戦国武将を召喚して聖杯戦争で勝利を目指す   作:たくヲ

9 / 12
王と騎士

 空気が凍った。ライダーは理解できないものを見るようにセイバーをまじまじと見つめ、アーチャーは嘲笑し、キャスターは酒を煽り口を開いた。

 

「貴殿は今なんと言った?聞き間違いでなければ、運命を変えると聞こえたのだが」

「そうだ。聖杯が万能の願望器だというのなら、私のせいで滅んだ故国の救済は可能なはずだ」

「つまりセイバー。貴様は自らが過去に刻んだ歴史を否定するというのか?」

「そのとおりだ、尽くしてきた故国がなくなったのだ。それを悔やみ、変えたいと思うのは王として当然のことではないのか!?」

 

 その言葉をアーチャーは鼻で笑い、ライダーは答える。

 

「それは違う。そもそも王が国に尽くすのではない。民や国が王に尽くすのだ」

「それは暴君の治世ではないか!」

「然り。確かに我らは暴君。だがそれゆえに英霊だ。だが、セイバーよ。自らの治世の結末を悔やむ王がいるなら、それは貴様の言う暴君以下だ」

 

 ライダーに続き話し始めたのはキャスターだった。

 

「セイバー。貴殿は運命を変えることが救済だと本気で思っているのか?」

「思っている。ブリテンが滅んだのが私の責であるからこそ、あの結末を変えたいと願うのだ!」

「貴殿の故国が滅んだのが貴殿の責だと? 思い上がるな、セイバー」

「何だと?」

 

 セイバーにとって予想外の言葉であった。

 

「貴殿は、貴殿の力だけで国を治めていたと?」

「な……!?」

「そんなことはないはずだ。なぜなら国の歴史とは王によって作られるものではなく、国のすべての人間によって作られる物だからだ。食料を作る者がいて、国を守るものがいて、政治を行うものがいる。その中のどれか一つでも欠けては国として成り立たない。歴史として語り継がれることもない」

 

 キャスターは、そこで言葉を区切り、アーチャーの出した酒を飲む。

 

「故に、王と民衆によって築かれた国の歴史は、その国に住む全ての者の行いの歴史だ。それを否定することは、その国の全ての者の行いの否定だ。ましてや、それをたった一人の王の意志のみで変えるなど身勝手にもほどがある!」

 

 キャスターは声を荒げる。

 

 ライダーは目を閉じ、アーチャーはキャスターが出した酒を飲む。

 

「セイバーよ。貴殿が、貴殿の国の民や配下であったという騎士たちの行い、そして貴殿自身の王としての行いを全て否定する覚悟があるか?自身の願いが先程言った暴君の行いと何ら変わりのないことを理解しているのか?」

「私は……」

「その覚悟がないというなら、聖杯はあきらめろ。それでも、願いを叶えるというなら、私は貴殿を王とは認めん。貴殿の願いは、身勝手な小娘の願いとなんら変わりない物に過ぎないのだからな」

 

 キャスターはそこで口を閉ざす。

 

 セイバーは考える。『自分の願いは身勝手な物だったではないか』と。

 

「キャスター。貴様、随分と饒舌ではないか」

「そうだな。酒が入ったからかも知れないが……?」

 

 そこで、キャスターが顔をしかめる。

 

「……なるほど」

「キャスター、何があった?」

「すぐわかる」

 

 その時、複数の影が現れる。

 

 港をさまざまなところに現れる髑髏仮面。アサシン。

 

「な、なんで、アサシンがこんなに!?」

 

 ウェイバーが悲鳴を上げる。

 

「なるほど、アサシンは自分の身体を増やせるか、分裂する宝具を所持しているわけか」

「おい、金ぴかこれは貴様の仕業か?」

「我が王の宴の席に浅ましき暗殺者などを連れてくるとでも?」

 

 アサシンたちは口を開く。

 

「そう、我らは影」

「個にして軍のサーヴァント」

「貴様らの命、貰い受ける」

 

 アサシンの宝具、妄想幻像(ザバーニーヤ)。生前の多重人格を利用し、自分の人格の数だけ身体を得て、個々の戦闘力と引き換えに複数で行動できるスキル。

 

 敵を囲めばサーヴァントの守りすら通用しない、単純な物量でマスターを殺害しかねない凶悪な宝具である。

 

 だが、征服王イスカンダルは酒の入った柄杓を手に立ち上がりアサシンに対し問う。

 

「貴様らも宴に参加する気はないか?この酒は貴様らの血と同じ、ともに一献躱そうではないか」

 

 命を狙う暗殺者であろうと宴に引き入れるこの度量こそ、彼の王たる所以。

 

 しかし、アサシンは短剣を投擲し柄杓を叩き落す。

 

「ほう、なるほど。余はこの酒は貴様らの血と同じといったが、貴様らがあえて自らの血を地面にぶちまけたいというなら、是非もない。セイバー、アーチャー、そしてキャスターよ。これはこの宴の最後の問いだ」

 

 怒気をにじませながらライダーは問う。

 

「王とは孤高か否か?」

「王とは、人であることを望めない存在。孤高であるしか、ない!」

 

 即答するセイバー。なにを馬鹿げたことをと呆れた顔をするアーチャー。

 

「否。王とは民と臣下の支えあってのモノ。孤高などありえん」

 

 キャスターは一人別の回答を返す。

 

「ほう、わかっておるではないか、キャスター。だが、他の二人は全然わかっておらん。これは余が自ら王のあり方を見せねばなるまい」

 

 暴風が吹き荒れ、世界が塗り替えられる。

 

 現れたのは広大な砂漠。

 

「固有結界!?」

「魔術師でもないあなたが心象風景の具現化するなんて!?」

「無論、余に一人で固有結界を発動することなどできん。これを発動できるのは我々全員(・・・・)の心象だからよ」

 

 地を踏みしめる音が聞こえる。

 

 後ろから現れたのは百を超える軍勢。

 

 その一人一人が掛け値なしの英雄。

 

「こいつら一騎一騎がサーヴァントだ……」

 

 セイバーは息をのんだ。アーチャーが感心したように先頭に立つライダーを見た。キャスターは冷静に戦力を分析しつつ、内心でライダーを称えた。

 

「見よ! 我が無双の軍勢を!」

 

 ライダーは誇らしげに、自らの王道を誇示するように声をは張り上げる。

 

「その身は英霊と成り、崇められてなお余への忠誠を消えることはなく、再び余の召喚に応じた勇者たち。永遠の盟友たちとの絆こそ、我が王道その物!! これが余の誇る最強法具『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』なり!!」

 

 かつて征服王イスカンダルとともに戦場を駆けた英霊たちの連続召喚。

 

 征服王の王道の象徴にして、最強ランクEXランク宝具の一つ。

 

 軍勢より進み出てきたのは黒い馬。

 

 伝説の名馬、ブケファラス。イスカンダル王の愛馬にして英霊の域まで昇華された、イスカンダルの臣下。

 

 懐かしそうにブケファラスを撫で。またがり、キュプリオトの剣を振り上げる。

 

「王とはッ!誰よりも諸人を魅せる者!!勇者の、民の羨望を集める道標として、先頭を歩む者こそが王!」

 

 大砂漠に響き渡る声は王としての誇りと貫禄に満ち、勇者たちはその姿に魅せられる。

 

「故に王とは孤独にあらず!!その有り方こそ全ての臣下たちの意志を束ねた者であるが故に!!」

『然り!然り!然り!!』

 

 征服王の言葉に臣下たちは声を合わせて応じる。

 

 地を揺るがすほどの声が響く。

 

「さて、アサシンよ。あいにくだがここは平地、数で勝るこちらが有利だが?」

 

 アサシンたちは一歩二歩と下がる。

 

「……これは駄目そうですね」

「残念っす」

「マスターめ……」

 

 などと、諦めたように一部のアサシンが呟き、一か八かで武器を構える者もいた。

 

 そして、圧倒的な蹂躙が始まった。

 

 

 

 

 

 

 画仙の泊まっている宿は異様な雰囲気に包まれていた。

 

 キチキチと虫の鳴き声が響き、部屋の外からは悲鳴が聞こえている。

 

「主。この場は危険だ。逃げろ」

「まあ、たしかにこいつらと俺との相性は最悪だよ」

 

 おそらく、昨夜の襲撃者。狂戦士(バーサーカー)とそのマスターが再び攻めてきたのだろう。

 

 バーサーカーのマスターの魔術はそこまで強力な魔術というわけではない。しかし、強化魔術が基本である画仙の魔術は、対人戦を目的とするものであるが故、相性が悪い。最悪と言ってもいいだろう。

 

 しかし、画仙は笑う。

 

「だがな、その台詞はこっちの台詞だ。この虫どもとランサーの相性こそ最悪だろう? お前の切り札の宝具とは特にだ」

「むう……」

「ランサー、お前は対人なら間違いなく最強クラスのサーヴァントだ。だが、人外と戦闘した逸話がないお前に、この場を任せることはできない」

 

 ランサーは口を閉ざす。それは画仙の言葉に対する無言での肯定だった。

 

「ランサーにはバーサーカーと闘ってもらう。まあ、俺も負けるつもりはない。なんのためにアレを送ってもらったと思ってる?」

「承知した。……儂が勝つまで死なぬようにな」

「もちろんだ。宝具を使っても構わないから絶対勝って帰ってこい」

 

 そして、ランサーは霊体化し部屋を出ていく。

 

 画仙は礼装(・・)を手に取る。

 

 それは一本の木刀だった。側面に彫られたいくつもの文字と記号が画仙の魔力を受け赤く輝く。

 

「さて、試し切りといこうか。今までの俺と同一視してくれるなよ、蟲ども」

 

 壁を貫き扉を砕きながら虫の群れが画仙に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 旅館の前で仁王立ちするランサー。

 

「狂戦士!いるのはわかっておるぞ。武士としておぬしに一騎打ちを申し込む!」

 

 その声に応えるように実体化する漆黒の騎士、狂戦士(バーサーカー)。纏っていた黒い霧は消失しており、バーサーカーの魔力によって生み出された即席宝具も携えていない。

 

「■■……■■■……」

 

 うめき声をあげるバーサーカー。

 

 バーサーカーがその身に纏う魔力は以前の物とは比べ物にならないことをランサーは見切る。

 

 バーサーカーが持つ一本の剣。バーサーカーの魔力によって染まった漆黒の剣。

 

(あの強化はこの剣が原因か? とすると、この剣が狂戦士の本来の宝具……)

 

 槍を構える。

 

 バーサーカーが剣を振り上げ迫る。

 

 ランサーが長槍を振るい、バーサーカーの剣を受け止める。

 

(昨夜より速い……!)

 

 バーサーカーは引いた剣をすぐさま振るいランサーの槍にぶつけ、ランサーはそれを受け流しつつ首を刎ねるべく長槍を振るう。

 

 地面を蹴り一歩下がるバーサーカー。ランサーの長槍は空を切る。

 

「■■■■■■■ァァァァァ!!」

 

 避けた際に振り上げた剣を振り下ろす。ランサーは振り抜いた長槍の勢いを殺さず、中心を持ち回転させるように振る。長槍の柄の部分が剣の側面にぶつけられる。狙いがそれ、剣はランサーの真横の地面に叩きつけられ、コンクリートにひびを入れる。

 

 ランサーは長槍の柄の部分を掴んだ自身の右手を振り上げ、左手で掴んでいた槍の中心を軸に下から回転させる。

 

 長槍の穂先が地面を抉り、バーサーカーを切断するべく迫る。

 

 全力で後方に飛び退くバーサーカー。長槍の刃が甲冑の前方、顔面部分をかすめ、摩擦による火花が発生する。

 

 ランサーが長槍を構えなおした瞬間、飛び退いた状態から切り返すようにバーサーカーはランサーに向かい駆ける。

 

 ランサーはそれを迎え撃つように短く構えた長槍を突き出す。

 

 バーサーカーはランサーに向け高速で剣を突き出す。

 

 ランサーの長槍の刃がバーサーカーの心臓を貫き。

 

 バーサーカーの剣がランサーの腹部を貫通した。




 たくヲです。

 ランサーとバーサーカーが互角に戦っている理由は、バーサーカーの宝具の効果のせいです。

 バーサーカーの魔力が持っている理由は次回。

 これからも『戦国武将を召喚して聖杯戦争で勝利を目指す』をよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。