特別な彼女の引き立て役Aです   作:大森依織

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本文は大体7000字以上、後書き1000字以上。
本編最終話なので長めです。よろしくお願いします。


第二章は始まらない

 

 

side.アイ

 

 

 

 やめてほしい、という言葉すらも制限されていた。

 

 制限された言葉を言った瞬間に強制交代する、動いてもダメ。などなど、他にもダメやら禁止やらと制限で雁字搦めだったのだ。

 そんな中で遠回しに言うのは難しいというか、無理があったね。

 

 

 ──あーあ。私が見ていることをアクアは知っているのかな。

 

 

 緊張した面持ちでありながらも、慣れた手つきで注射針を向ける我が子の姿。

 声も届かず、何もできない。このまま見てるだけ。あと少しで全部が終わってしまう。

 

 いつもならあっさり憑依できても、今は満月。狼男の力が増した状態のアキから抵抗されてしまえば、それも叶わない。

 

 いやいや、それはダメでしょ。

 

 拒絶したままのアキの体に触れて、無理矢理中に入ろうとした。

 

 その、瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

「その動き、ちょっと待ったぁっっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 扉が勢いよく開き、アクアに向かってルビーが突進してきた。

 アクアとルビーが縺れるように床に転がる。

 転んだ衝撃により、アクアの手にあった注射器が部屋の隅まで飛ばされた。

 

 突撃されたアクアは唖然としており、ルビーに腕を掴まれてされるがまま。

 ほんの数秒間2人は固まったものの、先に怒鳴ったのはルビーだった。

 

 

「バカ、本当にバカ! 前世は医者(せんせー)の癖に、どうして命を奪う方に加担してるのよっ!」

 

「お前、バカって。俺はアイを生き返らせるために……」

 

「それでできることは私の友達を殺しちゃうことだけだよ! お兄ちゃんがせんせーだっていうのなら……私の友達を、奪おうとしないでよ」

 

 

 アクアは抵抗しようとしたものの、ルビーの泣き顔を見て上げた手を静かに下した。

 アレが噂の泣き落とし。私がいない間にも立派に育ってて凄いものだ。

 

 ちらりとアキの方……いや、私かな。こっちに視線を向けたルビーが口を動かす。

 

 

 ──ママ、お願い。

 

 

 うん。娘にお願いされたら、尚更私が頑張るしか、ないよねぇ。

 

 

 

 

『ねぇアキ君、もう諦めない?』

 

【確かに、アクアさんにはもう、あの注射器は必要なさそうです】

 

 

 おいおいと泣いているルビー達を眩しそうに見つめ、アキ君はゆっくりと立ち上がる。

 

 残念ながら、彼はまだ諦めてなさそうだ。

 それもそうか。こんな言葉で諦めてたら、アキ君はこんなことをやらかしてないし。

 

 

【ルビーさんは強いですね。少し相談に乗って、力になっただけである程度自分で立ち直ってしまった】

 

『自慢の娘だからねぇ』

 

【アクアさんも強いです。ルビーさんとぶつかったら、納得できてなかった気持ちも感情も……全部飲み込んだ】

 

『そりゃあ、私の息子だもん』

 

【でも、ボクはそこまで強くないみたいです。ごめんなさい】

 

『それは……うん、私も同じだよ。だからここまで拗れちゃった』

 

 

 アキ君は私に似てるなって思う子だった。

 

 お父さんは一生刑務所から出れないから顔も知らず、お母さんからは『化け物』だって言われて拒絶された。

 そんな話を聞いてから、私は彼と自分を重ねて見るようになっていた。

 

 幽霊と狼男で傷を舐め合っているなんて、世界中探しても私達ぐらいじゃないかな?

 それをアキ君も黙認していたから、私は彼に甘え切っていた。

 

 彼は前世も今世も14歳を超えたことのない子供だというのに、甘えてしまったのだ。

 本当は甘えちゃいけなかったのに、優しい男の子に甘えてしまった。

 

 だから私がどうにかしなきゃって思ったんだけど、人付き合いって難しいね。

 結局、ルビーとアクアを巻き込んでここまで来ちゃったもん。

 

 

【アイさん】

 

『何ー?』

 

【ボクは後悔のない終わり方をしたいです】

 

『うん、いいことだと思うよ』

 

 

 私が勧めた話だし、それを否定するつもりはない。

 私も良い人生だったーって終わってみたかったよ。

 ま、刺されて終わるっていう最後も私らしいけどね。

 

 

【でも、それって難しいですね】

 

『じゃあ、頑張って生きるしかないねぇ』

 

【幽霊のアイさんに言われるとは】

 

『君は幽霊(わたし)よりも酷いじゃん。後悔の亡霊になってるもん』

 

【……確かに、ボクは狼男っていう亡霊に取り憑かれてるのかもしれません】

 

 

 アキ君は話ながらも前に進む。

 

 

【人の過去も記憶も情報の全てを暴くこの力は、母の言う通り『化け物』の力で。本当は、復活しちゃいけなかった力だったのでしょう】

 

 

 目的地はもちろん、注射器がある場所。

 アクアが『復讐が終わった』という納得を得た今、アキ君以外に必要ではなくなったアイテムがある部屋の隅へ、彼は行く。

 

 

【だから、満月の日が嫌いです。この尻尾と耳がお前は化け物だって言ってくるみたいで】

 

『私は可愛いと思うよ?』

 

【人は自分と違うモノは拒絶しますからね。参考程度に聞いておきます】

 

 

 アキ君は少しだけ嬉しそうな顔をしながら、音声を流し続ける。

 

 

【本当は人と触れちゃいそうな場所が嫌です。触ったり匂いを嗅いでしまったら、彼らの情報を取得しちゃって、申し訳なくなって……偶に眠れなくなるんですよね】

 

『ライブとかも実は苦手だったりする?』

 

【触れなければ情報は取得し難いですし、満員電車ぐらいの距離じゃなければ大丈夫ですよ】

 

 

 確かに、アキ君はルビーやアクアの前だと気を使って『普通』っぽい格好を装ってるけど、日焼け対策かなって聞きたくなるくらい露出を控えてる子だ。

 握手とかも絶対に布越し。そのお陰でアキ君の肌は白っぽく、私が憑依したら更に色白美人になるのだ。

 

 

【後悔とか、良い最後とか理由をつけてますけど……本当はただ、狼男の力を消したいのかもしれません】

 

『狼男の力を消したら、アキ君が消えちゃうよ』

 

【ボクごと、狼男の力を無くしたいんですよ。そうすればふとした時に聞こえてくる銃声も、後悔も考えなくて済むから】

 

 

 アキ君は私のせいでずっと過去に向かって(後ろ向きに)頑張ってきてしまった。

 そっちに行っても、行きたい場所には戻れやしないのに……後ろ向きに全力を出すようになってしまった。

 

 これも、私が成仏しようとして、それを手伝ってもらったせいかな。

 

 

『要するに、アキ君は狼男の力が嫌なんだよね?』

 

【そうですね。あってよかったことなんて、復讐を代行できたことぐらいですし】

 

『じゃあ、少しでも『あってもいいか』って思ってもらうしかないね』

 

 

 アキ君には今まで、私の後ろ向きな行動──『心残り解消』にばかり付き合わせてしまった。

 

 アキ君って、本当に私に一度も怒ったことがないんだ。

 何しても気をつけてくださいねって笑って、名前を間違えてもアキですって言うだけで。

 

 もしも私が生前に会ってたら甘え過ぎてダメになりそうだなって思うぐらい、優しい子。

 それと同時に、自分の力で人の情報を読む度に気にし過ぎる繊細な子でもある。

 

 だから、常に情報を読んでしまう今の状態に耐えられなかったんだろうな。

 お母さんに『化け物』って言われた言葉も本当だから、少しでも排斥されそうな要素を消したくなった。

 

 人とは違うって、結構辛いもんね。

 

 私は幽霊だけど悪霊ではないつもりだからね。お世話になってる君を縛るつもりはない。

 これも嘘じゃないつもりだよ。私は嘘ばかり吐いちゃうけどさ。

 

 ──前に進めるようにしたら、今度はちゃんと信じてくれるよね?

 

 私は改めてアキ君の背中に手を触れた。

 狼男の力が強くなったアキ君の抵抗力は強くて、手から全身へと激痛が走る。

 

 幽霊に痛覚なんてないから、この痛みは存在の危機的な痛みなのかな。

 いつもならこんな形での成仏なんて嫌だし、やめてるところだけど、今日だけはやめてあげられない。

 

 

「アイさん、一体何をしてるんですか!?」

 

 

 アキ君が音声を流すのも忘れて、声を荒げる。

 

 

『んー、そうだねー。今までお世話になった幽霊から、ちょっと前に進むお手伝いー、的な?』

 

「変なこと言ってないで手を離してください! そのままやってたら成仏するかも──」

 

「『いつ成仏するかわかんない私より、生きてる君の方が大事だよ』」

 

 

 よし、何とか体に入れたぞー。

 

 アキ君は狼男の力をコントロールできないせいか、抵抗が強くて大変だけど、このぐらいならまだ平気だ。

 全身を針でひたすら突き刺されてるみたいに痛いし、生命力が削られてる気がするけど、動かせないことはない。

 

 

「『アキ君、乗っ取ってるのにごめんね……涙、止まんないかも』」

 

 

 私の痛みとリンクしてしまったのか、アキ君の目から涙が溢れ出てきてしまう。

 このままだとアキ君の顔がぐちゃぐちゃになっちゃう。早くしなきゃ。

 

 アキ君の代わりに注射器を拾い、流し台へと移動する。

 

 

「まさか、アイさん……ダメです、それを捨てるなんて……!」

 

 

 そこで初めてアキ君が子供のように駄々を捏ね始めた。

 妨害が激しく、体が2歩進んで1歩下がる不思議な歩き方をしてしまう。

 

 

「『うぉーっととと、酔っ払ってるみたいな気分。でも、負けないぞー』」

 

「くぅっ……ボクより、体の使い方上手いなんて」

 

 

 あ、やったー。褒めてもらえちゃった。

 

 でもさ、本当に満月の日の狼男ってすごいんだね。

 痛みにさえ目を瞑れば、空中3回転とか余裕でできちゃいそうなポテンシャルがあるよ。

 やったら激痛で気絶しそうだからやらないけど。

 

 そんなことを考えているうちに、漸く目的地へと到着する。

 水道代を全く考えずに蛇口を捻り、注射針を流し台に向け、押し子(プランジャ)を押し込む。

 

 

「あ、あぁぁぁ…………」

 

 

 私の勝手でアキ君の希望は断たれてしまった。

 これで私もアキ君も戻れない。後は狼人間の力を抑えられるように、欲張っていくだけだ。

 

 って、言葉で言うのは簡単なんだけどね。

 

 

「『あぁっっ!!! 痛い痛いめちゃくちゃ痛い思ったよりもかなり痛いよこれぇぇ────っっ!?』」

 

「えっ、ママ!? ……ママだよね?」

 

「多分だが……あ、おい、ルビー、触れるなよ。下手に触れたら悪化する可能性がある」

 

 

 外野でルビーやアクアの声が聞こえてくるが、答える余裕がないぐらい痛い。

 これが自然に逆らうということなのかな。違うかもしれないけど。

 

 完璧で究極を望まれたアイドルとして、狼人間の力を押さえ込むなんて余裕、よゆーって思ってた時期がつい最近ありました。

 

 でもこれ、とんでもなく痛い。

 ルビー達がいなければ、アキに関わらないことならば、逃げてたかもしれない。

 

 アクアが触るなって言ってくれてたことだけが幸いかな。

 今触られたらもっと酷い叫び方をしそうだもん。これ以上みっともないのは見せられない。

 

 

「『(いった)いっ!』」

 

「アイさん、もうやめ」

 

「『やめ、ない!』」

 

 

 膝をついて、土下座みたいな姿で体を押さえ込む。

 涙で床が濡れて、顔が濡れて、口にも入ってくる。

 

 

「どうして」

 

「『私ができたことって、あんまりないからね』」

 

 

 自分の娘や息子にもできたことは少なくて、長い間幽霊に付き合ってもらった子にもほぼ無償で、私の都合に付き合ってもらっていた。

 やってもらったことは多いのに、やったことはほぼない。

 

 そんなの、ちょっと恥ずかしいじゃん。

 

 尻尾と耳を体の中へと押し戻そうとすると、涙から読み取っちゃう私とアキ君の情報や記憶、感情に飲み込まれそうになる。

 

 これ、もしかして私も狼人間の力を使えるようになってる?

 境界線があやふやになってるせいかな。情報の波が私を飲み込もうとしていた。

 

 確かに、これが何年も続いたら頭がおかしくなるね。

 親しい人や自分の情報だけでもきついのに、知らない人の情報をずっと叩きつけられるなんて、私なら耐えられない。

 

 どんどん流されてくる情報の流れを止めて、なんとか読み取れない状態にまで持っていく。

 私は元々、狼人間の力なんて持っていない。そのせいか、情報を遮断するのは思ったよりも簡単にできた。

 

 今なら、いけるかもしれない。

 

 

「『アクア、ルビー……ちょっと手、触ってもいい?』」

 

「え? うん、もちろん!」

 

「手ぐらいなら」

 

 

 手の震えをギュッと抑え込み、立ち上がる。

 すぐに差し出してくれたルビーの手と、躊躇いがちに伸ばされたアクアの手に触れた。

 

 

「あれ?」

 

 

 アキの声が口から出てきた。

 

 2人の手を握手するように触れても、情報が読み取れない。そのことに驚いたのかな。

 今までは無差別に情報を読んでたみたいだしね。

 体験した身としては、よく頭が爆発しなかったなーって感心しちゃうよ。

 

 

「『ほら、一歩、進めたよ』」

 

 

 流石にこれ以上痛みに耐えることも限界で、アキ君の体から出てきた。

 体がかなり薄くなったけど、やりたいことはやれたし大丈夫でしょ。

 

 

「何も聞こえないし、匂わないし……何も、わからなくなってる」

 

『オンオフできるようにしただけだから、使えなくなったわけじゃ、ないけどね』

 

 

 正直、もう一度やれと言われても二度とやりたくない。

 満月の夜に抵抗するアキ君の体に憑依するのは負担が強過ぎるよ。

 

 

『これで少しは生きてもいいって思わない?』

 

「ボクの手段を水で流したの、アイさんじゃないですか……死にたくても死ねませんよ」

 

『そうなの?』

 

「狼男として死ぬからこそ、意味があったんです」

 

 

 常時情報を集めている状態から、狼男の力をオンオフできるようになった。

 薬がなくなって、『狼男』の要素だけ殺す方法は無くなってしまった。

 私がいるから体ごと死ぬのは考えていないし、もう打つ手はない。

 

 

 そう説明したアキ君はアクアとルビーの手を握ることをやめ、力無く笑った。

 

 

「でも……あんなもの、なかった方がいいのかもしれませんね。なかったら、最初からこんなことをしようとは思いませんでしたし」

 

『じゃあ』

 

「はい、もう少し……頑張ってみようと思います。前に進まなきゃ、いけない。そうでしょう?」

 

 

 狼の亡霊に完全に解放された訳ではない。

 それでも、少しは付き合い方が見つかったのだろう。

 アキ君は憑き物が落ちたかのように、綺麗な目をして笑っていた。

 

 

「ううぅ、良かった……アキが止まってくれて良かったよぉ」

 

 

 ひと段落したのを察したのか、ルビーがアキに向かって飛び込んだ。

 側にいたアクアは呆れるような顔を見せつつも近づいてきた。

 

 

「その、迷惑かけた。それと、お前の思い通りにいかなくて良かったと思ってる」

 

「お兄ちゃん、素直に良かったって言えばいいのに」

 

「……こいつとはそこまで仲良くない」

 

 

 どこか影があったアクアも薄らと笑みを浮かべていて楽しそうだ。

 うん、もう大丈夫そうだね。

 

 

『アクアとルビーも楽しそうだし、アキ君も思い直してくれたし……うん、本当に良かった』

 

「アイさん、ちょっと怖いこと言うのはやめてくれませんか?」

 

『え、何が?』

 

「ここでアイさんが成仏しちゃったら、2人になんて言えばいいのか」

 

 

 あー、そっか。今の言葉、今にも成仏しそうな幽霊の言葉だったね。

 

 

『望まれてもまだ成仏できなさそうかなー。やり残しノート2つ目作りたいぐらい、見たいこととかどんどん積み重なってくし』

 

 

 アクアとルビーの学校生活も見たいし、高校の入学や卒業、大学生姿。

 社会人としてどんな大人になるのかな? どんな相手と結婚する?

 孫の顔だって見てみたいし、私ができなかったこともできる2人を見ていきたい。

 

 

『悪いとは思ってるんだよ? でもさ、まだまだ、付き合ってもらってもいい?』

 

「勿論、ボクは貴女の『器』ですし……それに、アイさんを放っておいたら大変そうだ」

 

『何それ。酷いなぁ』

 

 

 

 

 ──私とアキ君が出会ってから今までは後ろ向きで歩いていた日々。

 

 でも、今日からはルビーやアクアを見守りながらも、少しは前を見て歩いていけそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side.アイend

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side.アキ

 

 

 

 川の側を歩いていたせいか、制服に桜の花弁をつけてしまっていた。

 肩と腕だけだろうか。ブレザーを脱いで確認したものの、背中には特に何もついていない。

 

 

 ──あの満月の日から1年と少しが過ぎた。

 

 

 未だにあの時のことが正解だったのか、間違いだったのかはわからないけれど、それでも悪くはないかなって日々を過ごせている。

 

 狼男の能力で人とあまり関われなかったのも、ルビーさんやアクアさんの力も借りて、少しずつ改善してきた。

 未だに他人に触られるのとかは怖いけど、それでも全く無理というほどでもない。

 

 一歩ずつ、遅くても前に進めてるんじゃないかなと思っているのだ。

 

 

『あ、扉! 扉が開いたよアキ君!』

 

【出てきたみたいですね】

 

 

 アイさんの喜ぶ声に、待ち人が来たことを悟った。

 見慣れない新品の制服を来た2人の男女。

 

 

「『きゃー。アクアの制服かっこいいよ! ルビーも可愛い、制服ちょー似合ってる!』」

 

 

 アイさんが思わず大興奮してボクに憑依し、2人に抱きついた時点でお察しであろう。

 高校1年生となったアクアさんとルビーさんの家の前で、ボクとアイさんは待機していたのだ。

 2人の制服姿を着て学校に行くのをどうしても見たい、という要望を叶えたのである。

 

 

【ルビーさん、リボンがちょっと歪んじゃってますね。整えます】

 

「あ、相変わらず細かいなぁ……アキは」

 

「こいつはそういう奴だろ」

 

 

 アクアさんもぞんざいに扱う程度には仲良くなってると思うし、ルビーさんとは「ズッ友だよ!」と親指立ててグーサインを送るぐらいには良い関係を築けている。

 

 

【アイさん、そろそろいかなきゃボクが遅刻しちゃうんですが】

 

「『ずっと見てたいのに』」

 

「写真か帰りに会えばいいだろ」

 

「『はぁ……アクアはわかってないよ。親としては《入学式》っていうのが大事なんだよー?』」

 

 

 楽しそうに話すアイさん達を邪魔したくないが、残念ながらボクは中学3年生で今年が受験生。

 高校は2人と同じところに行くので受験の心配はしていないが、それでも内申点は大切である。

 

 ごねるアイさんを説得して、なんとか遅刻前に中学校への道へと戻ることに成功する。

 

 

「あっ、そうだ! ママ、アキ!」

 

 

 すると、背後でルビーさんが大きな声で呼び止めてきたので、ボクらは振り返った。

 

 

「いってきますっ!」

 

「……いってきます」

 

 

 

 ルビーさんが元気良く、アクアさんは視線を逸らしながらもそっけなくそう言って。

 

 

 

「『いってらっしゃーい!』」

 

【お気をつけて】

 

 

 

 

 ──こんな日々が続くのならば、あの日、選んだのは間違いじゃなかったなって、本心から思えたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

復讐劇(第二章)は始まらない……end




以上全10話、これにて原作前本編を完結させていただきます。
以下、キャラの設定など。

アキ
4感全てで情報が得れるようになったせいで、コントロールができずに常時情報を得てしまう状態だった。前世の記憶も本当は『狼男の遺伝子情報から読み取った記憶』であり、厳密には転生ではない。
そのせいで『狼男』である自分が大嫌いで、狼男の自分を消したいって気持ちと前世の後悔がここまで突き動かしていた。
アイのお陰で能力を制御できるようになり、少し前向きになったので、これからも器としてアイの補助(引き立て役)を続けるらしい。
ルビーとはズッ友だし、気遣い狼なのでアクアとも良い付き合いができてる。ただ、アクアの色恋沙汰だけは笑顔で避けるようだ。(親友ポジ堅守)

アイ
アキとは類似点もあって重ねてたところがある。そのせいで強く言い出せず、結局アクアやルビーが巻き込まれるまで頑張れなかった。(最後は頑張った)
今は双子の成長や学校生活を間近で見れて幸せ。
近親相姦はまぁ反対しないけど、刺されるのは私だけで十分だし、ママは心配です……が親の心情。

アクア
終始脳を壊されてた人。自分の手で復讐してないのが自分の中でうまく納得できずに暴走したが、最終的に飲み込んで抜け殻にはならなかった。
復讐も終わったのに、妹がさりなちゃんという別の問題が始まって頭を抱えている。
この後の恋愛競争にルビーが参戦するが、頑張れ色男。恨むなら父親の血と前世の行いを恨むのだ。
復讐劇の第二章始まらないが、ラブコメ時空の第二章は始まるかもしれない。主人公は君だ!

ルビー
本作の清涼剤。アクアが闇なら彼女には光であって欲しかったので、アキのカウンセリングで立ち直ってもらっていた。
なお、10話目でアイが頑張らない場合、『圧倒的☆光属性』に覚醒したルビーがアキを男の娘アイドルとして沼に突き落とし、アクアの情緒を破壊していた世界線があった。(が、流石に没にした)
アキとは友達だけど、異性の対象ではない。
推しであるママが旦那さんになるのは脳が破裂するとのこと。(血の繋がった兄はいいのか?)




1巻を読み終わった勢いで書いていた1話から、何とか着地できました。
キャラ崩壊のタグをつけていましたが、こんなキャラじゃねぇっていう所が本当に多くあったかと思います。
アイのキャラが掴みきれてないから『双子の幸せを願っていてほしい』という願望等も込めたり、『こうであって欲しかった』という希望も込めてますし、かなり見苦しいと思ったことも多かったかもしれません。

とはいえ、無事に着地し第二章が始まらなかったので、個人的には満足しました。

拙いところは大量にあったと思いますが、それでも読んでくださった皆様に感謝を申し上げます。
後書きも含めてここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!

追記:続きました!
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