中央暦1640年8月1日
フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
工業都市デュロ
『スーパーX』から始める対特殊生物向けの超兵器群だが、これらはすべて『二代目ゴジラ』をはじめとする『ゴジラ級特殊生物』を仮想敵として開発されてきた。
無限のエネルギーを生み出す体内原子炉による無尽蔵の体力、あらゆる傷を即座に回復させるG細胞由来の超回復力、並大抵の装甲では耐えることすら困難な放射熱線という超強力な遠距離攻撃能力、そしてあらゆるものを粉砕し、自分の倍以上の相手を容易く放り投げるほどの格闘能力・・・。唯一、陸上での動きが緩慢という弱点はあるものの、生物としてはまさに完全無欠な存在だ。
※ 1994年の幕張決戦において、二代目ゴジラ(約6万トン)がメカゴジラ(約15万トン)を投げ飛ばしています。
これに対抗するために編み出した人類の戦術は、1984年の『第二次ゴジラ事変』において首都東京へ襲来した『二代目ゴジラ』と激突した『スーパーX』の戦闘スタイルが基本となっている。
『超装甲で相手の熱線や光線に耐え、中遠距離攻撃で攻めかける』
『陸上での動きが緩慢である』というゴジラ唯一の弱点を突くかたちで、危険な接近戦を避け、唯一の脅威である放射熱線に耐えられる超装甲でガードをかため、距離をとって安全な中遠距離からメーサー砲やミサイルなどの飛び道具で攻め立てるというものだ。
1995年の『スペースゴジラ事変』において『スペースゴジラ』と激突した『MOGERA』、海上自衛隊の最新鋭艦である『ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦』など、接近戦向けの武装としてドリルが装備された超兵器も存在する。
しかし、それらはあくまで接近された場合の緊急時に使用する保険的なものであり、これらを使用して怯ませたら再度距離をとり、中遠距離戦に戻すためのものであった。
また『バトラ』や『ラドン』、『スペースゴジラ』、『グランドギドラ』など、『ガイガン』と同等(マッハ3)以上で大気圏内を飛行可能な特殊生物たちは、地球で何種類も確認されている。しかし、あれはあくまで『最高飛行速度』であり、そこまでに到達するためのの加速能力や空中機動性は、『ガイガン』が頭一つ以上飛びぬけていたのであった・・・。
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『ガイガン』に巨大な鎌『ハンマー・ハンド』を叩きつけられ、ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦の2番艦『しんてん』は墜落。姿勢制御を失い、『デュロ防衛隊陸軍基地』の本部棟へと突っ込んだ。
『ごうてん型護衛艦』が・・・、この異世界に国家転移してから八面六臂の大活躍をしていた超兵器が、初めて土を付けられた瞬間であった。
「被害状況を報告せよ!」
「艦主砲は発射可能ですが、艦首超大型ドリルの駆動ユニットに異常発生!」
「機関室(レーザー核融合炉)異常ありません!」
瓦礫に埋もれ、完全に沈黙した現在の姿は、傍からみれば完全に撃沈されているように見える。『ごうてん型護衛艦』の装甲は、対放射熱線を想定した耐熱性に加え、深海の高圧にも耐えられるよう設計された重装甲であった。また幸いなことに、『ハンマー・ハンド』の振り下ろされた箇所が高速回転中の艦首超大型ドリルであったことから、船体構造や重要機関の損壊は免れていた。しかし・・・。
「重力制御システムがダウンしています。このままでは『しんてん』は浮上航行出来ません!!」
ブリッジの中で非常灯が激しく点滅する中、乗組員たちに焦燥が走る。機関室(レーザー核融合炉)とメイン推力が無事なため、もし海上であればそのまま戦闘を続けることが出来ただろう。
だが、今の戦場は陸上である。重力制御システムがダウンしていれば、空中へ再浮上が出来ず、動くことが出来ない。まさに『陸に上がった魚』のような状態だ。
「サブフロートユニット緊急稼働! メインシステムの再起動を急げ!!」
「ダメです! 本艦上に積みあがった瓦礫の重みで、サブユニットだけでは身動きが取れません!!」
本部棟の瓦礫に埋まったまま完全に沈黙し、身動きの取れなくなった『しんてん』のブリッジで乗組員たちに緊張と絶望が走る。システムの復旧には、まだ時間がかかる。
「なかなか手強かったが、やはり『ガイガン』の・・・、『魔法帝国』の敵ではないな。装甲の隙間をこじ開け、ヤツにとどめだ!!」
地上で身動きの取れない『しんてん』を見下ろし、『ガイガン』は勝ち誇ったように胸の回転ノコギリを火花とともに起動させた。とどめの一撃を刺すべく、その巨体がゆっくりと降下してくる。
その瞬間だった。
キィッ!?
ガイガンは強大な熱エネルギーの接近を魔導センサーで感知し、アルバートの魔法操作に先んじて反射的に急制動をかける。直後、ガイガンのすぐ目の前を極彩色をした超高出力ビームが通過した。
ドゴォォォォン!!
地平線の彼方から放たれた極太の極彩色の超高出力ビームは、『デュロ防衛隊陸軍基地』へと着弾し、凄まじい大爆発と天を突くほどの爆炎が舞い上がる。『二代目ゴジラ』の青色放射熱線とも拮抗可能な威力を誇る『スーパーメカゴジラⅡ』のメインウェポン・・・、『メガ・バスター』だ。
「さっきの超威力魔光砲と同等の砲撃だと!? 一体何だ!?」
強烈な衝撃波に煽られ、『ガイガン』の巨体が大きくよろめく。ターボジェットエンジンから眩い光と白い煙を出し、両翼のローターからハリケーンのような轟音と風圧を発生させながら、『機械の神龍』が降臨する。
二代目ゴジラを彷彿とさせる鋭利なディテールの頭部、巨大なローターを有した一対の巨大な翼、そして先代機の滑らかな流線型とは対照的な鋭角な面で構成された巨大なボディ。
1994年の幕張決戦において、これまでの兵器を凌駕する超火力と鉄壁の防御力で二代目ゴジラを圧倒し、一度は絶命寸前にまで追い詰めた超大型対G兵器『スーパーメカゴジラ』の後継機。
Gフォースが誇る超大型対G(ゴジラ級特殊生物)兵器の二枚看板の片割れ、『スーパーメカゴジラⅡ』だ。
『スーパーメカゴジラⅡ』は着地することなく、ホバリングで滞空した状態で自由を奪われた『しんてん』を背に庇うように両者の間に割って入る。
120メートルにも及ぶ巨大な体躯を構成する重装甲・・・、人工ダイヤモンドミラーコーティングが施された超耐熱合金『NT-1S』のボディが太陽光を浴びて鈍く銀色に輝き、全身に幾重もの重火器を纏った荒々しくも美しい様は、周囲へ圧倒的な威圧感を与える。
「なんだ、あの銀色をした巨大な竜は? まさか『エモール』の増援か・・・?」
かつて『古の魔法帝国』と激闘を繰り広げた『インフィドラグーン』・・・。その末裔である『エモール王国』が数か月前、日本国と対等な立場で国交樹立した旨はアルバートも把握していた。魔帝の尖兵である『ガイガン』の存在を察知し、亜神竜クラスの増援を寄越したのかと思い、魔力スカウターで確認を行う。
その結果は、まさかの反応なし・・・。つまり魔力がまったく検出されなかったのだ。
「魔力反応がゼロだと・・・!? それではあの竜は・・・、生物ではないとでも言うのか!?」
ターゲットを『しんてん』から『スーパーメカゴジラⅡ』へと切り替えた『ガイガン』は、バイザー状の単眼を一層激しく赤く明滅させ、両腕のハンマー・ハンドを打ち鳴らして威嚇の咆哮をあげた。
『日本国が有する地球科学技術の結晶』と『古の魔法帝国が遺した生物兵器』。工業都市デュロにおいて、決戦の火蓋が切って落とされた。
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「すまない『しんてん』、別動隊への対応でこちらへの合流が遅れてしまった。そちらの被害状況は? 飛び上がれそうか?」
『しんてん』の薄暗いブリッジに、『スーパーメカゴジラⅡ』からノイズ混じりの無線が飛び込んできた。
「こちら『しんてん』。墜落の衝撃で、重力制御システムがダウンしてしまって動けない。すまないが、戦線復帰するには数十分程度必要だ・・・。」
メインモニターに映るガイガンの不気味な動きを凝視しながら、緊迫した声で続ける。
「この『カギ爪怪獣』だが、頭部から放たれる光線の威力は全然大したことない。こちらの装甲であれば、余裕で無効化出来る。遠距離攻撃能力は、まったく脅威ではない!」
「だが、奴の本質は空中での圧倒的な機動性にある! 三枚の翼を使った三次元的な超高速移動は、『バトラ』や『ラドン』以上だ!! 非生物的な軌道に惑わされ、懐に飛び込まれたら、両腕の鎌と腹のノコギリで一気に攻め立てられるぞ! 距離を誤るな!!」
「了解、機動性を警戒しつつ、近接戦闘への移行を阻止する。そちらはシステムの復旧を優先してくれ!」
空中戦が危険である旨を伝えられたため、『スーパーメカゴジラⅡ』はホバリングモードからランディングモードへと移行し、『デュロ防衛隊陸軍基地』跡地へゆっくりと着陸する。
「オールウェポン、ターゲットロックオン!」
迫り来る新たな敵を認識したガイガンは金属質の鳴き声を上げ、背中の三枚の翼を激しく羽ばたかせた。重力を無視したような超加速で、ガイガンの巨体が大空へと舞い上がる。
「全砲門、一斉射撃開始!!」
スーパーメカゴジラⅡの角張った顎が限界まで開き、口内に凄まじいエネルギーが収束する。メインウェポンである『メガ・バスター』だ。
口内から放たれた極太光線『メガ・バスター』が、極彩色の螺旋を纏いながら『ガイガン』へ向かって一直線に伸びる。また同時に、両目に装備された『プラズマレーザーキャノン』、そして両腕の両腕の指先に装備された『四連装プラズマメーサービーム砲』が眩い光を放ち、『スーパーメカゴジラⅡ』の全身から指向性エネルギー兵器が一斉に火を噴いた。凄まじい熱エネルギーは周囲の空気を急激に膨張させ、凄まじい衝撃波が臨海地帯を震わせる。
キィィィン!という耳を劈く駆動音とともに、ガイガンの背中の三枚の翼が、生物には不可能な角度で逆噴射をかける。慣性の法則を完全に無視し、直進していた巨体が空中で錐もみ回転しながら直角に真上へと跳ね上がる。
直撃コースだった『メガ・バスター』が、ガイガンの足先をかすめて遥か彼方の雲を消し飛ばした。次々とビームやミサイルが雨霰のごとく放たれるが、ガイガンはさらに不気味な「非生物的」な動きを見せる。
関節の可動域を無視し、首や手足を奇妙に折りたたんだ姿勢のまま、致命傷となる砲撃を確実に避けるように飛び回る。ジグザグ、あるいは直角に、まるで古いビデオテープのコマ送りのような、カクカクとした超高速の軌道で空中を急加速・急減速する。
生物らしい予備動作、いわゆるタメのようなものが一切ない。右へ動くと見せかけた瞬間に、ベクトルを真逆に切り替える。その機械特有の予測不能な三次元的な機動により、『スーパーメカゴジラⅡ』が放つ圧倒的な大火力の弾幕は、すべて『ガイガン』の残像を虚しく突き抜けていく。
『ガイガン』も頭部から『ギガリューム・クラスター』と『魔導レーザー』を放ち、『スーパーメカゴジラⅡ』に反撃するが、『ごうてん型護衛艦』に匹敵する強固な超装甲を前に、完全に無効化されている。ゴジラの放射熱線を無効化する鋼鉄の巨体には、傷一つ付かない。
「クソ、こいつの装甲も先ほどの空中戦艦クラスか!! それにしても、魔光砲の砲撃密度が桁違いだ・・・。 早いところ、こいつも接近戦で片づけるしかないか!」
一発でも当たればジ・エンドとなる『スーパーメカゴジラⅡ』の強力な砲撃を、『ガイガン』はすべて紙一重でかわし切った。その赤い単眼が、最大火力を放ち終え、僅かに硬直した『スーパーメカゴジラⅡ』を捉える。
空中を不規則に反転しながら、『ガイガン』が急降下してくる。腹部の回転鋸がギャリギャリと火花を散らし、両腕の鎌が『スーパーメカゴジラⅡ』の頭部を目掛けて振り下ろされようとしていた。
「緊急回避シーケンス始動! ローラーシステム最大駆動!!」
急降下する『ガイガン』の巨大な鎌が、『スーパーメカゴジラⅡ』へ肉薄しようとした瞬間、数十万トンに及ぶ鋼鉄の巨体が、まるで氷上を滑るかのように真後ろへとスライドした。
ガギィィィンッ!!
一瞬前まで『スーパーメカゴジラⅡ』がいた地面を、『ガイガン』の両腕の鎌が猛烈な勢いで叩き割る。地響きとともに深い亀裂が走り、基地の残骸が派手に吹き飛んだ。しかし、その一撃は完全に空を切っている。
攻撃を外した際の着地の衝撃を殺しきれず、『ガイガン』が僅かに体勢を崩す。その隙を逃さず、『スーパーメカゴジラⅡ』の角張った顎が瞬時に開き、口内から極彩色のエネルギーが放射された。
滑走しながらも、『スーパーメカゴジラⅡ』の巨体は完全に安定している。これこそが『MOGERA』において導入された画期的な地上移動システム・・・、劣悪な地上移動を大幅に改善しつつ、走行しながら正確な砲撃を行うために設計された『ローラーシステム』の真価だ。
至近距離から放たれた極太の光線が、『ガイガン』を捉える。着地の寸前に辛うじて身を翻した『ガイガン』だったが、その驚異的な回避速度を以てしても、『メガ・バスター』のカウンターを避けきることは出来なかった。
『メガ・バスター』は『ガイガン』の胸部を掠め、そのまま地面に突き刺さったままの『ガイガン』の左腕を正面から直撃し、凄まじい熱量と衝撃波が『古の魔法帝国』の遺産の左腕を包み込んだ。
金属が絶叫を上げるような引き裂き音が響き渡り、巨大な鎌『ハンマー・ハンド』が根元から千切れ飛ぶ。内部のコードや魔導回路が火花を派手に吹き散らし、『ガイガン』の左腕が夜空へと吹き飛ばされた。