東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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097. 悪夢の終わり

 

中央暦1640年4月22日

第三文明圏フィルアデス大陸の南

旧アルタラス王国 アルタラス島

 

 

アルタラス王国の王都であった『ル・ブリアス』の一角でパン屋を営んでいたブレッドは、一ヶ月前からルバイル強制収容所に投獄されていた。店員の若い女性が反乱分子の疑いで連行されそうになった際、アルタラス属領統治機構の職員たちに異議を申し立てた。ただそれだけの理由でブレッド自身も反乱分子として扱われ、劣悪な環境下での強制労働を強いられていた。

 

アルタラス島には、シルウトラス鉱山をはじめ、現在も採掘が可能な大規模魔石鉱山が島の南側に多数存在している。ルバイル平野の近くにも露天掘り式の魔石鉱山が数カ所存在していたが、約50年ほど前にすべて廃坑となっており、客観的に見れば現在の魔石の埋蔵量はあまり期待できないだろう。

 

それにも関わらず、アルタラス属領統治機構のシュサク長官は、ルバイル平野近くに新たな採掘場と強制収容所を設置した。そして、ブレッドのように少しでも反抗的な態度を見せた旧アルタラス王国民を連行し、見せしめも兼ねてまるで消耗品のような扱いで酷使していたのだ。

 

ブレッドのように理不尽な理由で強制収容所へ連行された人たちは、収容所での生活のあまりの酷さに耐えかね、昨晩、看守の目を盗んで収容所から集団で脱走することに成功した。しかし隣国のシオス王国へ逃亡しようとした際、皇国の新型魔獣『エビラ』の襲撃を受けてしまった。

 

別の小舟に乗っていた仲間たちを貪り喰ったエビの化け物が、今度は自分たちの小船に狙いを定め、まさに襲い掛かろうとしたとき、奇跡が起きた。

 

 

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パーパルディア皇国が史上二例目の『特殊生物を用いたテロ主導国家』、通称『特テ国』へ認定されたことに伴い、今回の『アルタラス再独立作戦』から国連G対策センター傘下の実働部隊『Gフォース』の戦力が参戦していた。

 

アルタラス島は、日本国本土や異世界初の海外自衛隊基地『ダイタル基地』が設置されているロデニウス大陸から非常に距離が離れている一方、敵対国であるパーパルディア皇国の『皇都エストシラント』からの距離は、約500キロメートル程度と非常に近い海域に位置している。

 

そのため今作戦で出撃した航空戦力は航続距離が長く、また不測の事態にも対応可能かつ特殊生物との戦闘を視野に入れたものばかりであり、通常の戦闘機は殆ど参加していない。

 

航空自衛隊所属のパイロットである神藤は、多目的大型戦闘機『スーパーXⅢ改』に搭乗していた。ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の3番艦『きょうてん』を主力とする海上自衛隊の護衛艦隊と協力し、巨大エビ型特殊生物を撃滅する任務についていた。

 

『きょうてん』の水中ソナーが例の巨大エビ型特殊生物らしき影を検知したため、現場へ急行したところ、小船に乗った人々を捕食しようとしている場面に鉢合わせた。その後方にはパーパルディア皇国軍の魔導戦列艦の姿もあり、連中がエビの化け物を小舟にけしかけていることが容易に想像できた。

 

すぐさま今回の旗艦であるいずも型護衛艦『かが』へ報告を行うと、攻撃許可と小舟に乗った民間人を保護するよう命令が下される。

 

「あの化け物エビをフライにして来い!」

 

「今回の装備は冷凍メーサー仕様なので、冷凍エビですね。フライの方は『きょうてん』の方でお願いしますよ。」

 

エビラは『スーパーXⅢ』の冷凍メーサーでカチコチに凍結され、そのまま『きょうてん』の艦首砲『ドリルスパイラル・メーサー砲』でアツアツのフライ(正確にはボイル)にされたことで、あっさりと殲滅される。

 

「このまま『スーパーXⅢ改』は『量産型ガルーダ』の部隊に合流し、島内施設への攻撃任務へ移ります。」

 

『スーパーXⅢ改』はメイン推進器であるターボファンジェットエンジンで一気に加速し、アルタラス島内上空へ突入していく。現実離れした光景に呆気にとられるブレッドたちであったが、その後やって来た巨大艦に救助されたことでようやく自分たちの状況を理解する。

 

「ルミエス様が仰られていた『その刻』が・・・遂に来たんだ!」

 

自分たちが助かったことに安堵し、また待ちに待った『その刻』が到来したことを把握した彼らは、人目もはばからず、その場に泣き崩れるのであった。

 

 

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アルタラス属領統治機構の海上警備隊に所属する魔導戦列艦隊3隻は、アルタラス島の北東海域へと急行するため、ル・ブリアス内に併設された湾港施設『ハイペリオン基地』を出撃しようとしていた。

 

ルバイル収容所の脱走者たちを追跡していた魔導戦列艦『ヒデル』やこの海域を哨戒中であったアビス隊長率いるワイバーンロード小隊が、魔信で何も連絡しないまま、突如として消息を絶ったのだ。

 

アルタラス島駐留軍の司令官であるリージャック中将は、何か事故にでも遭ったのかとも疑い、調査と救助のためにその海域への部隊の派遣を決定。基地施設内に停泊中の魔導戦列艦約20隻のうち、3隻に出撃命令を下していた。

 

「それにしても、『ヒデル』に一体何があったのでしょうか・・・。あの海域には、番犬代わりにエビラが解き放たれています。敵対勢力に強襲される可能性は極めて低いでしょうし・・・。」

 

側近である参謀の大尉がリージャック中将に話しかける。

 

「東のフェン王国に派遣していた皇国正規軍も、全滅に近い被害を出して壊滅したらしいしな。昨年にはフェン王国の軍祭で監察軍が返り討ちあったりと、ここ最近の第三文明圏は、何かがおかしい・・・。」

 

突如として指令室に緊急魔信の魔導サイレンが鳴り響く。

 

「こちら竜騎士用滑走路! 『緑色をした飛行機械』の襲撃を受け、被害甚大!! 機体表面に赤い丸を確認したことから、敵は日本国と思われます!!」

 

ル・ブリアスの東側に位置するこの平野に建設された陸軍施設から緊急連絡が入った直後、通信兵の悲鳴とともに魔導スピーカーからは大きなノイズが入り、応答が無くなる。

 

「飛行機械による襲撃だと!? まさか敵は・・・。イカン、湾内の魔導戦列艦をすべて出撃させろ!! 敵の次の目標は間違いなくここだ!!」

 

出撃準備が完了した魔導戦列艦が湾港から順次出港し始めた矢先、沖合に出たばかりの100門級魔導戦列艦『スパール』が青白い光線の直撃を受け、火柱をあげながら爆発・炎上する。

 

何が起こったのか皆目見当がつかず、唖然とした様子のリージャック中将たちをよそに、銀色のボディーを輝かせた異形の怪鳥が轟音と共に襲来する。銀色の怪鳥こと『量産型ガルーダ』は、機首両端に設置されたハイパワーメーサービームキャノン砲から青白い光線を放ち、出撃中の魔導戦列艦隊を次々に撃破していく。

 

「あれはまさか・・・、第二文明圏や中央世界で使用されている飛行機械か!? 急ぎ皇国本国へ『日本国の飛行機械から襲撃を受けている』旨を連絡しろ!! 緊急回線を使用しても構わん!!!」

 

リージャック中将の命令を受けた通信兵たちは魔導通信機と魔導映像通信機を起動し、緊急魔報(電報の魔法版)を送信しつつ、襲撃中の『銀色の怪鳥』の映像を撮影する。

 

魔導戦列艦隊を全滅させた『量産型ガルーダ』はハイペリオン基地の本部施設に狙いを定め、空対地ミサイル AGM-65 マーベリックが機体下部から発射される。空対地ミサイルの直撃を受けた本部の建物は猛烈な光や爆風とともに崩れ落ち、リージャック中将以下アルタラス属領統治機構に所属していた皇国軍司令部は一人残らずこの世を去った。

 

この後もアルタラス島各地にある皇国軍施設は、『スーパーXⅢ改』や『量産型ガルーダ』の部隊から熾烈な対地攻撃が加えられ、容赦なくすべてを灰燼にされていく。また海岸沿いの軍事施設や巡行中の魔導戦列艦、そしてエビラも、日本国自衛隊の第2護衛艦群を主力としたアルタラス島派遣艦隊の攻撃を受けて全滅。

 

最初にエビラが撃破されて20分以内という僅かな時間に、アルタラス島内のパーパルディア皇国駐留軍は、その戦力の大多数を喪失したのであった・・・。

 

ただしルバイル収容所をはじめとする各収容所については、収容されている旧アルタラス王国の民間人を巻き込んでしまう可能性があったため、メーサー砲や対地ミサイル、空爆などの直接的な攻撃は実施されず、制空権の奪取後にアルタラス島上空へ飛来したC-2輸送機から巨大なコンテナが複数投下されただけであった。

 

 

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猛烈な爆音とともにル・ブリアスのハイペリオン基地が崩れ落ち、アルタラス島の上空で皇国軍のワイバーンロードがハエのように叩き落とされる様子は、旧アルタラス王国人たちに希望を与える一方、これまで好き勝手にこの世の春を謳歌していたパーパルディア皇国人たちに絶望を与えていた。

 

アルタラス島の各地で武装蜂起が発生し、ライアル軍長の反皇国地下組織が民衆とともに皇国軍の施設や住居への襲撃を始めていた。

 

ハイペリオン基地が崩壊したとの報告を受けたシュサク長官は、自己保身からル・ブリアスに残された属領統治機構軍や職員の指揮権をすべて放棄。まだ攻撃を受けていなかったルバイル強制収容所へ、すぐさま避難していた。

 

「先週の妙な魔信では、来月の『タスの日』に何かを起こすと言っておきながら一か月も早いではないか! 一体どういうつもりだ!!!」

 

汗だくのまま周囲へ怒りをぶちまけるシュサク長官であったが、ルミエス女王は『タスの日』に何かを起こすとか一言も口にしていない。

 

旧アルタラス王国では、創世王と讃えられた初代アルタラス王タス一世が『奇跡の勝利』と呼ばれる戦果を挙げ、アルタラス王国を建国した5月22日を建国記念日『タスの日』として祝日に指定していた。

 

ではそのタス一世が芽吹く、つまり彼が誕生した日というのは、その丁度一か月前である4月22日、従って今日この日であった。

 

属領統治機構では属領と化した地域を皇国式文化へと置き換える、所謂『文化侵略』のようなことも行っており、現地の文化や伝統を常に蔑ろにしていた。もし、現地民の文化を尊重する統治の仕方であれば、このような早とちりは決してしなかっただろう・・・。

 

「武装蜂起したアルタラスの蛮族共と侵攻してくる日本軍を相手に、ここもそう長くは持たないだろう・・・。こうなれば・・・」

 

シュサク長官は、ルバイル強制収容所周辺の魔石鉱山とその廃坑跡の地図を見ながら、嫌らしい顔で命令する。

 

「このあたりの廃坑跡で育成中だった『メガヌロン』をすべて解放しろ! 侵攻してきた日本軍やアルタラス島の蛮族どもにすべての個体をぶつけるのだ! 蛮族共がメガヌロンたちに襲撃され、それを日本軍がチマチマ救援している間に我々は『メガニューラ』へ羽化した個体に騎乗し、皇国本国へ脱出するぞ!!」

 

廃坑奥の暗闇で密かに育成されていた悪夢の昆虫が、解き放たれようとしていた・・・。

 

 

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