東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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117. エストシラント沖大海戦 後編

 

中央暦1640年8月1日

フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国

皇都エストシラントの南方海域

 

 

海中で神宮寺艦長の指揮する潜水艦隊とエビラが交戦を開始した頃、海上の戦闘も激しさを増していた。90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)による竜母艦隊へのアウトレンジ攻撃から生き残った竜騎士たちが、護衛艦隊と会敵しようとしていたのだ。

 

パーパルディア皇国海軍の飛竜隊隊長ダイロス率いる250騎の竜騎士たちは、母艦である竜母艦隊が全滅した後、第三艦隊の旗艦『ディオス』からの方角指示に従って日本国の艦隊を目指して飛行していた。

 

既に日本国艦隊と皇国海軍第三艦隊の魔導戦列艦は戦闘状態に入っているが、その戦闘は圧倒的と言って良いほど日本国側が優勢であった。

 

日本国の艦船は皇国軍の完全なアウトレンジから砲撃を行い、縁日の的当てのごとく、次々と友軍を沈めていく。幸いなことに、自分たちの母艦である竜母を沈めた『光の矢』は一切使用しておらず、ひたすら数門だけ設置された回転砲塔のみを使用していた。

 

もしかすると、同時使用は出来ないのかもしれない・・・と考えたダイロス隊長は覚悟を決め、水平線上に見えてきた艦影に向かって飛び続ける。

 

「全軍突撃! 日本軍を滅せよ!!」

 

勇ましい叫び声をあげ、竜騎士たちは輪形陣の先頭を進むこんごう型護衛艦『きりしま』とはたかぜ型護衛艦『しまかぜ』に向かって突撃を敢行する。

 

しかし、敵艦から猛烈な勢いで『光の矢』が打ち上げられ、上空で軌道を修正して襲い掛かってきた。皇国から恐れられた誘導魔光弾こと、艦対空ミサイルだ。ミサイルは後方に布陣していた艦隊からも次々と発射され、猛烈な速度で迫ってくる。

 

ミサイルにロックオンされた竜騎士たちは、逃げきることも迎撃することも出来ず、正確かつ当たり前のように次々と撃墜されていく。

 

「おのれぇ! 化け物めぇぇぇぇ!!」

 

皇国軍に残された最後のエビラが潜水艦隊に撃破されたのとほぼ同じとき、ダイロス隊長率いる皇国海軍の飛竜隊は、日本国艦隊へ導力火炎弾を一発も発射することなく、全滅することとなった。

 

 

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「・・・ざ、残存竜騎士団、全滅しました・・・。敵艦への、有効攻撃なし・・・。」

 

「エ、エ、エビラの生命反応が・・・、と、途絶しました・・・。日本国艦隊に屠られたものと思われます。敵艦隊の数に変化なし・・・。」

 

第三艦隊の旗艦『ディオス』は、沈黙と絶望が支配していた。アルカオン提督たちは唯一の頼みの綱であったエビラと竜騎士団の敗北に絶望し、あまりに隔絶した実力差に為すすべが無いと理解し始めていた。

 

「戦列艦マルタス、レジール轟沈、ターラスに着弾・・・。轟沈しました。」

 

味方艦が沈められるだけの状況に、アルカオン提督は覚悟を決める。そもそもの前提として、皇国海軍の主力が皇都の目と鼻の先で、戦力を残した状態で降伏や撤退が許されるはずなどない。

 

「第三艦隊は全艦、進攻中の日本艦隊へ突撃せよ! あの化け物どもに皇国海軍の意地を見せてやれ!!」

 

面のように薄く展開した皇国艦隊に対し、その面を突き破るように日本国の護衛艦隊が進攻する。接近した魔導戦列艦から順に撃沈され続けるなか、第三艦隊の旗艦『ディオス』が布陣する艦隊後方にも、終わりのときが訪れようとしていた。

 

突如として、地鳴りのような重低音が、木製の船底を通じて響いてきたのだ。それは急速に大きくなり、『ディオス』の右舷に布陣する魔導戦列艦『カミオ』前方の海面が不気味に沸き立ち始める。

 

次の瞬間、凄まじい爆音とともに海面が山のように盛り上がり、魔導戦列艦『カミオ』の船体が粉々になりながら宙を舞う。それと同時に、高速回転する巨大な鋼鉄の螺旋が海中から突き出した。ごうてん級護衛艦のシンボルである艦首超大型ドリルだ。

 

ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の1番艦『ごうてん』艦首に装備された超大型ドリルの一撃は、魔導戦列艦『カミオ』の船倉、甲板、そして巨大なマストに至るまで船体のすべてを巻き込み、下から上へと一気に粉砕する。

 

魔導戦列艦『カミオ』を文字通り「串刺し」にして粉砕した『ごうてん』の1万トンを超える超巨大な艦体が、大量の海水を滝のように撒き散らして海面に姿を現す。下から突き上げられて木端微塵された魔導戦列艦『カミオ』の残骸は、乗組員ともども巨艦の浮上によって生じた凄まじい引き波の渦へと呑み込まれていく。

 

エビラを使役する自分たちだけの特権だと思っていた『水中からの強襲』を受け、パニックに陥る皇国海兵たちを横目に、海上に浮上した『ごうてん』の船体から、格納されていた四基の三連装プラズマメーサービーム砲塔が姿を現し、周辺の魔導戦列艦へ砲撃が開始された。

 

『ごうてん』から、12本の紫色に輝きつつ稲妻状に蛇行する光線が発射され、周囲の戦列艦の横腹を正確に捉えていく。強力なエネルギーの直撃を受けた魔導戦列艦の木造船体は、光線が触れた先から瞬時に炭化して発火。あっという間に船体内部の火薬庫へと達し、大爆発を起こした。『ごうてん』を中心に、まるで同心円状に広がるように、旗艦『ディオス』を含む数十隻の魔導戦列艦が次々と巨大な火柱を上げて消し飛んでいく。

 

前方から護衛艦隊、後方から『ごうてん』による挟撃を受けた第三艦隊の魔導戦列艦約200隻は、全滅することとなった。

 

 

==========================================================================

 

 

海将バルスは、海軍本部棟にある作戦会議室の窓から軍港の先に映える水平線を眺めていた。軍港で出港準備を進めていた第一、第二艦隊の姿も既になく、日本国艦隊と第三艦隊が激闘を繰り広げている海域に向けて航行中であった。

 

作戦会議室には、皇国の頭脳と呼ばれているマータル大参謀をはじめ、皇国海軍の主要幹部たちが集まっているが、その空気はこれまでにないほど重々しい雰囲気に満たされていた。

 

日本国艦隊と第三艦隊の戦闘が始まった旨の報告が上がってから、既に10分程度が経過しているが、机に広げられた海図には皇国艦の撃沈を示すマークばかりが刻まれ続けている。次々と入る戦況報告に、流石のマータル大参謀も焦りの色を隠せない。日本国の護衛艦と皇国の魔導戦列艦の性能差が、想定の遥か上であったという現実をなかなか受け入れられずにいた。

 

百発百中の長射程砲と一発で魔導戦列艦を沈める威力のある砲弾、そして超アウトレンジから正確に攻撃可能な誘導魔光弾・・・。非常に高い対艦能力に加え、対第三文明圏において最強と畏怖された竜騎士、そして海戦において無敵と評されたエビラすら、容易く撃破するという破格な性能・・・。

 

超絶チート野郎と罵倒したくなるような日本国の艦隊を相手に、どう陣形を変えれば良いか、どういった作戦をとれば良いか、まるで案が浮かばないのだ。

 

「海中から『漆黒色をした謎の物体』が出現! ・・・緊急連絡、緊急連絡! 艦首に巨大な衝角のようなものを確認したと前線の魔導戦列艦から報告あり!! 特徴的な形状から、ポクトアール提督の報告書に記載のあった、例の日本国の新鋭艦と予想されます!!」

 

「第三艦隊の旗艦『ディオス』、撃沈されました。第三艦隊は全滅状態です。アルカオン提督以下第三艦隊の幹部たちの生死不明・・・。」

 

そうしている間にも、矢継ぎ早に絶望的な戦況報告が入り続ける。

 

「・・・よし! バルス海将! 第一、及び第二艦隊は最密集隊形で、日本艦隊へ突入させましょう!!これほど差があるとは思いませんでした。幸い、日本軍は数が少ないようです。奴らを倒すには、数で押し潰すしかありません。」

 

マータル大参謀は、ここで大きな過ちを犯した。『ロデニウス大陸沖大海戦』において、旧ロウリア王国海軍が同じく最密集隊形で日本国の護衛艦隊へ突撃し、どういっ末路を辿ったかを知っていれば、マータル大参謀もこのような作戦を提案するようなことはしなかっただろう。

 

しかし、観戦武官ヴァルハルが詳細に書き記した『ロデニウス大陸沖大海戦』の戦闘内容、またロデニウス大陸の民間人や商人たちから聞き取り、集められた調査資料などは、すべて処分されてしまっており、皇国海軍上層部に本海戦の詳細を知る者は一人もいなかった・・・。

 

マータル大参謀の考えたこの作戦はバルス海将の命となって全軍へ通達され、第一艦隊と第二艦隊は密集隊形で日本国の護衛艦隊へ向かっていった。

 

 

=========================================================================

 

 

総旗艦であるひゅうが型護衛艦『いせ』の艦橋へ、戦場の刻一刻と変化する状況が伝えられる。懸念していた皇国の水棲怪獣兵器は、潜水艦隊が撃破した巨大エビ型特殊生物の一匹だけだったようで、現在のところ、作戦は順調に推移している。

 

しかし、敵国首都の港から続々と出撃してくる敵艦の量は、自衛官たちの緊張を持続させ続けるには十分な脅威だった。第三艦隊約200隻を撃沈したのも束の間、第一艦隊と第二艦隊の合計約400隻が向かってきているのだ。

 

「密集陣形をとってきたか・・・。敵さんも捨て身のつもりだな。」

 

「『93式メーサー攻撃機』は艦隊の攻撃圏外の敵艦を攻撃し、進路の確保。艦隊は『ごうてん』を先頭に目標である皇国首都へ進攻する。『ごうてん』は艦主砲で前方に立ちふさがる敵艦隊を薙ぎ払い、他護衛艦隊は側面6キロメートル圏内のみを攻撃!」

 

 

===========================================================================

 

 

日本国海上自衛隊の護衛艦隊は、パーパルディア皇国の皇都エストシラントに置かれた海軍本部施設まで約150キロメートルまで接近していた。その間にも、密集陣形で接近する第一艦隊と第二艦隊の魔導戦列艦を撃沈し続けており、既に残存艦数は50隻前後まで減っていた。

 

側面に布陣する魔導戦列艦たちは、護衛艦の127mm単装速射砲の砲弾一発で船体を容赦なく突き破られ、一隻ずつ的確に殲滅されていた。一方、密集陣形の前方、つまり『ごうてん』艦主砲の射線上に位置していた魔導戦列艦隊は、まさに地獄の様相を呈していた。

 

巨大な螺旋状の衝角の先から、巨大な極太の極彩色に輝く光線『ドリルスパイラル・メーサー砲』が照射される。螺旋の衣を纏った一条の超高出力熱線は、皇国海軍にとっては光線ではなく、空間そのものを穿つ光の巨槍であった。

 

バチバチと激しい電撃を撒き散らしながら一直線に伸びたメーサー砲は、密集して突っ込んできた皇国魔導戦列艦隊の中央へと突き刺さり、艦隊を薙ぎ払っていく。

 

光線の直撃をモロに受けた魔導戦列艦は即座に消滅し、かすった艦も光線に触れた刹那、積載されていた魔石や魔導砲弾が誘爆して爆散。海上に巨大な火柱の列が次々と立ち上がる。極彩色の光線が海面を横切るたび、断末魔の叫び暇すら与えられず、何十隻もの戦列艦が真っ二つに裂け、爆炎を上げて海の藻屑と消えていく。

 

しかし、パーパルディア皇国の海兵たちは勇敢だった。数百人が死んでいくにも関わらず、勇敢に立ち向かい、そして列強パーパルディア皇国の守護者に相応しい、壮絶な最期を遂げていく。

 

「敵艦隊の壊滅を確認! 攻撃目標である皇国海軍施設がミサイルの射程に入りました。」

 

「了解。目標、敵海軍本部。SSM(90式艦対艦誘導弾)三発、準備完了次第、撃て!!」

 

護衛艦『たかなみ』から発射された90式艦対艦誘導弾は、海軍本部棟へ命中。豪華な装飾が施され、威厳と威容を放っていた皇国海軍本部が爆炎と轟音をたてて跡形もなく崩れ落ちていく。

 

他国を恐怖と暴力で支配し、列強パーパルディア皇国の皇都エストシラントを守護していたもう一つの力の象徴が、木っ端微塵に砕けった瞬間であった。その後、湾口施設や軍用ドック、武器弾薬貯蔵庫など無事だった施設も、海上自衛隊の攻撃で完膚なきまで破壊された。

 

また作戦会議室で指揮をとっていたバルス海将をはじめ、マータル大参謀など皇国海軍幹部たちも皇国海軍本部の崩壊に巻き込まれて軒並み戦死し、パーパルディア皇国は海軍全体の指揮能力を喪失。海軍戦力についても、救助のために見逃された数十隻の魔導戦列艦を除き、約600隻近くが轟沈、または航行不能となり、パーパルディア皇国海軍は実質的に壊滅状態となった。

 

 

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