中央暦1640年7月17日
グラメウス大陸
エスペラント王国
グラメウス大陸のエスペラント王国付近で出現した超大型特殊生物・・・、『巨大デスギドラ擬き』こと邪竜『アジ・ダハーカ』に対し、対パーパルディア皇国への最後の切り札として打ち上げられた衛星ブラックホール砲『ディメンション・タイド』の緊急投入が決定された。
「ディメンション・タイドのメインシステム正常。マイクロブラックホールの発射フェーズへシークエンス移行開始!」
「超マイクロ加速器の状態正常、タナトニウム粒子は現在光速の 99.9% の速度にまで到達。マイクロブラックホールの発射準備完了まで約300秒!」
「初の実戦目標が異世界の『ギドラ族』・・・。それも全長300メートルもある特大サイズとは恐れ入ったわ。」
「あの巨大な体躯のすべてを引きずり込むには、最大出力でマイクロブラックホールを形成する必要がありますね・・・。」
「直径100メートルの範囲を完全に消滅させるブラックホールが形成される・・・。時空間の歪みなど、我々の予想を超越した事象が発生するかもしれないな。全員気を引き締めていくぞ!!」
年始の打ち上げ直前、時系列でいえば『ニシノミヤコ事変』による大虐殺が発生する数日前、山梨県の山中において、調整が完成した『ディメンション・タイド』の最終試験が実施されていた。このときは大幅に出力を抑えていたが、発生したマイクロブラックホールは、砲撃目標にされた廃校を完全消滅させるほどの威力であった。
今回は初の宙対地砲撃、それも最大出力での発射ということもあり、防衛省内に設置された戦闘司令室では、吉沢佳乃や工藤元ら『ディメンション・タイド計画』に携わった科学者やエンジニアたちも緊急招集されていた。
「航空支援隊へ通達、『ディメンション・タイド』発射準備完了まで約300秒。万が一、避けられたら、次弾の発射が可能となるまで一時間以上ものクーリングタイムが必要となる。発射準備が完了するまで、ヤツをその場で釘付けにせよ!」
作戦司令室から『ディメンション・タイド』の投入が伝達された航空支援隊は、邪竜『アジ・ダハーカ』への攻撃を再開する。
『F-2』戦闘機や『量産型ガルーダ』が邪竜『アジ・ダハーカ』の周囲を飛び回り、20mm機関砲やハイパワーメーサービームキャノン砲による牽制攻撃を再開する。
これらの攻撃は物理型・特殊型の魔力障壁により完全に防がれてしまうが、航空支援隊の攻撃目標は邪竜『アジ・ダハーカ』の本体ではない。休火山であったバグラ山から『アジ・ダハーカ』の復活とともに出現し、現在もその足元で真っ赤にボコボコと煮えたぎっている溶岩だ。
自身の周囲をハエのように飛び回り、チマチマと攻撃をしかけてくるに気を取られていた邪竜『アジ・ダハーカ』は、後方から急降下して接近する『スーパーXⅢ改』への対処が遅れる。『スーパーXⅢ改』の機首先端部にあるレドームが開き、中から4枚の反射集束板と多層式発振レンズで構成される発射口が展開される。
氷点下200度以下にまで冷却可能な超低温レーザーが照射されると、照射された灼熱のマグマが急速に冷え固まり始め、玄武岩や安山岩といった真っ黒な火山岩へ変貌していく。ダメ押しと言わんばかりに、『スーパーXⅢ改』に搭載されていた冷凍弾ミサイルも全て打ち尽くされ、『アジ・ダハーカ』の足元周辺のマグマは、火山岩で形成された足枷のごとく、その四肢を完全に拘束していく。
「発射シークエンス、クリア! マイクロブラックホールの発射空間軸を『『巨大デスギドラ擬き』に固定!」
「航空支援隊は有効範囲外へ急ぎ離脱せよ」
冷凍弾や冷凍メーサーで足元の溶岩が急速に凍結されたことで、まるで四肢に足枷を嵌められたかのようにもがいている邪竜『アジ・ダハーカ』に向け、惑星の低軌道上から誘導ビームが発射される。
「All System Green ! 発射準備完了!!」
「ディメンション・タイド発射!!」
異世界の低軌道へと打ち上げられた衛星ブラックホール砲『ディメンション・タイド』から、黒く輝く球体のようなものがついに発射された。
アジ・ダハーカが周辺の魔素を根こそぎ吸い尽くしたことで、バグラ山周辺の空を覆っていた分厚い雲は消失し、現在は小さな層雲がポツポツと点在している状態であったが、次第に渦を巻き始め、渦の中心に見える黒い球体へ向かって吸い込まれるように消滅していく。
空からは青白い光の檻が降り注ぎ、強大な引力によって地表に転がっていた大きな岩までもが浮遊し、急速に接近する黒い球体に向かって浮遊し始めた。
身の危険を感じた邪竜『アジ・ダハーカ』が魔力障壁を展開するのと同時に、自身に接近する黒い球体に向かって『ミクロオキシゲン』を用いた破壊魔法を使用するが、それすらも吸い込まれて消滅していく。
展開された魔力障壁へ直撃した黒い球体は、瞬時に膨張。巨大なドーム状へと膨れ上がり、爆心地周辺はハリケーンの比ではない猛烈な風速と眩い閃光に包まれる。強大な重力波が周辺の時空間を歪めながら、邪竜『アジ・ダハーカ』ごとその周辺の大地すべてを吞み込んでいく。
発生したマイクロブラックホールが消滅し、周囲に立ち込めていた砂埃が収まると、邪竜『アジ・ダハーカ』が存在していた周辺は、すり鉢状に削り取られて大地だけが残っていた。邪竜『アジ・ダハーカ』は首一本どころか肉片一つすら残っておらず、最初から何も存在していなかったかのような静けさに包まれていた。
「状況報告・・・、ディメンション・タイドは『巨大デスギドラ擬き』へ命中。対象をロスト・・・、周辺に生体反応も確認不能なことから、完全に消滅したものと思われます!」
「周辺に重力場の異常等は確認されていません、航空支援隊はこれより帰投します。」
エスペラント王国の城門、城壁上から次々に歓喜の声があがり、都市全体が歓喜の声に包まれる。後の歴史書で『エスペラント王国事変』と記載される今回の事件、そして『古の魔法帝国』すら撃破を断念した邪竜『アジ・ダハーカ』の討伐伝説は、エスペラント王国や鬼人族の国『ヘイスカネン』で広く知れわたることとなった。
今回の事件で外の世界の存在を知ったエスペラント王国は、日本国のみならず、ヘイスカネンやかつての兄弟国とも言えるトーパ王国などとも国交を結び、交流を始めることとなった。
今回の『エスペラント王国事変』では、後の歴史に大きく影響する事態も発生していた。
そのひとつが今回最大出力で発射されたマイクロブラックホールにより、想定以上に時空間の歪みが生じてしまったことだ。この影響で時空間に小さな亀裂が発生し、そこから数センチメートル程度の小さなオタマジャクシのような見た目の生命体が吐き出され、海へと落下していた。
数年後、西の果てにてこの生命体が巨大な姿へと急成長し、新たな事変の原因となってしまうのであった・・・。
また衛星ブラックホール砲『ディメンション・タイド』だが、不完全なコンディションのまま最大出力で発射したことで、想定以上の負荷がかかっていたことが判明。今後の安定運用に向けて数か月のオーバーホールが必要となってしまい、パーパルディア皇国との戦いへは投入不可となってしまった。
さらに数日後、偵察衛星が工業都市デュロにおいて演習中の超大型特殊生物の姿を撮影する。これにより、工業都市デュロへの作戦内容が大幅に見直され、対抗手段として大型対G兵器の改良機が約20年振りに実戦投入されることとなるのであった・・・。
※ ディメンション・タイド
出典 : ゴジラ×メガギラス G消滅作戦(2000年)
不死身の存在であるデスギドラへの対抗手段として、『ディメンション・タイド計画』・・・、通称『DT計画』というプロジェクト名でアメリカ合衆国と共同で秘密裏に開発が進められていた衛星ブラックホール砲。
超重元素『タナトニウム』を用いた人類史上初の重力兵器『侵蝕弾頭』の開発過程において、タナトニウムの崩壊時、本来であれば観測することすら不可能な余剰次元(高次元)に限定的に干渉可能となる現象が確認されていた。
この現象を利用し、衛星軌道上でマイクロブラックホールの核を生成、搭載された超マイクロ加速器で光線が当たった地点に向けてそれを射出。対象エリアに小型の人工ブラックホールを形成し、直径100メートル範囲を球状にすべて消滅させることが可能。