中央暦1639年8月30日 午前11時過ぎ
ロウリア王国 王都ジン・ハーク
ロウリア王国軍防衛騎士団のパタジン将軍は、王都防衛騎士団を率いて王都正面城門の周辺を防衛していた。ハーク城で開催されていた緊急会議の最中、『90式戦車』が放った120mm滑腔砲により、王都正面の三重城門がたった一発の砲弾で貫通され、大穴を開けられたからだ。
王都前の大平原では、王都内に残っていた王国陸軍を引き連れたミミネル将軍が日本国陸軍と、また北側第一城壁上では、ヤミレイ率いる魔導士部隊が日本国の鉄騎とそれぞれ戦闘を開始した旨の魔信連絡を受けていた。
そのため間もなく自分たちも交戦に入ると考え、自らの旗下である王都防衛騎士団に檄を飛ばしながら、近くの民家や商店からかき集めた家具や荷台を積み重ねた簡易バリケードを構築し、大穴を開けられた第一城壁に付近で日本国の王都侵攻部隊の襲撃を待ち構えていた。
しかしパタジン将軍の予想に反し、日本国の王都侵攻部隊と思われた鉄騎は自分たちの頭の上を素通りし、そのままハーク城に向かって飛行していく。ハーク城を空から攻撃するのかと思ったが、王城上空に到達した途端、高速で回転している風車の着いた翼が向きを変え、その場で停止する。
望遠鏡を取り出して確認すると、空中で停止した鉄騎から、人のようなものが次々と王城内に降り立っていくのが見えた。
「まさか空から歩兵を送り込んでいるのか!?」
パタジン将軍は、自分たちがまったく想定していなかった日本国の戦術に狼狽しつつ、すぐにでも王都防衛騎士団をハーク城に戻そうと考えた。しかし、もし王城への侵入が陽動であった場合、第三城壁の奥まで大穴が貫通した城門と自分たちがいなくなってがら空きになった状態では敵部隊の侵入を防ぎきれず、王都はあっという間に陥落してしまう。。。
仮に王城への侵入が主目的であったとしても、王都ジン・ハークの地形がハーク城への迅速な援軍の派遣を困難にしていた。
王都ジン・ハークは、クワトイネ公国のエジェイのように城塞都市として築かれている。そのためハーク城に向かう通路は複雑に入り組み、またハーク城に通じる虎口には馬出曲輪が複数設置されていたため、大人数の部隊を救援として戻すことがほぼ不可能であった。
パタジン将軍は顔を歪ませ、苦悶に満ちた表情をする。暫くすると、意を決したような顔をして近くに魔力通信兵を呼び付けた。ハーク城内に残っている近衛隊大隊長ランドに、司令を伝えるためだ。
「こちらパタジン、王都防衛騎士団の一部をそちらの援護に向かわせるが、おそらく間に合わないだろう・・・。地下にいるカマキラス幼体をすべて投入しても構わん!! 非常に心苦しいが、近衛隊だけでなんとか持ち堪えてくれ。。。」
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ハーク城の中庭に降り立った陸上自衛隊の特殊作戦群と警視庁から派遣された特殊部隊『SUMP』の隊員たちは、制圧した中庭からハーク城内部に突入していく。
5月下旬にエルフの避難民を襲撃していた集団や7月のエジェイ西方の戦いにて、ロウリア王国軍が3つの頭が付いた犬型魔獣など、屋内でも戦闘可能なサイズの魔獣を使役していたことから、一部の隊員たちは小型特殊生物の出現に備え、メーサーライフルやロケットランチャーなどの重火器を装備していた。
現時点では懸念していた小型特殊生物の出現がなかったこともあり、隊員たちはこれらの重火器を使用することなく1階を警備していた第三近衛隊を殲滅し、会議室や兵士詰め所などを次々に制圧していく。
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4階にある『王の間』では臨時のバリケードが設置され、近衛隊大隊長ランドと直属の第零近衛隊が警護についていた。ちなみに城の主であるハーク・ロウリア34世は、奥にある緊急控室に避難し、両手で頭を抱えながら独り言をブツブツ言っていた。
王の間に一緒にいる魔力通信士から、矢継ぎ早に状況報告が読み上げられるが、そのどれもが侵入した敵部隊の鬼神のような強さと為す術もなく壊滅していく近衛隊の状況であった。
「中庭北棟の1階はほぼ制圧され、第三近衛隊も全滅しました・・・。現在、敵部隊は2階舞踏場に向かって進行しており、第二近衛隊が迎撃中です」
「敵が使用しています魔導銃は、鎧では防ぎきれないようです。王都前の大平原で交戦したミミネル将軍から、重装歩兵の鉄盾も貫通されたと緊急連絡もありました!」
重装歩兵の装備でも防げないような武器を使用する敵部隊を相手に、どう対応すればよいかランド隊長は必死に考える。
幸い緊急用の手動昇降機を稼働させたことで、地下にいたカマキラス幼体5匹との合流が間に合ったため、3階大広間で迎撃準備を進めている第一近衛隊に2匹を援軍として向かわせた。幼体とはいえ、カマキラス5匹が同時に戦闘出来るほど、大広間や謁見の間は広くないためである。
そして残り3匹と自分を含めた第零近衛隊は最後の砦として、4階にある謁見の間で待ち構える。固い外骨格をもつカマキラスであれば、敵の魔道銃を防げるかもしれない。下層から響いて来る爆発音と乾いた発砲音は次第に大きくなっており、敵部隊が少しずつ、でも確実に近づいてきていることがわかる。
近衛隊大隊長ランドと第零近衛隊は、3匹のカマキラス幼体とともに、緊張した面持ちで迎撃準備を進めるのであった。
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警視庁の特殊部隊『SUMP』の青木隊長は特殊作戦群の橋本隊長と共に、目標である4階『王の間』に向かって駆けていた。
彼は96年のデストロイア事変における数少ない生存者であったこともあり、小型特殊生物の襲撃に備え、その手には異形の銃火器『メーサーライフル』が握られていた。当時新入りであったものの、デストロイア幼体群との戦闘にて1匹をロケットランチャーで撃退したことから、部隊内ではレジェンド扱いされている。
今まで現れた近衛と思われるロウリア兵は特に脅威ではなく、あっさりと排除出来ている。攻撃魔法を使う魔導士や化け物のような小型特殊生物との戦闘も考慮していたが、今のところは一度も見かけていない。
2階にある舞踏場を制圧後、そのまま3階に向かう階段を駆け上がっていると、人とは異なる、何かが近くにいる気配を感じた。この感覚は20年前、プレミアムビル内での戦闘で、デストロイア幼体に天井の配管を突き破って強襲されたものに酷似していた。
ハッとした顔をして天井を見た青木隊長は、3F大広間に続く扉に近づこうとした先頭の隊員たちに大声で叫んだ。
「全員止めれ! 上からくるぞ!!」
次の瞬間、立ち止まった先頭にいた隊員のすぐ前に、大きな鎌が振り下ろされる。数秒立ち止まるのが遅れていれば、首と体が真っ二つに両断されていたことだろう。
目の前には、2~3mの体躯はある大きなカマキリが、槍のような形をした右前肢と左前肢の鎌を擦らせて音を出し、隊員たちを威嚇していた。3Fホールの天井付近で忍者のように潜み、侵入者である隊員たちを待ち構えていたのであった。
同時に3階の大広間に続く扉が開き、中からさらにもう1匹の大カマキリと近衛兵たちが現れた。
「小型特殊生物出現! フォーメーションBに移行!!」
先頭にいた比較的軽装の隊員たちが自動小銃を撃ちながら後方へと下がると同時に、特殊素材で作られたバリスティックシールドを構えた隊員たちが前に出る。この間も射撃を継続しながら後退し、カマキラス幼体との距離を取る。残念ながら、自動小銃による攻撃は固い外骨格で弾かれ、有効打は与えられていないが、カマキラス幼体を足止めすることには成功していた。
「撃ち続けてそのまま釘付けにしろ! 一番手前のヤツにメーサーライフル照射!! 」
バリスティックシールドを構えた隊員たちの間から、メーサーライフルを構えた隊員たちが、強襲してきた一番手前の個体に向けて一斉射撃を開始した。
銃身がガトリング銃のように回転し、無数の光弾を発射し始める。一見するとガトリングガンのようにも見えるが、これは各銃身でメーサー光弾の発射と冷却を繰り返しているためである。携帯可能なサイズまでメーサー発生装置の小型化に成功したが、冷却機構には課題が残っており、メーサータンク群のような連続したメーサー照射は不可能であった。
この再発射可能になるまでのインターバルを解決するために採用された方法が、MOGERAに装備されたプラズマレーザーキャノンのように複数の銃身を用意し、それぞれで冷却と発射を繰り返すことで、長時間の速射を可能にするという手法であった。
複数丁のメーサーライフルから一斉に照射されたメーサー光弾は、カマキラス幼体の頭部に直撃し、顔面を焼き尽くしてあっという間に瀕死に追い込む。すかさず助けに入ろうとしたもう1匹に向けて、後方から『110mm個人携帯対戦車弾』が撃ち込まれる。
幼体1匹は勿論、近くにいた第一近衛隊諸共、カマキラス幼体の周囲が盛大に吹き飛んだ。この一撃で既に瀕死となっていた幼体1匹は絶命し、ロケット弾を撃ち込まれたもう1匹も左前肢の鎌がもぎ取れ、さらに第一近衛隊も半数近くが死傷した。
最終的にカマキラス幼体2匹と第一近衛隊が全滅し、3F大広間も制圧された。
<補足> プラズマレーザーキャノンについて
MOGERAの頭部には、片目に3基ずつレーザー砲(プラズマレーザーキャノン)が搭載されている。両目で2基(片目1基ずつ)ずつを発射し、冷却を繰り返すことで長時間の連射を可能にしている。対スペースゴジラには有効打にはならなかったが、地味にスーパーメカゴジラが装備しているレーザーキャノンの3倍の威力があったりする。