中央暦1639年7月13日
城塞都市エジェイ北側 『ダイタル基地』
巨大カマキリ3匹を含む魔獣部隊、歩兵・騎兵などの混成部隊約4万のロウリア王国陸軍がギムの町を出撃した。
この知らせを受け、城塞都市エジェイ北側に建設された異世界初の自衛隊基地『ダイタル基地』では、迎撃のための準備が進められていた。
「師団長、MLRS(多連装ロケットシステム)と99式自走155mm榴弾砲の配置、完了しました。臨時編成の90式メーサー小隊も間もなく目標地点に到着します!」
「エジェイから5km地点における工作ですが、後1時間ほどで完了する見通しです。」
日本国陸上自衛隊第7師団長にして、ロデニウス大陸派遣部隊の指揮官である大内田は、指令室で各部署から状況報告を受けつつ、幹部たちと作戦を練っていた。
「仕掛けが発動しても敵が進撃をやめない場合は、迎撃を開始する。海の連中は随分派手にやったようだが、一応、事前警告はしていたらしい。後で虐殺とか難癖をつけられないように、こちらも攻撃開始前に警告はしておきたいな」
「例の巨大カマキリがいるなら、コブラやアパッチでは危険ですね。」
「メーサーヘリから撤退を促すビラを撒いて、すぐに離脱させよう。民間人を生きたまま魔獣の餌にするような奴が指揮官なら、激昂してこちらの方に釣れるかもしれんな」
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同日
城塞都市エジェイ西側7kmの地点
アデムが率いるカマキラスを含めた魔獣部隊を先方に、ジューンフィルア伯爵がまとめる東部諸侯軍と東方征伐先遣隊、及び本体の全兵力4万はギム砦を出立し、城塞都市エジェイの攻略に向かっていた。
明日14日の早朝には全軍をもって城塞都市エジェイを攻略する手筈となっており、明日からの総攻撃に備え、城塞都市エジェイ西側7kmの地点で野営していた。
現最高指揮官であるアデムは、にやけた顔をしながら城塞都市エジェイの攻略について考えていた。
ここに到着するまでの道中、丁度20kmと10kmの地点に奇妙な板が設置されていた。木の杭で地面に打ち込まれた板には、第三文明圏共通言語で下記のようなことが書かれていた。
『すぐさま侵攻を中止し、クワ・トイネ公国の領土から撤退せよ。さもなくば貴軍を攻撃する。 日本国陸上自衛隊 ロデニウス大陸派遣部隊指揮官 大内田』
すぐさま陣形を整えて敵の奇襲に備えたが、周囲にはワイバーン一匹どころか敵兵一人もいる気配がない。10kmの地点でも同様であった。
「弱い魔獣ほどよく吠えると言いますが、このような虚仮威し(こけおどし)で我々が怖気付くとでも思ったのでしょうかねぇ~。噂の日本国、陸でもついに出てきましたか。まぁエジェイ陥落の暁には住民共々、私のペットたちの夕飯にして差し上げましょう!」
先日の軍議では、4月頭にギムの町を攻略したときと同様の作戦を諸侯たちに提案していた。まずカマキラスに敵城壁を破壊させ、上空から竜騎士隊150騎で都市内部を攻撃。その隙を付くかたちで、破壊した城壁の隙間から魔獣部隊を突撃させ、最後に大量の歩兵を送り込んで電撃的に占領する。
もし例の日本軍が出てくれば、自分が直々にカマキラスで相手するから、その間にそれ以外の魔獣部隊と竜騎士隊で攻撃するよう、ジューンフィルア伯爵をはじめとした諸侯たちに命令していた。
「海軍の大艦隊が手も足も出なかった日本国を自分が打倒したとなれば、その恩賞は前回のギム陥落をさせた比ではない、とても素晴らしいものになることでしょう!」
アデムは城塞都市エジェイが一日で陥落する姿を、カマキラスが日本軍を蹂躙する姿を、そしてハーク・ロウリア34世から賜るであろう褒章を想像し、胸が躍った。
しかしアデムが夢見た翌日の戦果は、180度正反対の結果に終わろうとしていた。。。
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中央暦1639年7月14日 早朝
城塞都市エジェイ西側5kmの地点
城塞都市エジェイの攻略に向け、ロウリア王国陸軍は再度侵攻を開始し、エジェイ西側5kmの地点まで差し掛かかろうとしていた。
先方の魔獣部隊を引き連れたアデムは、また奇妙な板を見つけた。
『すぐさま侵攻を中止し、クワ・トイネ公国の領土から撤退せよ。これは最終警告である。これ以上侵攻した場合、貴軍は甚大な被害を被ることになるだろう。 日本国陸上自衛隊 ロデニウス大陸派遣部隊指揮官 大内田』
「しつこいですねぇ。最終警告という割には見渡す限り、兵一人もいないではありませんか。」
アデムは警告の書かれた板を蹴り倒し、魔獣部隊を先に進めた。
数10m進んだタイミングで、最前列を歩くサイクロプスの足元が突如爆発した。真横にいたケルベロスも巻き添えを食うかたちで爆発に巻き込まれ、胴体が二つに泣き別れして即死した。
他の魔獣たちの足元でも爆発が次々に発生し、次々に重傷を負う、または致命傷を負い、戦闘可能な魔獣の数はどんどん減っていく。
虎の子であったカマキラスも、1匹の足元が爆発し、4本の脚のうち1本を失うものまで出てきた。
「敵の魔術師の攻撃か? 一体どこに? どこから攻撃されている?」
アデムは周囲を見渡すが、荒野が広がるばかりで自分たち以外は何も見当たらない。
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同日
城塞都市エジェイ北側 『ダイタル基地』
「敵魔獣部隊、5km地点に仕掛けた対小型特殊生物用地雷原に侵入。次々に数を減らしています。」
「巨大カマキリのうち1匹が脚1本を喪失。また左腕の鎌を引きずっていることから、腕にも損傷を与えたもようです!」
「敵部隊、地雷原で混乱し、侵攻を停止!」
「師団長、対小型特殊生物用地雷の効果覿面ですな!」
5月28日に発生したロウリア威力偵察部隊による避難民への襲撃の件を受け、ダイタル基地では巨大カマキリに加え、ロウリア王国が使役する大型の魔獣部隊への対抗する準備を進めていた。
それが対戦車地雷を即席改造した対小型特殊生物用地雷であった。
ロウリア威力偵察部隊が使役していた魔獣は、サイクロプスやオークロードなどの大型種が多く、銃弾数発程度では怯まないほどタフであった。そのため、もし巨大カマキリと共に数で攻められた場合、どちらかの対応が置き去りになり、自衛隊やエジェイの町に被害が発生する恐れがあった。
幸いなことに巨大カマキリとワイバーン以外は飛行するものおらず、また知能も低いことから地雷原の有効性が提案され、83式地雷敷設装置を用いて城塞都市エジェイ西側5kmの地点に対小型特殊生物用地雷が敷設されたのであった。
既に魔獣の8割近くが地雷の爆発で死傷しており、部隊としては壊滅の状態となっている。
「よし、ビラ撒き用のメーサーヘリを発信させろ。奴さんこの時点でも頭にきているだろうから、撤退勧告のビラなんて配られたらブチ切れて巨大カマキリと共にこっちにくるぞ!!」
「正念場だ! 持ち場で全力を尽くせ!!」
ダイタル基地からメーサーヘリが発進していく。
異世界転移後、初の怪獣退治が始まろうとしていた。