東宝世界線の日本国召喚   作:T1001

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024. 見捨てられたロウリア

 

中央暦1639年8月30日 午前9時過ぎ

ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城

 

 

王都ジン・ハークにあるハーク城では、緊急会議が開催されていた。

 

「竜騎士団が全滅するとは、一体どういうことだぁ!それもこんな短時間に150騎全てがやられただと!!貴様らは王都の守護者たる自覚がないのか!!!」

 

ロウリア王国軍防衛騎士団のパタジン将軍は、竜騎士団に所属する軍幹部たちに大声で吠える。面目丸つぶれのうえ、怒髪天を衝く形相になった将軍を前に誰も答えられず、緊急会議の場を沈黙が満たす。

 

竜騎士団の全滅に加え、8月10日に実施された軍議で話し合われた前提やそれを踏まえた防衛方針がすべて覆ったという事実、さらに日本国の三面同時攻撃を受け、王都侵攻が現実味を帯びてきたという恐怖もあり、これまで以上に会議は紛糾していた。

 

「竜騎士団の失態は勿論だが、なんだこの報告内容は・・・」

 

一方、ミミネル将軍は手にした報告書を食い入るように見つめながら、怒りを通り越して嘆きと絶望を込めた声を出した。

 

報告書に記載されている内容は、以下の通りである。

 

・ 敵鉄竜は竜騎士団をあっという間に全滅させられるほどの力をもっており、また竜騎士団の壊滅に伴い、王都上空の制空権が消滅したこと

・ 敵陸軍は陸戦用大砲、それも石で出来た城壁や監視塔を一発で破壊するほどの威力をもった強力なものを運用していること

・ 工業都市ビーズルが上記部隊の攻撃を受けていること

・ 北の港に停泊していた出撃準備中の軍船1000隻と湾岸設備が、敵鉄竜の攻撃で大きな被害を受けていること

・ リアン海岸砦が鉄蟹の襲撃で壊滅したこと

・ リアン海岸沖に出撃したアンディ提督の艦隊も日本艦隊から攻撃を受けており、長くは持たなさそうな状態であること

 

これは先の『ロデニウス大陸沖大海戦』にて示されたように、日本国の空軍と陸軍も海軍同様、常識外れの力をもった恐るべき兵団であることを示唆していた。

 

「今までの情報を基に、日本国軍の今後の動きについて私なりに考えてみた。現在、我が国は三面同時攻撃を受けているが、ここ王都へ最初に仕掛けてくるのはリアン海岸方面からだと予想する。」

 

ミミネル将軍は立ち上がり、会議室の中央に置かれたロウリア王国領内の地図を指揮棒で指しながら、説明を始めた。

 

「おそらくアンディ提督の艦隊を蹴散らした後、壊滅させられたリアン海岸砦周辺から敵の本体が一気に上陸してくる可能性が高いだろう。母船で海岸に近づいてから、小舟を出してビーチングしてくると想定していたが、敵はそのようなことをせずとも上陸可能な術をもっているようだ。報告にあった鉄蟹が、その最たる例だろう。」

 

「王都に残っている諸侯たちを向かわせた北の港、今だ健在の工業都市ビーズルは、まだ暫くは持ち堪えられるだろう。しかしリアン海岸の方は、既に一部が上陸した時点で状況としては非常にマズイ・・・」

 

「北の港と工業都市ビーズルの両部隊の合流を待ち、同時に仕掛けてくるか、それとも先方として攻め込んでくるか・・・。いずれにせよ、王都に敵陸軍の攻撃が始まるまで残された時間は、後一週間というところか・・・」

 

パタジン将軍とミミネル将軍は、腕を組んだまま、地図を凝視して考え込む。沈黙を破って、軍幹部の一人が起立して二人に尋ねた。

 

「将軍閣下、カマキラスを、いやパーパルディア皇国から援軍を派遣して貰うことはできませんでしょうか・・・。第三文明圏唯一の列強国であり、カマキラスのような強力な魔獣を提供可能なかの国であれば、日本国など恐れるに足りません。」

 

その言葉を聞いたパタジン将軍とミミネル将軍、さらに玉座で報告を聞いていたハーク・ロウリア34世は、揃って苦虫を嚙み潰したような顔をした。

 

「残念ながら、パーパルディア皇国からの支援は期待できない・・・。カマキラスの方も、このハーク城に残された5匹の幼体以外は無理とのことだ・・・」

 

パタジン将軍は口惜しそうな顔で答えながら、二週間ほど前のことを思い返していた。

 

 

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中央暦1639年8月11日 午前

王都ジン・ハーク ハーク城 来賓室

 

 

ハーク城にある来賓室には、黒いローブを被ったパーパルディア皇国の使者と、パタジン将軍やミミネル将軍をはじめとした軍のトップが会談していた。

 

3月下旬の開戦前には、ヴァルハルとその上司が観戦武官としてロウリア王国に派遣されていた。しかし、ロデニウス大陸沖大海戦の報告をしたヴァルハルは、精神疾患扱いをされて帰国させられ、また上司の方はエジェイ西方の戦いにて、対小型特殊生物用地雷の爆発に巻き込まれて戦死していた。

 

そのため、国家戦略局・文明圏外国担当部に所属するイノスとパルソの直轄にあたるこの男が、8月から交代要員として派遣されていた。

 

「・・・パーパルディア皇国の使者殿、第三文明圏唯一の列強国である貴国の援軍があれば助かるのだが、どうか我が国を再度支援して貰うわけにはいきませぬか。もし援軍が厳しいのであれば、もう一度カマキラスだけでも提供して頂けませぬか・・・」

 

パーパルディア皇国は、数々の文明圏内と文明圏外の国家を支配下に置いている第三文明圏フィルアデス大陸の列強国である。支配する属国の数は70を超え、陸ではカマキラスをはじめとした強力な魔獣、空では改良されたワイバーン、海では魔導戦列艦隊を有した第三文明圏とその周辺地域における最強国家であった。

 

世界に五つしかない列強国の一つに数えられるパーパルディア皇国の力を借りることが出来れば、日本国への反撃も余裕だろうと考えたパタジン将軍たちは、使者に対して深々と頭を下げた。

 

「ロデニウス大陸を統一するために、十分な支援は行ってやった筈だ。ワイバーンを何騎、兵をいくつ、軍船を何隻貸し出したと思っている。これで敗れるような無能な友好国は、我が国には不要だ!」

 

ロウリア王国軍のトップたちを前に、パーパルディア皇国の使者は足を組みながら、あまりに非礼な発言で一蹴する。

 

「聞くところによると、せっかく供与してやったカマキラスが敗れたのも、わざわざ生きたまま餌にしようとして、体内で自爆魔法を使われたせいらしいな! そのような無能者を一軍の指揮官にしているような国に、これ以上の支援など無意味だ!!」

 

パーパルディア皇国からしても、莫大な支援を行ったにも関わらず、まったく戦果を出せておらず、加えて観戦武官として派遣していた一人は精神が狂い、もう一人は戦死するという損害まで被っている以上、このような態度をとるのも無理はない。

 

実際、クワ・トイネ公国もクイラ王国もまとめて返り討ちにできるほどの軍備を揃えていたこともあり、パタジン将軍たちは使者に何も言い返せなかった。

 

「まあ前任者がこの城に残したカマキラスの幼体5匹については、そのまま供与しておいてやる。もし見事、逆侵攻してきた敵軍を返り討ちにし、再度クワ・トイネ公国へ侵攻できれば、支援の件、考え直してやってもよい。」

 

気持ちの悪い笑みを浮かべながらそう言い残すと、パーパルディア皇国の使者は来賓室から出ていった。

 

 

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パタジン将軍から、列強国の支援が望めないことを聞かされた軍幹部は、手で顔を覆いながら着席する。士気低下を恐れ、会談に出席していたトップ以外は知らされていなかったため、出席していた者全員の顔が失望に染まる。

 

会議室内を再び沈黙が支配する。静粛に包まれるなか、王都防衛本部の兵が息を切らせながらドアを開いて入ってきた。

 

「会議中失礼します! 北側第一城壁から5km地点の平野部に、正体不明の物体を多数確認しました。現在、急ぎ確認中ですが、工業都市ビーズルに出現した敵部隊同様、掲揚している国旗から日本国の陸軍と推定されるとのことです!!」

 

あまりにも早い敵陸軍の出現に、緊急会議に出席していた全員が唖然とした表情になる。ロデニウス大陸派遣部隊の攻撃は、彼らに今の状況を理解する猶予させ、与えてくれなかった。

 

次の瞬間、ハーク城の中まで凄まじい轟音と地響きが伝わってきた。会議室の窓からは、第1から第3城壁までの正面城門から、大きな煙が上がっているのが見えた。

 

その数秒後、先ほど報告に来た兵の魔信が鳴り響き、その原因を報告する。

 

「報告致します! 敵の攻城兵器が、爆裂魔法を使用したもようです。敵はたったの一撃で、第一、第二、第三正面城門を破壊し、王都中央道路に大穴を開けました!! 加えて北側第一城壁付近の監視塔群も別の攻城兵器による攻撃で崩壊しました!!」

 

AC-3 しらさぎによって空輸され、王都前の大平原に展開した『90式戦車』から放たれた44口径120mm滑腔砲Rh120は、北側第一城壁にある正面城門から一気に第三正面城門を貫通し、上り坂となっている王都中央道路に着弾して大穴を開けた。

 

「城門がすべて破壊されただと!? マズイ、城門付近に王都防衛騎士団を集中させろ! 敵兵が場内に雪崩れ込んでくる可能性がある!!」

 

パタジン将軍は兵を集中させるよう、王都防衛騎士団に指示を出す。

 

「他のものは私とともに、東城門から出撃するぞ! 一刻も早く敵攻城兵器を叩かなければ、城壁がすべて破壊されてしまう!!」

 

ミミネル将軍と軍幹部たちは、会議室を慌てて飛び出していった。

 

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