119話 ~ 121話のタイトルがネタバレ的な感じになっていますので、修正させて頂きました。
中央暦1640年8月1日
フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラント
パーパルディア皇国の工業都市デュロで『日本国が有する地球科学技術の結晶』と『古の魔法帝国が遺した生物兵器』が・・・、『スーパーメカゴジラⅡ』と『ガイガンミレース』が激闘を繰り広げていた頃、首都『皇都エストシラント』中央部に鎮座する皇宮パラディス城では、大会議室で緊急帝前会議が開催されていた。
国家の危機的状況に陥った場合にのみ開催される本会議だが、その議題は説明するまでもなく、日本国への対策と今後の国家方針についてであった。
パーパルディア皇国のトップであるルディアス皇帝を筆頭に、日本国との本格的な武力衝突を招いた元凶のレミール皇女、軍のトップであるアルデ最高司令官。また各外務局の局長(エルト、リウス、カイオス)やパーラス臣民統治機構長官、ムーリ財務局長など、各省庁のトップや幹部の補佐たちが一同に出席している。
全員の表情は葬式のように暗く、皇国の現状を物語っていた。
「まずは、軍の現状からご説明いたします。」
アルデ最高司令官が、今にも倒れ込みそうな様子で皇国軍の状況を報告する。
「まず海軍の状況についてですが、皇都に配備していました主力がほぼ全滅しました。また『エストシラント港海軍本部基地』施設も日本艦隊の攻撃を受け、壊滅状態となっています・・・。」
「西部方面に配置していました第四艦隊、及びデュロ防衛任務に就いています第五艦隊は無事です。しかしバルス海将をはじめ、マータル大参謀など皇国海軍幹部たちが軒並み戦死し、海軍全体の指揮能力も喪失しています。昨年秋のアルタラス王国侵攻開始時と比較すると、現在の規模は10パーセント以下と大幅に縮小しています。」
実際は、現時点で第五艦隊も既に壊滅しているが、皇都エストシラントの面々は誰もそのことを把握していない。
「次に、陸軍の状況ですが、皇軍三大基地の一つである『皇都防衛軍基地』が全滅しました。配備していました『ワイバーンオーバーロード』や『アンギラス』も全滅し、基地施設も日本軍が空中から大量の爆弾を投下したことで壊滅状態となっています・・・。」
アルデ最高司令官は額の汗を手で拭い、話を続ける。
「皇都防衛の要であった両基地が壊滅したことを受け、属領統治軍を急ぎ撤収させて皇都防衛任務に当たらせます。皇都防衛という最重要課題のため、皇軍最高司令官の権限に基づいて既に撤収の指示を出しております。」
「なお、属領統治軍の兵士やワイバーンロード、リントヴルム等の二級戦力を全て撤収させて皇都防衛に充てたとしても、戦力は攻撃を受ける前以下となります・・・。」
アルデ最高司令官の説明に、慌てた様子のパーラス臣民統治機構長官が割って入る。
「属領統治軍を撤収する!? 既にすべての属領に配備されていたメガニューラが、商業都市イーオンの中規模基地へと移送されています。そのうえ、ワイバーンロードや地竜までいなくなれば、属領民の反乱が起こりかねませんぞ!! 他の基地から戦力を引っ張ってくるわけにはいきませんか?」
パーラス臣民統治機構長官の相談に対し、アルデ最高司令官はきっぱりと即答する。
「無理ですね。他の基地も重要拠点です。したがってこれらの基地から兵力を移送し、皇都防衛に充てることはできません。そもそも臣民統治機構というのは、属領の民たちが反乱が起きないように、属領を統治しているのではないですか?」
アルデ最高司令官の返答に、パーラス臣民統治機構長官は黙り込むしかなかった。属領と皇都防衛・・・、そのどちらが重要かなど天秤にかけるまでもない。
そもそも現地住民を虐げ、皇国に恨みを募らせるような統治をしていなければ、反乱など起きる筈がない。しかし、アルタラス属領統治機構の例をみてもわかるように、各属領の統治機構の職員たちは現地住民に対し、重税による搾取や理不尽な強制労働、金品の強奪、婦女暴行など、悪逆非道な行いを日常のように行っていた。
アルデ最高司令官もその事実は把握しているが、反乱がおきた場合の責任の所在はパーラス臣民統治機構長官にあるため、そのまま話を続ける。
「前述の通り、皇都が無防備な状態ですが、属領統治軍の到着には暫く時間が必要です。そのため万が一の事態に備え、皇族の皆様には、中規模基地が健在しています商業都市イーオンへ一時的に避難頂きます。このことは、事前にルディアス皇帝陛下へご相談し、ご了承頂いております。」
「危機的状況下ではありますが、古の魔法帝国の遺産である『ガイガン』が起動した今、皇国が負けることは万に一つも無くなったと確信しています。直近で計画しています『ガイガン』を中核とした日本国本土への反抗作戦が成功すれば、戦況は一気に皇国側へと傾くでしょう。」
『ガイガン』という皇国最大の切り札を正式に公の場で公開されたことで、会議の出席者はカイオス局長ら数名を除き、自信を取り戻したかのような安心した明るい顔付きへ変わる。
アルデ最高司令官から『ガイガン』を主軸にした反抗作戦が成功することを前提にした軍再編計画が提案される。
具体的には、財務局による大規模な予算調達を行い、工業都市デュロで兵器の生産規模を大幅に拡大。また属領からの徴兵を行い、今までの皇国主力軍の三倍以上の規模まで軍の人員補充を実施。
『ガイガン』という圧倒的な質に加え、この凄まじい物量をもって、日本国本土を西側の九州から順に占領し、最終的に首都東京を陥落させるという方針が決定された。
ある程度方針が決定されたことで、本日の会議は一旦終了となった。明朝にも会議が実施されることから、財務局では必要となる概算予算の算出を、軍務局では再軍備のスケジューリングや人員調整などの業務を官僚たちが夜通しで対応させられることとなった。
この帝前会議が終了した頃、頼みの綱である『ガイガン』は、『スーパーメカゴジラⅡ』と『しんてん』の連携の前に敗北し、頭部が吹き飛んだスクラップとなっていた。またデュロ工業地帯、ならびに皇国三大基地の一つである『デュロ防衛隊陸軍基地』、そして虎の子であった『古の魔法帝国』の研究施設跡が完膚なきまでに破壊され、その機能を完全に喪失しているとも知らずに・・・。
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第三外務局のカイオス局長は、緊急帝前会議から自宅へ帰宅後、執務室で頭を抱えていた。彼のデスクの上には、一冊の本、そして日本語と第三文明圏共通言語の辞書が置かれていた。
『別冊宝大陸 特集! 自衛隊対パーパルディア皇国軍が衝突するとこうなる!?』
フェン王国の戦いにおいて、日本国側の観戦武官として派遣されていたムー連邦の技術士官マイラスが本国へ持ち帰り、上層部への報告時にも使用されたものと同じ雑誌だ。
第三外務局は文明圏外国家を相手にしているため、カイオス局長は事前の情報収集のために貿易商との繋がりが強かった。レミール皇女の外務局監査室権限によって日本国の外交担当を剥奪された後も、彼は民間を通じて独自に日本国の調査を継続していた。
その結果、カイオス局長は日本国という国の真実を知ってしまった。
『神聖ミリシアル帝国』を凌駕する国力を有した超科学文明国家・・・。国力もさることながら、『古の魔法帝国』の誘導魔光弾に酷似したものなど、御伽噺に登場するような超兵器を多数運用しているという恐ろしい事実であった。
そして虐殺皇女こと狂犬レミールは、そんな超列強国ともいえる彼の国の医師団をいつものように虐殺し、ルディアス皇帝は宣戦布告と殲滅戦を指示してしまった。
「このままでは皇国が・・・。消滅してしまう・・・。」
日本国へも入国したことがある商人から、この雑誌を買い取ったときの衝撃を思い出しながら誰もいない自室でボソッと呟く。
その雑誌は、日本国が運用している魔導砲や艦船などについて、カラーの魔写付きで丁寧に解説されていた。読み進めるうちに指が震え始め、全身から汗が噴き出すほどの焦燥と不安感が襲い掛かってきた。
カイオス局長をここまで追い詰めている要因は、雑誌に形成されている兵器が『自衛隊』所属のもの以外も記載されていることであった。
かつてカイオス局長は、アマノキ軍祭の襲撃に失敗したポクトアール提督に対し、某中古車屋のようなパワハラまがいの口調でボロカスに叱責したことがあった。その雑誌には、彼が供述していたものと思われる空飛ぶ魔船・・・、海上自衛隊の最新鋭艦である『ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦』についても記載があり、皇国の魔導戦列艦とは天と地ほどもかけ離れた性能差を思い知ることとなった。
『ごうてん型護衛艦』の情報でも胃腸がキリキリ痛み出すほどであったが、最終章で紹介されていた超巨大対G(ゴジラ級特殊生物)兵器群を見たときは、驚愕のあまり、放心状態となって完全にフリーズしてしまっていた。
余程のことがない限り、これらの超戦力は出撃することがないと記載されていたが、虐殺皇女の凶行により、皇国は『特テ国』こと『特殊生物を用いたテロ主導国家』として日本国に認定されてしまっていた。
もしこれらの超兵器が複数機襲来し、相対することになれば、いかに古の魔法帝国の遺産といえど、たった一体しかいない『ガイガン』ではかなり分が悪い状況になるだろう・・・。もし『ガイガン』がこれらに敗北するようなことがあれば、皇国は打つ手が無くなり、ハッキリ言ってジ・エンドだ・・・。
皇国消滅の危機を理解し、命をかけて祖国を救おうと動いたカイオス局長だが、本来の世界線では、フェン王国戦後の会談で日本国の朝田外交官らを呼び止め、秘密裏に日本国との外交窓口を作ることに成功していた。
これにより、首の皮一枚のところで皇国滅亡という未来を喰いとめることが出来た。
しかし、この世界線ではレミールが彼らを不敬罪で拘束しようとしたことで、救助のために『スーパーX改』が皇都エストシラントへ単騎で殴り込みを敢行。これにより、カイオス局長は日本国との関係構築に失敗し、日本国とパーパルディア皇国の間には外交窓口が存在しない状態となっていた。
同じ列強国の『ムー連邦』へ秘密裏に仲介を頼もうともしたが、こちらもレミールのやらかし(※ 102話参照)によって皇国に対する印象は最悪ともいえる状態となっており、既に大使館も引き上げられている。
完全に八方塞がりの状態で、どうすれば良いか分からずに苦悩していると、執務室に設置された魔導通信機から着信を知らせるアラーム音が鳴り響く。この魔導通信機の番号を知っている者は、懇意にしている商人や個人的な繋がりのある情報屋など、カイオス局長とプライベートな付き合いをしている相手ばかりであった。
怪訝な顔をしながら受話器を取ると、相手の声色を聞いて思わず目を見開く。
「あ、貴方は!!」
その日、カイオス局長は日付が変わるほどの深夜にわたり、魔導通信機でのやり取りを続けるのであった。
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中央暦1640年8月2日
フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国
皇都エストシラント
パラディス城のにて開かれている緊急御前会議は、翌朝も開催されていた。アルデ最高司令官の手元には、官僚や職員たちが徹夜で作成した資料が手渡されていた。
「それでは昨日の緊急御前会議にてご説明しました軍再編計画につきまして、財務局と協力し、必要となります予算と概算スケジュールについて・・・」
アルデ最高司令官が軍再編計画について説明を始めたところ、大会議室へ軍部の士官が入室し、アルデのもとへ早足で歩み寄って耳打ちする。
士官の顔は焦りに満ちて青く、額からは汗がダラダラと流れていたが、耳打ちされたアルデもガタガタと手が震え始める。
「どうしたアルデ? 何があった? 構わないからこの場で申してみよ。」
ルディアス皇帝はアルデの様子を疑問に思い、軽い感じで問う。
「・・・デ、デ、デュロが日本国の攻撃を受け、壊滅しました・・・。軍需工場をはじめ、西側の極大基地『デュロ防衛隊陸軍基地』や海軍基地、魔法帝国の研究施設跡も全滅しました・・・。」
ルディアス皇帝をはじめ、会議出席者が絶句する。
「そ、そのようなことがあるものか! デュロには我が皇国が誇る古の遺物・・・、『ガイガン』がいたのだぞ!」
ルディアス皇帝が反論する。
「『ガイガン』は、『デュロ防衛隊陸軍基地』へと侵攻してきた日本国の『異形の空中戦艦』を見事叩き落とすことに成功したようです・・・。」
フェン王国、アルタラス島、そしてエストシラント沖と三度に渡って『エビラ』を撃破し、皇国海軍の主力艦隊を文字通り消し飛ばした『ごうてん型護衛艦』を撃墜したという報告に、会議室内が一瞬沸き立つ。
「ですが、ガイガンはその後、新たに襲来した『機械の神龍』と戦闘になったようです。劣勢となったガイガンは離脱しようとしたようですが、復活した『異形の空中戦艦』に凍結され、『機械の神龍』の凄まじい威力の魔光砲の一斉発射で木っ端微塵に破壊されたようです・・・。アルバート主任の安否も不明です・・・。」
この世界の列強として世界の頂点の一角にいたはずのパーパルディア皇国。そして他種とは隔絶した圧倒的な魔力と技術力を持って全世界を支配し、神々にすら弓を引いたとされたとされる『古の魔法帝国』の遺産が、日本国の圧倒的な科学力と超兵器の前に、手も足も出ずに一蹴された。
『ガイガン』の攻撃を受け、撃墜されても早急に復活する『異形の空中戦艦』、そしてそれをも凌駕する戦闘能力をもった『機械の神龍』という規格外の存在に、衝撃のあまり、会議室内を沈黙が支配する。
報告を聞いたルディアスは腰を抜かしたようにその場に崩れ落ち、アルデら軍高官たちはただ震えることしかできない。しんと静まり返った室内に、再び血相を変えた別の幹部が、音を立てて飛び込んでくる。
「今度は何だ!! もう耳打ちしなくても良い! 貴様がその場で申せ!!!」
ルディアスに怒鳴りつけられた幹部は、震える声で報告を始める。
「本日早朝、『聖都パールネウス』近郊の『聖都防衛隊陸軍基地』に空から巨大な隕石のようなものが多数飛来! 報告によりますと、基地は壊滅的な被害が出て・・・」
幹部が話している途中、皇都エストシラントに銃声や大砲のような遠雷のような音が響きわたる。音が響いた方角・・・、『聖都パールネウス』やフィルアデス山のある北東の空には、火山が噴火した際に発生する巨大な噴煙が立ち込めているのであった・・・。