ゴチャゴチャしていたあらすじを整理しました。
いつも閲覧、感想、お気に入り、誤字報告など、ありがとうございます。
最後になりますので、感謝を込めて最初に記載させていただきます。
side.かな
どうやら『新生B小町』はアイ率いるB小町を超える運と素質があったらしい。
宮崎の件から6年経った今では『B小町』というアイドルを知らないという人の方が少ないぐらい、有名になった私達。
国民的アイドルと言っても過言じゃない『B小町』がスキャンダルという炎に燃やされることなく先週の卒業ライブまで走り切れたのは、奇跡と言っても過言ではないと私は思う。
どうしてかって?
それはね、B小町3人のメンバーのうち、顔役のセンターが既に大ポカをやらかしてるからよ。
「あのバカ、なーんで卒業ライブも待たずに妊娠してるのかしらねー? 3ヶ月目とかギリギリじゃない、盛ってんじゃないわよ」
「あはは……うん。卒業ライブ、間に合って良かったねぇ」
「ええ、間に合わなかったら私もMEMちょも仲良く炎上よ。危機管理がなってないし、マジでありえないわよ」
「今の時代、多様性だからなのかなぁ」
「多様性って、そんな便利な言葉だったかしら?」
和食の美味しいお店の大きめの個室にて、私はB小町のメンバーだった1人──MEMちょと一緒に少し早いディナーを楽しんでいる。
一応、今日の集まりはB小町の打ち上げなので、この部屋には5人集まる予定なのよ?
でも、アキは仕事だし、アクアも教授に呼ばれて遅れているらしく、私とMEMちょ2人ってわけ。
……え? 1人足りない?
意図的に私の思考から省いていた、あの色ボケ女は『おにいちゃんと一緒に来たいから』なんてふざけた理由で遅刻してるので除外よ、除外。
アイドル活動が終わるまでは子供を作るなと言っていたのにも関わらず、卒業ライブの時には妊娠してたのだから、アレに『ルビー』なんてキラキラした名前は勿体無いわ。
私に不思議な力があるのなら、名前を取り上げて色ボケ女って改名してやりたいぐらいよ。
むかっとくる気持ちを緑茶で洗い流し、私は天ぷらに舌鼓を打つMEMちょに視線をやった。
「MEMちょはさー。あの双子カップル、今まで通り隠せると思う?」
「どうだろ……ここまで頑張ったんだから、最後までいってほしいけどねぇ」
言外に「無理っぽいよね」と笑うMEMちょに、私は頭を抱えるしかない。
本当に、卒業後に『あのB小町のメンバーの1人が〜』みたいな記事でスッパ抜かれるのだけは、勘弁してほしいんだけど。
こればっかりは運よね。私もMEMちょも、もう苺プロから独立するんだし。
「かなちゃんはフリーで女優さんを続けるんだっけ?」
「そうよ。仕事は結構貰えてるし、しばらくは1人を満喫するつもり。そういうMEMちょはアイツのところでお世話になるんだっけ?」
「そうだね、アキ君の所をメインに活動することになるかな」
B小町が解散した後の進路は見事にバラけた。
アクアが元俳優の医者っていうルートを行くらしいと聞いたルビーは、何故か猛勉強の末に看護師の資格をゲットした。
将来は2人で病院を回すんですって。頑張れとしか言えなかったわ、ええ。
……で、私、有馬かなはというと、当初の予定通り女優として独り立ち。
MEMちょはアキが作った会社の配信者部門の方で活動するらしいわ。
「アキのヤツも随分出世したわよねー。
「あぁ、日本で1番稼いでいる大学生社長ってヤツだよね。すごいよねぇ」
なんてこともないように笑うMEMちょだが、私は知っている。
アクアとルビーもバカップルだけど、アキとMEMちょもまたバカップルなのだ。
「そういえば、アンタとアキって付き合って何年目なの?」
「何年って言われてもなぁ……私とアキ君、付き合って
「……え?」
「?」
現在、唖然とした私の前にはきょとんとした顔をしているMEMちょがいる。
これがドッキリなら、どこかにカメラとか何かが仕組まれているはずだ。
ぐるりと周囲を見渡したが、それらしいものはない。
ドッキリですと書かれた看板を持ったアキが隠れている気配すらない。
ドッキリなんだから事前報告があるはずだし、ないのならドッキリじゃないだろうと言われたら、それまでなんだけども。
ドッキリなのか本気なのか、私の心の平穏の為にも確認しなきゃいけない。
「この前、MEMちょが琥珀で、アキがターコイズのキーホルダーつけて、お互いの目の色〜とかやってたわよね?」
「うん、今も持ってるよ」
そうよね。レッスンとかの合間にそれぞれ時間差で自慢されて、私の口が甘い砂で占領されたもの。
「アンタ達、ご飯食べる時ってどうしてたっけ?」
「私が食べたいのとかはアキ君も頼んでくれて、半分こしたよ」
アキのやつ、迷ってたら平然と察知して注文するわよね。デート相手として、羨ましい察知能力よね。
「私の前に現れた時にさらりと恋人繋ぎして、腕組みながら歩いてきた相方は?」
「アキ君かなぁ」
この前、見せつけられてチベットスナギツネを私の顔に召喚しちゃったもの。心当たりしかないわよね。
「あかねと私、アキとアンタで食べに行った時に、2人で無意味に名前を呼び合ったりしてたよね?」
「してたねぇ」
してないって言ってたら、頭を張っ倒してたわよ。
目の前で「メームさん」「なぁに?」「呼んでみたかっただけです」「そっか〜」とか、実際にされると頭がおかしくなるんだからね?
ブラックコーヒーが砂糖マシマシになるような、私のどうしようもない気持ちも考慮して欲しいわ。
「あんなことしてんのに、付き合ってないの!?」
「それ、ルビーにも言われたけど。そんなにおかしいかなぁ」
「……」
ダメだこの30代。完全に狼男に騙されている。
絶対に手を握るところから慣れさせて、付き合ってなくても手を握るぐらい当然──みたいな刷り込みをしたでしょ、あのムッツリ。
ニコニコ羊の皮を被って笑いながら、狼みたいに目を輝かせてる
……ん? おかしいわね。
2人しかいないはずの個室なのに、いつの間にか3人目が見えるんだけど。
「あ、アキ君。来てたんだ」
「はい、お邪魔してます」
あぁ、私の気のせいじゃなかった。
宮崎の件から声が一時期、出なくなっていたらしいのに、MEMちょと二人三脚で練習して、今ではすっかり喋るようになったアキ。
その成長にほっこりすることはあるものの、目の前でイチャイチャするのは目に毒過ぎる。他所でやれ。
バカップルのせいで頭が痛くなるような錯覚に陥りながらも、注文していた天ぷらを食べる。
1口目は美味しいんだけど、2口目がねぇ。全部甘味で侵食されるんだろうな。
「わ、このサツマイモの天ぷら美味しい。アキ君も食べてよ」
「え、いいんですか。じゃあいただきます」
はい、目の前であーんとかしだしたバカップル(仮)のせいで私の口の中が砂糖まみれです。
天ぷらも台無しです。あーあ。口直しに緑茶でも飲んどこ。
「はぁ……MEMちょにも言ったんだけど、何でそれで付き合ってないワケ?」
「え、どうして付き合う必要があるんですか?」
「付き合う必要があるのかって……私としてはMEMちょの事、大事にして欲しいんだけど」
「そんなの、改めて言われましても──」
きょとんとした表情で首を傾げるアキは、びっくりするぐらいMEMちょにそっくりだ。
ちびちびと緑茶で甘さを中和していたら、目の前に座っているアキが心底理解できないと言いたげな顔で、とんでもないことを宣った。
「──自分の妻なんですから、大事にするに決まってるじゃないですか」
「ブフッ!?」
「わっ、緑茶が飛んできたんですけどっ」
「ごほっ、げほっ。いやいや、そんなの。ビックリしない方がおかしいでしょ!?」
お付き合いとかすっ飛ばして結婚してたの!?
聞いてないけど、そんなの聞いてないんだけど!?
「いつ結婚したのよ!?」
「3日前に役所に届けてきたよ〜。今日はその報告もしようかなぁって」
呑気なMEMちょの言葉通りなら、アイドルを辞めてから4日で結婚したのか、この2人。
ルビーの妊娠もビックリしたけど、MEMちょの結婚もビックリしたわ。驚き過ぎて心臓が潰れるわ。
「あー、心臓に悪い。お願いだから、私の心臓の為にも段階を踏んでくれない?」
「いやぁ、アキ君が高校生の時から同居してたし、付き合う期間とかもう良いかなーって」
「えぇ……」
やけに一緒に帰るなとは思ってたけど、数年前から同居してたの……?
アキが猛アピールしているのも知っていたし、その前提知識もあって疑問に思わなかったから、すっかり騙されてたわ。
「ほぼ付き合ってるような生活をしてたと……よくもまぁ、今までパパラッチとかに捕まらなかったわね」
「アキ君、殆ど女装してくれてるし。まぁバレないね」
「あぁ、そう……」
MEMちょの横へと視線をズラせば、今日もパンツスタイルでありながらも女子大生に見えるアキの姿が目に入る。
高校ぐらいから成長期に入ったせいか、アイにそっくりだった顔も『言われてみれば似てるかもしれない』ってレベルまで落ち着いていた。
身長も私達より高くなってるけど、女装が似合うのはそのまま……いや、中学の時よりも磨きがかかってるかもしれない。
そういう目も養ってきたと自負のある私でも『アキが男』という前提知識がなければ、女装を見破れないのだ。
身近な人間でも騙されそうになるんだし、パパラッチ如きが狼の嘘を見破れるわけがないか。
なんか、一気に疲れてきて、色々と気になることもどうでも良くなってきたわ。
「はぁ……まぁ、その。お幸せに」
「ありがとうございます、有馬さん」
「かなちゃん、ありがとう〜!」
嬉しそうにお礼を言ってるアキとMEMちょは別に、悪い奴じゃないし、一応、祝福しておこう。
それにしても、とんでもない話の連続でアクアもルビーも来てないのに、疲れたわ。
私、このまま打ち上げして体が持つのかしら……
side.かなend
☆★☆
side.アキ
有馬さんもビックリさせて、後から来たアクアさんとルビーさんも驚かせてから、打ち上げが改めて始まった。
開始早々、有馬さんがルビーさんに「本当に3ヶ月目なの?」と追求し始めたので、巻き込まれないように距離を取る。
じゃあメムさんの方に合流するのかというと、こちらもアクアさんに「やるねぇ」とおじさんのような絡み方をしていたので、ボクは2つの震源地から少し距離を取っていた。
5人中2人ペアを2組作られたせいで今はボッチで手持ち無沙汰だし、良い機会だ。脳内で思い出を振り返ってみようかな。
──アイさんと一緒の月日を思えば6年なんてあっという間だと思っていたけど、この数年は不思議と長く感じた。
高校の面接のせいでボクが声が出なくなっていることがメムさんにバレてしまい。
あれよこれよと心配されて、声が出るようになるまでサポートする! とメムさんに押し切られた1年目。
……で、悪い狼は申し訳ないと思いつつも『これはチャンスかも』と考えたわけです。
声が出せないのはストレスのせいかもしれない。自律神経を整えるのがいいって聞いたよ。
そんな言葉からよく寝るように、食べ物はきちんと食べるようにと、メムさんから色々と気を遣われるようになった。
人に触れると落ち着くらしいからと手を握られたり、色んなことを試してくれたメムさん。
厚意でメムさんが動いてくれていたのに、ボクはそれに
そんな悪どい狼は5年以上の時間をかけて、ゆっくりじっくり、声を取り戻すのを理由に距離を縮めていった。
その結果、3日前に交際をすっ飛ばして結婚に漕ぎつけた……というわけである。
そして、アイドル活動の方もPVからツテをゲットし、どんどんテレビに進出。
テレビや雑誌を呼び水にしつつ、動画でファンを固定化するサイクルを使って、アイドルといえばB小町と言われるところまで登り詰めた。
メムさんの夢も叶えられたし、ボクの恋愛もマスコミにバレることなく成就できたし、後は全力で幸せにすることを考えればよし……と。
ふふふ、任せてください。全力でメムさんを幸せにしてみせますので。
──なんて、誰に言っているのかわからない妄想を頭の中で垂れ流していると、メムさんが周りに向かって問いかけていた。
「あれ、そういえばミヤコ副社長は来ないのー?」
「あー、ミヤコママは社長と2人で飲むから、こっちはこっちで楽しんでーだって」
やっぱり6年という月日は長い。
ルビーさんもミヤコさんをママと呼ぶようになっているし、行方不明だった壱護さんが戻って社長をしているのはかなりの変化だろう。
高校時代にミヤコさんが悲しんでる姿を見たので、壱護さんを探し出して引っ張ってきた甲斐があるというものだ。
おかげでミヤコさんは社長という重い荷物を下げることができて、今では副社長として苺プロで活躍している。
壱護さんがげっそりしていても、ミヤコさんが元気なら問題なし。
ボクが迎えに行くまで行方不明になっていた分まで、会社とミヤコさんに尽くしてくださいって、エールを送ろう。
「アキー、アキもこっちに混ざりにおいでよ!」
「MEMちょ、そこで他人事のように見学してる狼を連れてこい。巻き込んでやろう」
「はーい。行こう、アキ君」
ルビーさんとアクアさんに呼ばれて、メムさんに連れられたボクは戯れ合う3人の中に混ざる。
「うぅぅ、私が凄いアイドルになれたのも皆のおかげだよぉ〜」
「ルビーったら、今日はやけに素直──」
「まぁ、1番感謝を伝えたいのはおにいちゃんだけど」
「いや、ここまで来れたのはルビーの力だよ」
有馬さんの感動の言葉をキャンセルして、ルビーさんとアクアさんがお互いに大好きな気持ちをぶつけ合い始めた。
それを黙って見ている有馬さんではなく、怒りで拳を震わせて、目を大きく見開く。
「あの双子、ぶっ飛ばしてやろうか?」
「まーまぁまぁ。かなちゃん落ち着いてー。私はかなちゃんにもルビーにも皆にも感謝してるよー。ありがとう」
「MEMちょ……私の味方はMEMちょだったのね」
「あはは、よしよし」
右手で有馬さんの頭を撫でるメムさんはきっと、いいお母さんになるだろう。
ただ、それとこれとは話が別なので、ボクもメムさんの左隣に座って目でアピールしてみた。
「……」
「ふふ、アキ君も頑張ってたよね。ありがとう」
意図を察してくれたメムさんが、優しく笑いながら頭を撫でてくれた。
有馬さんの呆れるような視線を無視すれば、ボクは大満足です。
「あれ、この匂いは……?」
突然、鈍ったはずのボクの鼻が懐かしい花の香りを拾った。
扉を見ても誰かが入った様子はない。
なら、この匂いは何だろうかと周囲を見渡せば、窓から紫色の光がふよふよと飛んでいた。
光はゆったりと宙を舞い、時間をかけてルビーさんのお腹の中へと入っていく。
「カァ」
ほんの僅かに拾った鳴き声の方へと目を向けると、窓の側に烏が一匹、佇んでいた。
どうやら、昔の約束を果たしに来たらしい。態々わかりやすい姿を見せて、律儀だなぁと笑ってしまう。
「アキ君、何かあった?」
「……いや、終わったんだなぁって思いまして」
「うん。終わったねぇ……」
しみじみと呟くメムさんとは、きっと別の意味なのだろうけど、両方共無事に辿り着いたのだ。
ある日の扉の前で、独りで寂しく倒れていた幽霊なアイさんを見つけてから、
雨の日にメムさんに一目惚れして、B小町の皆さんのほんの少しの力になりながらも、トップアイドルに至るまでの道を同行させてもらった6年ほど。
今では薄れてしまった前世で、ボクはとある人の器という存在になることに執着していた。
──もしも、
とある人の器にはなれなかったけれど、ちゃんと『特別な彼女達の引き立て役』の
──こうして、ある狼人間の
……というわけで、本作はここでおしまいです。
この作品も完結させてあげることができないんじゃないか、と思うこともあったので、無事に完結させることができてホッとしています。
(視点変更の多いモノってかなり好みが分かれると思うのですが、UAとか、こんなに見てもらえてるとは思ってなくてとても驚きました。推しの子もキューティクル探偵因幡も、原作様は偉大ですね)
これも全て皆様がこの作品を見つけてくれて、尚且つ閲覧やその他、様々な応援をしてくださったおかげです。改めてお礼申し上げます。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
10/26追記
評価が100超えてました。初の9青バナーといい、大喜びしました。
完結後もお読みくださり、ありがとうございます!