東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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108. アジ・ダハーカの能力

 

中央暦1640年7月17日

第三文明圏の東 大東洋 

日本国 首都東京 防衛省

 

 

グラメウス大陸のエスペラント王国の救援任務で派遣された航空支援隊から、『ギドラ族』と思われる大型特殊生物が出現した旨の報告を受けた防衛省では、国家転移後にもう何度目になるかわからない緊急会議が開かれていた。

 

岡三等陸曹から送られた衛星メールでは、エスペラント王国を襲撃している魔物や魔獣は『魔王事変』のときに確認された小型 ~ 中型以下、いわゆる小物ばかりであった。そのため、『F-2』戦闘機だけでも過剰戦力と思われていたが、万が一、『魔王ノスグーラ』のような高度な知性を有した特殊生物が背後に控えている可能性も考慮し、『スーパーXⅢ改』や『量産型ガルーダ』も追加されていた。

 

したがって日本国政府や防衛省としては、出現するとしても『魔王ノスグーラ』程度の特殊生物を考えており、『ギドラ族』のような強力な大型特殊生物の出現は、完全に想定外だったのだ・・・。

 

「エスペラント王国付近で出現した特殊生物ですが、三本の首と巨大な一対の翼という『ギドラ族』の特徴が確認されています。現時点ではその翼による飛翔は確認されておらず、四本の脚を用いてゆっくりと移動しているようです。」

 

「しかし航空支援隊からの報告、及びその映像を解析しましたところ、全高は約100メートル、全長は約300メートル前後とこれまでに確認されています『ギドラ族』のなかでも最大サイズであることが判明しました。」

 

『アジ・ダハーカ』が航空支援隊に向かって破壊魔法を発射した後、周辺の酸素濃度が一時的に急上昇したデータを提示しながら、防衛省幹部は説明を続ける。

 

「さらに厄介なことに、『ギドラ族』同様、それぞれの首が独立した意思をもっているために物理防御と特殊防御の両魔力障壁を同時に展開していたようです。さらに攻撃方法は、『デストロイア』のように『ミクロオキシゲン』を用いた破壊魔法を使用してきたと、航空支援隊から緊急連絡がございました。」

 

「現時点で判明したことをまとめると、ヤツは対地ミサイルや機銃といった物理攻撃とメーサー砲などのエネルギー攻撃、その両方に対する防御も完璧であり、『ミクロオキシゲン』を用いた破壊魔法を攻撃として使う。例えるなら、『デストロイア』の防御不可能な攻撃能力と『スペースゴジラ』が使っていた『フォトン・リアクティブ・シールド』のような強固な防御能力を有した超巨大な『デスギドラ』といったところか・・・。」

 

防衛省幹部の説明を聞いた黒木特佐が、これまでに確認された特殊生物の事例を挙げて締め括る。派遣されている航空支援隊の戦力では、どう考えても足止めすら厳しい状況に全員が頭を抱える。

 

「今からでも『スーパーメカゴジラ』や『MOGERA』、せめて『ごうてん級護衛艦』を援軍として派遣できませんでしょうか。非常に残念ですが、エスペラント王国の防衛は放棄して『トーパ王国』の『城塞都市トルメス』北にある海峡部でこれらの戦力を中心とした防衛ラインを構築、総力を結集して一気に迎え撃つというのは・・・」

 

「馬鹿野郎、今の説明を聞いていなかったのか! ゴジラの放射熱線とは違い、発射されるまで詠唱によるインターバルがあるとはいえ、航空機でなんとか避けられるような速度で『ミクロオキシゲン』の魔法攻撃を使ってくるようなヤツが相手なんだぞ!」

 

若手の防衛省職員の提案に対し、Gフォース副司令官の佐々木拓也が一蹴する。

 

「原子レベルであらゆるものを分解することが可能な『ミクロオキシゲン』が相手では、どんな重装甲も無意味だ。バーニングゴジラの赤色放射熱線にも耐えられる超耐熱合金『NT-1S』以降の超装甲でもな! 巨大で鈍重な『メカゴジラ』は言うまでもなく、『ごうてん』も避けられずに真っ二つにされて撃墜されるのがわからないのか!!」

 

彼は1994年の『メカゴジラ事変』においてメカゴジラ隊の隊長を務め、幕張決戦時には『スーパーメカゴジラ』に搭乗して二代目ゴジラやファイヤーラドンたちと死闘を繰り広げた名パイロットでもあった。

 

そのため、『メカゴジラ』や『MOGERA』といった超大型対G兵器の弱点を熟知しており、今回の『巨大デスギドラ擬き』との相性が最悪であることをすぐに理解していたのだ。

 

「それに一対の翼を生やしているにも関わらず、まったく飛翔する様子がないのも気がかりだ。周辺の魔素・・・だったかのエネルギーを吸収している点も、封印解除されたばかりのデスギドラが植物の生命エネルギーを吸収していた行為に酷似している。もしかすると、デスギドラのようにある程度エネルギーを吸収することで急激に成長し、長距離飛行が出来るようになるのかもしれないな・・・。」

 

「そう考えると、悠長に防衛ラインを構築するなんて余裕はありませんね。下手すると、フィルアデス大陸の国々や海を飛び越えて日本列島に直接飛来する可能性もあります・・・。まだ飛翔できていない今このタイミングで、確実に駆除しなければなりません!」

 

実際のところ、『巨大デスギドラ擬き』こと邪竜『アジ・ダハーカ』は、『ギドラ族』とは全く関係がなく、高濃度の魔素や特殊な魔石が永い年月をかけて周辺の溶岩に影響を与え続け、偶然自然発生した邪竜種の一体に過ぎない。

 

そのため『ギドラ族』とは異なり、宇宙空間の移動はおろか大気圏内においても長距離の飛行は不可能であり、また遊泳能力ももっていない。ダクシルドらアニュンリール皇国の工作員たちが、躊躇することなくこの強大な邪竜の封印を解除したのは、自分たちの拠点である南方世界へは絶対に来れないことを理解していたからであった。

 

そんな事実は露とも知らず、防衛相幹部やGフォース関係者たちは、邪竜『アジ・ダハーカ』を『ギドラ族』の亜種、それも『デスギドラ』の近縁種と想定していた。そしてこの『巨大デスギドラ擬き』に成長する時間を与えてしまうと、フィルアデス大陸の友好国や日本列島が直接襲撃される可能性もあると考え、会議室内の議論はより白熱する。

 

「ですが、ヤツの魔力障壁は『量産型ガルーダ』のハイパワーメーサービームキャノン砲も防ぎきったと報告されています。『魔王事変』において『魔王ノスグーラ』の展開した魔力障壁が『90式メーサー殺獣光線車』のメーサー砲をギリギリ防ぎきれる程度の防御力であったことを考慮すれば、ヤツの展開する魔力障壁の強度はまさに桁違いです。航空支援隊の装備では、ヤツの魔力障壁を突破することは不可能ではないでしょうか・・・」

 

魔力障壁の強度は、使用する術者の魔力の大きさに左右される。したがって、その強度を上回るほどの膨大な質量やエネルギー量をぶつけることができれば、貫通して本体へダメージを与えることが可能となる。

 

『量産型ガルーダ』や『スーパーXⅢ改』を超えるエネルギー攻撃が可能な機体は、先ほど挙げられた超大型対G兵器に搭載されたものか『ごうてん級護衛艦』くらいだ。しかし、相手が『ミクロオキシゲン』を使用する時点で、これらを戦線へ投入することは出来ない・・・。

 

エネルギー攻撃が無理なら、物理攻撃・・・、例えばレールガンのような貫通力を極めて強化した攻撃であれば、突破可能であったかもしれない。しかしメーサーをはじめとした指向性エネルギー兵器の発展が早かったこの世界線では、レールガンの開発速度は現実世界と同等であり、まだ実戦投入もされていない状況であった。

 

「そういえば、今回派遣された『スーパーXⅢ改』に対魔力障壁用の試作弾頭が搭載されていたな。あれを使用できないか?」

 

議論の間、両手の指を組んでじっと考え込んでいた黒木特佐が思い出したかのように話す。

 

「『タナトニウム』版劣化ウラン弾とかいうあだ名がつけられていたあれですか・・・。確か正式名は『フルメタルミサイル』でしたっけ。確かに貫通力はあるかもしれませんが、たった一発を命中させただけでは、あんな巨体のヤツを沈黙させることはできませんよ。」

 

「いや、それぞれの首が物理防御、特殊防御、そして攻撃魔法とそれぞれが分担しているのであれば、そのどれかの首一つを沈黙させるだけでヤツの能力は大きく低下する。特に特殊防御を担当している左の首さえへし折れば、航空支援隊の攻撃が直接当たるようになる!」

 

黒木特佐が立案した作戦は、すぐさま現場の航空支援隊へ伝えられる。作戦内容を把握した『F-2』戦闘機や『量産型ガルーダ』が『アジ・ダハーカ』へ陽動攻撃を行い、『スーパーXⅢ改』の援護を行う。

 

その隙に、『スーパーXⅢ改』は『アジ・ダハーカ』への頭上へと回り込み、急降下しつつ機体上部の収納式ミサイルポッドから通常のミサイル弾頭とは異なる弾頭『フルメタルミサイル』が発射された。

 

フルメタルミサイルは、現代の徹甲弾ともいえる特殊なミサイルだ。硬度の高い金属製の特殊弾頭と超重元素『タナトニウム』の残渣から作られた弾芯で構成されており、徹甲弾のように標的を貫通することに特化している。

 

例えるなら、劣化ウラン弾のミサイルと考えてもらえれば理解しやすいだろう。ウラン鉱石を精製した残渣である劣化ウランは、鉄の2.5倍、鉛の1.7倍と比重が非常に重い。そのため合金化して砲弾に用いると、同サイズ・同速度で発射した際により大きな運動エネルギーを得られるため、主に対戦車用の砲弾や弾頭として使用されている。

 

『フルメタルミサイル』の場合、劣化ウラン以上の比重を誇る超重元素『タナトニウム』の残渣が使用されているため、その貫通力は複数並べられた10メートル厚の鉄筋コンクリートを貫通し、ゴジラ級の特殊生物の表皮をも抉ることが可能とされていた。

 

『魔王事変』において魔力障壁の存在が明らかになって以降、魔力障壁を突破可能な対物理型魔力障壁兵器の一つしてレールガンと合わせ、開発が進められていたのだ。

 

弾頭の接近に気付いた『アジ・ダハーカ』が物理防御型の魔力障壁を展開した直後、『フルメタルミサイル』が魔力障壁へ衝突し、周囲が眩いばかりの閃光に包まれる。強大なエネルギー同士が衝突し、相殺し合うことで雷が如き轟音と閃光が激しく生じたのだ。

 

かつて『魔王事変』において、『魔王ノスグーラ』の展開した魔力障壁と『90式メーサー殺獣光線車』のメーサー砲がぶつかり合ったときも同様の現象が発生したが、今回はその比ではない。 

 

衝突直後は拮抗し合っていたが、やがて鈍色をした鉄杭のような形状の弾頭は魔力障壁の臨界点を突破。展開されていた魔力障壁を貫通し、左の首の付け根へと直撃した。

 

ギギャァァァギャァァァッッッッッッッッッッッ!!!!

 

けたたましい咆哮とともに、『アジ・ダハーカ』の首の一本がもげ落ちる。傷口から溶岩のように赤く光る体液を散らしながら、山の斜面をのたうちまわる。

 

「よし、特殊防御を担当していた左の首が落ちた。これでメーサー砲が通るようになる筈だ! 全機、攻撃開・・・!?」

 

次の瞬間、予想もしなかった事態が発生する。

 

フルメタルミサイルが直撃し、もげ落ちた一本の首が塵となって消滅した直後、その根元に怪しげな魔法陣が出現し、新たな首が急速に再生し始めたのだ。そして復活した首は、何事もなかったかのように特殊防御型の魔力障壁を展開し始める。

 

福井二等空佐たち現場のパイロットはもちろん、画面越しにありえない事態を見ていた防衛省の幹部やGフォース関係者たちも目の前の光景が信じられず、呆然と口を開けて固まってしまう。

 

ただ一人、黒木特佐はすぐさま席を立ち、首相官邸へ緊急の電話をかけ始めた。

 

「特殊戦略作戦室の黒木です。例の『巨大デスギドラ擬き』案件で緊急事態が発生しました。『DT』を・・・、『ディメンション・タイド』の緊急投入許可を頂きたく・・・」

 

日本国とその友好国にとって、対パーパルディア皇国への最後の切り札として打ち上げられた守護星が、異世界の宇宙空間で産声を上げようとしていた・・・。

 

 

 

※ フルメタルミサイル

出典 : ゴジラ2000 ミレニアム(1999年)

 

 

『魔王事変』において魔力障壁の存在が明らかになって以降、魔力障壁を突破可能な対物理型魔力障壁兵器の一つしてレールガンと合わせ、開発が進められていた新型ミサイル。

 

硬度の高い金属製の特殊弾頭と超重元素『タナトニウム』の残渣から作られた弾芯で構成されており、徹甲弾のように標的を貫通することに特化している。

 

劣化ウラン以上の比重を誇る超重元素『タナトニウム』の残渣が弾芯に使用されているため、その貫通力は複数並べられた10メートル厚の鉄筋コンクリートを貫通し、ゴジラ級の特殊生物の表皮をも抉ることが可能とされている。

 

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