中央暦1639年8月30日 午前10時半過ぎ
ロウリア王国 王都ジン・ハーク前の大平原
日本国ロデニウス大陸派遣部隊が開始した『ロウリア王国 首都鎮圧計画』は、大詰めを迎えようとしていた。
『F-2』と『F-15J改』の空対空ミサイル攻撃により、ロウリア王国軍の航空戦力にあたる竜騎士団が壊滅状態に陥ったことで、作戦の第一段階として、王都ジン・ハークにおける制空権を奪取することに成功。
続く護衛艦群による攻撃で、敵艦隊を沖合まで、そして王都に籠る諸侯軍を北の港に誘い出した。加えて第7師団の特科連隊による攻撃で、ロウリア王国陸軍の8割にも及ぶ主戦力を工業都市ビーズルに釘付けにするが出来たため、残すは防衛騎士団のみという状態であった。
さらに防衛騎士団を王都外に集中させるため、『AC-3 しらさぎ』により工業都市ビーズルを迂回する丘陵地帯の上空を空輸され、王都前の大平原に展開した『90式戦車』を含む戦闘車両からの攻撃が開始された。
唯一、丘陵地帯上空を視認可能なリアン海岸砦は、『岩蟹』により壊滅させられたため、ロウリア王国軍側からすると王都前に突如、日本国の陸軍が出現したような感覚であった。
「90式の120mm滑腔砲、王都正面の城門に命中! 高空偵察機による効果確認の結果、三重城壁を貫通し、市街地手前の大通り周辺に着弾した模様です!」
地面とほぼ水平になる射角で発射したとはいえ、市街地手前で着弾したことに、90式戦車の乗員は勿論、作戦に参加していた大内田師団長をはじめとした自衛隊幹部たちも安堵する。
「ロウリア軍、貫通した城門周辺に集結中! また東側から城壁外に出撃した部隊がこちらに向かって移動中です!」
「陽動は成功したようですね。王都内のロウリア王国兵の大半は、こちらに釘付けされているようです。」
「30分後、空挺部隊をハーク城に向けて出撃させる! それまで民間人への被害が出ないよう細心の注意を払いながら、ロウリア王国軍を引き付けろ!」
「メーサー小隊は敵特殊生物の出現に備え、そのまま待機せよ。『ヘリ部隊』は王都最外周の城壁付近にて、陽動攻撃を続行せよ。市街地のある方向に向けて、ロケット弾は決して撃つなよ!」
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ハーク城の会議室を飛び出したミミネル将軍は、重装歩兵と歩兵、弓兵、騎兵、で編成された部隊を率いて東城門から出撃した。一方、王宮主席魔導師ヤミレイが指揮する魔導士部隊は、第一城壁上からヘリ部隊に向けて攻撃魔法による牽制を行っていた。
分厚い鎧と重い鉄盾で全身を包み、長槍で武装した重装歩兵大隊は、第一城壁を攻撃した日本国の攻城兵器に向けて、密集陣形で前進していた。ミミネル将軍の作戦としては、重装歩兵が文字通り部隊の盾となり、敵との距離を詰める。そして弓の射程距離に入ったタイミングで、弓兵が一斉射撃を行い、後ろの歩兵と騎兵で一気にケリをつけるという算段であった。
理由はわからないが、角ばった体とツノを生やした緑色の攻城兵器は、王都の三重城壁を一撃破壊した攻撃をこちらに対して行わず、また密集陣形で近付いて来る重装歩兵大隊の威圧感に臆したのか、ゴォゴォという唸り声をあげながら少しずつ後退していた。
なかなか距離が詰められないなか、2kmほど進んだタイミングで突如、敵攻城兵器から多数の光弾が猛烈な勢いで発射された。『90式戦車』に搭載された7.62mm機関銃と12.7mm重機関銃M2が、鉄盾を構えながら接近する重装歩兵大隊に直撃した。
炭素含有量の少ない純鉄で作られた盾と鎧では、これらの機関銃から放たれる銃弾を防ぎきれずに貫通し、隊列の前にいた者から順に、ハチの巣のように穴だらけになって次々と倒れていく。
「あ、あれはまさか銃か!? それもあんなに射程距離が長くて連射可能な銃は、文明圏の国でも見たことがないぞ!!」
ミミネル将軍が知っている銃は、地球において『先込め式滑腔式歩兵銃』と呼ばれていた所謂マスケット銃のことであった。10日の軍議にて話していたように、彼は列強パーパルディア皇国の軍事パレードに招待されことがあった。そこで『牽引式魔導砲』とかいう種類の大砲に加え、皇国兵の装備する魔導マスケット銃の試射も見ていたため、『一発撃てば、次弾装填のための準備時間が必要』というのが、ミミネル将軍の大砲や銃に対する認識であった。
そのため万が一、日本国陸軍が大砲に加え、銃まで使用したとしても、密集陣形の重装歩兵大隊を先頭に物量で接近すれば、勝ち筋があると考えた彼の作戦は、根底から崩壊したのであった。
最終的に機関銃の掃射で、重装歩兵大隊は殆ど全滅に近い状態となった。重装歩兵大隊の全滅という、想定よりもあまりに被害が大きくなったこともあり、ミミネル将軍は残存部隊による攻撃を中止し、西門や南門から向かっている増援との合流を優先した。
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中央暦1639年8月30日 午前11時過ぎ
王都ジン・ハーク ハーク城上空
日本国ロデニウス大陸派遣部隊が開始した『ロウリア王国 首都鎮圧計画』に対し、ロウリア王国軍は下記のように展開していた。
・ 王都前の大平原
ミミネル将軍が率いるロウリア王国陸軍
・ 北側第一城壁上
ヤミレイが率いる魔導士部隊
・ 90式戦車が大穴を開けた正面城門周辺
パタジン将軍が率いる王都防衛騎士団
上記のように王都ジン・ハークを守護する主力部隊の殆どは、中央に位置するハーク城から最も遠い、第一城壁周辺に展開してしまっており、城内には近衛隊しか残っていなかった。
理由としては、ハーク城が歩兵で直接攻撃されることを想定していなかったためである。ロウリア王国をはじめ、第三文明圏やその周辺地域で重用されているワイバーンは、150kgを超える重いものを運ぶことが出来ないため、乗せることが可能な人数は二人程度が限界であった。従って歩兵部隊を空輸し、敵拠点に空から投入するという作戦自体が発想になかったのだ。
ロウリア王国軍が第一城壁周辺に意識を集中している中、王都ジン・ハークの北側からは複数機の回転翼機が、ハーク城に向けて飛翔していた。機内には本作戦の最終目的である『ロウリア王の身柄確保』のために、陸上自衛隊の特殊作戦群や警視庁から派遣された特殊部隊『SUMP』の隊員たちが、降下に向けた最終確認を行っていた。
先行していた『AH-1S コブラ』や『AH-64D アパッチ』による上空支援もあり、『V-22 オスプレイ』たちはハーク城の中央にある巨大な中庭近くまで接近すると、回転翼軸の角度を鉛直方向に90度近く回転させ、ホバリングモードに移行する。
そして垂らされたロープから、隊員たちが素早く中庭へと降り立っていく。地表に着地した隊員たちは、円形の防衛陣形と取りながら空挺堡を確保し、メーサーライフルなどで重武装した特殊作戦群とSUMPが速やかに降下した。
クワ・トイネ公国の情報部を通して極秘入手した城内図面をもとに、玉座の間にいるであろうハーク・ロウリア34世を目指し、特殊作戦群とSUMPの隊員たちはハーク城内部に突入した。
※ メーサーライフル
出典 : ゴジラ FINAL WARS(2004年)
1996年のデストロイア事変において、臨海副都心でデストロイア幼体群と交戦した特殊部隊『SUMP』に大きな被害が出た件を踏まえ、屋内や限られたエリアで小型特殊生物との戦闘になった場合を想定し、開発された携帯型の超小型メーサー兵器。
メーサー発生装置の小型化に成功したことで、携帯可能なサイズを実現した。射撃の際には、ガトリング銃のように回転して無数の光弾を発射するが、複数丁から一点に集中すれば10mサイズの小~中型特殊生物にもダメージを与えられるほどの威力を誇る。
対人兵器としてはあまりに強力すぎるため、自衛隊の特殊作戦群やGフォース、SUMPなど特殊生物と交戦する可能性がある部隊に限り、運用されている。