中央暦1640年9月25日
第三文明圏の東 大東洋
日本国 首都東京 とある大学
日本国がこの異世界に国家転移してから、1年10カ月が過ぎようとしていた。国家転移という未曾有の天災から始まり、『ロウリア事変』、そして第三文明圏唯一の列強国である『パーパルディア皇国』との全面衝突という激動を経ているが、国内の情勢は落ち着きつつあった。
列強国であるパーパルディア皇国を完膚なきまでに叩き潰したことで日本国の名が広く知られるようになり、世界中の国々から国交締結交渉の使節が日本を訪れるようになるなど、この世界においても、官民問わず新たな外交関係や経済関係を築きつつあった。
一例を挙げると、早い段階から国交締結を行った『クワ・トイネ公国』や『ムー連邦』などの友好国については、来年度から一部の留学生の受け入れが開始予定となっている。
余談ではあるが、日本国に留学したこの世界の住民の第一号として記録されている人間は、新生アルタラス王国の現女王ルミエスである。彼女は昨年の12月初頭から日本国で保護されていた間、祖国が再独立を果たしてからのことを見越し、経済学を専攻していた。
首都東京にある某国立大学のとある研究室では、学生たちがデスクの上のコードの束に頭を抱えながら声を上げていた。
「先生、やっぱりダメです。歩行プログラムを修正しても、どうしても第5脚のサーボモーターが同調してくれません。」
「いいかい、機械にだって『心』はあるんだ。」
人工生物学の第一人者である湯原徳光は、三葉虫ロボットの裏側にある人工細胞の制御基板をピンセットで微調整しながら、いつもの調子で優しく語りかけた。湯原教授がスイッチを入れると、それまでピクリとも動かなかった三葉虫のロボットが、まるで本物の生物のように滑らかに脚を動かし、デスクの上をカサカサと歩き始めた。
彼らが弄っていたのは、精巧に作られた三葉虫の形をした自律歩行型ロボットだった。外観は人工物であるが、その内部にはカブトガニの筋肉や神経を使用しており、更に可動システムとしてDNAコンピュータでの制御が行われているため、本物同様の自然な動きを可能としていた。
「うわあ、すごい! 本当に生きてるみたいだ!」
学生が歓声を上げた、まさにその時、研究室の扉がノックされて開かれた。入ってきたのは、仕立ての良いスーツを身にまとった外務省職員、そして防衛省やG対策センターの厳めしい制服を着た幹部たちだった。
「湯原教授。人工生物学、およびバイオ・エレクトロニクスにおける国内の第一人者である貴方のお力が必要になりました。今すぐ我々と一緒に来て頂きたい。」
ただ事ではない空気を察した湯原は、歩き回る三葉虫ロボットのスイッチを切り、そのまま彼らに同行する。防衛省の専用車に乗り込み、彼らが向かったのは、最先端の科学技術都市として知られる茨城県つくば市・・・、その厳重に偽装された広大な敷地に聳え立つ、『特殊生物研究本部』であった。
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日本国 つくば市
防衛省 特殊生物研究本部
特殊生物研究本部の最深部にある中央研究ゾーン。数何百人もの一線級の技術陣が慌ただしく行き交い、巨大なホログラムモニターが明滅するそのメインドックへと湯原教授が案内されると、そこにはすでに、政府によって先んじて招集されていた最高権威たちの姿があった。
・ 赤松伸治
Gフォースが誇る最新の超大型対G(ゴジラ級特殊生物)兵器『スーパーメカゴジラⅡ』の開発にも携わったロボット工学の権威。
・ 山田薫
対特殊生物向け兵器の代名詞ともいえる存在である『メーサー砲』において、特に『92式メーサータンク』以降の「プラズマ加熱ミラータイプ改」の開発にも携わったマイクロ波工学の権威。
・ 菅野吾郎
初代『轟天号』に装備された『冷線砲』を発展させ、『スーパーXⅢ改』や『ごうてん型対特殊生物戦闘護衛艦』の『超低温レーザー』の開発にも携わった低温物理学の権威。
「湯原、君も呼ばれたのか?」
「一体何が始まるの?」
天才たちが互いに怪訝な表情で見守る中、そのメインドックの雛壇には、さらに驚くべき顔ぶれが揃っていた。かつて23世紀の未来技術・・・、『メカキングギドラ』をサルベージし、『スーパーメカゴジラ』を完成させたアシモフ博士率いる『メカゴジラ』開発チーム。そして、究極の対ゴジラ兵器として『スペースゴジラ』撃破に大いに貢献した『MOGERA』を完成させたマミーロフ博士率いる『MOGERA』開発チーム。かつて両プロジェクトを支えた国連G対策センターのトップエンジニアたちが、一堂に会していたのだ。
未だかつてない超弩級の技術陣が沈黙する中、重々しい足音とともに、一人の男が演台の前に立った。内閣総理大臣、麻生孝昭であった。
麻生総理は低く、重厚な声で、ドック全体に響き渡るようにゆっくりと語り始めた。
「ここにお集まり頂いた皆さんは、我が国とともにこの異世界に転移した地球最高の頭脳。つまり、地球が誇る科学技術そのものです。その皆さんに、今日は極秘の、かつ非常に困難なプロジェクトへの参加をお願いさせて頂きたい。」
麻生総理が合図を送ると、彼らの目の前にある巨大な防護シャッターが、重々しい駆動音とともに上がっていく。強化ガラスの向こうにある超巨大研究ドックに鎮座する、二つの巨大な「異形」が姿を現す。
一つは、パーパルディア皇国の工業都市デュロから回収された、禍々しい魔法装甲と引き千切れた生体組織を露出させたサイボーグ怪獣『ガイガン』の下半身の残骸。特殊な培養液で満たされたカプセルの中で、その有機組織は今なお怪しく明滅している。
そしてもう一つは、それすらも矮小に見えるほど巨大で、そして圧倒的な威容を放つ白骨・・・。1996年の『デストロイア事変』において、『オキシジェン・デストロイヤー』の亡霊こと完全生命体『デストロイア』との死闘の末、大量の放射能を撒き散らしながらメルトダウンして果てた『二代目ゴジラ』の遺骨であった。
「こ、これはまさか・・・ゴジラの・・・。それに、もう一つは一体・・・!?」
麻生総理はゴジラの骨とガイガンの残骸を交互に見据えながら、エモール王国との会談で判明した事実を冷徹に語る。かつて全世界を支配した巨大な帝国が存在し、近い将来、最強のサイボーグ怪獣の軍勢を率いて帰還するという恐ろしい未来を・・・。
麻生総理はゆっくりと湯原の方を振り向くと、その鋭い眼光を彼へ向けて問いを投げかけた。
「・・・湯原教授。あの骨格には、いまだ細胞レベルでゴジラの遺伝子が・・・、G(ゴジラ)細胞が遺されている。その骨に遺されたG細胞のDNAを用いた、DNAコンピュータ(生体演算機構)は出来るかね?」
総理の突飛な問いかけに、湯原は一瞬唖然とし、すぐさま顔を強張らせて反論した。
「DNAの抽出さえできれば・・・。ま、まさかゴジラの・・・、クローンでも創り出すつもりですか・・・?」
生命への不遜な冒涜に対する、湯原の明確な拒絶。だが、五十嵐総理は表情一つ変えず、重々しく首を振った。
「いや。・・・創るのではのではない。造るのだ。」
総理は視線を、カプセルの中で怪しく光るガイガンの残骸へと移した。
「こちらはパーパルディア皇国との戦争において、『スーパーメカゴジラⅡ』が撃破した皇国軍の切り札・・・。数万年前、この世界を支配したという古代魔法帝国『ラヴァーナル帝国』が創り出したサイボーグ怪獣兵器、『ガイガン』の残骸だ。」
「奴らは生物のDNAを用いた『生体演算機構(DNAコンピュータ)』を確立し、サイボーグ化されながらも生物そのものの超機動性を維持させていた。奴らはこの超機動サイボーグ怪獣の軍勢を率いて、この世界に帰還してくるらしい。」
「我々が誇る『ごうてん型護衛艦』をはじめとする対特殊生物向け兵器、また超大型対G兵器である『スーパーメカゴジラⅡ』や『MOGERA』は、陸上での動きが緩慢であるゴジラ唯一の弱点をつき、安全な中遠距離から攻撃するというコンセプトのもと開発されている。」
「そのため空中を縦横無尽に飛び回り、白兵戦を仕掛けてくるこの『ガイガン』という敵に対して、これまでの戦術を大きく見直す必要があるという事実が判明した。」
麻生総理は再び湯原を、そして集まった地球最高の頭脳たちを見据えながら頭を下げる。
「我々は『エモール王国』や『神聖ミリシアル帝国』に対し、このガイガンのデータを解析するための『三カ国共同研究』を持ちかけている。そこで得られるラヴァーナル帝国の生体魔導技術を応用し、この『二代目ゴジラ』の遺骨へ組み込む。超機動すら追尾し、接近されても格闘戦で圧倒することが可能な全く新しい次世代型メカゴジラの建造計画。諸君らの英知を、この計画に捧げてほしい。」
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ドックでの衝撃的な対面を終え、一行は研究本部内の巨大な大会議室へと場所を移した。正面の大型スクリーンには、『二代目ゴジラ』の三次元骨格データ、そして『しんてん』や『スーパーメカゴジラⅡ』とガイガンの戦闘記録が映し出されている。
麻生総理や防衛省幹部、そして数十人の最高峰のエンジニアたちが席に着く。沈黙する一同の前で、まず防衛省の戦術担当官が演台に立ち、スクリーンの全戦力配置図を指し示した。
「これより開発に移る次世代型メカゴジラの方向性を決めるにあたり、まず我が国の戦術的欠陥を共有させて頂きます。・・・ゲームの役割で例えるなら、『スーパーメカゴジラⅡ』や『MOGERA-Ⅲ』、そして『ごうてん型護衛艦』といった重火力兵器は、圧倒的な攻撃力と鉄壁の防御力を誇りますが、懐に飛び込まれると脆い。例えるなら、遠距離攻撃を無効化する鎧を着こんだ魔法使いや砲兵のような後衛アタッカーです。」
「『二代目ゴジラ』を筆頭に、これまで相対してきた特殊生物たちは、移動能力が高くないものが多く、接近戦となること自体が稀であったため、この点はあまり問題にされませんでした。しかしこの盲点を付くかのように、高い機動力で空中を縦横無尽に飛び回り、後衛を直接食い荒らそうとする『ガイガン』という最悪の『暗殺者(アサシン)』が現れました。これまでの我々の戦術は、前衛戦力が不在のまま、敵の遠距離攻撃を無効化出来る鎧を後衛戦力に着こませ、火力による力押しをしていたに過ぎません。」
「そこで、『スーパーメカゴジラⅡ』や『MOGERA-Ⅲ』、『ごうてん型護衛艦』といった既存の対特殊生物向け兵器群の超火力をフルに活かし、かつそれらの味方を守り抜くために、敵の超機動を最前線で受け止める『最強の壁役・盾役』。・・・それこそが、この新型機に課せられる全く新しい次世代型メカゴジラのコンセプトです。」
「前衛のメインタンク、か・・・!」
会議の方向性が『最強の前衛を造る』という一点にカチッと定まった瞬間、天才たちの頭脳が爆発的に点火した。
「なるほど、それならば話は早い!」
まず声を震わせたのは、ロボット工学の権威・赤松伸治だった。
「直線的な動きしか出来ない従来のロボット工学では、前衛など務まらん! だが・・・先ほど総理が仰った、二代目ゴジラの骨格をメインフレームとして使用し、細胞レベルで残った野生の運動記憶を姿勢制御に直結させるというなら・・・生物そのものの柔軟な超機動、格闘戦で敵を圧倒するための地上での凄まじい運動性が理論上は可能になる・・・!」
赤松は立ち上がり、スクリーンのデータを激しく操作した。
「奴に搭載する大出力スラスターの稼働効率を、ゴジラの骨格の運動神経と完全に同調させる。目指すのは、敵のいかなる猛攻をもフットワークで翻弄し、あのゴジラの『放射熱線』すらも、スラスター噴射による横跳びで紙一重で回避してみせるほどの圧倒的な機動力だ! 重装甲で受けるのではない。すべてを『回避』してノーダメージのまま前線に立ち続ける。そんな芸当、生体の骨格(フレーム)を持たぬ従来の機械構造では絶対に不可能だ!」
「だが、前衛として地上を高速駆動するなら、技術的な問題があるな・・・。」
メカゴジラ開発チームのチーフエンジニアが、現時点で想定される懸念点を挙げる。
「これまで同様、レーザー核融合炉の大出力機関を搭載すれば、どうやっても機体重量が重くなりすぎてしまう。そうなれば、『スーパーメカゴジラⅡ』同様、地上移動方法は『ローラーシステム』頼りになり、どうしても直線的な動きの攻撃しか出来なくなるな・・・。」
「それじゃガイガンと白兵戦(近接戦闘)なんて絶対に無理だ! いっそのこと、機体重量が嵩んでしまう内蔵型の核融合炉という重い足枷は最初から外し、全固体型の超大容量バッテリー駆動にしてしまうのはどうだ?」
「それだと活動時間が極めて短くなってしまいますよ。それに高出力のエネルギー兵器を使えば、すぐにガス欠だ。いくら高い運動能力が必要とはいえ、重装甲や動力炉まで切り捨てる必要があるのですか?」
湯原が眉をひそめる。
その問いに対し、戦術担当官がモニターの画面を重々しく切り替えた。そこに映し出されたのは、この異世界の北の果て・・・、『グラメウス大陸』に出現した『巨大デスギドラ擬き』こと邪竜『アジ・ダハーカ』の戦闘データだった。
「実は今年の7月、『トーパ王国』のさらに北にある『グラメウス大陸』において、かつて『二代目ゴジラ』が最後に死闘を繰り広げた完全生命体『デストロイア』と同様、『ミクロオキシゲン』を用いていると思われる攻撃魔法を操る三つ首の超巨大な特殊生物の存在が確認されました。」
「何ですと!?」
関係者以外には極秘事項として秘匿されていた情報が公開され、周知していなかった者たちの血の気が引いていく。
「一応、その特殊生物に関しては、パーパルディア皇国への切り札として極秘裏に実戦投入されていた特殊戦略兵器を使用することで、その存在ごと時空の彼方へ消失・撃破することに成功しています。」
「どれほど強固な超装甲で全身を覆っても、原子レベルであらゆるものを分解することが可能な『ミクロオキシゲン』の前では、当たれば一瞬で撃破されます。このような特殊生物が確認された以上、重装甲で耐えるという設計思想そのものが、この世界では通用しない局面があるのです。だからこそ、敵の攻撃をすべてフットワークでいなす『圧倒的な回避能力』も必要なのです。」
思いもよらない特殊生物の存在に、大会議室が静まり返るが、マイクロ波工学の権威・山田薫が妙案を出す。
「新たに開発した『マイクロウェーブ遠隔送電システム』を導入し、近くの自衛隊基地、または『ごうてん型護衛艦』等のレーザー核融合炉搭載機から戦闘中にエネルギーの急速補給が出来るようにするっていうのはどうかしら? これなら稼働時間と重量の両方の問題をまとめて解決できるのではないかしら?」
この提案にMOGERAチームのエンジニアたちが賛同し、スクリーンの機体シルエットに新たな武装コンポーネントを上書きする。
「『スーパーメカゴジラⅡ」や『MOGERA』、『ごうてん型護衛艦』ほどの超重量かつ肉厚な重装甲にはしない。だが、これまでの対ゴジラ級特殊生物兵器の技術の粋を結集し、ゴジラの放射熱線を完全に無効化できるだけの耐熱特殊装甲、および合成ダイヤモンド・コーティングの最先端薄膜処理を全身に施す。機体を極限まで肉薄・軽量化しつつも、被弾時の致命傷を完全に防ぐ。・・・すなわち、『熱線を無効化する強固な防御力』と『危険な攻撃には絶対に当たらない高い回避能力』、その双方を限界まで両立させたハイブリッド型前衛こそが、この機体の正体だ!」
「新型機には、背部バックパックや両腕のアームユニットとして、ミサイルやロケット弾、レールガンなどの実弾系武装をメインにフル装備して出撃させる。空中から肉薄してくる敵の超機動に対し、まずは中遠距離からの圧倒的な実弾弾幕で迎撃・牽制。そして、弾を撃ち尽くすか敵が接近戦を仕掛けてくる瞬間、これらの外部武装を一斉にパージ(強制排除)してデッドウェイトを無くし、ゴジラ骨格の野生の運動性をフルに解放した『地上での圧倒的な運動性』による格闘戦へと移行する!」
「なるほど・・・!」
エンジニアたちが拳を握りしめる。
「これまでの超兵器のように、すべての攻撃を重装甲で耐えるのではない。遠距離からのビームやレーザーは無効化し、本当に危険な攻撃のみ回避する。中遠距離火力を無効化され、焦った敵が接近してきたら遠距離攻撃の武装をパージして、熱線すら回避・防御する運動性をフルに解放した格闘能力で向かい撃つ。そのまま敵を釘付けにし、後衛の超兵器たちが安全にその大火力を叩き込める環境を作る。それこそが、この新型メカゴジラの役割か!」
「確かにこれなら既存兵器との連携も可能となり、隙もなくなるな!」
「前衛としての役割、そして武装のコンセプトは決まったな。・・・では、そのタンクが敵を完全にハメ殺すための『必殺の矛(主兵器)』はどうする?」
その問いに対し、戦術担当官がモニターの画面を切り替え、先日の『ガイガン』との戦闘データを表示する。
「こちらの戦闘ログを見て下さい。『スーパーメカゴジラⅡ』の勝因は、偶然の産物でした。ガイガンは、ビームやミサイルなどの周囲の『熱』の変動には過敏に反応して回避していたものの、逆に熱を持たない『冷凍メーサー』を感知することができなかったのです。」
「そのことに気付いた『しんてん』が死角から冷凍メーサーを照射して『ガイガン』の動きを奪い、『スーパーメカゴジラⅡ』の全力砲撃を命中させられたことが、勝利に繋がりました。要するに、熱を奪い去る『冷凍兵器』こそが、あの超機動サイボーグ怪獣たちの唯一の死角であり、弱点なのです。」
そのデータを見た瞬間、部屋の隅で腕を組んでいた低温物理学の権威・菅野吾郎が、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。
「なるほどな。熱を感知するセンサーなら、その逆・・・。熱運動そのものを奪い去る『絶対零度』の攻撃は、最高の目隠しになるわけだ。これなら、『デストロイア』同様、『ミクロオキシゲン』を使う厄介なヤツに対してもガチメタになるな!」
「だが、『ごうてん型護衛艦』以上に強力な冷凍メーサーとなると、心臓部の『特殊レーザー結晶(利得結晶)』はどうするつもりだ? 知っての通り、原材料はかなり希少だが、この世界でも確保できそうなのか?」
菅野の問いに対し、防衛省幹部が不敵に微笑みながらスクリーンに一枚の地図を映し出す。それはフィルアデス大陸にあるパーパルディア皇国の領土が書かれたものであった。
「我が方の地質調査により、パーパルディア皇国領土のバルサ地区において、この利得結晶の材料となる特殊鉱物の大規模鉱床が存在する可能性が極めて高いと判明しました。」
「日本政府は先日の戦争における講和条約において、このバルサ地区の『地下資源の無償譲渡』および『採掘権の完全割譲』を皇国側へ認めさせてあります。現在、すでに自衛隊の管理下で採掘準備が進められており、来年初頭には研究本部の備蓄倉庫へ輸送が開始される予定となっています。」
「・・・ククッ、あっはははは!」
菅野吾郎は、その外交の鮮やかさと完璧なお膳立てに、魂の底から愉快そうに大笑いした。
「そいつは最高だ! 外務省も偶にはまっとうな仕事をするじゃないか。よし、『ごうてん型護衛艦』の冷凍メーサーを超える究極の冷凍兵器を開発し、この新型メカゴジラに搭載してみせよう!」
「前衛(タンク)として敵の攻撃をすべて回避する俊敏さをもち、接近してくる敵は地上で抑え込む。後衛の超兵器たちの砲撃を援護しつつ、自身も至至至近距離から絶対零度を叩き込み、分子ごと、ミクロオキシゲンごと粉砕する超近接戦闘型メカゴジラ。・・・面白い、やってやろうじゃないか! フレームの強度計算と、パージ機構の設計を急ぐぞ!」
日本国とともにこの世界に転移した地球最高の技術陣が、大会議室で一つに融和し、スクリーンのゴジラの三次元データを凝視している。麻生総理は、その光景を満足そうに、深く頷きながら見つめていた。
この日、古の魔法帝国こと『ラヴァーナル帝国』のサイボーグ怪獣たちに対抗するため、新型メカゴジラ、コードネーム『機龍』の建造プロジェクトが開始された。
本日でお盆休みも終わり、書き留めていたストックも尽きたため、更新ペースはまた遅くなります。