少年「ありがとう、ラモーヌおばさん」皇帝「えっ」+α 作:狸より狐派 ハル
あとちょっと遅くなって申し訳ありません。
また、もうすぐで終わるかもしれませんが、残り数話お付き合いお願いします。
1
「な、なんでこんなところに・・・!?」
「あなたたちが随分と楽しそうに走っているのを見ていたら、私も走りたくなったの。混ざってもいいかしら?」
突然の超大物ウマ娘の登場に少女たちだけでなく、現役ウマ娘も呆気に囚われた。
なお少年とその母親に関しては「やっべー」って感じである。だが
そんな目で見ていると、ナイスネイチャがいきなり少年の後頭部を片手で掴んだ。なにするし。
「いやまあ、なんか色々と嫌な予感がしたから念のためにね?とりあえず土下座してきなさい。逃げるなんてバカなことしない。いいね?」
逃げようとはしていない、戦術的撤退だ。
「一緒じゃこのバカ!早く謝りなさい!」
「あら、別に気にしていないわ。そう見えるなら仕方ないわね」
「えっ」
なんと謝罪する前にメジロラモーヌは少年を許した。一体どういう風の吹き回しだろうか。
少年も少年でなんだか気遣されたようで、罪悪感で申し訳ない気分になってきた。ひとまず平謝りすることに。
「別に気にしていないって言ってるでしょう?でもそうね・・・その代わり、私とレースしてもらいましょうか」
何もかもいきなりだった。突然現れ、突然許し、そして突然の宣戦布告。ナイスネイチャはメジロラモーヌというウマ娘を表面上、それも断片的にしか知らない。レースのみを愛し、それ以外に関しては気まぐれでどんなに着飾った言葉を並べてもその気になっていなければバッサリと切り捨てる。それがメジロラモーヌというのがナイスネイチャの認識である。
だが今の彼女は明確に少年に対して興味を持って接しに来ている。それも自らレースと提案した。普通ならこれ以上ない光栄だろう。
「いいわよね?」
少年も呆気に囚われ返事が出来ない。そして無意識に母親の方に首を向く。
母親もいきなりの状況に追いついていないようだった。彼女もつい無意識に少年の方に首を向ける。
だがほんの少しするとニヤッとした。
そして折角だから見せてもらいましょうか、と言ったのである。
少年は待て待てと止める。でも悪いと思ってるんでしょう?なら付き合ってあげなさい。
「ふふっ決まりね。足を休ませたら始めましょう」
メジロラモーヌは楽しそうだった。
「機嫌がいいとはいえ、少し強引じゃないか?ラモーヌ」
「えっ、えええっ!?」
さらに背後からやってきたのは皇帝ことシンボリルドルフだった。まさかの登場に少女たちはまた騒然となった。母親でさえマジか、と驚いた。・・・くせして少年の方はなんか見たことあるなこの人、とまでしか思ってなかった。遠目とは言え先日
「あら、別にいいじゃない。こんな機会滅多にないのよ?」
「確かにそうだろうが、彼らはクラブ活動の途中だから、せめて終わった後でもよかったんじゃないかなって思ったんだが・・・」
「あの走りを見せられて、じっとしていろって言うの?皇帝様も随分と消極的になったものね」
「いや何、私も少年にあんな力があったなんて未だに驚いているんだ。もう少し見学したかったというのが私の本音ってところだよ」
「なら今から彼と一緒に走るからその時にじっくり見ればいいじゃない」
「はは、興味あるものに対する適応力は大したものだよ」
シンボリルドルフは困りながらも、どこか愉快そうにする。すると少年の方に向いた。
「いきなりですまないが、ラモーヌと一緒に走って欲しい。頼まれてくれるかな」
どっちにしろ少年は走ることになった。
2
さて、条件は先程と同じ右周り
し終わるとスタートラインに立ち前を見据える。
「よろしくね」
右隣のメジロラモーヌがそう言ってきた。少年も改めて彼女の顔を見てみるが、どうしても女子高生に見えなかった。
「そんなに見えないかしら?」
こちらの思いが聞こえたのかメジロラモーヌは不敵に笑ってくる。少年自身、考えてることが表情に出やすいことは自覚しているため、今回は意識的に無表情を作り誤魔化した。が、女の勘と言うのは美人なほど鋭くなるのだろうか。
別に、と雑に言い構えを取る。メジロラモーヌも構えだしたら、少女たちの視線がよりキラキラしてるように感じた。お
「位置についてー!」
ナイスネイチャが声を張る。少年も拳に程よく力を入れて研ぎ澄ます。自分のやることはいたってシンプルだ。まずは
「よーい」
息を少しずつ吐く。合図と同時に上手く吐き出すように・・・
「ドン!!」
吐く量を増やした。力が増したように感じる。感じるだけだがそれでいい、イメージは大切だ。イメージとは精神力につながり、そして精神力は体力の元となる。心も体も
原点的には結局『考えるところから』を、
ややこしい話をしてしまい申し訳ない。少年たちに戻ろう。
二人がそろって駆け出し、先頭に立ったのは少年の方だった。
「おお!あいつが先頭だ!幸先いいぞ!」
「そうでしょうか。ネイチャさん、彼の脚質について確認したいので教えてください」
ツインターボが良しと思う中、イクノディクタスは疑問に思った。
「そうね・・・アイツはぶっちゃけ言って《気分》で変えてるからね」
「気分で変える?」
「ある日は先行だったのに別の日には差し、しばらくのあいだ逃げかと思ったらレース中急に追い込みを始めたりと良く言えば変幻自在、悪く言えばガバガバに不安定なのよ、アイツの作戦は」
「・・・えっそれは」
「ああイクノ、話してるところ悪いけどまずはあっちに集中しよっか」
少年は第一コーナーを曲がり始める。序盤なので体力の消耗を嫌ってアウト・イン・アウトで外から内へと攻めていった。
メジロラモーヌはそんな彼に対して、相手の全身が見えるようピッタリと後ろにくっついて追走する。どんどんと内側へ行き、そして中央部を過ぎると今度は外側へ膨れていった。あらかじめ保っておいた速度も相まって立ち上がるまでにそれなりに速くなり、ブレなく綺麗なライン取りでコーナーから抜け出していった。
「いいぞー!後ろにくっつかれてるけど先頭だから有利だー!」
「いえ、実は
「えっ?」
「一対一という状況下でのレースと言うのは後追いが有利なんです。技術的にも心理的にも目の前の相手を《見る》ことができるというのは本来安心できることですから、安定して走れるんです」
ランナーの心理として自分と同じスピードで後ろから付いてくるものがあれば平常心を保つのは案外難しい。全力で逃げても振り切れない場合は、相手の実力が自分よりも上であるという思いに囚われてしまいやすい。
先行、正確には逃げと言う
「ネイチャさん、先ほどの話を訳すると彼は臨機応変に対応できると解釈できますが、今回は通用するのでしょうか?」
「どうだろうね・・・少なくとも中学に入ってアイツが同年代の子とレースをした回数に関しては、ぶっちゃけ言って期待できないと思う。なんせ私や稀にここに来るクラブOBと数回しか実戦形式のレースをしてないと思う」
「つまり実力はあっても経験値が不足しているということですか・・・ではなおさら不利ですね」
えー!っと不満そうに驚くツインターボ。すると今の少年の立場に気になったのかシンボリルドルフも話に入ってきた。
「ちなみにだがもしナイスネイチャたちがあの少年と同じ立場だったらどうする?」
「うわ~、そういうの考えたくないな~。なんせ相手はあのメジロラモーヌ先輩ですし」
「もし自分ならとイメージするのも想像力を鍛えるなら大切なことだよ」
「自分なら、か・・・」
直線を二人は縦に並んで走っている。相変わらず少年の後ろにメジロラモーヌがくっついて走っている。一方少年の方は特にペースを上げるようなことはせず、淡々と走っていた。だが気づいたことがある。
「ペースが速いな、あの少年は。しかも一度もラモーヌの様子を見ようとせず前しか向いていない」
「少なくとも
「今の少年の作戦はわかるかい?ナイスネイチャ」
「一応心当たりはあるんですが、まだ確信は出来ないってところです」
少年はずっとハイペースかつ不変な走りで第二コーナーまで向かった。このレース場のコーナーは綺麗な
第一コーナーと同感覚に曲がり始めメジロラモーヌも同様に追走、特に変わった点はないまま二人ともコーナーを抜けていった。
だが第三直線で動きがあった。
「あっラモーヌ先輩が動き出した!」
マチカネタンホイザの言う通り、メジロラモーヌは少年の真後ろから横左へと車線変更した。そして速度を上げて追い抜き始める。
少年も彼女が動き出したことにはとっくに気づいている。
だが少年はまだペースを上げるような真似はしなかった。
そのまま追い抜き、今度は少年の左前方にメジロラモーヌがいる状態で走る形となった。
第三コーナーに入る。メジロラモーヌが先にコーナーに入っていく。少年もそのまま入っていく。
またもやアウト・イン・アウトで二人は走っていく。だがここでも異変は起こった。
「あれ?ちょっとずつ離れていってないかな?」
これまたマチカネタンホイザが気づいた。そう、コーナーを曲っている最中少しずつだが離れていってる。そして抜け出した時には7メートルほど差がついていた。
「ああ、しかもラモーヌはもっとペースを上げるらしい」
シンボリルドルフが言った通りになる。メジロラモーヌがペースを上げ続けていったことにより、まだじりじりと離されていった。
「このままじゃ置いていかれるぞ!」
慌てるツインターボ。マチカネタンホイザもドギマギしながら様子を見ており、イクノディクタスとシンボリルドルフは少年の出方を待っていた。
するとナイスネイチャが。
「・・・やっぱこっからか」
第四直線の真ん中辺りで少年がペースを上げた。
「ロングスパートか」
距離が開かなくなっていき、そして今度は少年がメジロラモーヌに近づいていく。少年のペースは徐々に上がっていく。
「・・・保てるのでしょうか」
「うん。だってアイツは、
「「「えっ?」」」
「やはりか」
仲良し組がナイスネイチャの発言に驚く中、シンボリルドルフは気づいたようだ。
「やっぱりわかっちゃいました?」
「ああ、あの少年は君の言う通りラモーヌのことを
「確か小五のころから体内時計を鍛えてたんですよアイツ、もちろん先生の指示から始まったんですが、今では日課になってるんですよ」
体内時計の鍛え方とは、決まった時間にピッタリと合わせる練習を繰り返し行うことである。例えばこの1,000メートルコートを三周する際、4:00分丁度に走りきるとする。その際に求められる速度は時速45キロになる。
速度の求め方はいわゆる「みはじ」の計算式を利用し、まず『み』こと道のり3,000mを『じ』こと時間4分で割る(3,000÷4)。これにより答えは分速750mとなり、一分間で0.75km走る速さとなる。ここから時速にする方法は、分速に60を掛けるだけでいい。なぜなら1時間は60分なのだから。つまり750(m)✕60(分)を計算することにより時速45km(時速45,000m)が完成するのである。
これをローリンクスタート形式で(走っている状態から)スタートからゴールまでブレなく45キロを維持したまま走ることで揃えられる。
だがこれがまた難しい。
走る少年には特にタイムウォッチもなければ、時速計も装備していない状態である。
要は勘だけで4分ピッタリに揃えなければならない。
初めはバラバラだった。大きく遅れたり早すぎたり、自分がいけたと思っても時間は非情にも揃ってくれなかった。
そんな練習を毎日やった。
覚えることが出来ると他人に流されず、自身のペースをしっかりと把握することが出来るのだ。
少年は体内時計を利用して自身の体力だけを気にしていた。
だから上手く調節でき、そして早めにスパートを掛けた。
ここから自身の速度を少しずつ上げていく。
メジロラモーヌが先に最終コーナーに入った。自分も入る。アウト・イン・アウトは相変わらず。しかし今までのコーナリングよりもずっと性能を上げていく。
まだ上げる、まだ飛ばす。少年はこれ以上にも飛ばしていった。
さあコーナー出口だ。先に飛び出したメジロラモーヌを追い抜くために、少年は早めに直線を走るための姿勢になった。
そして
「ッ!!」
(!・・・ふふ)
シンボリルドルフはゾッとした――――――そしてメジロラモーヌは興奮した。
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〈 To BE CONTINUED…//// |
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普段使わない頭をめちゃくちゃ使ったせいで疲れた・・・頭悪いのに、こんな論理的なの書いたら絶対ボロがでる・・・。
絶対誰か指摘してくるよこれ。ライダー助けて!
ひとまずご愛読ありがとうございました。