少年「ありがとう、ラモーヌおばさん」皇帝「えっ」+α   作:狸より狐派 ハル

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1話だけ書いて満足してその後を、だらだらにする癖を消したい・・・と思っていたらだらだらしてしまう。
どうしろと。
とりあえずご覧下さい。


第2話

 

 「えっ・・・あのシンボリルドルフを見たことなかったんですか・・・?」

 そう驚いたのはイクノディクタスである。他にもツインターボにマチカネタンホイザも「えー!」と驚いていた。唯一片手で両目を塞いでいたナイスネイチャは呆れていた。

 「そうだった・・・アンタってばこう言うの本っ当に興味ないんだったんだっけ」

 「興味ないって、あのチョー有名なあのシンボリルドルフ会長さんなんだよー!?ニュースに出てた三冠ウマ娘の!七冠の!」

 どっちだよ、と気にする少年。とりあえず知らないと答えたら、今度は声すら三人は出てこなくなった。

 「・・・じゃあさ、メジロラモーヌ先輩は知って・・・ないよね」

 諦めぎみにナイスネイチャが聞くと、先程と同じ返事をした。

 「えーっ!あのトリプルティアラのラモーヌ先輩を知らないのー!?会長さんと同じくらいスゴいのに!?」

 そんなこと言われても少年は彼女らのことを本当に知らなかった。念のために記入するが、少年の出身地はナイスネイチャと同じである。そしてナイスネイチャの出身地はトレセン学園から徒歩で充分向かえる距離である。どんだけ世間知らずだよ、この小説書いてる自分がビックリだよ。

 その後少年が、《目白》って名字なんだ~とか気にしてると、ナイスネイチャはそっからかよもうやだコイツ、と(つぶや)いた。

 「あっ、あれ」

 ツインターボがシンボリルドルフとやらの方に指を指す。他四人も釣られてそっちを見てみると、メジロラモーヌが明後日の方にどこかいってしまった。

 「あれ?どこに行っちゃうんだろ?」

 そうえばあの人もなんか参加するんだっけ、と言う少年。この後またナイスネイチャに問い詰められることになった。

 

 

 

 トレセン学園第2レース場、芝の上のスタートゲート辺り。そこには12名の有名競争ウマ娘がいた。

 全員がG1と呼ばれる最高峰のレースにて一着を取った選ばれしウマ娘。あるものは純粋に強く、そしてあるものは誇り高くカリスマ性に溢れたウマ娘だ。

 綺麗な茶髪、前髪が暗い茶髪に白い流星をしたウマ娘、シンボリルドルフは彼女らの代表的存在だ。

 現役トレセン生徒会長と言う生徒の中で一番偉く、実力も最強と呼ばれるほど偉大である。

 そんな彼女なのだが今の表情は、なんだか凄く困惑と言うか心配していると言うか、とても不安がっていた。

 「会長・・・一体なにがあったんだ」

 「あぁ、まぁちょっとその・・・色々あってね・・・」

 どうしても気になっていた一人のウマ娘がシンボリルドルフに声を掛ける。

 彼女の名はナリタブライアン。メジロラモーヌよりも純粋に黒く、長い髪をポニーテールにしたウマ娘で、トレセンでも(たぐ)(まれ)なる実力を持った存在である。

 そんな彼女もあることについて困惑していた。もっとも困惑していたのは周りに他にもいる。

 スーパーカーとも呼ばれる走るのを誰よりも楽しむマルゼンスキー、誰よりも自由な三冠ウマ娘ことミスターシービー、シンボリルドルフの親戚で海外でさまざまな活躍をした一等星シリウスシンボリ、その他トウカイテイオーにスペシャルウィーク、サイレンススズカとオグリキャップなど誰もが知っている超有名競争ウマ娘がいるのだが、思いは一つだった。

 要約すると、メジロラモーヌなんか怖っ 、である。

 一方のメジロラモーヌは周りのことなど露知らず、スタートゲートを凝視していた。

 その視線は、それだけで誰かを殺しかねないほどの眼光であり、もし合わせでもしたら(へび)(にら)まれた(かえる)のように動けなくなるだろう。

 しかも幻覚なのか彼女の左目が青く燃えているように見える。なんなら全身青く燃えていた。

 コート外のギャラリーたちもなんか怖っ、と思ってしまっている。

 『そ、その・・・皆さん、ゲートインお願いします』

 アナウンサーが恐る恐るそう言うとメジロラモーヌは一番先に入っていく。

 他のウマ娘も困惑しながらと入って行こうとした。

 「・・・なにかやらかしたのか?会長。いくら本番とは言え今日は公式レースじゃないんだぞ。あそこまで気合いが入るものか?」

 「私が原因じゃないんだが、予想外すぎる事があったんだ。後でまた話そう」

 シンボリルドルフとナリタブライアンもゲートに向かっていった。

 メジロラモーヌの右横のゲートにシンボリルドルフが入る。なにか声でも掛けたかったが、とても出来なかった。

 (まさかあんなことを言われるだなんて・・・)

 全員がゲートに入ったことを管理者が確認する。

 そして数秒後、頭上の赤ランプが光った直後にゲートは開かれた。

 

 結論から言うと、メジロラモーヌがブッ千切りで一着を取った。

 

 

 

 はぇ~スッゴい・・・。そう呑気そうなのはナイスネイチャの幼馴染少年。メジロラモーヌの圧巻の走りに最近の競争ウマ娘選手のことを全然知らない彼から見ても、その凄さはこう見えて伝わっていた。

 ナイスネイチャなど仲良し四人組も衝撃の余り、口を開きっぱなしである。

 メジロラモーヌの方は本気で走ったためか、斜め上を向いて口呼吸をしている。

 ただ疲れきって息が荒いだけの状態だと言うのに、(はた)から見ればそれさえも神秘的に見えるほど、彼女の姿は美貌(びぼう)だった。

 ふーっ、と下に首を下ろしながら息を整えるメジロラモーヌ。じっと少しすると歩きだした。

 「あっ、ラモーヌ」

 シンボリルドルフが声を掛けたが、気づいてないのかそのままどこかへ行ってしまう。

 どこへ行くんだろうとラモーヌの視線の先を見てみると、あっと気づく。

 彼女はあの《おばさん》と言ってきた少年の方へ向かっていった。

 

 それに気づいたのは、メジロラモーヌがしばらくこっち(がわ)に歩いて来て、ある程度近づいた時だった。

 「あれ?ラモーヌ先輩こっちに向かってきてない?」

 「ええ、間違いなくこっちに向かってきてますね・・・」

 そうナイスネイチャの問いにイクノディクタスが答え、マチカネタンホイザはあわあわしている。どんどん近づいて、そして更に気づいたことがあった。

 「・・・完全にアンタの方に向かってるよね絶対」

 ナイスネイチャの言う通り、メジロラモーヌの視線は少年のみに合わさっていた。

 ホントだ、と今さら気づく少年。そして彼と彼女の間隔が、腰の高さくらいある外ラチ(フェンス)を間に挟んで三メートルのところで止まった。

 「どうだったかしら、私の走りは?」

 笑顔でそう聞いてくるメジロラモーヌ。なお、その視線は笑っていないように見える。

 その視線の様子に気づいていない少年は、あっさりとむっちゃ凄かったです、とだけ言った。

 「それだけ?」

 メジロラモーヌの視線が切れ味を帯びてきた。「ヒエッ」とナイスネイチャはビクッとしたが、少年は手をアゴにあて、うーん、とちょっと(うな)った。

 そしてこう言った。

 

 最後のコーナー立ち上がりの時に、もうちょっと早めに直線を走るための姿勢に移った方が良かったような気がする。早めにタイミングを取った方が良かったかなって思った。

 

 「えっ?」

 頭が良く、観察力も鋭いイクノディクタスは反射的にそう言った。

 メジロラモーヌの走りと言うのは、誰から見ても完璧な走行だった。無駄がなく、勝つための姿勢と速度により実際勝つことができた。

 しかし少年から飛び出た台詞と言うのは、アドバイス的な指摘だった。

 これにはメジロラモーヌも予想外だったのか、わずかながらも目と口を開いている。

 そんくらいですかね、と締める少年。そんな彼をじっと見つめているメジロラモーヌ。またしばらくしたら、彼女は「そう」と言ってまたどこかへ行ってしまったのだった。

 「・・・まさか」

 そう呟くのはナイスネイチャ。彼女はあることをもう一つ思いだし、あり得るかも?と心のなかで半信半疑に思った。

 

 

 

 時間は跳んで同日の夜、すっかりと暗くなり学園の一部は電気が消え、人だかりもまるで嘘のようにいなくなっていた。

 第2レースコートにも人は一人を除いて誰もいなかった。レースコートを囲むようにナイトゲーム用の大きな野外ライトはその場所を強く照らしており、独特の雰囲気を感じとれる。

 その一人の人物と言うのはメジロラモーヌだった。赤と白の学園指定ジャージを着ている彼女はレースをするようにレースコート真ん中を走っている。

 もうすぐ右コーナー、メジロラモーヌは速度を必要最小限まで落とす。

 コーナーに入って徐々に内側に寄っていく、コーナー中心時には内ラチ一人分まで詰め寄っていた。

 もっと寄ろうと思えば彼女なら寄れるが、意図的にしない。

 これはレースにて守る必要のある暗黙の了解(マナー)であるからだ。ただでさえ競争ウマ娘は時速60キロで走ることができるのだが、それを生身で行う。もし転倒でもしたらどうなる?最悪は避けられない。

 ましてやギリギリを走る際に感じる自身の体とフェンスの間から発生する風の音を聞きながら走れば、恐怖は倍増する。

 どんなに走るのが上手く恐怖に対して免疫があるウマ娘であっても、不測の事態と言うのは発生する可能性が必ずある。

 しかも自分だけでない、周りを走るウマ娘にも危険が及ぶのだ。そのため内ラチから必ず一人分離れて走る《内ラチ一人分ルール》と言うのが公式的にも存在するのだ。

 メジロラモーヌは内側を可能な限り力を入れて走る。

 そしてコーナー出口が近づいていくと同時に少しずつ外側に膨らんでいく。

 コーナーを曲がる際に大切なのはアウト・イン・アウトと言う基礎技術だ。

 外側からコーナーを曲がり始め徐々に内側に寄り、そして中心を通りすぎれば逆に外に膨らみながら走る。

 そうすることにより、高い速度を保ちながら走りきる事ができる。

 さぁ、もうすぐ出口だ。と思った矢先、ラモーヌはフルパワーを使って走り出した。

 体が横に僅かに(かたむ)いていた状態から一気に直線を走るための姿勢を取って走り出す。並みの力と技術であれば慣性で左へ滑って余計な動きでロスになったであろう。しかしメジロラモーヌはそんな慣性が発生せず、足場の芝を思いっきり(えぐ)ってコーナーから飛び出した。

 「!」

 メジロラモーヌは気づいた。加速が今までの走り方よりスムーズなのである。

 どんどんと速度が上がっていき、あっという間にゴール代わりにしていた《ゴール》と書かれたボードを両手に持ったジャージ姿の紺色長髪褐色肌のウマ娘がプリントされた等身大の木の板を通りすぎた。

 足に負担が掛からないよう、速度を少しずつ落とすメジロラモーヌ。止まったときには、彼女の内心は不思議な感覚だった。

 彼女は自身の走りに絶対の自信があった。もともと体が弱かったのだが幼い頃から英才教育を受け、今では走り以外に興味がなくなるほどに強くなった。

 力だけじゃない。技術、知力だってそうだ。ありとあらゆるものを取り入れ、そして自分に合った走りを確立した。

 我流とは人が思うよりも簡単に限界に到達してしまい、成長が止まってしまう。だからどんなスポーツにおいても客観的に見てくれる指導者(トレーナー)と言う存在は必要不可欠なのである。彼らがいるからこそ自分だけでは気づけない過ちに気づき修正してくれる頼れる存在である。

 しかし彼女は特別だった。たった一人で強者と渡り合えるほどの実力をつけてしまった。

 まさにトレーナー泣かせの存在である。現に彼女にもトレーナーと言うのが立場上いるのだが、いかんせん彼からの指摘は多くない。

 彼女にとっても公式レースの手続きをしてくれる存在でしかないと思っている。

 競争ウマ娘は本来トレーナーの存在が必要で、彼らがいないと公式のレースに出場することが出来ない。それがルールなのである。

 メジロラモーヌも例外ではないので、現状とりあえずトレーナーをつけているのだ。一方のトレーナーは彼女をスカウトする際、自分のことは利害が一致しているだけのビジネスパートナーのような立場で構わない、と言っているのだがそれが建前だと言うことを彼女は既に見抜いていた。

 一応トレーナーの名誉のために言っておくが、彼だって悪意をもって利用しようとしているわけでなく、ちゃんとメジロラモーヌが舞台に立って欲しいと言う純粋な思いもある。が、下心もやっぱりあったりもする。それ以前に彼女に担当が付く前まではスカウトが殺到していたのだ。

 デビュー以前から圧倒的な実力が合ったのだが、メジロラモーヌは全てを蹴った。

 だから無欲な振りをしてトレーナーはスカウトし、彼女の気まぐれな性格も偶然合い今のようになったのである。

 話を戻そう。

 メジロラモーヌは不思議な感覚を味わっていた。憧れでもなければ嫉妬でもない、下心など飾り気の全くないあの少年。

 あんな相手は始めてだった。メジロラモーヌは普段周りから眩しそうに見られながら持ち上げてくる。皇帝とも呼ばれるウマ娘、シンボリルドルフもまた彼女に対して特別な感情があった。

 だがもう一度言うがあの少年にはそれがない。一切特別視してこなかったのである。

 自分のことを知り尽くしていたと思っていた自分どころか、プロの客観的立場であるトレーナーですら気がつかなかったことを教えてくれた。

 「・・・ふふ」

 彼女は興味が湧いた。《おばさん》と呼ばれたことに対してはとっくに気にならなくなった。そもそも別に怒ってはいなかったのである。単に今まで自分はそう見えるのかと悩んでいただけであった。

 余談だが、一時間前にナイスネイチャが生徒会室に行き、シンボリルドルフにあの時なにがあったかを聞いて、後日少年をぶん殴ろうと思ったのは別の話。

 

 /|_________ _ _

〈  To BE CONTINUED…//// |

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次回もお楽しみに。
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