中央暦1640年8月1日
フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラントの南方海域
・ 第一種警戒体制
G(ゴジラ級特殊生物)の活動が物理的以外の科学、地質、気象、精神などいかなる点でも1つ確認された場合。
・ 第二種警戒体制
G(ゴジラ級特殊生物)の活動が声、動きなど物理的に確認された場合。
・ 第三種警戒体制
G(ゴジラ級特殊生物)が出現した場合。
・ 第四種警戒体制
G(ゴジラ級特殊生物)が日本国のある特定地域に上陸することが確実とされた場合。
1984年に『二代目ゴジラ』が首都東京を襲来した『第二次ゴジラ事変』を踏まえ、当時の国土庁・特殊災害研究会議において、ゴジラ級特殊生物(略して「G」と呼称)の出現は『特殊災害』と改めて規定された。そして、上記のような特殊生物に対する四段階の特殊災害警戒態勢が新規に設けられた。
アメリカ合衆国とソビエト連邦の東西冷戦という歴史的な背景から、第二次世界大戦後の日本国は共産主義勢力から西側諸国を守る『反共の防波堤』としての役割を担っていたこともあり、日本列島の各地には警戒管制レーダー網が張り巡らされ、また領海内の海底には音響監視システム(SOSUS)が敷設されていた。
これらのシステムは、東側陣営(主にソ連軍)の爆撃機や偵察機、潜水艦を早期発見するために設置・運用されていたが、冷戦末期には『二代目ゴジラ』をはじめとした特殊生物の早期発見や動向監視のためにも使用されるようになった。
特に最警戒対象であるゴジラは主に海洋を遊泳して移動することから、本世界線の日本国は前述の音響監視システム(SOSUS)を用いた心音監視に加え、しんかい6500などの潜水艇によって日本近海の海底に設置された『Gセンサー』、ゴジラ級特殊生物の発する咆哮や体熱を感知して自動で捜索・追尾する自動ゴジラ追尾ロボット『SGS』(Searching Godzilla System)など、現実世界を大きく上回る海中監視網の構築と水中索敵技術の発達が成された。
※ 唯一の例外として、1993年の『第二次モスラ事変』において、幼虫バトラと交戦していた『二代目ゴジラ』がフィリピン海溝の海底火山から地下マントルへと潜り込み、溶岩のなかを泳ぐように移動し、富士山から出現するという離れ業も披露している。
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全長50メートルにも及ぶ巨大なエビの化け物が、海底を歩くように進んでいく。パーパルディア皇国先進兵器開発研究所の魔帝遺跡研究班が、『古の魔法帝国』の研究施設跡を悪用して創り出した怪獣兵器『エビラ』だ。
『エビラ』は皇国が第三文明圏を統一した後の世界征服、特に第二文明圏の雄にして世界第二位の機械科学文明の列強国『ムー連邦』との戦争において、かの国が守護神と崇めている海竜『マンダ』を仮想敵とした皇国初の人工水棲魔獣だ。
魔導戦列艦を容易く握り潰す巨大なハサミを用いた格闘戦を得意とし、巨体に反し、瞬間的に時速150キロメートル(約81ノット)という驚異的な短距離遊泳も可能、そしてこの世界の水上艦にとって死角である海中からの攻撃能力を有する皇国自慢の新型魔獣であった。
しかしフェン王国侵攻とアルタラス島防衛へ派遣されたエビラは、日本国の海上自衛隊によっていとも簡単に撃破されており、実戦投入可能な個体はこの一体のみとなっている。
パーパルディア皇国側も『ムー連邦』のパーパルディア皇国駐在大使ムーゲと実施された会談において、日本国の『ごうてん級』とかいう異形の最新鋭艦によって、エビラが撃破された可能性が高いことを掴んではいるものの、艦載武器の性能やどういった戦術を用いたかなどの具体的な情報はまったく得られていないのが現状であった。
また現場の士気低下を恐れた皇国上層部により、ムーゲ大使との会談時に得られた断片的な日本国の情報ですら意図的に秘匿されていたこともあり、これまで同様、エビラを海中から侵攻させるというただの焼き直し戦法で本海戦へ臨んでいた・・・。
一方、日本国側はフェン王国の首都アマノキ南東海域、そしてアルタラス島の北東海域における過去二回の交戦データを基に、アンギラス同様、その生態把握と予想される最適攻略法を編み出していた。
実際のところ、アマノキ南東海域での戦闘では、200ノット以上の超高速航行が可能なスーパーキャビテーションシステムの搭載された『スーパーX2改』でなければ、エビラに捕捉されかねない危ない面があった。
その反省も踏まえ、今回派遣されたごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の1番艦『ごうてん』には、巨大エビ型特殊生物ことエビラとの三度目の交戦に備え、過去二度の交戦時に得られた心音などの生体データを基に調整された『SGS』も搭載していた。
水中ソナーがエビラを捉えたタイミングで、2メートルという人間サイズの超小型水中ロボットたちは人知れず、暗い海中へ解き放たれる。その後、『はくげい』の上部ハッチから出撃した『特殊潜航艇さつま』無人仕様機たちは、『SGS』が放った発進機の位置情報を基に未知の海底をゆっくり航行していくのであった・・・。
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暗い海底を歩くように進むエビラは、ピコーンというソナー音とゴーという低い低周波(スクリュー音)を発する何かが複数接近してきていることに気付いた。左右のハサミを振り上げて威嚇するが、それらは怯むことなくどんどんと近付いて来る。
『SGS』たちはエビラの放つ心音や体熱を頼りに、40ノットという水中翼船並みの航行能力で暗い海中を進んでいく。そしてエビラと思われる巨体へと接近すると、その周囲をハエのように泳ぎ回り、その巨体の至るところに発信機を打ち込んでその詳細な位置情報を艦隊へ逐一送り続ける。
周囲を遊泳する『SGS』たちに苛立ちを覚え、エビラは右腕の巨大なハサミと左腕の鋭利な槍状のハサミを振り回すが、2メートルというあまりに小さなサイズの水中ロボットたちを捉えることが出来ない。
自身の周りを泳ぎ回るだけで一切攻撃を行わず、敵意をまったく感じなかったためか、エビラは『SGS』たちを無視し、再び日本国の艦隊が布陣する海域へ向けて進み始める。
「『SGS』たちは、接近中の巨大エビ型特殊生物を捕捉。体表への発信機の打ち込み完了。」
ごうてん艦橋では、CICから『SGS』の状況報告を受けた艦長の神宮寺二等海佐が、顎の下に手をあて、考え込むような仕草をしながら次の司令を下す。なお苗字で気付かれた方もいるかもしれないが、1963年の『ムウ事変』において初代『轟天号』の艦長を務め、『マンダ』を撃破して『ムウ帝国』を滅亡に追い込んだ神宮寺大佐の子孫である。
「よし、作戦は第二フェーズへ移行。『SGS』たちを一旦、安全圏へ退避させろ。本艦を含む潜水艦隊は、発信機の位置情報を基に魚雷攻撃を開始!」
海中に潜む『ごうてん』と『スーパーX2改』、そして『はくげい』の魚雷発射口から、89式長魚雷や18式長魚雷たちが次々と射出される。
エビやカニなどの甲殻類の表面を覆う硬い甲殻は、構造的には鉄筋コンクリートのような複合組織から形成されている。キチンナノファイバーと呼ばれる高強度かつ低熱膨張の繊維質が鉄筋の役目を果たし、その周囲を埋めるタンパク質と沈着した炭酸カルシウムがコンクリートとして機能している。この硬い層を何層も積層することで、鎧のような強固な装甲とフレキシブル性を両立させているのだ。
化学的にも分解されづらく、まさに鉄壁のように思えるこの硬い甲殻だが、その頑丈さゆえに衝撃波がそのまま内部へ伝搬してしまうという欠点がある。構造例で挙げた鉄筋コンクリートは、引張力に強い鉄筋の周囲を圧縮力に強いコンクリートで被覆して一体化させることで、非常に高い耐久性や耐震性を実現している。しかし爆発などの非常に強力な衝撃波が加わった場合、衝撃波がそのまま伝搬し、衝撃を受けた反対側の面が剥がれ落ちる現象が発生してしまうのだ。
発射された魚雷群は、エビラの体表へ打ち込まれた発進機を目指して50ノット以上の速度で海中を進み、海底の土砂へと身を潜めたエビラへ正確に直撃する。アマノキ南東海域で戦闘したときとは異なり、今度はエビラの体に直接打ち込まれた発進機という明確な目印が存在するため、正確な魚雷の誘導が可能となっているのだ。
カン、ピキィィィン!
金属の構造物が、エビラの硬い甲殻へ衝突した甲高い音が漆黒の深海に響き渡る。次の瞬間、エビラの巨大な体躯を覆う重装甲の甲殻を直撃した魚雷が、搭載された指向性爆薬のエネルギーを解き放つ。
第一陣の魚雷群の炸裂で生じた爆圧と衝撃波が、絶対の防御を誇るエビラの殻に目に見えない無数の微細な亀裂(マイクロクラック)を走らせる。エビラが体勢を立て直すより早く、第二陣の魚雷群が次々とエビラへ殺到した。
二度に渡る魚雷群の炸裂により、マイクロクラックの走ったエビラの甲殻は白く変色し、地割れのようなヒビ割れを表面に作り出していた。甲殻を伝搬した衝撃波により、硬い甲殻の最下層である内クチクラ層とそれらを保持する筋肉との間で剥離が発生したのだ。
「第一陣、着弾!」
深海を揺るがす爆鳴が、ソナーのヘッドホンを引き裂かんばかりに響く。咆哮ともつかぬ重低音の振動が海中を伝わってくるのと同時に、二発目、三発目が連続して着弾し、海水が大きくかき乱される。
「潜水艦隊の発射した魚雷群は、すべて巨大エビ型特殊生物へ命中!」
「『SGS』たちを呼び戻し、再度発信機を打ち込ませます。対象の甲殻に多数のヒビを確認!」
「よし、『特殊潜航艇さつま』は、インターバルを挟んで『推進式削岩弾D-03』搭載型魚雷発射し、即時に海域を離脱せよ!」
安全な距離へ退避していた『SGS』たちが、再度エビラの周囲へ近づいてくる。魚雷群の炸裂により巻き上がった砂煙の影響で視界がほぼゼロのなか、エビラの発する心音などの生体反応をもとにその巨大な体躯中にもう一度発信機を打ち込み、そしてすぐさま離脱していく。
既に自慢の甲殻はヒビだらけで、脚も数本が千切れてしまった無惨な状態であるが、かの魔法帝国が遺した魔導技術で操られているエビラは、いまだ戦意を喪失しておらず、自分を追い込んだ仇敵への憎悪を募らせていた。
怒りで我を忘れているのか、エビラは自分の周囲をマンタのような平たい形状の小型潜水艇が取り囲んでいることに気付いていない。
次の瞬間、エビラを包囲した『特殊潜航艇さつま』無人仕様機たちが、機体下部で抱え込んでいた『推進式削岩弾D-03』搭載型魚雷を発射した。
激しい気泡の尾を引きながら『推進式削岩弾D-03』が、狂暴にハサミを振り回すエビラへと肉薄する。そしてヒビの走ったエビラの甲殻へと直撃し、その凶悪な尖端を正確に突き立てた。
金属と硬殻が激突する凄まじい衝撃音が深海に響くと同時に、弾頭先端の超硬質ドリルが凄まじい高周波の回転音を上げて駆動を始めた。本体弾頭部のドリルはボロボロの甲殻を削り、エビラの甲殻内部へどんどん侵入していく。
寄生バエに寄生され、その幼虫に生きたまま細胞を食べられているかのような激痛に、エビラは巨大なハサミを激しく振り回し、狂乱の泡を巻き上げて暴れまわるが、無機質な弾頭は内側の肉組織ごと強引に、そして冷酷に穿ち進んでいく。
エビラの周囲には、ドリルで粉砕された硬い殻の破片が舞い、傷口からはキチン質の肉とドロリとした青緑色の体液が激しく噴き出していた。
「D-03、目標の体内への侵入を確認。深度、充分です!」
「全弾起爆!!」
エビラの50メートル近い巨体が、内側から風船のように一瞬、不自然に大きく膨らんだ。深海の超高圧すら跳ね返す、鈍く、そして圧倒的な地鳴りのような爆発音とともに耐えきれなくなった甲殻が内側から吹き飛ぶ。凄まじい衝撃波とともに、無数の肉片と砕け散った甲殻が漆黒の海へと四散する。
体中に巨大な風穴を開けられたエビラは、何十トンもの青緑色の血の霧を撒き散らしながら、力なく深海の闇の底へと沈んでいった。
※ 自動ゴジラ追尾ロボット『SGS』(Searching Godzilla System)
出典 : ゴジラ×メガギラス G消滅作戦(2000年)
ゴジラ級特殊生物を早期発見、捕捉するために開発された水中用無人偵察機。ゴジラ級特殊生物の発する咆哮や体熱などを感知し、40ノットという水中翼船並みの航行速度で自動捜索・追尾が可能。
海底に設置された音響監視システム(SOSUS)や『Gセンサー』で特殊生物を捕捉した際、航空機から捕捉海域へ投下され、全長2メートルという人間サイズを活かして対象へと接近。その体内へ発信機を打ち込み、以後の動向を監視し、詳細な位置データを逐一本部へと送信し続ける。
海底地形データが殆ど得られていない皇都エストシラント沖海域において、エビラと交戦になるる可能性を踏まえ、過去二度の交戦時に得られた心音などの生体データを基に調整された機体が戦線へ投入された。
※ 特殊潜航艇さつま
出典 : ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001年)
はくげい級原子力潜水艦やごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦など、原子炉(レーザー核融合炉)を有した原子力潜水艦の運用開始に伴い、それらの海難事故発生時の作業を想定して開発された小型潜水艇。
全長6メートルという小型艇でありながら、水中を20ノットで航行が可能であり、また必要に応じて無人化による遠隔操作や『推進式削岩弾D-03』搭載型魚雷による武装などが可能。