少年「ありがとう、ラモーヌおばさん」皇帝「えっ」+α   作:狸より狐派 ハル

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 あと数話で終わると言ったな。
 あれは嘘だ。
 と、言うことで最終回です。楽しみにしていた方々には申し訳ありませんが、ご了承ください。
 しかもハイテンポで送るという手抜き感・・・これはひどい
 どうかこのお話に最後までお付き合いください。


第5話

 

 

 (まさかずっと私を見なかったなんてね)

 その美しき黒い流線形。嫉妬すら追いつかない。憧れすら届かない。

 畏れすら感じるほどの美貌と妖艶な立ち居振る舞いは、まさに魔性。数多の存在を虜にする彼女がすべてを捧げ、愛を貫くのはレースにのみ。何人たりとも間に入ることはできない。

 それがメジロラモーヌと言うウマ娘である。

 (とっても新鮮。今まさに後ろから怒涛の勢いがやってきているというのに、その矛先は私にちっとも向いてない。まるで本当に私なんて初めからいないように走っている)

 どんなレースでも彼女は多くの注目を浴びた。

 レースに限らずトレーニング、日常など目立たなかったことは、はっきり言って少なかった。

 今この場においても・・・いや、恐らく今シンボリルドルフたちの視線は後ろの少年に釘付けになっているだろう。

 それは別に構わない。なぜなら彼女はレースがあればいいのだから。

 (妬いちゃうじゃない)

 しかしレースを成立させるには相手が必要である。それも実力が自身と同等かそれ以上の。

 今自分を気にせず走ってきている少年がそうだ。速い、レースを成立させるだけならそれだけで十分である。

 だけどそれはそれとして別の問題がある。

 (こんな感覚初めて・・・今まで私の後ろを走ってきた子たちは今のような心境だったのかしら)

 勝つことを望んだ者は負けると自身の上を行った存在をイヤでも覚える。一目で自身より強いと直感で分かったら無意識にマークする。

 メジロラモーヌはいつの間にかそんなにも気にかけていた。

 だがそんな相手は自身よりもさらに先を見ている。こっちは意識しているのに、あっちはまるで初めから見てくれていないだなんて、普通の感性ならバカにされているように感じるだろう。

 (少しはこの私のこと、見てくれていいじゃない・・・って私らしくないわね)

 だからこそ見てほしい、そうでないとやっぱりお互いのことなんて、わからないのだから。

 (嫉妬なんてない、憧れなんてもってのほか。この子が見ているのは、先のゴールのみ。それをピュアな目で見続けている・・・だからそんなにも強いのね)

 少年はもうすぐそこだ、このままだと抜かれる。

 (さあ見てちょうだい、この私を)

 メジロラモーヌは過去一番に、美しく駆けた。

 

 

 

 

 少年は(あか)い部屋にいた。

 ここは一体どこだ?紅い机の上には、開いた箱の中に入っている宝石が無造作に置かれている。見るからに綺麗で高級そうだ、全部で幾らくらいするのだろう。

 「坊や」

 声が聞こえた。馴染みはないが聞いたことのある声、そっちに向く。

 ベッド・・・ではない。紅い台の上に、白と黒と確か碧色(へきしょく)と言ったか、その色の勝負服を着た妖艶なウマ娘が仰向けになってこちらを見ている。

 彼女の周りには、それまた高価そうなネックレスやブローチ、指輪などが置かれている。

 だがそれよりも少年は、妖艶なウマ娘が気になっていた。

 もとより少年は宝石が特別好きだった訳ではない。ゆえに簡単に、お宝から気はそれた。

 その妖艶なウマ娘は美しかった。少年にとって美しいものと言ったらせいぜい周りの宝石や花畑のような無機物しか感じなかった。

 人を美しいとは特別思わなかった。なぜなら自身と同じ人であるからだ。

 けど今はなんだか違う。なんと言うか本当に美しくて目が離せなくなって・・・

 「ふふっ」

 妖艶な彼女が笑った。自分は何もしていないが、何に笑ったんだろう。

 このウマ娘に声を掛けてみる。なんて答えて()()()()()()()()

 ・・・あれ?自分はこんなにも他人に興味を示す人間だったんだろうか。

 彼女の反応を期待してしまう。どうしてこんなにも?

 妖艶なウマ娘か起き上がり、こちらに向いて()()()

 綺麗な笑顔だ。微笑ましさとは違う暖かな気持ちが沸いてくる。

 なんなんだろう、この気持ちは。変な感じだ。これは一体━━━

 「やっと見てくれたわね」

 彼女は過去一番に微笑んだ。

 

 

 

 少年は前左の()()()()()()()の方に首を向いて走っていた。

 彼女の走りを見るために。見ていていたい、しかしもうすぐゴールだ。もう見れなくなる・・・

 ・・・ん?なんで自分は()()()()()()()()()()()()()()()

 自分は彼女を綺麗だと思って・・・

 

 違う!

 

 自分が気にしなければいけないのはゴールだ!この人じゃない!!

 前を向く、ゴール役の母親は見える、けど距離がない!?いつの間にこんなにも走って━━━━

 

 気がつけば二人は、少年の母親を通りすぎていた。

 先に通りすぎたのはメジロラモーヌだった。

 

 

 

 

 少年は芝の上で大の字に仰向けになって息切れを起こしている。まるで数十分前のツインターボたちのようだ。

 自分はレース中ゴールしか向いていなかったはずだ。だというのに気がついたらメジロラモーヌの方を見ていた。

 しかもよりによってスパートを掛けている最中にだ。一番集中しなければならないところで気が完全に逸れていた。

 どうしたんだと自問自答する。実は心当たりならあるのだが・・・

 「お疲れ様」

 上後ろから声が聞こえる。これも聞き慣れない声だ。

 顔だけ無理に後方に反らすとシンボリルドルフが見えた。

 「凄まじい走りだったよ。あのラモーヌと互角に競い合うだなんてね。君の実力は想像を遥かに超えたものだ」

 偉大そうな彼女からお褒めの言葉を受けたのだが、如何(いかん)せんありがたみが感じにくい。

 適当に返事し、メジロラモーヌの方を向く。感謝祭の時のように顔を少し上げて息を切らしていた。

 あれは一体何だったんだろうか、と愚痴る。

 「キミも見えたんだな、彼女の領域(ゾーン)が」

 聞き慣れない単語が飛び出てきた。必殺技みたいなものか?

 「ああ。時代を作るウマ娘が至る、当人も知らない剛脚。あるいは限界の先の先のことを私はそう呼んでいる。元々実際のスポーツ用語なのだが、ここで言う領域はウマ娘の中でも特別な力として理解してもらいたい」

 そんなのがあるのか、少年は思い出す。

 あの紅い部屋、多くの宝石、そして一際(ひときわ)目を惹いたメジロラモーヌ。オカルトの類だろうか、彼女にあんな幻覚をみせる特技があったなんて・・・

 ズルくね?いつから競バは超次元スポーツになったんだ?許されるのはギャグ漫画だけだろそういうの。

 「はは、私も驚いたよ。気が付けば彼女を追ってしまって勝利を逃してしまった・・・どうも私も彼女の魅力には逆らえないらしい」

 惚れたようにそう言うシンボリルドルフ。もしかしてそっちの()がある?

 「そういう意味じゃないよ」

 そう、と言って上半身だけを起こす。メジロラモーヌの方を向くとこっちに彼女も向いていた。

 「どうだったかしら、私の走りは?」

 笑顔でそう聞いてくるメジロラモーヌ。その視線は満足そうなものだった。

 その視線の様子になんとなく気づいている少年は、あっさりとむっちゃ凄かったです、とだけ言った。

 「それだけ?」

 メジロラモーヌの視線は期待したようなものだ。レースの結果がいささか納得できない少年はこう言った。 

 変なもん見せやがって・・・

 「あら、何のことかしら?」

 おかげで集中できなかったんだよ、()()()()

 「ちょ」

 「そのおばさんに夢中になっていたのは誰だったかしら?」

 彼女は本当にいい性格をしていた。

 

 

 

 

 そんなことがあってそれ以来メジロラモーヌはこのクラブに、もとい少年の元によく来るようになった。

 自身と互角に走ってくれる。他にはない観点で自身を見てくれる。そして何より自身に対して飾ることなく接してくる存在が気に入った。

 一方の少年は公共レース場では今までよりも真剣に走っていた。

 あれから模擬レースを数本やっているのだが、未だに勝ててない。元々勝負にこだわらなかったが、このまま女性に負け続けるのは男としてなんかイヤだったためである。

 領域とやらの力も気になったが、まずは基礎練習で体を鍛えて純粋なパワーアップに勤しんだ。

 少年の母親もおかげでより真剣に取り組んでくれて何よりだと思う。本音を言えば勝ってほしかったとか。

 ある日、クラブ活動までにはまだ三十分あるため自分と母親以外はいない。早めに来ていたのだがメジロラモーヌがもうやってきた。 

 「こんにちは」 

 いつもの赤白ジャージを着ているが今回はそれだけではなかった。

 誰かを連れて来ている。黒くて高級そうな服と目深にかぶった帽子、髪色は薄紫で口元しか見えない。せいぜいわかるのは、口元のちょっとしたシワと体格から見て母親以上の年齢の女性とわかる。ひとまず黒い服の女性と言おう。

 少年がその黒い服の女性について聞いた。

 「この方はね・・・そうね、当ててみなさい」

 なぜかクイズ形式になる。黒い服の女性は空気を読んだのか継続して沈黙を続けている。

 さて、この女性はメジロラモーヌの何なのだろうか・・・考えていると母親がハッとした顔になった。

 そして少年の方に顔を向けた。その顔は下手なこと言うなよと訴えている表情である。何故。

 「ラモーヌ、この子が話で言っていた子ですか」

 「ええ、この子のおかげで最近充実してますの」

 「なるほど」

 黒い服の女性は少年に近づいた。それにしても彼女の声は何と言うか特徴的で威厳がある感じだ。「俗物(ぞくぶつ)が」とかそういう台詞が似合いそうな声である。(さすがに言わない)

 「始めまして。ラモーヌからは話を聞いています。この子は人付き合いを好む方ではなかったのですが、あなたのおかげでここまで楽しそうにしているのは、とても久しぶりに見れました。ありがとうございます」

 「恥ずかしいですわ」

 彼女の言っていたことに、満更でもないメジロラモーヌ。この話を聞いて少年は察した。

 

 

 ああ、わかりました。ラモーヌさんの母さんですね。

 

 「えっ」

 (o゚ェ゚)・;’.、ブッ

 「」( ´ω`)ブフォwww

 黒い服の女性。正しくはメジロラモーヌの祖母ことメジロ家のおばあ様はつい気の抜けた声が出てしまい、少年の母親はやっちまったと思い・・・

 そしてメジロラモーヌは期待を裏切らない展開につい吹き出してしまったのであった。

 

 THE END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (いつか)もうちっとだけ続くんじゃ。




 ご愛読ありがとうございました。
 これにて()()()()()()()()完結です。
 えぇ、実はこの主人公気に入ってて、他のウマ娘の絡みが見てみたいという自己欲求により続編を書きたいと思います。 
 しかし小説投稿以外にも一日一育成や他のゲームもやりたいのがあるため、今後の投稿頻度は少なくなってしまうかもしれませんが、そこは勘弁してください。 
 もちろん、メジロラモーヌ編も気が向いたら、一話かちょっとだけ続けると思いますので、よろしくお願いいたします。
 ではまた!
 あっそうだ(唐突)。よかったら下記の活動報告兼アンケートにご協力ください。
 https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=297211&uid=265660

 おまけ
 各ウマ娘の少年への反応集

 メジロラモーヌ:おもしれー子

 ナイスネイチャ:普通じゃない幼馴染。なんでラモーヌ先輩に気に入られてんの・・・

 イクノ、ターボ、マチタン:始め、男友達が出来てなんだか新鮮。
              今は、えっなにこの人・・・強っ(驚愕)

 シンボリルドルフ:トリプルティアラと互角(タメ)張るヤベー奴。けどおばさん呼びはやめてくれ。

 おばあ様(ウマ娘?):ひと目で、尋常でない少年だと見抜いたよ。
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