中央暦1640年8月1日
第三文明圏フィルアデス大陸の南
新生アルタラス王国 アルタラス島
新生アルタラス王国の初代女王ルミエスは、王都ル・ブリアスで再建工事中のアテノール城の一室から王都を見下ろす。昨年秋にパーパルディア皇国の侵略を受けて属領の一つにされ、王都の街並みは皇国式の建物が軒を連ねるようになってしまっていた。しかし、日本国の支援により独立を取り戻し、現在は戦火で消失してしまった旧アルタラス王国の姿を徐々に取り戻しつつあった。
アルタラス王国の悪夢のような半年は、パーパルディア皇国の大使カストによる下劣な脅迫外交からすべて始まった。皇国の使役する強大な魔獣たちにより、文明国同等と評されたアルタラス王国軍は手も足も出ずに全滅し、父や他の王族たちも戦場に散っていった。
自分たちアルタラス王国やフェン王国など、第三文明圏外の国々へ次々と侵略の魔の手を伸ばしてきたパーパルディア皇国という名の悪夢だが、医療支援のためにフェン王国を訪れていた日本国の医師団を虐殺したことで、旭日の逆鱗に触れてしまう。
フェン王国を追い詰めつつあった精強な皇国軍は、日本国が派遣した自衛隊に返り討ちにされた。このことに逆上した皇国は日本国に対して『殲滅戦』を宣言するも、日本国政府は毅然とした態度でそれに対処する旨を告げる。強く暖かい旭光は、アルタラス島に巣食っていた皇国軍をも蹴散らし、そして今に至る。
ルミエス女王は、北の空を見上げる。
日本国が『ムー連邦』の飛行場を増強して完成させた『ルバイル基地』からは、美しい巨大な飛行機械が次々と飛び立ち、編隊を組んで飛び去って行く。また隣接する湾港施設からは、一足早く、浮上飛行する螺旋状の巨大な衝角を艦首に装備した異形の護衛艦を先頭に、護衛艦たちが次々と出撃していっていた。
そしてそれらの留守を守るように、小高い丘の上に設置された超大型メーサー砲台が、その巨大なパラボラ状の砲身を北・・・パーパルディア皇国の皇都エストシラントのある方角に向けた状態で朝日を浴びて光輝いている。
ルミエス女王ら新生アルタラス王国の人々は、特別な感情をもってこれらを見守るのだった。
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同時刻
第三文明圏の東 大東洋
日本国
皇都エストシラントにある海軍本部施設や極大サイズの陸軍基地『皇都防衛軍基地』の撃滅に向け、アルタラス島の『ルバイル基地』から第2・第4艦隊を主力とする海上自衛隊の護衛艦隊が出撃。
また日本国本土においても、『聖都パールネウス』、そして『工業都市デュロ』の攻撃に向けた戦力が出撃しようとしていた・・・。
沖縄県に設置されたマスドライバー『カグヤ』には、つくば市のGフォース本部基地を出撃した数機の巨大な機体『量産型スターファルコン』が鎮座しており、宇宙空間へ順次打ち上げられていく。
一方、先日最終チェックが完了した『スーパーメカゴジラⅡ』は、Gフォース本部基地の発進ドックへと移動されており、今まさに出撃のときを迎えようとしてた。
脚部と背中に備え付けられたターボジェットエンジンから眩い光と白い煙を出し、両翼のローターからハリケーンのような轟音と風圧を発生させながら、格納ドームから飛び立つ。そのまま空中で足首を上に向け、頭部を前方へ傾けた飛行体制をとり、他の機体とともにマッハ1の巡航速度で西の方角へと飛翔していった。
悪魔のような国・・・パーパルディア皇国に致命的な大打撃を与える日本国の一大作戦が、今、開始されようとしていた。
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フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラント 南方海域
透き通るような青く澄んだ異世界の空。陽光が地平性から漏れだし、明るくなり始めた高い空の上で、一機の飛行機械が飛翔していた。
皇都エストシラントの南方約300キロメートルの上空では、航空自衛隊の『E-767』早期警戒管制機(AWACS)が皇都上空すべてを監視しており、搭載された三次元レーダーで得られた敵部隊の情報がリアルタイムで共有されていた。
マッハ0.9の遷音速で巡行飛行中の飛行編隊・・・、『スーパーXⅢ改』と『量産型ガルーダ』、そして『F-15J改』戦闘機で構成された先行部隊が、『E-767』早期警戒管制機(AWACS)からの情報を受け取り、攻撃態勢をとる。
皇都上空を警戒中のワイバーンオーバーロードと竜騎士たちは、100キロメートル以上の先から自分たちが攻撃されそうになっていることにまったく気付いていない。いや、気付きようがないといった方が正しいだろう。
「全機作戦開始、各機は射撃開始!」
各機に搭載された99式空対空誘導弾(AAM-4)が、一斉に発射された。中距離空対空誘導弾はマッハ4以上の超音速にまで一気に加速し、轟音を上げながら皇都を守護するワイバーンオーバーロードに向けて飛翔していった・・・。
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フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラント レミール邸
フェン王国に滞在していた日本人の医療団を虐殺し、日本国外務省職員の朝田と篠原の前で『殲滅戦』を宣言するなど、日本国とパーパルディア皇国の全面衝突を招いた元凶であるレミール皇女は、皇都エストシラントにある自宅の寝室でうなされていた。
『ムー連邦』のパーパルディア皇国駐在大使ムーゲとの会談において、日本国の真実を知ってからというもの、毎晩のように皇国が蹂躙される悪夢を見ていたのだ。
心酔するルディアス皇帝陛下は、古の魔法帝国の遺産である『ガイガン』がいる限り、皇国は安泰と考えているようだが、現在、ガイガンは工業都市デュロで他魔導戦列艦隊とともに出撃準備中である。
もしこのタイミングで、日本軍に皇都を攻められようものなら・・・。
二月に自分と会談したとき、日本国の大使を助け出そうと皇都エストシラントへ単騎で殴り込みを敢行した丸い敵機やその中から現れた金属製ゴーレムの姿が脳裏に映る。
ワイバーンオーバーロードであれば、あの敵機を撃墜可能と皇国皇軍最高司令官アルデは自信満々でアピールしていたが、ムーゲ大使によると、日本国は音速を余裕で超える戦闘機をも有していると話していた・・・。
ワイバーンの導力火炎弾をまったく受け付けず、一方的に攻撃する日本国の飛行機械を前に潰走する皇国軍、監察軍やエビラを撃破したという異形の軍艦に撃沈される魔導戦列艦隊、あの青く光る眼をした金属製ゴーレムに蹴散らされる皇国兵、それらに蹂躙されて真っ赤に燃え上がる皇国の都市。そして日本国に捕まり、犯罪者として裁かれて処刑台に連行される自分・・・。
レミール皇女の目から大粒の涙が零れ落ち、枕に少しずつ滲んでいく。
「たかが文明圏外の民間人を数人程度処分しただけで、諦めてたまるか! 私はルディアス様に嫁ぎ、共に世界征服を傍で支え、そして世界の大母になる予定なのだぞ!!」
「私は・・・日本には・・・絶対に捕らわれたりするのものか!!」
生き恥を晒してでも、決して諦めずに最後まで生き残ってみせると改めて決意するレミールであったが、既に日本国による一大作戦は開始されていた。
彼女がこれまでに見てきた『鎧袖一触に蹂躙される皇国軍』という悪夢が、間もなく現実のものになろうとしていた・・・。