戦国武将を召喚して聖杯戦争で勝利を目指す   作:たくヲ

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狂戦士

キャスターが出現する。場所は廃工場。彼の前にはそのマスターであるケイネスがいた。

 

敵が出たわけではない。キャスター陣営の宿泊していたホテルが何者かの手によって爆破され、仕方なく拠点を移したのだ。

 

それによりケイネスは持っていた礼装のほとんどを失った。彼の礼装『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』によりケイネスとソラウの命は助かったのは不幸中の幸いだろう。

 

「キャスター!!貴様、どこでほっつき歩いていた!?」

「どこでもいいだろう?悪いが、貴殿に行動を強制されるつもりはない」

「ッ!?……もういい。だが、キャスター。貴様の陣地作成スキルでここに工房を作成しておけ」

「私が作るのは神殿というのが正解なのだが……そのようなものは貴殿が作ればよいのではないか?私はこれでも忙しいのだ」

「気絶したソラウが心配だ」

 

爆発の時にソラウがなぜか失神してしまったのである。

 

ソラウはこれまで聖杯戦争のような戦場に出たことはなかった。だが、彼女も魔術師。たかが爆発程度で気絶するほどやわではないはずなのだが。

 

「ふむ、たしかに供給される魔力量が少ないな。止むをえまい」

 

と言うとケイネスがソラウのもとに向かおうとする前にキャスターは廃工場を改造し始める。

 

腕を横に振るとどこからか(・・・・・)道具が現れる。それは祭壇のような外見あり、まつられるかのように巨大な宝石が置かれていた。それと同じ物をいくつか設置し、それを前にして呪を紡ぐ。

 

「キャスター。それはなんなのだ?」

「……ケイネス、貴殿はソラウの様子を見るのではなかったか?」

「いいから、答えよ」

「これは我々の時代の魔力炉だ。魔力を生み出すのでも、魔力を吸い上げて蓄える物でもなく、ただ魔力をため込んでおき供給する物……現代では宝石魔術というやつだ」

 

宝石が光り、キャスターとの魔力パスがつながる。

 

「宝石魔術というのならそれにいつ魔力をこめたのだ?」

「これは私が生前作ったものだ」

「なに!?」

「これが私の宝具の一つ。とはいえ、これはただの固有結界に過ぎないのだが。私の切り札は貴殿も知っているだろう?」

 

固有結界と呼ばれるそれは心象風景を具現化する現代魔術の到達点。それすら、切り札でもないというこの英霊はキャスターとして召喚できる英霊の中でもかなりの上位の英霊なのか。

 

「貴殿は早くソラウのもとに向かうがいい」

「あ、ああ」

 

呆然としていたケイネスにキャスターは行動を促す。

 

ケイネスがいなくなったのを確認し、キャスターは儀式を始めた。

 

 

 

 

ソラウが目覚めたのはキャスターが工房(神殿)を作り始めて1時間後だった。

 

「ソラウ!」

「……ん?ケ、ケイネス?私はいったい」

 

ソラウはケイネスを見て問う。その顔には戸惑いの色があった。

 

「前の工房が爆破され今まで気を失っていたのだ。すまない君を守りきれなかった私の失態だ」

「ま、待ってケイネス。工房が爆破?ならどうして私は……」

月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)で守ったが、どこかで体を打ったのかも知れない」

 

それを聞いてソラウは僅かに顔を赤くした。

 

「そう、貴方が助けてくれたのね、ケイネス」

(いままでのソラウはこのような反応をしなかったはずだが、気のせいか)

 

ケイネスはそう考えたが、愛している人にそう言われてうれしくないはずがなかった。

 

それを見ていたのはキャスターと梟頭の狼蛇の尾をもつ怪物だった。梟頭の口が開く。

 

「コレデヨイノカ?」

「よい。ご苦労であった。貴殿は帰るといい」

 

梟頭がキャスターは一人ほくそ笑む。

 

「これならば宝を消費した甲斐もあったというものだ」

 

迫りくるは夜の闇。また、聖杯戦争の時間が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランサー陣営は画仙の運転で自動車に乗っていた。安物の白い軽トラックである。

 

「ランサー、頼んだものは明日の昼には届くらしい」

「ほう、それは楽しみだ」

 

それなりの霊脈の場所に立つ古びた旅館に拠点を移した彼らは、テレビのニュースで冬木市ハイアットホテルが爆破されたことを知った。

 

やはり拠点がばれていたのだろう。

 

その後、画仙工房の息のかかった店に連絡してから、遠くの有料駐車場に止めていた自分の軽トラックを取りに行った。

 

今はその帰りである。

 

街灯の照らす道を軽トラックは行く。夜の冬木は戦場だ。魔術師たちがこぞって動き出し、サーヴァントが戦い始める時間。彼らはいつ敵が来るのか、常に警戒をしていた。

 

ある公園の横を通り過ぎようとした直前、ランサーが画仙に対し言う。

 

「主。この先にサーヴァントがいる」

「サーヴァントは任せた」

「承知」

 

軽トラックを止め、降りる。

 

画船が辺りを見回した時、ランサーに向けて上空から何者かがふってきた。

 

ランサーは襲撃者の得物をその長槍を振るうことで弾く。

 

襲撃者は漆黒の霧で覆われた甲冑を纏いし英霊。狂戦士(バーサーカー)

 

バーサーカーの得物は、やはりというべきか尋常な武器ではなかった。公園からとってきたのであろうベンチと街灯である。それを量の手で掴み、双剣のごとく操る。

 

「ッ!悪い、ランサー。俺は逃げる!バーサーカーのマスターとは相性が悪い」

「そうするといい」

「『わが脚は駆ける馬のごとく』。任せたぞ!!」

 

足に強化を施し全力で駆ける。画仙の全力なら安物の軽トラックより速いのだ。

 

それを追うように大量の蟲が公園から飛びだしてきた。

 

画仙は知る由もないが、その蟲は牛骨すら噛み砕く『翅刃虫』。捕まればひとたまりもない。

 

さながら黒い霧のように画仙に迫る蟲。幸い周囲に人はいない。魔術の秘匿に追われる心配はないだろう。

 

魔術刻印の自動詠唱機能により画仙の体の耐久力が上昇する。

 

(距離を詰められてる。このままじゃジリ貧だが……)

 

やけに黒スーツの下に隠したホルスターより拳銃を抜き取る。

 

(視覚強化、判断速度強化)

 

魔術刻印を通して魔術を発動する。足を止めずに振り向き撃つ。

 

弾丸は蟲の群れに吸い込まれ、体液をまき散らす。

 

(なるほど、弾丸が撃ちぬいたのは1匹だけ。思っていたより堅いな。……って、車!?)

 

いきなり前方から自動車が走ってきたのである。画仙は気づけば都市部に近づいていた。

 

全力の跳躍を持って車を飛び越える。車は急ブレーキをかけスリップするが気にしている暇はない。

 

(最悪の手段は令呪だが……流石にここでランサーとの関係を悪化させるのは拙い。となると……)

 

走りながら周囲を見渡す。道路の両端に停車した自動車がいくつか、大量の街灯、前方に信号機。

 

「『火は燃えさかり、天を焼き尽くす大火となれ』」

 

呪を紡ぐ。それと同時、魔術刻印を経由し腕力を強化する。地面を滑りながら停止しつつ振り向き、拳銃を連続で発砲。

 

そしてその銃弾のあたった物に向けて全身全霊を込めて、持っていた手榴弾の内いくつかを自動車に開けた穴へ向けて全力で投擲した。

 

そして、自動車は蟲の群れを巻き込んで爆発した。

 

(……完全に賭けだったがうまくいったらしいな)

 

蟲の群れは一団となって突撃してきた。ならば、爆発にまとめて巻き込めるのではないか。という考えからの苦肉の策である。

 

すり抜けざまに自動車に対し、火力をあげるための強化を施しておいたのだ。正確には『よく燃える』性質を持つガソリンを燃えやすく火力が強まるように強化したのだ。

 

強化魔術は存在を高める魔術。強化のエキスパートである画仙にとっては片手間でできることだった。

 

(ランサーは大丈夫なのか?)

 

画仙は至近距離で起こった爆発に皮膚が焼けるような感覚を覚えた。

 

人通りは限りなく少ないとはいえ町中で車を爆破したのだ。すぐに野次馬が集まるだろう。そう思い逃走しようとし、

 

蟲に左腕を噛まれた。

 

「---ッッッ!?」

 

それは先程爆破したはずの蟲。『翅刃虫』。画仙は右腕で腰のナイフを抜き蟲に突き刺す。黄の体液をまき散らし蟲は絶命する。

 

「『わが耳はすべてを聞き取る兎の耳なり』」

 

すぐさま聴力強化で周囲を探る。幸い、生き残っていた蟲はこの一匹だけだったらしい。

 

(……油断した。二の腕のあたりの骨が折れた、か。耐久強化してなかったら左腕は持ってかれてたな)

 

死してなお左腕、二の腕のあたりに噛みついている蟲。肉を切り裂き、骨を砕くまでの力。

 

(主人の下を離れるのが他の蟲よりも遅かったのか、単純に飛ぶのが遅い個体だったのか。いや、この予想に意味なんてないし、分かることもない、か)

 

ひとつ分かることがあるならば、左腕の使えなくなり足手まといとなったマスターは、自らのサーヴァントのもとに向かうことはできなくなった、ということであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランサーは防戦一方だった。

 

右のベンチに左の街灯による、宝具の猛攻。狂化してなお冴えわたる武芸の腕。

 

ランサーはバーサーカーの力量は、先日戦ったセイバーより上だと認識していた。

 

ランサーの宝具である長槍を使えば、バーサーカーの宝具を破壊することもできる。しかし、この状況はランサーに宝具を使わせない。

 

ランサーの宝具たる長槍の効果を発動する時、わずかに隙ができる。

 

バーサーカーの片方の宝具を切り落とした隙にもう一方の宝具で攻撃してくるだろう。

 

「■■■■■■■■■■■ーーー!!!」

 

一撃一撃を弾きつつ思考を巡らせる。

 

(このまま戦っておれば負けることはなかろうが、勝つこともできん。気は進まんがあれ(・・)を使うか……)

 

少し力をこめてバーサーカーの宝具化したベンチを弾く。その時、ランサーはかすかな違和感を覚えた。

 

(なるほどのう。ならば、策を変えるとしよう)

 

ランサーは長槍を振るう。先程までとは違う速度。筋力ランクAをこえるランサーの全力をもって振るわれた長槍はバーサーカーの持つ宝具の一つ、ベンチを破壊した。

 

バーサーカーのもっていたベンチは宝具化しているとはいえもともと公園においてあったベンチである。

 

宝具としての力を使うまでもなく名槍であるランサーの長槍。公園のベンチを使った急ごしらえの宝具。

 

その二つが打ち合った時、どちらに軍配が上がるのかなど問うまでもない。

 

バーサーカーのもっていた宝具は二つ。ベンチを破壊しても街灯がある。横なぎに振るわれる街灯。

 

だが、ランサーは宝具としての力を発揮して切ったのではない。故にランサーに宝具を破壊した後の隙はほとんどなかった。振るわれた街灯を難なく弾き、距離をとる。

 

(あの宝具。破壊できるとわかったのなら攻めるのはたやすい)

 

ランサーが再び槍を構える。

 

が、バーサーカーは黒い霧のように霊体化して消えた。

 

(逃したか……。主、画仙を追った蟲が気がかりではあるが、こうして儂に魔力が流れておる以上無事であろう)

 

ランサーは霊体化し画仙の下に向かおうとして、少し考え引き返してきた。

 

ランサーは乗り捨てた軽トラックの中で実体化し、持ち前の騎乗スキルにて運転。画仙のもとに向かった。




作者のたくヲです。

投稿が遅れたにしては短文ですみません。

ランサーVSバーサーカー。

バーサーカーの真名はあとがきで書いていいのでしょうか?真名をばらせないとランサーがバーサーカーと互角だった理由をかけないのですが……。

キャスターはもう完全に皆さん分かってそうですが、あと少しお待ちください。

これからも『戦国武将を召喚して聖杯戦争で勝利を目指す』をよろしくお願いします。

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