フジノ峰ニテ、ナニ想フ   作:対々 南

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喫茶店にて(1)

私、佐々木 咲(ささき さき)の仕事はポストの確認から始まる。

都内の地下にある喫茶店、喫茶店『KAMINO』は知る人が知るお店としてそこそこ人気のある店だ。

特に新聞などを取っていないため、投函物はほとんどないのだが、もうひとつの側面でたまに仕事の依頼があるので確認がてらポストを開けると手紙が1枚入っていた。

 

「今日は珍しいわね。それに宛名はなし…」

 

手紙を持ってカウンター席に座って封を開ける。

中身は折り畳まれていたくたびれた手紙が1枚のみ、何気なしに手紙を開いて内容を読んでいく。

 

 

『とつぜんの手紙すみません。フジワラ メイです

ゲンザイふじ山から下山して、そのふもとフキンにあるコジンのロッジからかいています

どうかたすけてください

みかわとなのるセイネンに何かされなんとかにげてきました

どれくらい待つかわかりません

手下もいるみたいです

がんばってにげますがおそらくむりだとおもいます

だからあのときのようにたすけて』

 

 

手紙に書かれた文字はまるで何かを抑えるかのように汚い字で書かれており、読みにくいモノだ。そして何故か平仮名や片仮名が多い…

だが彼が助けを求めてきていることだけは分かった。

そのように考えていると扉の開く音が聞こえる。その方向を見ると白のTシャツにジーンズとかなりラフな格好の男性が入ってきた。

 

「すみませんがまだ……っていきなりですね。上野さん」

 

ラフな格好の男性…上野 和馬(うえの かずま)が和かな笑みを浮かべて店内へと入ってきていた。

 

「久しぶりに様子を見に来たんだけどどうかしたのかい?」

「厄介そうな依頼がきまして。どうやら藤原君がまた事件に巻き込まれたみたいです」

「またかい? どれどれ……」

 

上野は溜め息を吐くと手紙を読んでいくが、読み進めていくたびに顔を顰めていく。

 

「なんとも厄介なことに巻き込まれたね」

「居場所は恐らく富士山であるのは確定でしょうけど、どこに連れ去られたのか分からないんですよ」

 

犯人は恐らくここに書かれているミカワという青年で、現場は富士山の麓より上であること。そして手下がいること、それだけしか分からない。

 

「…これを見て関係ありそうな事件を思い出したよ」

 

上野は後ろポケットに入れていた手帳からある新聞の切り抜きを見せてきた。記事には『富士山での失踪者、今年で8人目!?』と大きく見出しが出ている。

だがここに書かれている人名は藤原君ではなく、別の名前だ。

 

「ちょっとこの事件について警察から依頼を受けた所でね。これは恐らく誘拐とは別の目的じゃないかというのが警察の見解だよ」

「警察から?…そこまでわかっていて解決できない事件を何故上野さんの所に?」

「この事件は少し特殊みたいでね。余りにも犯人の足にたどり着けないから外部から攻めてみようということだよ」

 

尚更分からなくなった。警察で解決できないものを探偵に依頼する意味が分からない。

 

「警察が探偵より調査力で劣るとは思えないのですが…」

「どうやら上層部からの圧力で大々的に調査できないみたいだよ」

「つまり厄介事だと」

 

そうだよ。と言って上野さんは席についてメニュー表を手に取る。

上野さんがいつも頼むものは決まっているのでカウンター裏に行って珈琲とトーストを準備して目の前に置く。

 

「いつものです。どうぞ」

「お、ありがとう」

 

美味しそうに食べている姿を見ながらついでに入れていた珈琲を飲む。

今回は警察上層部にすら圧力をかけられるミカワという人物に警戒しながら調査を進めていかなければならない。

随分と厄介な事件に巻き込まれた藤原君のことを考えながら最後の一口を飲み干した。

 

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