東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

23 / 117
020. 太陽の国と闇の帝国

 

中央暦1639年7月26日 午前

クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ

 

首相官邸 蓮の間

 

 

首相官邸にある蓮の間にはクワトイネ公国の首脳陣が集まり、4月のロウリア王国の侵攻開始から、もう何度目になるかわからない政治部会が開催されていた。

 

「・・・・以上が今月14日に発生しましたエジェイ西方の戦い、そして18日に日本国自衛隊と共同で実施しましたギムの町奪還作戦の報告になります。」

 

城塞都市エジェイから報告のために参加したノウ将軍が説明する。

 

「現在ギムの町は、日本国ロデニウス大陸派遣部隊協力の元、復興と防衛拠点化が進められています。また我が国に侵入しましたロウリア王国陸軍は、すべて壊滅するか撤退するかしております。4月末に勃発しました『ロデニウス大陸沖大海戦』と合わせて、数か月どころか数年レベルで再侵攻は不可能な状況になっていると思われます。」

 

予想以上の戦果に、政治部会の場がしーんと静まりかえる。

 

「科学だけでこのようなことが出来るとは・・・。実力だけでいえば、まるで御伽噺で伝えられる古の魔法帝国のようだな」

 

政治部会に参加していた貴族の一人が、ポツリと呟いた。

 

 

古の魔法帝国、正式名称『ラヴァーナル帝国』。

 

神話の時代、他種とは隔絶した圧倒的な魔力と技術力を持って全世界を支配した史上最強にして最凶の帝国として伝えられている。進み過ぎた文明ゆえに驕り高ぶり、他種族に対して悍ましい所業を幾つも行ない、そしてついには神々にすら弓を引いたとされている。

 

神々は怒り、彼の国が支配するラティストア大陸に巨大隕石を落として滅却しようとしたが、国全体に結界を張り、数百万から数千万の他種族を犠牲にした時空転移魔法を発動させ、大陸ごと未来へ転移して隕石から逃れたという伝承も残っている。

 

魔帝の転移から一万数千年過ぎた現在でも、この神話は全世界の各地で語り継がれており、魔帝という名前自体が恐怖の象徴になっている節もある。

 

 

「魔法の概念をまったく持たず、科学だけであれほどまでに発展している点を顧みると、日本国はどちらかといえば魔帝の対極に位置するのかもしれませんなぁ。」

 

「確かに日本国がこの世界に転移してきたと話している日は、我が国やクイラ王国で

『夜が一瞬だけ、真昼のように明るく照らされました』からな。」

 

ちなみに魔帝が復活する場合は、上記とは真逆で『昼間が一瞬、全世界が夜になったように闇に覆われる』と伝承されていたりする。

 

「ゴホン、日本国と魔帝の比較はそれくらいにして、今は自国のことについて話合おうじゃないか。ひとまずロウリア王国の脅威は去ったと考えて良いだろう」

 

会議の話題が脱線しそうになっていたため、首相カナタは咳払いして場を改めた。

 

「各位、手元に配布された資料を確認して欲しい。日本国から今後の対ロウリア王国について提案があった。」

 

 

表紙に『ロウリア王国 首都鎮圧計画書』と書かれた白い紙には、ロウリア王国の王都ジン・ハークを強襲し、ロウリア王を捕縛する作戦が書かれていた。

 

情報局長と外務卿リンスイが挙手して説明を始めた

 

「今回のエジェイ西方の戦いにおいて、一部の敵部隊が戦線を離脱し、自国領に向けて撤退していることが日本国から報告されています。またロデニウス大陸沖大海戦の大敗や今回の侵攻失敗を受け、ロウリア王国の諸将の中には、ロウリア王を見限る動きが広がっていると、諜報部から連絡がございました。」

 

「そのため日本国としては、今回の侵攻の首謀者であるハーク・ロウリア34世を捕縛できれば、この戦争を終わらせられると考えているようです。我が国には、国境線の防衛強化とダイタル基地の空港やマイハーク港の使用許可を求めています。」

 

その後議論が重ねられ、全会一致でクワ・トイネ公国国内の施設利用、そしてロウリア王国への戦闘許可が決議された。

 

 

==================================================================

 

 

中央暦1639年8月10日 午前

王都ジン・ハーク ハーク城

 

 

王都ジン・ハークにあるハーク城では、クワ・トイネ公国への侵攻失敗を受け、軍幹部や関係者が多数集まり、軍議が開催されていた。

 

ロウリア王国三大将軍の一人であるミミネルの側近が、現在の戦況について報告を始めた。

 

「それでは現状を報告します。今回の戦争において、陸戦ではエジェイ攻略戦に向かった先遣隊3万人、そしてギム砦を防衛していましたパンドール将軍をはじめとした1万人との連絡が途絶したままとなっています。ギムの町を奪還されたことから、おそらくは全滅したものと思われます。また海軍は、先の『ロデニウス大陸沖大海戦』で4400隻の大艦隊のうち2400隻が撃沈され、指揮を執っていましたシャークン提督も行方不明になっています。」

 

「またエジェイ周辺に放っている密偵からの報告では、アデム副将率いる魔獣部隊にいました、我が軍の切り札たる『カマキラス3匹』ともが魔獣部隊諸共全滅したそうです。アデム副将や観戦武官殿とも連絡が取れないままになっています。そちらもおそらくは・・・」

 

予想以上の大損害に出席していた全員の顔が真っ青になる。定かではない戦闘報告を聞いて、真に受けずに鼻で笑っていた軍幹部たちも、ロウリア王国三大将軍の一人であるパタジンから正式発表され、事実であったことに愕然とした。

 

「これら戦況悪化の原因は、日本国という新興国がクワ・トイネやクイラの連中に味方し、参戦してきたことにあります。これまでの報告から、巨大艦船や鉄騎など見たことも聞いたこともない武器や兵器を運用している強敵です。このままでは、最悪、王都にまで日本軍が攻め込んでくる可能性もあると考えます。」

 

まさかの逆侵攻の可能性まで指摘され、全員の顔がさらに蒼くなる。

 

「さらに諸侯たちの士気の低下も重大な問題です。ここ最近、自国領の防衛を名目に王都から自国まで帰国する諸侯の数が日に日に増加しています。」

 

玉座で報告を聞いていたハーク・ロウリア34世が、自国の地図を見ながら話始めた。

 

「幸い、ここ王都ジン・ハークはクワ・トイネの国境から遠く、途中には工業都市ビーズルがある。まずは工業都市ビーズルの防衛を強化し、もし敵が陸路で侵攻してきた場合は、ビーズルで食い止めよ!」

 

「また海路での侵攻に備え、残った2000隻の軍船は王都北の港にある海軍基地を出撃後、東側の海域にて展開。接近してきた敵艦隊を迎撃せよ!」

 

シャークン提督の後任を任されたホエイル海将が、手を挙げて恐る恐る質問した。

 

「ですが、陛下・・・。我が海軍は先の『ロデニウス大陸沖大海戦』にて、敵艦隊に手も足も出せないまま敗走しております。もし同様の艦隊が敵の場合、迎撃しきれない恐れがございます・・・」

 

ハーク・ロウリア34世は、側近から渡された海図を指差しながら説明した。

 

「非常に心苦しいが、余も残った軍船で勝てるとは思っていない。。。だが、敵艦隊が報告にあるような巨大船であれば、接岸や上陸が可能な海岸は、このリアン海岸周辺に限られる。加えてこの周辺の海域は、かなり水深が浅い! そのような海域で2000隻以上の軍船が沈めば、座礁を恐れて少なくとも上陸は阻止できる!! 敵がなかなか上陸出来ずにもたついている間に、我が精強な陸軍は迎撃態勢を整え、陸戦にてケリをつける!!!」

 

軍議に参加している軍幹部たちは、ハーク・ロウリア34世の方針を聞き、もしかするとなんとかなるかもしれないと少し明るくなる。

 

しかし2000隻の軍船が生き残った海戦とは異なり、陸戦ではほぼすべての部隊が全滅したため、日本国がどのような戦術や兵器を使うか、きちんと情報が伝わっていなかった点がハーク・ロウリア34世の判断を誤らせた。

 

さらに陸でもなく海でもなく『空』から侵攻されるとは、彼を含めたこの軍議に参加している者で予想出来たものは誰もいなかったのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。