いから生まれた小説です。
特にランサーは4次も5次もなんかひどい目にあってますから。
これからも『戦国武将を召喚して聖杯戦争で勝利を目指す』をよろしくお願いします。
感想お待ちしています。