少年「ありがとう、ラモーヌおばさん」皇帝「えっ」+α   作:狸より狐派 ハル

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 お待たせいたしました。新しい作品です。
 と、その前に今回のお話について。
 皆様ウマ娘のコンテンツにおいて称賛できることもあれば、どうしても受け入れられないこともあるかと思います。
 ゆえに今回のお話は特に賛否両論分かれることになるかもしれませんが、どうかあくまでもこの小説は『ネタ』として楽しんでくれれば幸いです。
 それでは、ご覧ください。


少年「ウイニングライブとかいらなくない?」月光「えっ」

 

 

 人々が賑わう金曜夜寸前の商店街、少年とナイスネイチャはたまたま会い、気ままにぶらついていた。

 少年はなにか面白そうなことがないか、と呟く。

 「そうだねー。あっ、あれとかどう?」

 ナイスネイチャが壁に貼られている物を指さす。そこには《グランドライブ》と書かれた複数のウマ娘が歌っている画像を載せているポスターがあった。

 「うん。いつかトレセンで大きなライブがあるらしいけど、その前身として告知ライブがこのあたりであるらしいよ。ちなみに私は現状参加してないから。あんなキラキラした場所私には場違いかな~って思っててね」

 そう答えてくれたのだが、少年はそのグランドライブについてサッパリだった。

 「あーそっかそっか、アンタこういうの興味ないから知らんか~。と言っても私も具体的には忘れちゃったけど、要するににレースに出ている子たちがファンに感謝を伝えるためのライブってヤツなの。あっ、一応言っとくけど《ウイニングライブ》とは別物だからね」

 ウイニングライブとはレースに出たウマ娘たちが、ファンに感謝を伝えるためのパフォーマンスイベントである。この点だけ記入すればグランドライブと何ら変わらないように見えるが、何が違うんだろうか。 

 「ほら、ウイニングライブの方はレースの着順によってライブのポジションが変わるじゃん。一着の子はセンターになって、二・三着の子はその両隣、他はバックダンサーって感じで配置されるのはアンタでも知ってるよね。けどグランドライブの場合はそういうのが無くて、純粋に感謝を伝えるためのライブなの。出る子たち全員が主役って感じで誰でも楽しめるっていうコンセプトだから見るだけならアンタも楽しめるんじゃないの?と言っても告知ライブはちょっとまだ先みたいだけどね」

 そうまとめてくれて、少年はとりあえず相槌を打った。

 競争ウマ娘と言うのはかなりハードな存在である。レースに出て勝つためのトレーニングだけでなく、上記のようなライブに出るための歌唱・ダンス特訓も並行して行わなければならない。ましてや彼女等はまだ中学・高校生なのである。ゆえに勉強もしてテストに備えなければならないだろう。聞いているだけで頭が痛くなりそうだった。

 「まあ確かに大変だけど、その分充実してるよ。まさに青春って感じで毎日が中々退屈にならないのよね、これまた」

 満更でもなさそうにそう言うナイスネイチャは、なんだか自慢げだった。

 もし少年が普通のウマ娘であったならば、自分もトレセン学園に通ってそんな生活を送っていたのだろうか。と考えた。

 そこでふとあることに、正確には昔からずっと疑問にしていたことを思い出した。

 「ん?どしたの」

 気になった彼女は少年に耳を傾ける。そして少年はこう言った。

 ライブっていらなくない?

 「えっ、えー・・あ~・・・」

 「えっ」

 ナイスネイチャが動揺した。

 それと同時に、聞き覚えのない声が聞こえた。

 「ん?」

 二人は声がしたであろう前を向く。そっちにはある一人のウマ娘が少年を見ていた。

 茶髪のウェーブあるセミロングカットの髪形に、水色の服と膝まである白いスカートを着ている。

 少なくとも成人していることはわかる。そんな彼女は少年を、何かに驚いたような顔で見ていた。それと良く見ると、顔が赤いように見える。

 「あ、あの人は・・・」

 ナイスネイチャは彼女を知っているようだ。誰かと聞こうとすると、女性から喋りだした。

 「どうして・・・どうしてそんなこと言うんですか・・・?」

 なんだか今にも泣きそうな声だ。しかし少年には彼女をそんなふうにする要因もわからなければ、そもそも何もしていないのである。

 「あっいや、そのですね。今のは言葉の(あや)というかなんというか・・・」

 ナイスネイチャが慌てて説得をし始めた。しかし女性は震えだしており、今にも大声で言いそうだ。

 そして実際に大きな声でこう言ってきた。

 「ウイニングライブはウマ娘みんなの憧れの舞台なんです~~~~!!そんなこと言わないでくださ~~~~~い!!!」

 泣きそうどころか、泣いて訴えてきた。近くを通る人々を気にせず大声出した女性は止まらなくなった。

 「ウイニングライブと言うのはレースに出たウマ娘たちがみんな憧れる夢の舞台なんです~~~!みんな一生懸命に一着になるため頑張って努力してあそこに立って踊ってくれてるんです!!それをいらないの一言で済ませないで下さ~~~~い!!!」

 「うわわわわ!!こんなところでそんなに泣かないでくださいよ!周りすごい目で見てますよ!!」

 「うわ~~~ん!どうせ私なんてダメダメなウマ娘なんです~~!実際に一度もレースに勝てなかったんですからもう何も上手くいかないんです~~~!」

 「いやもう自分のことになってんじゃん!ちょっとアンタ、今すぐ謝りなさいよ!」 

 そう言われて慌てて謝る少年。彼自身だって悪気があって彼女に言ったわけではないが、なんだか申し訳なく思った。

 「あらあら、一体どうしたの?」

 「あっ、細江さん!」

 ある一人の別の女性がこちらに話しかけてきた。彼女の方はナイスネイチャの知り合いらしく、ウマ娘ではなく人間(ヒト)でこの泣いている女性よりも歳が上だとわかる。

 ナイスネイチャはとにかく要約して、ことのあらすじを言った。

 「なるほどね、わかったわネイチャちゃん。とりあえずここだと周りの人たちに迷惑掛かっちゃうから、うちのお店にいらっしゃい」

 「あーはい、すみません・・・アンタはこの人連れて行くの手伝いなさいよ」

 と、言うことで泣いてるウマ娘の方の女性を連れて、細江と呼ばれる女性の店とやらに行くことになった。

 

 

 

 

 BAR細純。細江純子と呼ばれる女性が店主(マスター)として経営しており、この店の特徴はこう見えて全年齢向けというものである。

 店内こそ木製のカウンターや黒革の丸椅子、マスターの背後の棚には色々な酒瓶(さかびん)にグラスがありシックな雰囲気がある。もちろん大人が飲むようなカクテルはたくさんあるのだが、この店にはなんと現役トレセン生が来ることもあり、彼女等もここで一杯何かしらを飲んで(たしな)むらしい。もちろんノンアルコールを、である。

 これは細江純子が本業としてウマ娘レースの解説者を務めており、(ターフ)(ダート)で輝く彼女等が好きだから、と言う理由で広告をしているからである。

 と言う訳で少年にもノンアルコールのスポーツドリンクを細江純子からサービスしてくれた。ノンアルのスポドリってなんだよ、とかは無しである。

 「なるほどね~、確かに気にする人は気にするわよね~」

 詳しい話を聞いた細江純子はちょっと困った顔になって相槌を打った。

 「まぁ現役学生であるウチから見ても、度々問題が起きてるというか・・・積極的になれない子はいますもんね」

 ウイニングライブと言うのは沢山の人々が楽しんでるように見える一方、踊るウマ娘たちみんながみんな心の底から祝えるものでもない、と言うのが現実であった。応援してくれたファン達に向けて感謝を伝えるライブ、と言えば聞こえはいいが、ウマ娘にはかなり負担を強いる上、負けた者はバックダンサーという捉え方次第では晒し者のような扱いを受ける場でもある。

 『バックダンサーで普通に笑顔で踊れたら一生センターに届かなくなる気がする』と漏らすトレセン生もおり、華やかなセンターを盛り上げる脇役の苦悩が垣間見える。

 一方で、ウイニングライブは全員が本気で競った結果だから輝かしいという側面もあり、常に難しいジレンマを抱えた課題だと言えた。

 最初にも説明したが、ウイニングライブと言うのは応援してくれたファンに感謝の気持ちを伝えるために、アイドルライブで歌って踊ることでお礼を表すものである。

 おさらいをした少年は、ここまで聞いてどうしても言いたいことを言った。

 競技者(アスリート)なら競技中に、つまり走りで感謝を表すものではないのか?と。

 「う・・・」

 「う~ん、言いたいことはわかるわ」

 少年は本来間違ったことは言っていない。他の競技で例えよう、プロ野球選手が試合で勝ったら、たとえ女子リーグであっても歌ったりするのか?サッカーは?ゴルフでも?競争ウマ娘レースに近い競技である100m走などのヒト用陸上競技であっても、彼彼女らは別にレース後に歌ったりはしない。競技の中で全力のプレイを行うことで、結果的にファンが自ら盛り上がっているのである。

 フィギュアスケートや新体操?あれはルール上《魅せる》ことを前提としているため例外である。もう一つの例外として女子プロレスがあり、人によるが彼女等も試合後にライブを行う。この競技は簡潔に言えばだがあくまでもパフォーマンス(つまりショー)であり、実は台本に沿って展開されているものである。プロレスもまた選手である自分たちよりも観客を楽しませることが前提のスポーツであるのだ。

 だが競技ウマ娘レースにそんな余裕はあるのだろうか?トレセン学園の少女たちが出るレースには台本なんて存在しない。なぜなら出場者全員が一着を取るために、死に物狂いで駆けるのだから。ゆえに結果は走り終わるまで誰にもわからないのである。

 これが本来の競技(スポーツ)と呼ばれるものと少年は考えている。彼女等は『誰が速いかを証明するために、()()()()()()()』のだ。

 だから、応援してくれているファンには自分がこれほど努力を、成長をしたのだと試合(レース)の中で全力で走るのが、感謝につながるのではないかと言ったのである。

 「そうね・・・あの子たちはスポーツウーマンであって、アイドルを本職にしているわけじゃないものね」

 「うう・・・ですけど・・・ですけどぉ・・・」

 細江純子は少年の言ったことに同情していたがウマ娘の彼女、ライトハローはどうしても納得したくない、と言った感じであった。

 少年はふと呟くように言う。第一ウイニングライブの発端(ほったん)はなんなのだと。

 「あーたしかそれは」

 「それについては説明させてください!」

 「えっあっはい!」

 ナイスネイチャが答えようとしたが、いきなり元気になったライトハローが割って入った。

 「ウイニングライブが生まれた理由についてなんですが、実はグランドライブが関係しているんです。そもそもグランドライブの方が先に行われていたんです」

 そうなのか、と少年は言った。

 「ええ、当時学園のウマ娘全員による年に1回のライブで、個々のウマ娘が自分のファンに向けて感謝の想いを歌ったと言うのが、ことの()()()()なんです。ですがトゥインクルシリーズが大きく成長しレースが増えたことで、トゥインクルシリーズに登録するウマ娘の数も増加していき、グランドライブではカバーしきれないほどにまで成長してしまい、元々ウマ娘独自で行っていたイベントであったグランドライブでは負担が増えていったんです。そこでURAがウイニングライブのシステムを提案をしたんです」

 URA(正式名称:Umamusume(ウマ娘) Racing(競走) Association(協会))とはウマ娘たちによるトゥインクルシリーズやウイニングライブ、またトレセン学園などの施設を運営している団体である。少年もURAは名前だけなら知っていた。

 「応援への感謝であるならレースの後に行ったほうが効率がよく、またURA側で管理しやすいこともあって、人気は逆転しウイニングライブは勝ったウマ娘も負けたウマ娘も、そしてなによりウマ娘のファンもセンターを望むようになって、トゥインクルシリーズ発展に大きく寄与することになったんです。こういうことがあってグランドライブは無くなり、実質的な廃止状態になっていったんです」

 ですが、とライトハローは続ける。

 「ウイニングライブは勝者の舞台という意識が先行しすぎるあまり、勝利してセンターに立たなければファンに感謝は伝えられない、と考えるウマ娘が増えるという弊害を生んでしまったんです。そのせいで目的と前提が入れ替わっている子が出ているとも聞きました。そこでウマ娘たちが素直に純粋に、ファンへの感謝を伝えられる場所を、というコンセプトで始まったのが、この《グランドライブ再建計画》なんです!」

 彼女は自身のバッグから外で見たグランドライブのチラシを少年に見せた。

 とりあえず少年はウマ娘にとってのライブと言うのを大まかに把握した。だがそれでも気になる部分が少年にはあった。

 もしそのライブで怪我したらどうするのか?踊るというのは、結局足に負担が行くのである。ウマ娘の命ともいえる商売道具に。

 「・・・」

 「・・・」

 「・・・わァ・・・あ・・・」

 「あーまた泣かした!」

 「あらら~」

 どうやらライトハローは酔っているせいか、涙もろくなってしまっているようだ。少年はまたもや慰める羽目になったのであった。

 

 /|_________ _ _

〈  To BE CONTINUED…//// |

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 今回登場した《細江純子》というキャラクターは、あくまでも《ウマ娘プリティダービー》に登場する作品の公式キャラクターであって、現実に実在する同姓同名の方との接点は何ら関係は一切ありません。
 言うまでもないかと思いますが、この小説はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
 また、このWEB小説投稿サイト《ハーメルン》は実在する人物を作品に登場させると規約違反になります。
 知っている方の方が多いかと思われますが、もしご存知でなかったとしたら、この機会にしっかりと記憶していただけたらと思う所存です。(1敗)
 ルールとマナーをしっかり守り、楽しい小説体験を皆さんと一緒に心がけていきましょう。
 次回もお楽しみに。それでは!
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