東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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019. 50年前の気配と奪還

 

中央暦1639年7月15日 正午

クワ・トイネ公国 城塞都市エジェイ

 

 

クワトイネ公国軍西部方面師団長のノウ将軍は、城塞都市エジェイの応接室で日本国ロデニウス大陸派遣部隊の指揮官である大内田師団長と面会していた。

 

「・・・以上がエジェイ西方の戦いの報告になります。昨日は偵察員と観測要員の派遣を許可頂き、助かりました。おかげさまで敵の進軍状況等をリアルタイムで把握でき、効果的な迎撃が出来ました」

 

昨日の戦いで、ロウリア王国軍が使役していた巨大カマキリをはじめとした魔獣部隊、並びに東方征伐先遣隊約3万を無傷で撃破した報告、そして今後の対応について大内田師団長がノウ将軍と協議していた。

 

「大内田殿、この度の援軍、感謝しております。おそらく我らだけでは敵の魔獣部隊、特にあの巨大カマキリには、おそらく手も足も出なかったじゃろう・・・」

 

派遣された兵力を聞いたときは、本当にやる気があるのかという不信感しかなかったが、自国に迫った脅威をあっさりと排除してくれた相手に、素直に感謝の念を伝える。

 

「一つ教えて貰えんですか。こちらからでは遠くてよくわからなかったが、貴殿たちはあの魔獣部隊にどうやって攻撃したんじゃ? 大型の魔獣がエジェイに近づいた途端、地面が噴火したように見えたが、私を含む軍人は勿論、ここの魔導士たちもあのような魔法は見たことも聞いたこともなくてな・・・」

 

軍の機密にあたることで教えて貰えないかもしれないが、どうしても気になったノウ将軍は大内田に尋ねた。

 

「あれは魔法ではなく、科学が基礎になっている技術です。我が国では、物の現象や原理などの自然の理を研究する物理学、物質の構造・性質および物質相互の反応を研究する化学など自然科学という学問が発展しており、それらから得られた技術をもとに国を発展させてきました」

 

大内田の回答に、ノウ将軍は何かを思い出したかのようなはっとした表情をした。

 

確か数か月前、日本国に派遣されたクワトイネ公国の使節団が書いた報告書に、『日本国には魔法の概念自体がない』という旨を記載していたような・・・

 

あの報告書を読んだときは、『まだ国交すら開いていない国が、国家機密級の情報をペラペラ開示するわけないだろう、うまいようにはぐらかされおって』と呆れていたが、これまでの戦いや今の大内田の話から、それは本当のことだったのかと悟った。

 

「あれは大型の魔獣のような重いものが上に乗ったとき、作動して爆発するように仕込まれた兵器です。人くらいの重さでは作動しませんが、馬車や荷車で誤作動しないよう、現在、撤去作業を進めています。本日の夕方までにはすべて完了出来る予定です。」

 

戦いが終わった後のことも考え、後始末もきちんとする異国から派遣された援軍の姿に、ノウ将軍の日本国に対する印象は、既に180度変わっていた。

 

このことが切っ掛けとなり、大内田と友人関係となったノウ将軍が、大内田といい関係になったイーネに対し、結婚式の友人スピーチは私にさせろと言ってセクハラ扱いされたのは、暫く後の話だったりする。

 

 

「重ね重ね感謝申し上げます。それにしても科学か・・・。我が国を含め、この世界では、古くから魔法を基礎とした文明が築かれています。我が国は、三大文明圏と呼称される地域から遠く外れた『文明圏外国』と呼ばれるような田舎のため、あまり詳しくはないが、貴国のような科学が基礎となっている国は一つしか存じませんなぁ。」

 

「ほう、この世界にも科学が基礎になっている国があるのですね」

 

大内田は出された紅茶を飲みながら、興味本位で尋ねた。

 

「隣国のクイラ王国がよく貿易をしていたと思います。クイラ王国の燃える水、貴国では石油と呼んでいましたっけ、あれを貴国同様、購入していますぞ。」

 

「我が国から西に遥か2万kmも離れた第二文明圏と呼ばれる地域があり、そこに君臨する世界第二位の列強国『ムー連邦』という国です。」

 

突然落とされたメガトン級どころかギガトン級の爆弾発言に、大内田は思わず飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。溢しそうになった紅茶をどうにか飲み込み、一息つけた大内田は、何事もなかったかのように話続ける。

 

「それは興味深いです。このロウリア事変の終息後には、是非使節を派遣したいものです。」

 

『ロウリアとのいざこざが終わったら、クイラ王国からも話を聞いて早急に動いた方が良さそうだな。。。まさかとは思うが、ムー帝国と関係が無ければ良いが・・・』

 

「それと今後についてですが、ギムの町をロウリア軍から奪還する作戦を合同で実施したいと考えています。」

 

大内田に同行していた幹部の一人が、航空写真を見せながら説明を始めた。

 

「今朝ギムの町方面に飛ばした偵察機から、ロウリア軍の状況について報告がありました。まず昨日撤退したロウリア軍約1万は、ギムの町を素通りする方向の街道を移動中のため、そのままロウリア王国領内に向かっているものと思われます。またギムの町にはロウリア軍が築いた砦がありますが、昨日の戦闘で大幅に消耗したこともあり、兵力としては1万人程度とのことです。」

 

「作戦としましては、まず我々がこの砦を爆撃し、敵兵力を一気に殲滅します。勿論、ワイバーンをはじめとした敵航空戦力も事前に無力化させます。その後、貴国には町中に残る敵残存兵力の掃討のご協力をお願いしたいと思っています。我々が攻撃すれば、町の建物などもすべて破壊してしまう恐れがあり、また町の地形にも詳しくないため、ご協力いただけませんでしょうか。」

 

勿論、特殊作戦群などの部隊を投入すれば自衛隊だけでもギムの奪還は可能ではあるが、今後の付き合いを考えると、『クワトイネ国と共同で奪還した』という事実が重要なため、この作戦が提案された。

 

ノウ将軍の側近が、作戦を説明した幹部に質問する。

 

「作戦を聞く限り、貴国の鉄竜が攻撃するタイミングに合わせることが重要と思います。しかし、ここからギムの町まで歩兵が移動するには、最低数日はかかってしまいます・・・」

 

「我が国の『チヌーク』という輸送機を20機使えば、ここから数時間で貴国の兵1000人を輸送可能です。」

 

なんという常識外れな輸送能力と部隊の展開能力だ・・・とノウ将軍をはじめとしたクワトイネ公国の西部方面軍幹部たちは息を吞んだ。

 

その後、双方が協議し合って作戦内容の調整が行われ、クワトイネ公国の西部方面の精鋭1000人がギム奪還作戦に参加することとなった。

 

 

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中央暦1639年7月18日 早朝

クワ・トイネ公国 旧ギムの町

 

 

ギムの町に築かれた砦には、エジェイ攻略戦に出撃しなかった予備兵1万人が待機していた。ギム砦の最高指揮官であったアデムが出陣したこともあり、ロウリア王国三大将軍の一人であるパンドールが派遣され、指揮を執っていた。

 

「エジェイ攻略に向かった先遣隊とは連絡が取れないままか?」

 

度重なる前線部隊との通信途絶と失踪に、ギム砦の本陣司令部は混乱に陥っていた。

連絡要員の兵が、大粒の汗をかきながら状況を報告する。

 

「現在調査中ですが、どの部隊とも魔信の連絡がつかない状態です。また状況確認に向かわせた飛竜偵察隊につきましても、一騎も帰還しておりません・・・」

 

「そうか・・・」

 

拭い切れない不安に覆われたパンドールは表情を曇らせながら、周囲の兵に悟られないように溜息をついた。

 

数分後、その不安は的中することとなった。

 

ギム周辺を警戒していたワイバーン隊10騎に、物凄い速度で接近してきた光の矢が突き刺さった。次の瞬間、煙と爆炎に包まれ、木っ端微塵になったワイバーンが次々に空から落ちてきた。

 

「な、何だ!?」

 

砦を警備していた兵や本陣司令部の将官たちも状況が理解できず、右往左往している。撃墜されたワイバーンの破片が近くに落下した兵は、あまりの恐怖に腰を抜かし、地面にへたり込んでいる者までいた。

 

ワイバーン隊をハエのように叩き落した鉄竜たちが飛び去ると、より大型の鉄竜数機が町まで接近し、砦の上空で黒光りする筒のようなものを投下していく。

 

次の瞬間、ギムに築かれた砦は本陣司令部や周囲の兵舎諸共、大爆発を起こした。指揮を執っていたロウリア王国三大将軍の一人であるパンドールは、灼熱の業火と眩い光に包まれ、9600人のロウリア兵とともにこの世を去った。

 

その後、CH-47J/JA チヌーク20機で輸送されたクワトイネ公国西部方面軍の精鋭1000人が町に突入し、ギムの町は約3か月ぶりに奪還されたのであった。

 

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