特別な彼女の引き立て役Aです   作:大森依織

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アクア君よ、君は男の娘をママと呼べるかな!?

って状況を原作1巻展開逃避から作りたくなったので、ギャグ漫画から設定を引っ張ってきました。
そのせいで少々、アクア君のキャラが崩壊してます。
ヤギも毛フェチも出てきませんが、男の娘と狼男は出てきます。
大体4000文字。流行りに乗った愚か者です←


引き立て役A本編(原作高校生前)
Aの衝撃


 

side:アクア

 

 

 

 星野 愛久愛海(あくあまりん)ことアクア。いや、俺は中学2年生になって人生3度目の衝撃に襲われている。

 

 1つ目は俺が転生したってこと。

 

 2つ目は俺の今世の母──アイが殺されたこと。

 

 

「はぁ……!?」

 

 

 そして、今。3つ目の衝撃を受けているのは。

 

 

【あ、貴方が星野先輩ですよね!】

 

 

 黒い髪に、宵闇のような深くて不気味な目。

 

 電子音声を使って話しかけてくる奇妙な存在。

 そんな奴の外見が、死んだはずのアイにしか見えなかったってことだ。

 

 

 

 

 ……いや、落ち着け。相手の目にはアイのような力強い光がない。

 所詮は外見が似ている他人だ。不意打ちで少し頭が混乱しているだけだろう。

 

 この世には3人似ている人がいるというのだ。落ち着いてこの状況に至るまでの道を振り返ろう。

 

 

 

 

 ──この出会いの原因は《アイドル戦記》という漫画だ。

 

 

 

 

 『世はまさにアイドル戦国時代!』とファンから言われるぐらいアイドル同士が(しのぎ)を削り、アイドルが活発な現代。

 人を笑顔にしたいという夢を胸にアイドルを駆け走る主人公が仲間と共にアイドルの頂点であるフェスティバルで優勝を目指す……というのが本筋だ。

 

 そんな漫画が映画として実写化することとなり、1つ問題が出てしまった。

 ライバルである『美少女中学生にしか見えない少年なのに、人を虜にするカリスマアイドル』という濃厚なキャラに該当する人物がいなかったのである。

 

 

 原作者からの熱い希望でライバルの性別は男じゃなきゃ嫌だ! ということもあり、始まる前から映画制作は難航。

 

 

 どう見ても女の子にしか見えない可愛い男の子なんて発掘できず、どれだけオーディションをしても望んだ存在が出てこない。

 そんな崖っぷちの状態から奇跡的に該当する人物を拾うことができた──というところまでは、俺も聞いていた。

 

 ちょい役とはいえ、出演してほしいと頼まれた先行き不安な映画だ。心配だったので相手の情報も少しだけ集めている。

 

 

 彼は『AKI』と言う名義で歌や楽器をメインに動画を配信している配信者で、1人でバンド活動をしていて人前に立つ経験はあり。

 演技経験はほぼゼロで、知人に頼まれて舞台に1度だけ出たことがあるという素人。

 そして、あの滅茶苦茶な条件をクリアした『美少女にしか見えないアイドルに相応しい男』であることだけはわかっていた。

 

 

 

 ──だからって、アイにそっくりだとは誰も思わないだろ!?

 

 

 

 思わず叫ばなかった俺を誰か褒めてほしい。

 

 

 

 

【映画に出演するのは今作が初めてですが、精一杯頑張りますのでよろしくお願い致します!】

 

 

 どうやっているのかは不明だが、元気溌剌な印象を与える女の子のような機械音声と共に彼? は微笑む。

 

 機械音声で喋るとかキャラが濃すぎないか。

 というか、マジで男に見えないんだけど。

 ……などなど、ツッコミどころは沢山ある。

 

 しかし、俺の頭はあの黒髪と見た目だけでキャパオーバーだ。

 

 だってあの時、冷たくなったアイがそのまま出てきたような見た目をしてるんだぞ!?

 なんとか言葉を返しただけでも褒めてほしいんだが!? 本当に誰か褒めて!?

 

 

「いや、落ち着け。本当に落ち着け」

 

 

 煩い心臓を押さえつけて、挨拶回りをする彼を観察する。

 見た目はアイがそのまま出てきたかのように、そっくりだ。

 

 でも、動きや仕草、何よりも性別の違いで、彼が『アイ』である可能性を低下させている。

 

 そうだ、世の中にはドッペルゲンガーなんて化け物がいるという話もあるのだ。きっと少し似ているだけの他人。アイツは『アイ』じゃない。

 あの少年? は新人で、監督曰く、『ただの投資対象』枠の人間だ。まだ慌てる時間じゃない。

 

 そうやって落ち着いたのに、それなのに。

 

 

 アイツがアイドルの演技をした瞬間。

 アイツの肉声を聞いた瞬間。

 

 

 

 

「男だからって何? それでも私はアイドルだよ」

 

 

 

 

 アイツの死人のような暗い両目の闇に、星が宿る。

 言葉がアイらしくなくても、不敵な笑みを浮かべて、マイクを握る姿は間違いなく、

 

 

 

 

「それでも認めないのなら、いいよ──染めてあげる」

 

 

 

 

 間違いなく『アイ』だった。

 

 

 

 

 それと同時に、衝撃に慣れてきた頭に冷静さが顔を出してくる。

 

 

 

 

 

 

 ──男に母親(アイ)を重ねている俺は、ヤバくないか?

 

 ──男に母性を感じているのか? 男に母親の面影を重ねてるって字面だけでも危ない奴では?

 

 ──そもそも相手は年齢的にも1歳下の後輩。アイはともかく、こんな子にも母性を感じるのは言い逃れできないぐらい危険な野郎では?

 

 

 

 この時ばかりはショックを受けたままの方が良かったかもしれない。

 俺は今、危ない扉を開きかけているのではないかと心配せずに済むのだから……!

 

 

 

 

 

 

「あっ。色々聞きたかったのに衝撃的過ぎて忘れてた」

 

 

 

 

 アイに関係がありそうな相手なのに、衝撃が強過ぎて見過ごしてしまった。

 

 

 あぁ、あたまがいたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side:アクアend

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

side:AKI

 

 

 

 夕焼けが照らす街並みを歩く影が少し跳ねた。

 

 

「見たかな、あの子が私の息子なの! 立派に成長してカッコよくなったなぁ。でも幼稚園の卒園式も小学校の入学、卒業式とか。後は中学の入学式も見たかった! アクアを見てたらルビーにも会いたくなってきちゃったし」

 

 

 小声で叫ぶという器用なことを『ボクの体』で行うアイさんは、とても嬉しそうだった。

 

 はたから見れば独り言をすごい勢いで話すヤバい人なのだろうが、ボクらは例外だ。

 幽霊状態のアイさんと、そんな彼女に肉体を貸し与える『器』であるボク。

 ちゃんと2人で話しているので、独り言ではないのだ。

 

 

『アイさんが嬉しそうでボクも嬉しいです』

 

「うん、すっごく嬉しい。本当にありがとうね、マキ君」

 

『ボクはアキです』

 

 

 今日の収録が終わって、ボク達は帰路に立つ。

 

 本当はアイさんの息子であるアクアさんと話すっていうミッションも叶えたかったのだが、彼の顔色が悪かったのでやめた。

 やはりアイさんの姿を見るのは衝撃的だったのだろうか。

 アクアさんを不調に陥れた原因が喜ぶのは不謹慎だが、それだけボクがアイさんに近づけているというのは器冥利に尽きる。

 

 正直なところ、ボクもアイさんと同じぐらい嬉しかった。

 

 

「あ、そろそろ時間だし、体返すね」

 

 

 ずるりと体から何かが抜ける感覚と共に、視界が黒に染まる。

 キラリと輝く両目の星。姿だけ似せたパチモン(ボク)とは違い、透けた体でも目が眩むとんでもないオーラ。

 

 ひゃー、なんて眩しいんだ! あまりの精神的な眩しさに目を覆うほどだ。

 

 

『サキ君、変なリアクションするね』

 

 

 アキです。10/26が誕生日の秋生まれなので。

 

 

『ごめんね、フユ君!』

 

 

 あー、はい。確かに冬みたいに寒くなる日ですもんね、ボクが悪かったです。

 

 

『変な○ッキー君だね』

 

 

 ボクはネズミじゃなくてオオカミです。

 その間違いだけは訴えられるか、怒られそうなので、勘弁してください。

 

 

 ……それで、アイさん。

 

 

『うん、なぁに?』

 

 

 怖い顔してますけど、どうしました?

 

 

『あー。そう、かなぁ』

 

 

 聞いた瞬間、背筋が凍るような悪寒に襲われた。

 

 

 あぁ、やっぱり、アイさんって幽霊なんだなって思う、異常現象。

 

 

 そう、彼女は死んでいる。

 

 

 体がなくて、今でこそ足がない以外は死んでいることを疑うぐらい、明るいアイさん。

 

 そんな彼女でも、出会った当初は本当に酷いものだった。

 刺し殺されたのか、服も体も血塗れで、目の輝きも弱くて本当に幽霊だと本能的に感じる姿をした人? だったのだ。

 

 ボクに前世の記憶がなければ発狂していたかもしれない。

 ……いや、前世の記憶だけではあの恐怖体験は乗り越えられないか。

 ボクが狼男で、聡明さんの器候補じゃなければ、きっと彼女から逃げていたに違いない。

 

 

 そんな幽霊な彼女の肉体(うつわ)として付き合ってきたからこそ、彼女の嘘はある程度、見抜けるつもりだ。

 

 アイさんは絶対に悩んでいる。間違いないと確信している。

 

 

 だからこそ足を止めて、アイさんの目を見る。

 その目には暗くなっていく夜空の星よりも美しい星が輝いていた。

 

 

『今日の現場でアクアを見てさ……気づいちゃったんだ。私が死んじゃった時、あの日のことは終わってないって』

 

 

 やがて、ボクの視線に負けたアイさんは観念して話し始めた。

 

 

『寂しいけどさ、あの子達も小さかったし、すごく怖かっただろうから、忘れられていてもおかしくないかなーって、思ってたんだ』

 

 

 でも、幼い記憶でも衝撃的なことは忘れられませんよ。

 

 

『うん。ウチの子、私に似て天才だから』

 

 

 才能と記憶の忘却は関係ないですけどね。

 

 それで、気づいた内容とは?

 

 

『アクアは多分だけど、私を殺した犯人に復讐しようとしてると思う。リョースケ君は死んでるから、アイツ……情報提供者の方かな。それが私の為なのか、ルビーの為なのか。自分の為なのかまではわからなかったけど、そんな気がしたんだよね』

 

 

 確かに、影のある少年って印象がありましたもんね。

 でも、母親を亡くしたのですから暗くなっちゃうのもおかしくないのでは?

 

 

『それはそうかもしれないけど。でも、間違ってないよ』

 

 

 すごい自信ですね。

 

 

『まぁね、私はあの子達のママだから。だからこそ、アクアにもルビーにも、復讐なんてしないで、幸せに生きてほしいよ』

 

 

 そうなんですか。

 アイさんはアクアさんに復讐をしてほしくないと。それが望みなんですね。

 

 

『一緒にいたいとか、全部の成長を見たいとか、抱きしめたいとか。望みって言われると他にもいっぱいあるけどね、欲張りだし。でも、愛してるのは本当だから、2人には幸せになってほしいって気持ちが強いかな』

 

 

 そう言って目を細めるアイさんは、母親らしい顔をしていた。

 

 本当に眩しい人だ。だからこそ、ボクは誰もいない夜道で口を開く。

 

 器は無口であれ。そのルールを守るために機械音声を使っているが、今は1人。例外でいいだろう。

 

 

 

 

「大丈夫ですよ、きっと大丈夫」

 

 

 

 

 主人の願いを叶えないで、何が器か。

 それに、秘密警察犬(オオカミオトコ)にとって、人探しなんてお遊戯のようなものだ。

 プロでもない上に、犯人を見つけていない少年の復讐を阻止するのは簡単である。

 

 

「きっと、アイ様(・・・)の願いは叶いますから」

 

 

 

 

 だってボクは、アイさんの引き立て役(うつわ)なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──その日の夜、ある場所で狼の遠吠えが響いたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ザザザッ。

 

 ある朝。とある家のテレビにて、ニュースが放送された。

 

 

『昨日、住宅街で起きた火事。午前2時に近所の人から消防に通報がありました。火はおよそ1時間半後に鎮火されましたが、焼け跡から1人の遺体を発見。遺体はこの家に住む男性であることが──』

 

 

 

 

 

 




アキ君
本名は篠塚(シノツカ) 愛器(アキ)。とあるきっかけから自分の名前が好きになった。
秘密警察犬の遺伝子を胎児の時に注入されて育った人工狼男にして、アイの器になるために日々精進する男の娘。
因幡聡明の器候補だった少年の記憶をメインにしているが、狼人間の遺伝子のごった煮なので、様々な狼人間の記憶を読み取ってるだけ。
これを転生と呼ぶかはあなた次第。この世界にはアキ以外の狼男がいないので、これからも彼以外の狼男は出てこない。

アイさん
死亡前はアイドルで双子のママ。現在は幽霊。
アキが引っ越した先のマンションの玄関で血塗れで佇んでいた。
地縛霊だったが、アキの努力で地縛霊は卒業している。
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