やってしまったぁ・・・
ということで、本作では海将ホエールにさせて下さい。
中央暦1639年8月30日 午前7時過ぎ
ロウリア王国 王都ジン・ハーク
「海軍本部のホエール海将から緊急魔信です! 『日本軍の鉄竜から攻撃を受けている。軍船と湾岸施設の被害は甚大である。至急、竜騎士隊の上空援護を請う』以上です!」
「すぐさま、第1竜騎士団を全騎出撃させろ! 第2、第3竜騎士団も出撃させて王都上空を警護させろ! 各所への通達急げ!!」
ホエール海将から緊急の応援要請を受けた王都防衛本部は、竜騎士団に緊急出撃命令を出した。隣接した竜舎からは、待機していた第1竜騎士団50騎が次々に出撃を開始し、海軍本部の救援へと向かった。さらに第2、第3竜騎士団計100騎は、王都上空の警戒のため、迅速に準備を整え、朝日が輝く大空へと飛び立っていく。
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ロウリア王国 北の港の沖合
『F-2』が攻撃しているロウリア王国の海軍本部がある北の港の沖合には、巨大なドリルを艦首に装備した異形の護衛艦『ごうてん』が海面に浮上していた。昨夜の間に再度潜航することで、単艦でロウリア艦隊1000隻の警戒網を海中から潜り抜けていたのである。
浮上後はレーダーで探知した状況を『F-2』や王都ジン・ハークの攻撃に向かっている『F-15J改』に通知し、指示を出していた。
「北の港に向かって50騎のワイバーンが接近中。飛翔速度は230km程度のため、ロデニウス大陸沖大海戦で撃墜したものと同種と推定される。」
「王都上空にも100騎確認、制空権確保のためにも全騎撃墜せよ!」
「全機、対空ミサイルの使用を許可する。前回海戦のデータを踏まえて、認証設定もバージョン1.1にアップデートされているうえに、ここでは誤射の心配も不要だ。勿論、撃墜時のデータはしっかり記録しておけよ!」
王都ジン・ハークから北の港までは僅か40kmほどしか離れておらず、既に中距離空対空誘導弾の有効射程圏内に入っていたため、『F-15J改』から次々と対空ミサイルが発射され、竜騎士たちに向かって轟音を響かせながら飛び去って行った。
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王都ジン・ハークから北の港に向かう街道上空
第1竜騎士団の団長アルデバランは相棒のワイバーン騎乗し、49騎の竜騎士たちと北の港を目指していた。
先日の軍議では、陸路で来るなら工業都市ビーズルが、海路で来るならリアン海岸沖が主戦場になると予想されていた。そのため予想に反し、真っ先に北の港が襲撃された事実に狼狽していた。
「どちらも陥落どころか攻撃を受けた報告すらない・・・。敵の目的は一体なんだ? そもそも敵の鉄竜どもは、一体どこから飛んできたのだ?」
頭の中で敵の意図を考えていると、前方1時の方向から何かが飛んできているのが見えた。次の瞬間、それは一瞬で距離を詰め、自分の左右を飛んでいた部下の竜騎士たちが、騎乗していたワイバーン諸共、大爆発して消し飛んだ。
よくわからないが、自分たちが何かで攻撃されているという状況を理解したアルデバランは、相棒のワイバーンを急上昇させて回避しようと試みる。
しかし『それ』はまるで意思をもっているかのうように、同じように急上昇して一気に距離を詰め、そして炸裂した。
団長アルデバランを含む第1竜騎士団50機は、中距離空対空誘導弾の直撃を受け、北の港に向かう街道上空で全機が撃墜された。その数分後、王都ジン・ハークの上空を警護していた第2、第3竜騎士団も、相棒のワイバーンが野生の勘を発揮したターナケインを除く、99騎も後を追うことになった。
たったの数分で王都ジン・ハーク周辺の空からワイバーンはすべて消え去り、制空権は失われたのであった。
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ロウリア王国 王都ジン・ハーク
王都ジン・ハークにある王都防衛本部では、各拠点からひっきりなしに届く緊急の魔信連絡、そして異常事態を知らせる半鐘がけたたましく打ち鳴らされ続ける物々しい雰囲気に包まれていた。
「リアン海岸沖のアンディ提督から緊急魔信です。『日本艦隊を発見、戦闘を開始するも我が艦隊は劣勢なり』 以上です。」
「リアン海岸砦からも緊急魔信です。『鉄蟹の魔獣が複数匹でリアン海岸から上陸! 土塁と防護柵も突破され、攻撃を受けている!! このままでは数分と持ちそうにない、至急援軍を求む!!!』 以上です。
寝巻のまま走ってきたロウリア王国軍防衛騎士団のパタジン将軍は、各拠点からの緊急連絡を聞きながら各所に指示を出していた。
「海路で攻めてきおったか・・・。工業都市ビーズルの駐屯兵をリアン海岸砦方面に向かわせろ! もしかすると北の港を占領して上陸してくる可能性もある、王都に残っている諸侯たちは、すべて北の港に急行させろ!!」
その数分後、ミミネル将軍や軍幹部たちも慌てた様子で王都防衛本部に合流し、パタジン将軍と今後について話合っていた。
「まさか北の港とリアン海岸沖が同時に攻撃されるとは、思いもよりませんでした。おそらく日本国は軍を二つにわけ、双方から上陸し、ここ王都ジン・ハークへ攻め上がってくるものでしょうな・・・」
「『ロデニウス大陸沖大海戦』の通り、やはり敵は島国ということもあり、海軍強国のようですな・・・。ですが、上陸後は陸戦がメイン! 『高位魔導士たちに自爆魔法を使わせる』ような戦法を取っている者どもには負けますまい」
「急ぎビーズルの駐屯兵の一部をリアン海岸砦に、諸侯軍を北の港に向かわせました。王都の竜騎士団もすべて出撃させましたので、ひとまずは安心ですな。」
丁度話終えたタイミングで、悪いニュースが畳み掛けるように追加された。
「第2、第3竜騎士団が全滅! 王都上空の制空権が失われました!!」
「海軍本部のホエール海将から再度の緊急魔信です。『第1騎士団も全騎が撃墜された! 軍船と湾岸施設の被害も拡大中!! 消火が間に合わない、至急援護を!!!』 以上です。」
魔信を聞いたほぼ全員が、唖然とした顔をして固まった。全150騎の竜騎士が、カマキラスを除いてロウリア王国最強と言われていた部隊が、出撃後たったの数分で全滅したのだから、無理もない。
「工業都市ビーズルからも緊急魔信です。『正体不明の鉄の魔獣が複数出現! 掲揚している国旗から、日本国の陸軍と推定!! 敵の放つ爆裂魔法は城壁では防げず、監視塔と城壁の一部が崩壊!!! とてもリアン海岸砦に向かう余裕はない』以上です。」
二面同時攻撃かと思ったら、まさかの三面同時攻撃だった。さらに殆ど情報が伝えられていなかった日本国陸軍の実力が伝えられ、海軍同様、強力な大砲による爆裂魔法を使用していることも判明した。
これまで協議されていた防衛計画の前提がすべて覆ったことに、パタジン将軍やミミネル将軍、そしてその場にいた軍幹部たちの顔は、血の気が引いて真っ青を通り越して真っ白になっていた。
「ひ、ひとまず大王様にご、ご報告せねば・・・。そして今後の防衛方針について再度協議せねば・・・」
全軍の関係者に緊急招集がかけられ、9時から緊急会合が開催されることとなった。しかしこうしている間にも、『岩蟹』が壊滅させたリアン海岸砦から見える丘陵地帯の上空を、金属の箱を吊り下げた白い鉄竜こと『AC-3 しらさぎ』たちが、王都ジン・ハーク前の大平原に向かって飛行していたのであった。。。