東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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123. 滅びの流星群

 

中央暦1640年8月2日

フィルアデス大陸 列強国 パーパルディア皇国

皇都エストシラント

 

 

皇都エストシラントには、皇族のみが住むことを許された特別な地区がある。日本国とパーパルディア皇国が全面衝突することになった元凶レミール皇女も、この地区の小高い丘の上に邸宅を構えていた。

 

『ムー連邦』のパーパルディア皇国駐在大使ムーゲとの会談以降、毎晩のように皇国が蹂躙される悪夢ばかりを見ており、慢性的な不眠症を患っていた。

 

この日も緊急御前会議から帰宅後に就寝したが、昨日の明朝に偶然目にした日本国の飛行機械の大群・・・、『皇都防衛軍基地』を赤子の手をひねるが如く容易く蹂躙し、徹底的に破壊し尽した様子は、彼女の脳に焼き付いており、恐怖のどん底に叩き落としていた。

 

昨日夕方に開催された緊急御前会議では、ルディアス皇帝陛下やアルデ皇国皇軍最高司令官は、古の魔法帝国の遺産である『ガイガン』がいる限り、皇国の敗北はありえないと断言しているが、本当に大丈夫だろうか・・・と何度も考えてしまい、この日も眠ることが出来なかった。

 

連日の睡眠不足がたったせいか、体調が優れないレミールは気分転換しようとバルコニーへ出る。東の地平線がわずかに琥珀色に染まり始めているが、頭上にはまだ深い群青色の夜が残っている。

 

レミールが空を見上げると、静まり返った紺碧の夜空を、突如として一条の鋭い光芒が切り裂いていく様子が見えた。夜空の奥深くから湧き出たかのような眩い光の粒子たちが、いくつも尾を曳きながら滑らかに、そして凄まじい速度で北の方角へと次々と滑り落ちていく。

 

「この時期には珍しい流星群か・・・。」

 

流れ星には、『消えるまで(光っている間)に願い事を三回唱えると願いが叶う』というロマンティックな言い伝えが有名だ。この世界でも、第三文明圏を中心に同じような話が広く伝承されていた。

 

心身ともに疲れ果てていたレミールは、藁にも縋る思いで流れ星たちに皇国の勝利と自身の安寧を祈る。その流星群が、皇国に残された最後の極大基地を消滅させるものとも知らずに・・・。

 

 

======================================================================

 

 

フィルアデス大陸 フィルアデス山岳地帯

聖都パールネウス

 

 

皇都エストシラントの北方500キロメートルのところには、『アルーニ』という小規模交易都市がある。パーパルディア皇国がパールネウス共和国だった頃の国境付近に位置しており、現在でも絶対防衛線として扱われている。

 

その南方のフィルアデス山岳地帯には、休火山である『フィルアデス山』を中心にワイバーンや地竜リントヴルムの広大な繫殖場が広がっており、『聖都パールネウス』とこれらを守護する極大陸軍基地『聖都防衛隊陸軍基地』が設置されている。

 

『聖都防衛隊陸軍基地』を含め、パーパルディア皇国には、三か所の重要拠点に極大サイズの陸軍基地が設置されていた。

 

まず一つ目は、皇国の首都である『皇都エストシラント』を守護する『皇都防衛軍基地』。二つ目は、皇国領土の東端部の沿岸に位置し、皇国工業力の要である『工業都市デュロ』と虎の子である『古の魔法帝国』の研究施設跡を守護する『デュロ防衛隊陸軍基地』。

 

しかし、いずれの極大基地も自衛隊やGフォースの熾烈な攻撃を受け、昨日夕方の時点で甚大な被害を出して機能停止状態となっていた。

 

一方、『聖都防衛隊陸軍基地』は内陸部という地理的要因もあり、前者のような航空機や護衛艦などによる攻撃は受けていなかった。しかし、魔導レーダーやワイバーンロードによる哨戒など、皇国が決して感知し得ない遙か彼方の宇宙空間・・・、高度数百キロメートルの低軌道上に、人知を超えた鋼鉄の巨鳥が接近しつつあった。

 

1995年の『スペースゴジラ事変』において、『スペースゴジラ』の撃破に大いに貢献した『MOGERA』。その下半身を構成する大型戦闘機『スターファルコン』を基に、新たに開発されたGフォースの宇宙戦闘機『量産型スターファルコン』だ。

 

単独での大気圏離脱・再突入能力を持ち、大気圏内と宇宙空間(大気圏外)の両方で運用可能な本機は、宇宙ステーションきぼうで特殊弾頭『窒素爆弾』を積載し、内陸部の『聖都防衛隊陸軍基地』への宙対地爆撃へと向かっていた。

 

『量産型スターファルコン』は『聖都防衛隊陸軍基地』の上空まで到達すると、青黒い惑星の輪郭を背に、機体主翼の付け根にあたるメインハッチが静かに開かれた。

 

「これより、『聖都防衛隊陸軍基地』、及び隣接する『フィルアデス山』の宙対地爆撃を開始する。目標、ロックオン。カウントダウン開始・・・。」

 

大気圏外からの宙対地爆撃。それは数々の特殊生物を生物兵器として使役し、『第三文明圏の支配者』と驕り高ぶった皇国が、決して感知し得ない絶対的な高高度からの神罰、まさに旧約聖書に登場する『ソドムとゴモラを滅ぼした天の火』であった。

 

太陽光を反射して冷たく輝く機体下部のランチャーから、漆黒の特殊弾頭『窒素爆弾』が切り離される。これは、重合窒素を使用することで、一般的な高性能爆薬の五倍以上のエネルギーを持ちながら、核兵器のように放射性物質などの汚染物を一切残さないクリーンな高威力爆弾だ。しかし、1700℃以上の高温かつ110万気圧という超高圧下でなければ合成出来ず、合成後も無重力下でなければ安定運用出来ないという厄介な特性から、宇宙戦闘用ミサイル、または宙対地爆撃用爆弾のいずれかの用途でのみ運用されている。

 

惑星の重力に引かれて大気圏へと再突入した数発の弾頭は、断熱圧縮されたことでプラズマ化した大気によって火の槍となり、聖都近郊へと音速を超えて急降下していく。

 

地上では、皇国兵たちが次第に大きくなる不穏な音に気付き、天を仰いでいた。雲を引き裂き、いくつもの光条が超音速で迫る。

 

「な、何だあれは!?」

 

「そ、空から星が落ちてくるぞ!!」

 

見張りの兵士が絶叫した瞬間、目の前の世界が純白の光に包まれる。超音速で落下した窒素弾頭が『聖都防衛隊陸軍基地』の中央部へ直撃し、そのエネルギーを一気に解放した。

 

音のない閃光・・・、太陽が地上に降り立ったかのような純白の光が地表を蹂躙し、次の瞬間、鼓膜を狂わせる暴風と凄まじい熱波が基地を襲う。超高熱の衝撃波の一撃は、堅牢な石造りの司令本部棟を砂細工のように爆散させ、哨戒飛行中であったワイバーンロード、兵舎や竜舎で待機していた歩兵部隊や地竜たちは、悲鳴を上げる間もなく吹き飛んだ。

 

しかし、真の地獄はそこからだった。

 

流星のように降り注いだ窒素弾頭の一部が、基地の背後にそびえる火山『フィルアデス山』の山頂へ正確に突き刺さる。カルデラ内の火砕流堆積物層エリアを貫通した弾頭は、数千年間眠っていたマグマ溜まりで超高圧のエネルギーを炸裂させた。

 

ズズズ・・・と大地が不気味に鳴動すると、山頂が吹き飛び、天を衝くほどの巨大な噴煙柱が立ち上る。マグマ溜まりが瞬時に沸騰し、限界を迎えた山体が大爆発を起こしたのだ。

 

「山が・・・、フィルアデス山が怒り狂ったぞ!」

 

辛うじて最初の爆撃を生き延びた皇国兵たちが、絶望した顔をしながら絶叫する。しかし、彼らの目に映ったのは、山肌を猛烈な勢いで駆け降りてくる『灰色の壁』だった。

 

高温の火山ガスと火山灰や軽石などの火山砕屑物が一体となった悪魔の濁流・・・、火砕流だ。時速数百キロメートルという人間が絶対に逃げ切れない速度で、1000℃を超える高温の怪物が灰色の津波となって地表を覆いつくしていく。

 

ギエエエエエエ!

 

グルルルッ!

 

「逃げろ! 飛び立て!!」

 

発生した火砕流は、カルデラ湖周辺に形成されていた皇国自慢の繁殖場へ最初に到達した。明日の皇国の武力を担うはずだった幼体の飛竜や、卵を抱いた親竜たちが、迫り来る赤黒い地獄の業火にパニックを起こすが、押し寄せた火砕流の濁流は、近代的な繁殖施設を、命の叫びを上げるワイバーンや地竜たちを、そして育成係の兵士たちを分け隔てなく、すべて呑み込んでいく。

 

超高温のガスに巻かれた竜たちは、翼を焼かれ、肉を焦がし、断末魔の悲鳴すら、火砕流が轟かせる地鳴りにかき消されていく。

 

そして、絶望の濁流はそれだけに留まらない。繁殖場を完全に呑み込んだ灰色の津波は、勢いを落とすことなく、『聖都防衛隊陸軍基地』や周辺の小規模基地へと押し寄せた。

 

火砕流の通過した場所は、すべてが焼き尽くされるという表現すら生ぬるい、完全なる灼熱地獄へと変貌していく。最初の爆風を耐え抜いた外壁や兵舎、兵器庫が、高熱の波に次々と激突される。貯蔵されていた魔石や弾薬は次々に誘爆を起こし、基地のあちこちで狂ったような大爆発が連鎖した。

 

生き残った兵士たちが必死に逃げ走る背後から、火砕流は容赦なく包み込み、叫ぶ間もなくその身を炭化させていった。魔導通信施設も、食糧庫も、皇国の威信を示していた軍旗も、すべてが灼熱の灰の中に消え去り、かつてそこにあった基地施設の痕跡は跡形もなくに焼き払われた。

 

数分後。そこには『聖都防衛隊陸軍基地』の姿は影も形もなく、繁殖場だった豊かな自然も残っていなかった。あるのは、ただすべてを灰色に染め上げた火砕流の堆積物、そして今なお不気味に煙を上げる『フィルアデス山』だけだ。

 

高度数百キロメートルの宇宙空間を飛行していた『量産型スターファルコン』のメインモニターにも、完全に沈黙し、灰色一色の地獄へと変貌した地表の映像が映し出されていた。

 

この日の早朝、皇国最後の極大基地『聖都防衛隊陸軍基地』が、『量産型スターファルコン』による大気圏外からの宙対地爆撃を受け、甚大な被害を受けた。

 

また爆撃の影響で『フィルアデス山』が大噴火し、発生した大規模な火砕流がカルデラ周辺の繁殖場と周辺基地施設を焼き尽くし、その大部分が消滅することとなった。

 

昨日の工業都市デュロの壊滅と合わせ、皇国の継戦能力はこの日をもって完全に喪失した。また皇国に残されたまともな戦力は、各属領のメガニューラ隊が集結した商業都市イーオンの中規模基地だけとなるのであった・・・。

 

 

 

※ 量産型スターファルコン

出典 : ゴジラvsスペースメカゴジラ(1994年)

 

 

1995年の『スペースゴジラ』、1999年の『グランドギドラ』と二度にわたって宇宙からゴジラ級特殊生物が襲来したことを受け、宇宙戦闘用に開発されたGフォース初の量産宇宙戦闘機。

 

1995年の『スペースゴジラ事変』にて投入された超大型対G(ゴジラ級特殊生物)兵器『MOGERA』・・・、その下半身を構成する『スターファルコン』をベースに開発されているが、最大の特徴であった変形・合体機能はオミットされている。

 

同じくGフォースの量産戦闘機である『量産型ガルーダ』が、大気圏内の戦闘向けに再設計されているのに対し、本機は高高度や宇宙空間の戦闘向けに再設計されており、単独での大気圏離脱・再突入能力を持ち、大気圏内と宇宙空間(大気圏外)の両方で運用が可能。

 

量産性や整備性を考慮し、量産型ガルーダなど他超兵器と武装やシステムなどの共通規格化が行われており、メイン武装も省電力メーサーバルカンから砲塔式ハイパワーメーサービームキャノンへと強化されている。

 

また『スペースゴジラ事変』では使用されなかった武装マウントは、宇宙戦闘用のミサイル、または宙対地爆撃向けの爆弾倉として使用できるようになっている。元々上半身を構成する『ランドモゲラー』(9万トン)と合体した後の推力を担う構造であったため、最大爆弾積載量100トンと、通常の戦略爆撃機を大幅に上回る。

 

※ 捕捉

B-52H ストラトフォートレス(アメリカ合衆国): 約32トン

B-2 スピリット(アメリカ合衆国): 約18トン

ツポレフTu-160(ロシア連邦): 約40トン

 

武装:

砲塔式ハイパワーメーサービームキャノン2門

武装マウント弾倉

 

 

 

※ 窒素弾頭

出典 : 日本沈没(2006年)

 

 

重合窒素を使用することで、一般的な高性能爆薬の五倍以上のエネルギーを持ちながら、核兵器のように放射性物質などの汚染物を一切残さないクリーンな高威力爆弾。

 

1700℃以上の高温かつ110万気圧という超高圧下でなければ合成出来ず、合成後も無重力下でなければ安定運用出来ないという厄介な特性から、宇宙戦闘用ミサイル、または宙対地爆撃用爆弾のいずれかの用途でのみ運用されている。

 

ポリ窒素を用いた兵器であり、爆薬量次第で核弾頭に匹敵する破壊力が得られること、また宙対地爆撃時には大気圏外からまるで爆雷を投下するかのように攻撃する点などから、某汎用人型決戦兵器の作品に登場する『N2爆雷』という渾名で呼ばれることもある。

 

 

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