東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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017. 鉄の雨

 

中央暦1639年7月14日 早朝

城塞都市エジェイ西側5kmの地点

 

 

日本国ロデニウス大陸派遣部隊の仕掛けた対小型特殊生物用地雷により、アデム率いる魔獣部隊は壊滅的な被害を受けていた。

 

地雷の爆発で混乱状態に陥り、制御不能になった魔獣が周囲を動き回ることで、新たな地雷が作動して爆発する。この死のループ状態に嵌ったことで既に戦闘可能な魔獣は出撃時の二割を切っており、昨夜アデムが夢見た華やかな光景とは真逆の地獄絵図が目の前で繰り広げられていた。

 

「姿も見せずに一方的に攻撃してくるとはなんと卑怯な!!」

 

『矮小な亜人』と『それに味方する愚か者』と侮っていた相手から手痛い攻撃を受けたアデムは、屈辱のあまり、怒り心頭に発しようとしていた。

 

そのとき、北東の方角から3つの小さな点が現れた。それが近づいてくるにつれ、聞きなれない音を立てながら飛翔する飛行物体であることが認識できた。

 

「くそ、こんなときに!」

 

アデムは舌打ちしながら錫杖を取り出し、カマキラスを向かわせようとしたが、それは一向に攻撃してくる気配を見せず、そのまま自分たちの上を通り過ぎようとしていた。

 

報告にあったロデニウス沖大海戦で現れた羽ばたかない敵騎に酷似したそれは、アデムやジューンフィルア伯爵の東部諸侯軍の上に到着すると、胴体の下から白い何かを撒き始め、旋回してワイバーンを超える飛行速度で元来た方角へ戻っていく。

 

ヒラヒラと舞い落ちてきたものは、第三文明圏共通言語が書かれた真っ白な上質の紙であった。

 

『これ以上の被害を被りたくなければ、すぐさま侵攻を中止し、撤退を開始せよ。さもなくば貴軍を攻撃する。貴軍の指揮官が無能でないことを願う。 日本国陸上自衛隊 ロデニウス大陸派遣部隊指揮官 大内田』

 

兵士の一人が、拾った紙を恐る恐るアデムに手渡した。

 

渡された紙を見たアデムは、全身をワナワナと震わせて般若のような顔になった。そして ・・・ブヂン!!!・・・ アデムの頭の中で、何かが切れた。

 

「カマキラス全匹、あの飛んできた奴を追いなさい! もう絶対に許しません!! 亜人どもに協力する日本人は、死よりも辛い生を味あわせてジワジワと嬲り殺して差し上げましょう!!!」

 

「ジューンフィルア伯爵にエジェイ攻略を開始するよう命じなさい! あとワイバーンを一騎こちらに寄こすよう伝えなさい!!」

 

完全に激昂したアデムはワイバーンに騎乗し、飛び去ったメーサーヘリを追ってカマキラス三匹とともに北東の方角へ向かい始めた。

 

 

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同日

城塞都市エジェイ北側 『ダイタル基地』

 

 

指令室では、城塞都市エジェイに派遣した観測要員や高空の偵察機から矢継ぎ早に戦況連絡が入り、自衛官たちがひっきりなしに対応していた。

 

「敵巨大カマキリ、メーサーヘリ小隊を追ってこちらに向かっています」

 

「どうやらこちらに喰いついたようです。まさか三匹が一気に来るとは・・・敵軍の指揮官は余程ご立腹のようですな」

 

「作戦はこのままパターンAを継続する! MLRSと99式の準備はどうだ?」

 

「いつでも発射可能です。敵巨大カマキリ、攻撃予定エリア到着まで後1分です!」

 

「座標、エジェイ西側で接近中の敵巨大カマキリ! 多連装ロケットシステム、斉射用意!! 撃て!!!」

 

各車両から爆炎が舞い、発射装置から連続して発射されたロケット砲は轟音と煙の軌道を残し、カマキラス目掛けて飛翔していった。

 

「続いて99式自走155mm榴弾砲、全車、撃て!!!」

 

「90式メーサー小隊はこちらからの指示があるまで、そのまま待機せよ!」

 

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城塞都市エジェイ北西4kmの地点

 

 

アデムはワイバーンに騎乗し、カマキラスたちを追いかけていた。カマキラスはワイバーンよりも速く飛翔可能なため、なかなか距離が詰められない。

 

また舐めた真似をして飛び去った日本の敵騎も、カマキラスと同等以上の速さで飛翔しており、カマキラスたちもなかなか追いつけずにいた。しかしこちらの方角に逃げ続けているということは、その先に日本軍の本体がいる筈、それをカマキラス三匹で蹂躙してやろう・・とアデムはいつものような嫌らしい顔をしながら考えていた。

 

突然、興奮していた頭が冴え、背筋が冷たくなっていく感覚を覚えた。戦場で何度か経験した死の予感を感じとったアデムは、騎乗するワイバーンのスピードを緩めた。

 

すると自分の先方700mくらいを飛翔していたカマキラスたちの上で何かが爆発し、僅かに遅れてパラパラと聞きなれない音が連続して発生した。

 

発射されたM26ロケット弾12発からは1発あたりM77子弾644発が炸裂し、100mmの鋼板を貫通できる威力をもった鉄のゲリラ豪雨が、サッカー場14面に相当する面積でカマキラスたちに降り注いだ。

 

固い外骨格で守られた身体ならいざしらず、飛翔するための薄い羽根はとてもこの攻撃に耐えられず、三匹とも羽がズタボロになり、そのまま地面に落下した。

 

地面に落下したカマキラスたちへの追撃は続く。

 

続いて発射された99式自走155mm榴弾砲が、落下地点周辺に次々と直撃したのだ。

 

無敵と思われたカマキラスが、それも三匹同時に運用していたにも関わらず、ハエのようにあっさりと叩き落される。目の前で起こったことが信じられない・・・、これは悪い夢だ・・・という顔で呆然としていたアデムも、榴弾砲の爆風でワイバーンから跳ね飛ばされ、そのまま川へと落下した。

 

地雷で既にダメージを負っていた一匹のカマキラスは左鎌がもぎ取れ、他の二匹も固い外骨格にヒビが入った満身創痍の状態になっていたが、自衛隊は攻撃の手を緩めない。

 

飛べない状態になったカマキラスたちに、90式メーサー殺獣光線車8両で構成された2個メーサー小隊が襲い掛かった。

 

パラボラアンテナ状の先から、15万ボルト90式メーサー砲が連続して発射される。メーサー砲が直撃した外骨格は、あっという間に水分が蒸発して細胞組織レベルで焼き尽くされ、そして真っ黒に炭化していく。巨大な体躯からワイバーンのように爆散することはなかったが、全身を焼き尽くされたカマキラスは、20分もしない内に三匹とも絶命した。

 

 

この日、ロウリア王国軍の切り札であったカマキラス三匹は、遅れて接近してきた魔獣部隊の生き残り共々、ロデニウス大陸派遣部隊や城塞都市エジェイに何の被害も与えることなく、全滅した。

 

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