東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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107. 異世界のギドラ族

 

中央暦1640年7月17日

グラメウス大陸

エスペラント王国

 

 

地球外生命体・・・。それは、地球以外の惑星や宇宙空間など、地球の大気圏外に生存、またはそこに由来した生命のことを指す言葉だ。

 

空想科学的なものに思えるかもしれないが、地球の隣を公転する惑星である火星において、岩石中からリン酸や硫化鉄など、数十億年前の生命の痕跡とみられる物質が発見されており、現実世界においても存在する可能性が示唆されている。

 

地球外生命体と言われると、某ホラー映画に代表される人類を襲う獰猛な生物兵器、または某独立戦争のように人類を遥かに凌駕する科学力をもった侵略者、それとも子供たちと心を通わせた友好的な宇宙人など、思い浮かぶ像は人それぞれ千差万別だろう。

 

しかし本世界線の日本国ないし地球では、一般人にも広く知られた地球外生命体が存在する。黄金の鱗に覆われた巨大な体に巨大な一対の翼を生やし、二本の尾と三本の首が特徴的な宇宙超怪獣・・・、キングギドラとも呼称される『ギドラ族』だ。

 

『ギドラ族』のなかでは、日本中の子供たちを誘拐して生体ドームに閉じ込め、生命エキスに変えてエネルギー源にしようとした点から、1999年に襲来した恐怖の大魔王こと『グランドギドラ』が特に有名である。

 

なお、1992年の第一次キングギドラ事変において、未来人に操られていたインスタント・キングギドラについても、その素体であるドラットが金星で眠っていた宇宙超怪獣キングギドラの体組織をもとに作製されているため、実質的にはギドラ族といっても過言ではない。

 

またデスギドラについても、厳密にはギドラ族ではないマグマ状の不定形生命体ではあるが、かつて宇宙で交戦したキングギドラの能力をコピーした特殊生物とされているため、ギドラ族の亜種として認識されていた・・・。

 

 

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エスペラント王国の魔獣対策作戦本部が設置されている城壁からも、バグラ山の大規模な噴火の様子が鮮明に見えていた。噴火とともに火口からは灼熱のマグマが噴出し、火山灰の混じった噴煙がモクモクと立ち込めていたが、その中から黒と赤のグラデーションの鱗で全身が覆われた禍々しい巨大な竜が、稜線から這い出るように出現する。

 

バグラ山から数十キロメートル以上離れているにも関わらず、頭部が三つあることが視認出来るほどの巨体であった。その巨体もあってか、これまでエスペラント王国を襲来していた魔獣たちが、有象無象に思えるほどの威圧感を放っている。

 

「な、なんだ!? あの巨大なドラゴンは一体?」

 

エスペラント王国の騎士や衛兵たちは、突如として出現した三つ首の巨大なドラゴンの威容に圧倒され、酷く狼狽する。

 

「三つの頭部に一対の大きな翼・・・。あれはま、ま、まさか・・・『ギドラ族』か!? い、いや、ギドラ族にしては体表の鱗の色も異なるし、四本足だ・・・。あれはむしろ・・・」

 

エスペラント王国の守備隊とともに、双眼鏡でその姿を確認した岡三等陸曹が絶望したような声の独り言を喉奥から出す。

 

「あれはまさか、我が鬼人族の伝承にあった邪竜『アジ・ダハーカ』なのか!?」

 

岡三等陸曹によって頭部の魔族制御サークレットを破壊され、ダクシルドら有翼人の洗脳支配が解かれた鬼人族の戦士バハーラが、その隣で言葉を零す。

 

「バハーラ、あのドラゴンのことを何か知っているのか?」

 

「ああ、我ら鬼人族の国『ヘイスカネン』にある伝承に登場する邪竜に姿がそっくりなのだ・・・。」

 

岡三等陸曹やエスペラント王国の騎士たちに尋ねられたバハーラが、冷や汗を流しながら自国に伝わる伝説を語り始める。

 

「かつてこのあたり一帯には、恐るべき三つ首の邪竜が生息していた。その名も邪竜『アジ・ダハーカ』・・・。人智を超えた恐るべき大魔法を使ってありとあらゆるものを跡形もなく消滅させ、周囲の魔素をすべて吸い尽くすという『破壊の権化』・・・。」

 

邪竜『アジ・ダハーカ』はバグラ山から這い出ると、空へ三つ首を向けて巨大な魔法陣を出現させた。魔法陣を中心に黒雲状の力場が作り出されると、グラメウス大陸のグーラドロア平野に広がっていた高密度の魔素で満たされた大気が魔法陣に向かって吸収され始め、分厚い紫色の雲に覆われた空が急速に晴れていく。

 

北海道の出身であった岡三等陸曹は、この様子に酷似した光景を子供の頃に目撃したことがあった。

 

1997年に北海道紋別地方で復活したデスギドラは、惑星の命、特に植物の生命エネルギーを好んで吸収する厄介な特性をもっていた。この性質により、6500万年前に地球に襲来した際には、植物を中心とした生態系に壊滅的な打撃を与えて恐竜絶滅の原因を作り出し、97年の復活時には北海道の森林地帯を死滅させ、急激な酸素濃度の低下を引き起こすなどの現象を引き起こした。

 

幸い三代目モスラことモスラ・レオの活躍によって早い段階で再封印され、枯れ果てた森林地帯も瞬く間に再生されたため、世界規模の大災害となることは防がれたが、このデスギドラが植物の生命エネルギーを搾取するときに使用していた能力が、まさに眼前の『アジ・ダハーカ』の行動とそっくりであったのだ。

 

邪竜『アジ・ダハーカ』によって周辺の魔素が根こそぎ吸い尽くされたことで、数分前とは打って変わり、空には煌々と輝く太陽が見えていた。一方地表では、急激な魔素の枯渇によって大型魔獣たちが次々と倒れ、死屍累々の様相を呈していた。

 

「かの光翼人も恐れ多くもこの邪竜を使役しようとしたが、その圧倒的な力の前に返り討ちに合い、やむを得ずこの地に封印したとも伝わっている。光翼人たちがヤツを封印したことで我らの祖先はこの地に定住出来るようになり、それがヘイスカネンの始まりとも言われている・・・。」

 

日本国政府は国交を締結した国々から、かつてこの世界に『古の魔法帝国』と呼ばれる恐怖の大帝国が君臨していたことを教えられていた。昨年末にトーパ王国において発生した『魔王事変』において、魔王軍の総帥であった『魔王ノスグーラ』やその配下のオーガたち、そして『ゴロザウルス』も、その古代文明によって作り出された生物兵器であったと推察されていた。

 

そのような超高度な文明をもった国ですら撃破を断念したという点からも、邪竜『アジ・ダハーカ』が相当な実力をもった超大型特殊生物であることが容易に想像できた。C2輸送機の残骸から回収出来たメーサーライフルや 120mm 迫撃砲程度では、『ギドラ族』ないし『デスギドラ』擬きが相手では足止めにすらならないだろう・・・。

 

絶望に覆われる一団であったが、南の空から七つの小さな点が見え始め、遅れて大気を切り裂くような甲高い音が響き始める。『F-2』戦闘機五機や『スーパーXⅢ改』、『量産型ガルーダ』二機で構成された航空支援隊が、到着したのだ。

 

心強い援軍の到着にエスペラント王国の騎士たちが沸き立つが、急遽、報告になかった『デスギドラ』擬きを相手にすることになったため、パイロットの福井二等空佐たちの顔色は優れない。

 

ゴジラ級の特殊生物に匹敵する戦闘力をもった『ギドラ族』の特殊生物と相対するには、『スーパーメカゴジラ』や『MOGERA』といった超大型の対G兵器、最低でも『ごうてん級護衛艦』などの超兵器群が必要とされている。今回派遣された航空戦力だけでは、どう考えても火力不足なのだ。

 

福井二等空佐たちの悪い予想は、早速的中することとなる。挨拶代わりに『F-2』戦闘機から90式空対空誘導弾(AAM-3)が発射されるが、『アジ・ダハーカ』の一本の頭部が光輝く物理防御型の魔力障壁を展開し、直撃する前に防がれる。

 

『魔王事変』における『魔王ノスグーラ』やオーガたちとの戦闘データをもとに、『量産型ガルーダ』がハイパワーメーサービームキャノン砲による同時攻撃を間髪入れずに仕掛ける。

 

物理型と特殊型の両方の魔力障壁を同時に展開することは、両者の魔道プロセスがあまりに異なるため、不可能とされているとトーパ王国軍の魔導士から説明されていた。したがって、90式空対空誘導弾(AAM-3)による物理攻撃とハイパワーメーサービームキャノン砲によるエネルギー攻撃を同時に繰り出せば、どちらかの攻撃は直撃する・・・筈だった。

 

その予想に反し、『アジ・ダハーカ』の一本の頭部が物理防御型を、ほかの一本の頭部が特殊防御型の魔力障壁を展開し、それぞれの攻撃を完全に防いだのだ。

 

驚愕する福井二等空佐たち航空支援隊に対し、残された一本の首の鼻先に異なる魔法陣が展開され、数秒のインターバルを経て航空支援隊に向かって直線放射状に衝撃が走った。

 

航空編隊がとっさにロールして回避行動をとった直後、『アジ・ダハーカ』の発射した破壊魔法が山脈に直撃した。怪しげに発光する稲妻状の破壊魔法が直撃した山脈は、跡形もなく消し飛んでいた。

 

ゴジラ級特殊生物が使用する放射熱線のように超高温の熱量で融解・蒸発したのではなく、まるで『原子レベルで分解』されたかのように塵すら残さずに消滅していたのだ。

 

このような『原子レベルで分解』する能力は、約20年前、体内の核エネルギーが暴走し、全身が真っ赤に燃え滾る『バーニングゴジラ』と化した二代目ゴジラが最後に戦った特殊生物・・・。1954年の『第一次ゴジラ事変』において使用された悪魔の発明『オキシジェン・デストロイヤー』によって生まれた完全生命体『デストロイア』が体内で生成し、自身の武器として使用していた『ミクロオキシゲン』の力そのものであった・・・。

 

 

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