東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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018. ジューンフィルア伯爵の決断

 

中央暦1639年7月14日

城塞都市エジェイ 西側5kmの地点

 

 

アデム率いる魔獣部隊が、ロウリア王国軍の切り札であったカマキラス三匹を含めて一時間も経たないうちに全滅。

 

この様子は、アデムからの命令で城塞都市エジェイへ攻め込もうとしていたジューンフィルア伯爵がまとめる東部諸侯軍や東方征伐先遣隊本体、そして城塞都市エジェイの守りを固めていたノウ将軍をはじめとするクワトイネ軍からも見えていた。

 

距離があったため詳細な戦闘の様子はわからなかったが、魔獣部隊が城塞都市エジェイに近づいた途端、火山が噴火したかのような爆発が付近の地面から連続して発生し、壊滅的な被害を与える。

 

そしてアデムを逆上させるビラを撒き、逃げ去った鉄騎を追いかけたカマキラスたちを待っていた結末は、三匹まとめて地面にあっさり叩き落され、害虫のように機械的かつ効率的に駆除される・・・というロウリア・クワトイネ両軍の誰一人、予想すらしていなかったものであった。

 

カマキラスたちと共に、ワイバーンで飛び出していったアデムからの魔信が途絶えたということもあるが、4万人いるロウリア兵の誰もが事態を飲み込めず、時が止まったかのように全員が武器を持ったまま固まっていた。

 

「アデム様との交信・・・途絶しました・・・」

 

魔信担当の兵が状況を報告するが、ジューンフィルア伯爵を含む東部諸将たちも、現実離れした光景を前に、ただ茫然と立ち尽くし、返事すら出来ないでいた。

 

「これが・・・日本軍の・・・強さだというのか・・・。」

 

先日の軍議にて、魔導士ワッシューナが話していたロデニウス大陸沖大海戦の内容は本当のことであった。たった一匹を投入するだけでクワトイネ軍の飛竜隊を蹴散らし、城壁すら容易に破壊したカマキラスでさえ、三匹まとめて赤子の手をひねるように殲滅できるだけの力をもつ相手・・・先遣隊と合わせて4万人の兵力があったしても、とても自分たちが勝てるビジョンが見えない・・・。

 

ジューンフィルア伯爵は、ある決断を下した。

 

「魔獣部隊や切り札であったカマキラスをすべて喪失し、アデム殿の生死も不明な今、堅牢鉄壁な城塞都市エジェイを攻略することは困難である! よって我々東部諸侯軍はロウリア王国の自領に撤退し、ハーク・ロウリア殿からの再度のご指示を待つものとする!!」

 

ジューンフィルア伯爵の言葉に東部諸侯軍約1万人は180度反転し、ロウリア王国の自領に向けて撤退を開始する。

 

「ジューンフィルア伯爵、一体どういうおつもりですか!! アデム様から与えられていたご命令はエジェイの攻略ですよ!!」

 

東方征伐先遣隊本体をまとめていたアデムの副将マイルは、撤退を開始したジューンフィルア伯爵に魔信で抗議する。

 

「近づくだけで地面が爆発する魔法を敵が使う以上、歩兵だけで接近するのはあまりに危険すぎる。ここは策を練り直す必要がある!」

 

「その上アデム殿との連絡が取れない以上、我々に命令を出すことが出来るのはハーク・ロウリア殿とロウリア王国三大将軍だけである。ゆえに貴殿からの指示に従う謂れはない!!」

 

『あんな化け物みたいな連中と戦えるか! 部下や仲間たちを無駄死にさせるだけなのがわからないのか!!』

 

今の状況が全く見えていないマイルを哀れみながら、ジューンフィルアは魔信を切った。副将マイルは反論することが出来ず、唇を嚙みながら魔信をもった右手をワナワナ震わせていた。

 

「この臆病者どもが! 私がエジェイを墜とした暁には、尻尾を撒いて逃げ出したことを大王様に報告してやるから覚悟しておけ!! 東方征伐先遣隊全軍、我々だけでもエジェイの攻略を開始する!! 竜騎士隊は全騎出撃せよ!!!」

 

 

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同日

城塞都市エジェイ北側 『ダイタル基地』

 

 

「敵巨大カマキリ三匹の沈黙を確認!」

 

「思ったよりもあっさり片付きましたね。MLRSと99式の攻撃に耐えたのはなかなかでしたが、ゴジラをはじめとした84年以降に出現した特殊生物たちと比べると防御力、回復力とも全然ありませんでした。」

 

「メーサー砲が効果的であったことから、66年に出現したガイラに近いものがあると考えます。戦闘終了後に他魔獣たちと合わせて遺骸を回収し、特殊研究本部に回します」

 

特に被害が出ることもなく、最大の懸念であった巨大カマキリを撃破出来たことに、指令室にいた全員が安堵する。

 

「ロウリア王国軍の一部が撤退を開始しました! ですが、残りはエジェイに向かって進撃を開始。敵ワイバーン約150騎も出撃したようです!!」

 

ロウリア王国軍も一枚岩ではなかったようだな・・・とロデニウス大陸派遣部隊の指揮官である大内田は、目を瞑りながら思った。敵指揮官の無謀に付き合わされ、何も分からないままに戦死するであろうロウリア兵たちに祈りを捧げる。

 

「向かってくるのであれば仕方ない。エジェイに向かっていく敵部隊に対して攻撃を開始せよ!! 撤退を始めた部隊には攻撃するなよ!」

 

「MLRS・99式自走155mm榴弾砲の再発射準備、完了しました!」

 

「座標、エジェイ西側で接近中の敵部隊! 撃て!!!」

 

「海自からワイバーンに対する対空ミサイルの命中率は9割ほどだったとの連絡を受けている。エジェイへの誤射を避けるため、敵ワイバーン隊はメーサーヘリ、コブラや、アパッチで迎撃せよ!」

 

 

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中央暦1639年7月14日

城塞都市エジェイ 西側3kmの地点

 

 

アデム率いる魔獣部隊を壊滅に追い込んだ対小型特殊生物用地雷は、人間相手には作動しないため、副将マイル率いる東方征伐先遣隊本体はエジェイへ向けて前進を続けていた。

 

「ふん、あれほどの大魔法、そう簡単に何度も使えるわけがないだろう! 自領に籠っているだけの田舎者が!!」

 

勝手に撤退したジューンフィルア伯爵たちを罵りながら、マイルは行軍を続ける。

 

突如として隊列の中央で大きな爆発が発生し、その場にいた兵士たちが巻き上げられた。続いてパラパラと聞きなれない音が連続して発生し、屈強な兵士が次々と倒れていく。

 

「な・・・一体何だ!!!???」

 

煙に包まれると同時に次々と大爆発が発生し、そして小さな黒い花が咲く度に、兵士がなぎ倒され、一方的に虫のように殺されていく。

 

「り、竜騎士隊は・・・」

 

絶望し、打ちひしがれた彼が見上げると、空に黒い花火を咲かせて落ちていく自軍のワイバーンが見えた。

 

今更後悔しても遅いが、自分たちも撤退すれば良かった。。。次の瞬間、押されたような衝撃とともに浮遊感を味わう。それが彼の人生最後の記憶になった。土煙が去った後、表面が抉られてクレーターだらけになった大地に立っているロウリア軍は、馬を含めて一人もいなかった。

 

 

この日、ジューンフィルア伯爵ら自領に撤退を始めた東部諸侯軍約1万を除く、ロウリア王国軍東方征伐先遣隊約3万は、城塞都市エジェイに到達することなく、全滅した。

 

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