東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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104. 北の果てへ

 

中央暦1640年6月1日

フィルアデス大陸北東 トーパ王国

城塞都市トルメス

 

 

第三文明圏の中心であるフィルアデス大陸の北東には、文明圏外国家のトーパ王国が存在している。昨年末、復活した『魔王ノスグーラ』が『オーガ』や『ゴロザウルス』を従えた魔王軍を組織し、王国北東部にある城塞都市トルメスへ襲来するという『魔王事変』が発生。

 

1万年以上にもわたり、魔物が闊歩する未踏の危険地帯である『グラメウス大陸』からフィルアデス大陸を守り続けてきた『世界の扉』を破壊され、城塞都市トルメスも魔王軍の手によって陥落するという緊急事態に見舞われた。

 

しかしトーパ王国からの救援要請を受けた日本国自衛隊が参戦し、魔王軍総帥である『魔王ノスグーラ』は『侵蝕弾頭』の直撃を受けて肉片一つ残らずに消滅。ほかの魔王軍幹部たちや配下の魔物たちもメーサー車両などの対特殊生物用兵器との戦闘で一匹残らずに駆除され、魔王軍は全滅するという結末を迎えた。

 

魔王軍を撃退することができたとはいえ、住民が魔王軍の食料とされて犠牲になるなど大きな被害を受けた城塞都市トルメスであったが、現在は魔王事変前の閑散とした様子とはうって変わり、活気に満ち溢れていた。

 

麻生内閣総理大臣とトーパ王国国王ラドス16世との間で実施された日ト首脳会談において、日本国が魔王軍に破壊された『世界の扉』やトルメスの再建支援を提案。

 

これにより大手ゼネコンの日本人技術者が多数トルメスを訪れ、さらに再建工事が始まると、町の復興と合わせて労働者が大量募集されたことで、トーパ王国各地や周辺国から多数の出稼ぎ労働者が滞在するようになったのだ。

 

彼らだけではない。世界の扉が再建されるまでの間、魔王軍残党が再びトルメスを襲来することを懸念し、トーパ王国からの依頼で日本国自衛隊が仮設駐屯地を設置し、トーパ王国騎士団と共に防衛任務に就いていた。

 

日本国も国際協力と友好国への善意だけで自衛隊を駐留させているのではなく、トーパ王国から許可をもらい、仮設駐屯地をグラメウス大陸調査の前線基地として運用していたのだ。

 

これには大航海時代において、新大陸である南北アメリカを目指したヨーロッパ人のように未開の大陸に手つかずのまま眠っている資源を求めてという点もあるが、日本国政府にとって、魔王事変において魔王ノスグーラが使役していた『赤竜』の存在が大きかった。

 

魔王事変において撃破した赤竜の遺骸を調査したところ、体内から膨大な量の『タナトニウム』を蓄積していたことが判明。

 

超重元素『タナトニウム』は、『AC-3 しらさぎ』や『ごうてん型護衛艦』などに導入された『反重力浮揚システム』の中核を担う重要物質であるが、地球上では産出量が極めて少ない希少物質であった。これまでフィクションでの架空技術とされていた重力制御技術の実用化に成功したにも関わらず、核技術同様、民間での運用が大きく制限されていたのはこのためであった。

 

そうした背景もあり、スペースゴジラやグランドギドラのような宇宙生物ではなく、現地生物である赤竜が体内にタナトニウムを有していた事実は、日本国政府に大きな衝撃を与えた。これは赤竜の生息地であったグラメウス大陸内に、大規模なタナトニウム鉱床が存在している可能性を示唆しているからだ。

 

早い段階でグラメウス大陸のタナトニウム鉱床を発見し、これらを独占的に採掘することができれば、その利益は計り知れないものになるだろう。そのため年始に新たに観測衛星が打ち上げられるなど、日本国によるグラメウス大陸の調査が開始されていた。

 

『ニシノミヤコ事変』による大虐殺が発生し、パーパルディア皇国との本格的な武力衝突が勃発した以降も調査は継続されていた。そして約二か月前、グラメウス大陸の奥地・・・、衛星写真で黒い『もや』のようなもので覆われたエリアにおいて、巨大な重力場の変動を捉えることに成功した。

 

ただ問題点として、この重力場の変動が確認されたエリアはグラメウス大陸の奥地であり、城塞都市トルメスからでもかなり距離が離れていた。危険な魔物や魔獣が闊歩し、周囲が氷雪で覆われた危険地帯であるグラメウス大陸の奥地をどのように調査するか、政府関係者や自衛隊幹部、有識者たちの間で何度も議論を重ねられていた。

 

そんな中、そこから少し離れたところに人工物によるものと思われる僅かな灯りが発見されたという報告が舞い込む。『グラメウス大陸には国家は存在していない』とトーパ王国や周辺国が認識している点も加味され、当初、山火事のような自然発生した火災ではないかと思われていた。

 

しかし衛星画像で何度も同じ位置で灯りが確認できたことから、グラメウス大陸内にも文明をもった国家が存在している可能性が浮上した。もしそこに国家が存在し、国交を締結することができれば、ここを拠点にグラメウス大陸奥地を調査可能となる。

 

そのため、まずは文明・国家があるかの確認のための調査団を派遣し、現地調査が実施されることが決定した・・・。

 

 

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中央暦1640年6月15日

グラメウス大陸上空

 

 

航空自衛隊の有する『C2輸送機』は、厚い積乱雲を眼下に見ながら魔物大陸ことグラメウス大陸の上空高度1万メートル付近を航行していた。機内には調査のための機器や食料、そして魔王軍が使役していたような魔獣と遭遇したときに備え、手榴弾やメーサーライフルなどの武器も多数積み込まれていた。

 

グラメウス大陸内に侵入後、大気の状態はかなり荒れており、まるでハリケーンの中を進んでいるかのように機体は大きく揺れていた。

 

「随分と荒れているなぁ・・・。この世界の高緯度はこんなにも荒れるものなのか?」

 

「まだこの世界に日本が飛ばされて一年足らずだ。どんな異常気象が発生するか、まだまだ不明な点が多い。気を引き締めていくぞ!」

 

機長と副機長が操縦桿を握り直した直後、突如として計器類が狂い始める。ヘッドマウントディスプレイには異常を知らせるアラートが表示され、電気系統が次々と故障する。

 

「一体何事だ!?原因は?」

 

数日前、この星の太陽で大規模な太陽フレアが発生していた。太陽から放出された莫大な電磁波や粒子線、放射線などがこの惑星の地磁気を乱し、激しい磁気嵐を引き起こしていたのだ。

 

運の悪いことに、C2輸送機はこの磁気嵐に上空で直撃し、ほぼすべての電気系統や計器が故障してしまった。

 

フライ・バイ・ワイヤのシステムもダウンしたため、やむなく手動操縦へ切り替えるが、機体はゆっくりと傾き始めていた・・・。

 

 

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