中央暦1640年8月1日
フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラント
皇都エストシラントを守護する二つの象徴・・・、その片翼であった『皇都防衛軍基地』には、皇国随一といえる精鋭部隊が配備されていた。
第三文明圏において最強の飛竜と恐れられたワイバーンオーバーロードとそれに騎乗した精鋭竜騎士たち、皇国の新たな象徴と評されていた歩く要塞ことアンギラスなど、文明圏外の国々はおろか、リーム王国などの文明国たちが束になっても敵わないほどの戦力が結集していた。
しかし、怪獣王と謳われた『二代目ゴジラ』をはじめとした天災級の特殊生物たちと存亡をかけた戦いを繰り広げてきた日本国が、本気でこれらを殲滅するために派遣した戦力・・・、『スーパーXⅢ改』や『量産型ガルーダ』、『F-15J改』戦闘機たちの前では演習の標的同然であり、一方的に撃破されて全滅していた。
そして『BP-3C』爆撃編隊が実施した大規模戦略爆撃により、皇都防衛軍基地のすべての建物や基地施設は原型を残さずに破壊し尽され、文字通り更地同然と化していた。爆撃から約30分程経過した現在も、皇都防衛軍基地の跡地からは至るところからモクモクと黒煙が上がっており、真っ赤に燃え続けてた。
その跡地上空では、航空自衛隊の『RF-4E』偵察機がゆっくりと旋回しながら飛行している。
「敵基地施設の殲滅を確認、敵残存戦力なし。第二次攻撃の必要なしと判断。」
高高度パノラミックカメラで基地跡地の様子を確認した偵察機は、アルタラス島の『ルバイル基地』へ向けて帰投していった・・・。
それとほぼ同時刻、もう片方の翼である『エストシラント港海軍本部基地』では、皇軍総司令部から陸軍基地が攻撃を受けた旨の報告を受け、多数の魔導戦列艦で構成された艦隊が迅速に準備を整え、次々と出撃を開始していた。
皇都エストシラントの南側には、第三文明圏で最大規模の港湾施設『エストシラント港』があり、皇国最大の軍港と海軍本部施設が併設されている。
フェン王国侵攻作戦において、日本国が派遣した海上自衛隊の護衛艦隊との戦闘で喪失した海軍戦力は、全皇国海軍主力の約35パーセント前後に匹敵する。非常に大きな損害ではあるが、この海軍本部には3個艦隊・・・、数にして600隻以上もの戦力が健在であった。
海軍総司令部がおかれた海軍本部棟では、バルス海将と皇国最高の頭脳と名高い作戦参謀マータルが、展開中の第三艦隊に続き、出撃中の第一&第二艦隊の様子を眺めていた。
「マータルよ、今回の戦いをどう見る?」
「皇国監察軍が最初に敗れ、次にフェン王国派遣部隊、そしてアルタラス島の守備隊も全滅しています。これほどまでの連続した大敗は、パーパルディア皇国が列強になった後の歴史としては初めての、まさに歴史的な大敗と言っていいでしょう。日本国は強い!!それは認めなければなりません。」
口惜しそうな顔で話すマータルだが、希望に満ちた顔でバルス海将の方を向いて話を続ける。
「しかし、古の魔法帝国の遺産である『ガイガン』が起動した今、皇国が負けることは万に一つも無くなりました。此度の海戦ではかなりの被害で出ると予想されますが、我が皇国の技術と物量で押しきれれば、最終的には必ず勝てると考えます。この一戦は、皇国の未来を決める分水嶺と言っても過言ではありません!」
バルス海将は、水平線の先を見つめながらポツリ呟く。
「蛮族の分際で一度ならず、二度までも皇都を踏み荒らしおって・・・。この戦いが終わったら、日本には今まで散々皇国を舐めてくれたツケをまとめて払わせてやろう。捕虜には、死よりも辛い生を味わわせてやる。皇国海軍の全力、しかと味合わせてやる!」
水平線の先で繰り広げられるであろう日本国海軍との戦いに向け、バルス海将は静かに闘志を燃やしていた。
なおご存じの通り、日本国とパーパルディア皇国の全面衝突を引き起こした原因は、すべてパーパルディア皇国のレミール皇女に因るものだ。下準備を着実に進めていたカイオス局長を更迭し、根拠のない思い込みで日本国をただの文明圏外国家と決めつけ、何の罪もない民間人を大量虐殺し、あまつさえ民族浄化宣言まで行ったことで、破滅行の急行列車が走り出してしまった・・・。
そのことを棚に上げている時点で色々お察しであるが、彼らがその考えを改めることは最期までなかった。
またルディアス皇帝をはじめ、皇国上層部全員の期待と信頼を一身に背負っている『ガイガン』であるが、日本側もそれに対抗可能な超大型対G兵器『スーパーメカゴジラⅡ』の投入を決定。他の超兵器たちとともに工業都市デュロへ接近しつつあり、陽動のためにデュロを先行出撃した混成艦隊が既に鎧袖一触に殲滅されている現実に、この時点では誰も気付いていないのであった・・・。
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中央暦1640年8月1日
フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラントの南方海域
皇都エストシラントから100キロメートルほど離れた南方の海域では、150門級戦列艦『ディオス』を旗艦とする皇国海軍第三艦隊の約200隻が展開していた。
皇国第三艦隊は元々皇都エストシラントに面した海を守護する三個防衛艦隊の一つであったが、起動の完了した『ガイガン』を主力とする日本本土攻撃部隊が来週には工業都市デュロを出撃するのに合わせ、アルタラス島を奪還する任務に就いたばかりであった。
アルタラス島を守護する日本国の艦隊を撃退するために再編成された艦隊であり、アルタラス島までの制海権の確保が任務であったため、アルタラス王国やフェン王国を侵攻したときのような陸上戦力は一切含まれていなかった。
数日前に出撃したばかりの第三艦隊であったが、『皇都防衛軍基地』が日本国の飛行機械から攻撃された旨の報告を受け、急遽、かねてから立案されていた対日本海軍の布陣をもって迎撃する命令が下された。
その布陣とは、約1キロメートルの間隔で広く展開し、その両端は約90キロメートルという圧倒的な範囲を賄う『面』に構えた異例のものだ。これは日本国海軍の実力をムー連邦の機械科学式戦艦『ラ・カサミ』級と同程度のものと想定し、それらが行う長距離射程の砲撃に対抗するために海軍本部が考え出した配置であった。さらに後方に控える約20隻の竜母艦隊の周辺には、制空権の要である竜母を守るための魔導戦列艦、そして海中からの攻撃・・・、『マンダ』による奇襲に備え、アンギラスと同様、実戦投入可能な最後の『エビラ』が海中に潜んでいる。
皇国の魔導砲よりも長射程の砲撃で被害を受けることを前提とし、こちらの射程内に敵艦が接近したときに複数の艦が集中攻撃を浴びせ、圧倒的な物量で押し切るというまさに捨て身の戦術だ。
同質同数の敵が相手であれば、各個撃破されてしまう布陣であるため、通常の皇国海軍であれば決して行わない作戦であった。
海軍本部から状況報告を受けた第三艦隊司令のアルカオン提督は、竜母艦隊へ発艦命令を出しており、ワイバーンロードたちが次々と飛び立っていく。
一方、第2、4護衛艦隊を主力とする海上自衛隊の護衛艦隊約15隻は、アルタラス島の『ルバイル基地』を出撃し、そのまま北進を続けていた。ここから北東約120キロメートルの位置に展開中の皇国第三艦隊の布陣は、後方の竜母艦隊を含めてすべてレーダーで捕捉されており、また最重要攻撃目標である皇国海軍本部の位置も人工衛星や『RF-4E』偵察機からの偵察映像によって把握されていた。
「竜母からワイバーンたちが発艦し始めたようだな・・・。これ以上数が増えても面倒だ、先に対艦誘導弾で敵竜母艦隊を殲滅する。対水上戦闘用意!」
「例の巨大エビ型特殊生物が出てくる可能性もある。海中の『きょうてん』と『スーパーX2改』は、引き続き水中ソナーによる監視を厳とせよ!」
各艦の中程に装備された発射筒から、90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)が轟音とともに次々と発射される。十分に加速した後に固体燃料のロケットブースターを切り離し、ターボジェット推進に移行した合計25発のミサイルは、データリンクで割り当てられた敵竜母たちに向けて海面すれすれの低空を時速1150キロメートル以上の超高速で飛翔していった・・・。
第三文明圏の国々に恐れられ、栄華を誇ったパーパルディア皇国海軍にとっての『終焉の宴』が始まった・・・。