東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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113. 堕ちる栄光

 

中央暦1640年8月1日

フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国

皇都エストシラント

 

 

皇都エストシラントの上空には、皇都防衛軍基地所属の第18竜騎士団第一飛行隊のワイバーンオーバーロード20騎、南方空域には第二飛行隊のワイバーンオーバーロード20騎がそれぞれ警戒飛行を行っていた。

 

通常であれば、哨戒任務を行う竜騎士隊の規模は一飛行編隊・・・約10騎程度であるが、2カ月前から現在の規模へと増やされていた。

 

4月下旬、日本国の攻撃を受けてアルタラス属領統治機構が陥落し、アルタラス島が再独立するという前代未聞の事態が発生した。さらに6月初旬に実施された『ムー連邦』のパーパルディア皇国駐在大使ムーゲとの会談において、日本国が『古の魔法帝国』に匹敵する兵器を有した超科学文明国家であることが判明する。

 

これに対抗するため、工業都市デュロにおいて日本国への一大侵攻作戦が進められており、皇国の切り札である古の魔法帝国の遺産・・・純粋な魔帝産人工魔獣『ガイガン』を含めた戦力が来週には出撃予定であった。

 

しかし2月に実施された『日パ会談』時のように、日本国が皇都エストシラントを直接攻撃してくる可能性もあったため、通常の倍の規模で警戒網が敷かれていたのだ。ただし、現場の士気低下を恐れた皇国上層部は、ムーゲ大使との会談で得られた日本国の情報を意図的に秘匿していた。

 

そのため、詳細を知る一部の幹部以外は、日本国が攻めてきたとしても前回の『スーパーX改』と同等程度・・・、最高時速400キロメートル前後の飛行機械が相手だと想定していた。現場ではそれを上回る飛翔能力を持ったワイバーンオーバーロード(最高時速430キロメートル前後)が優先的に配備され、第三文明圏最強と謳われたワイバーンオーバーロードで構成された竜騎士隊は、自分たちの力と皇国の勝利を絶対視し、日々の訓練や任務に励んでいた。

 

その認識と自信が、数分後には木っ端微塵に粉砕されるとも知らず・・・。

 

デリウス隊長の率いる竜騎士小隊は、V字に編隊を組んで南方空域を警戒飛行していた。いつものようにそのまま別部隊と交代になると思っていたが、ベテラン竜騎士のプカレートが明るくなり始めた空の向こうに見える斑点を見つけ、全員が警戒態勢をとる。

 

インク汚れのような小さな斑点はみるみるうちに大きくなり、彼らの常識を逸脱した速度で接近してくる。隊員たちに回避命令を出し、ワイバーンオーバーロードたちが散開し始めたが、それらはまるで意思をもっているかのように追尾し、そして至近距離で爆発した。

 

本部や第一飛行隊へ魔信で緊急連絡をする暇もなく、第二飛行隊は 99式空対空誘導弾(AAM-4)によって全騎撃墜された。異変を察知した第一飛行隊の20騎が急行し、市街地上空で迎え撃とうとするが、『量産型ガルーダ』のハイパワーメーサービームキャノンや『スーパーXⅢ改』の超低温レーザー、『F-15J改』戦闘機の JM61A1 20mmバルカン砲で返り討ちにされ、大した反撃も出来ないまま全滅する。

 

※ 市街地上空のため、誤射時の被害が大きくなるミサイルは基地攻撃向けに温存された。

 

皇都エストシラント上空に、平時では聞き慣れない不気味な炸裂音が次々と木霊する。皇国民にとっては、恐怖の具現、または破滅を告げる目覚ましが鳴り響く。

 

第三文明圏の列強たるパーパルディア皇国、そしてその中でも最強と謳われた皇都防衛軍の竜騎士たちが、現実離れした様態で空から落ちてきたのだ。

 

騎乗していたワイバーンオーバーロード諸共、体中に風穴の開けられた蜂の巣となり、血を撒き散らしながら、多数の肉片と化した状態で民家の屋根を突き破った者。自身の身に何が起きたか理解できてない表情を浮かべたまま氷塊となって自由落下し、そのまま通りの石畳へと叩き付けらて粉々に砕け散った者。そもそも竜騎士であったかもわからない真っ黒な炭クズと化した者・・・。

 

また先行攻撃隊のすべての機体は、音速を超える速度で飛翔していた。これらが生み出した衝撃波はすぐに地上へ到達し、耳を覆いたくなるような轟音(ソニックブーム)を響かせ、厚い窓ガラスを次々と割れ落としていく。

 

空から降り注ぐ最強であった筈の竜騎士たち、これまでに体験したことのない轟音、そしてこれらの元凶である正体不明の圧倒的な敵の存在は、エストシラントに住む皇国民たちを完全にパニック状態へと陥らせていた。

 

皇都エストシラントから少し離れた開けた平野に設置されている皇都防衛軍基地でも、哨戒任務中であった第一、第二飛行隊の異変を察知していた。魔力探知レーダーの水晶板モニターから、飛行中であったワイバーンたちの魔力反応が消えてしまったのだ。

 

最初は第二飛行隊の20騎がすべてロストし、数分もしないうちに第一飛行隊の20騎も、何かから逃げるように散開するような動きをとった後、同じく画面から次々と消えてゆく・・・。

 

「緊急事態発生! 緊急事態発生! 哨戒任務中の第18竜騎士団第一、及び第二中隊のべ40騎が魔力探知レーダーからロスト。撃墜された可能性大!!」

 

「待機中の第三中隊は緊急離陸を実施し、皇都上空の警戒に当たって下さい! なお、魔導レーダーに敵機影は確認出来ず。日本国の飛行機械である可能性が極めて高いと予想される!!」

 

「今度も飛行機械の中から金属製ゴーレムの降下部隊が襲撃してくるやもしれぬ。基地内で待機中の全陸戦部隊を出撃させろ! 」

 

皇都防衛軍司令部は、警戒飛行中であったすべての竜騎士たちが撃墜されたと判断し、待機中であった第三飛行隊にスクランブル発進を指示。さらに2月の会談時、金属製ゴーレムこと戦闘用ジェットジャガー(BJJ)が『スーパーX改』から空挺作戦を敢行し、これらの迎撃に向かった治安維持部隊や衛兵隊に大きな被害が出た点を加味し、皇都防衛軍基地司令のメイガ陸将は陸戦部隊にも出撃命令を下す。

 

非常事態を知らせる魔導サイレンが皇都防衛軍基地の全エリアで最大音量で鳴り響き、基地内の人間が慌ただしく動き回る。敵部隊の空挺作戦に備え、地竜リントヴルムや魔導砲兵といった陸上部隊が竜舎や兵舎から次々と姿を現す。その中には、リントヴルムを超える巨大な体躯を有する『巨大地竜』こと、皇国に残された実戦投入可能な最後の一匹であったアンギラスの姿もあった・・・。

 

一方、第一&第二飛行隊を殲滅した先行部隊は、そのまま北上を続けて皇都防衛軍基地の上空へと侵入。離陸滑走中であった第三飛行隊やアンギラスの姿を発見し、すぐさま攻撃態勢に入る。

 

『F-15J改』戦闘機たちから 04式空対空誘導弾(AAM-5)が発射され、走って飛び立とうとしていたワイバーンオーバーロードたちへ次々と直撃した。発生した爆発は竜騎士たちを粉々に吹き飛ばすだけに飽き足らず、ワイバーン用滑走路に埋め込まれた魔石にも誘爆する。

 

さらに合流した爆装仕様『F-2』戦闘機が、掃除の完了した滑走路にMk.82 無誘導爆弾(500ポンド)を投下し、基地内の滑走路はクレーターだらけの月面のような状態となる。

 

「敵飛行機械、離陸中の第三飛行隊へ誘導魔光弾のようなもので攻撃中! 第三飛行隊は、ほぼ壊滅状態です!!」

 

「敵飛行機械、滑走路や対空陣地へ空中から爆弾を投下中! 基地内の滑走路の被害甚大! 魔石や魔術回路も完全に破壊され、これ以上竜騎士の離陸が出来ません!」

 

『F-15J改』戦闘機たちが出撃中であった竜騎士隊を殲滅し、合流した爆装仕様『F-2』戦闘機とともに滑走路や対空陣地といった基地施設への攻撃を開始していた頃、『スーパーXⅢ改』と『量産型ガルーダ』たちは、アンギラスや地竜リントヴルムといった陸上部隊を対処していた。

 

『フェン王国』首都アマノキの西にあるゴトク平野にて、陸上自衛隊がアンギラスを含む皇国陸戦隊を迎撃したときは、『M8500TCS』の雷撃や陸上メーサー車両による集中砲火を浴びせることで、被害ゼロであっさりと駆除していた。

 

そのため、攻撃方法や弱点、遠距離攻撃能力の可否など、その詳細は殆ど不明なままであった。そこで皇国への一大作戦の決行にあたり、日本国、及び自衛隊は、アルタラス島の解放後に旧アルタラス王国軍の生き残りと面会するなど、綿密な情報収集を実施。

 

さらにゴトク平野の戦い後に残されていた甲殻部の骨格を回収し、特殊生物研究本部や国連G対策センター傘下のG研究所で徹底的に解析・調査するなど、その素体になったであろう地竜リントヴルムの生態と合わせ、最適となるであろう攻略方法を見出していたのだ。

 

アルマジロのように全身を丸め、攻撃態勢に入ろうとしているアンギラスの様子を確認した『スーパーXⅢ改』は、両主翼下部に装備された4連装ミサイルランチャーから冷凍弾ミサイルを連続発射する。

 

炸裂した冷凍弾ミサイルからは尋常ではない超低温の冷気が一気に噴き出し、パキパキと霜柱が砕けるような音を立てながら、アンギラスの体表が凍り付いていく。

 

ダメ押しに機首先端部から超低温レーザーが照射され、氷点下200度以下にまで急速冷凍されたアンギラスは、その巨大な体躯全体が分厚い氷壁で覆われ、完全に身動きが取れない状態となる。

 

動きを完全に止めたアンギラスに向け、『量産型ガルーダ』の底部から鉄杭のような形状をした特殊なミサイルが発射された。グラメウス大陸で出現した『巨大デスギドラ擬き』こと邪竜『アジ・ダハーカ』に対して初投入され、その首一本をもぎ取る戦果を挙げた『フルメタルミサイル』だ。

 

発射されたフルメタルミサイルは、アンギラスの体表を覆いつくしていた氷壁をあっさりと砕き、鋭い棘でびっしりと覆われた背中の甲殻に直撃する。

 

発射時の初速が亜音速という超スピード、そして劣化ウラン以上の比重を誇る超重元素『タナトニウム』の残渣で作られた弾芯という極めて重い質量・・・。これらが織りなす凄まじい運動エネルギーは、邪竜『アジ・ダハーカ』が展開した強固な魔力障壁を真正面からぶち破るほどの貫通力を誇る。

 

魔導砲の直撃を易々と受け止めるアンギラス自慢の甲殻も、この圧倒的な貫通力には耐えられる筈がなかった。甲殻を貫通した超硬質弾頭は、そのまま衝撃波で甲殻内部で守られていた臓器をぐちゃぐちゃに破壊し、肋骨など他の骨格も粉々に粉砕していく。

 

背中の甲殻から腹部までを貫通する巨大な風穴を開けられたアンギラスは、真っ赤な体液を撒き散らしながら即死し、氷塊と化した遺骸の周辺には大きな血の水溜まりが形成される。

 

「第一、第二、第三対空陣地からの魔導通信が途絶!」

 

「アンギラスの生命活動停止!!」

 

皇都防衛軍基地の司令本部には、絶望的な状況報告が次々と雪崩れ込んでくる。第三文明圏において最強である筈の竜騎士隊が瞬く間に全滅し、鉄壁を誇っていた筈のアンギラスが瞬殺されるという現状に、皇都防衛軍基地司令のメイガ陸将を含めた皇国軍幹部たちは、目の前の光景を受け入れられずにいた。

 

滑走路を含めた主要基地施設も、『F-2』戦闘機たちが投下した Mk.82 無誘導爆弾による爆撃で既に殆どが破壊されており、皇都エストシラントの空は丸裸も同然の状態だ。皇都上空の制空権を完全に喪失した現状に、メイガ陸将や皇国軍幹部たちの心を絶望が支配していく。

 

「見張り台より緊急魔信! 敵飛行機械の大編隊がこちらへ接近中!! アンギラスを屠った大型飛行機械たちと同等サイズと推定されます!!」

 

『F-15J改』戦闘機の護衛を伴い、『P-3C』哨戒機の爆装仕様改造機『BP-3C』の大編隊が皇都上空を通過していく。

 

「今度はデカイ飛行機械を大量に送り込んできやがったか! 何機いやがるんだ!?」

 

「奴らは一体何をするつもりなんだ!!!」

 

対潜哨戒機として海上自衛隊に導入された『P-3C』(オライオン)は、ASM(空対地ミサイル)や対潜魚雷、各種無誘導爆弾など多様な武装を装備可能な点から、現在では様々な任務を行う哨戒機として運用されている。

 

その爆装仕様改造機である『BP-3C』は、40発分もの Mk.82 無誘導爆弾を搭載可能だ。具体的な比較例を挙げると、第二次世界大戦において東京大空襲など日本の本土空襲を行った『B-29』爆撃機(スーパーフォートレス)と同等の爆弾搭載量といえば、イメージしやすいだろう。

 

総数70機にも及ぶ爆撃編隊は、爆弾投下地点である皇都防衛軍基地上空へと予定時刻通りに到着し、多数の無誘導爆弾の投下を開始する。

 

「さっきの高威力爆弾だ! 全員退避!!」

 

「爆弾の雨がくるぞ!! 逃げろ!!!」

 

基地内には炸裂音が連続して響き渡り、あらゆる建物の何十倍もの高さにまで爆炎が吹き上がる。真っ黒な煙が基地全体を包み込み、敷地内を満遍なく塗り潰すかのように、容赦なく爆風が吹き荒れる。

 

搭載していた爆弾をすべて投下し、『BP-3C』爆撃編隊が旋回してアルタラス島のルバイル基地へ帰投していく頃、その下の大地には地獄が広がっていた。

 

威容を放っていた皇都防衛軍基地の本部棟は跡形も残さずに基礎部分から倒壊し、立派な滑走路も爆撃によって形成されたクレーターが広がる荒れ地のような姿となっていた。さらに兵舎や竜舎などの建物も一つ残らずに消滅し、人やワイバーンなどの生物が四散したことで、地面が赤く黒く染まっていた。

 

この日、皇都エストシラントの空と大地を守護していた皇都防衛軍基地が、日本国自衛隊の攻撃を受けて全滅。すべての基地施設、そして配備されていたワイバーンオーバーロードやアンギラス、精鋭竜騎士たち、また基地に勤務していた職員など、そのすべてを喪失した。

 

また皇都エストシラントを守護する二つの象徴・・・、その片翼であった皇都防衛軍基地が飛行機械による攻撃を受け、火球を含んだ黒煙に包まれて巨大な爆炎とともに消滅した様子は、皇都市民たちも多数目撃しており、誰もが呆然とした様子で絶句していた。突如訪れた皇国の危機を目の当たりにしたことで、状況の不透明さや緊迫に耐えられず、大声を上げて錯乱する者や泣き出してしまう者もいた。

 

しかし、彼らを嘲笑うかのように、更なる恐怖が皇都に襲い掛かろとしていた。同じ頃、皇都エストシラントの沖合において皇国史上最大規模の海戦が勃発し、もう片方の翼ももぎ取られようとしていた・・・。

 

 

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